箱罠について詳しく知りたい

箱罠について詳しく知りたい

鳥獣被害に悩まされる中で、罠による捕獲・駆除を行わなければならないことがあります。特に害獣の個体数が多い地域では、罠によって捕獲圧を高めることは必須です。罠の種類には、主に「箱罠」「くくり罠」「囲い罠」の3種類がありますが、この記事では「箱罠」について詳しく説明します。

箱罠とは

箱罠とは、檻などで作られた箱の中に獲物が入ってトリガーが作動すると、出入口が閉まって獲物を閉じ込める罠のことです。なお、天井面の半分以上が開口しているものは箱罠ではなく囲い罠として扱われます。

箱罠のメリットは初心者にも比較的扱いやすいという点です。くくり罠の場合、罠の設置やかかった獲物の処理に技術・経験が必要ですが、それに比べると、箱罠は組み立てしまえば設置完了です。また捕獲後の処理も、獲物の動きが限定されるため、くくり罠や大きめの囲い罠と比べると難易度は下がります。そのため初心者には、より安全な箱わなの使用が向いているといえます。


初心者でなくても、人間の活動が多い場所で罠を設置する場合は事故を避けるため、くくり罠よりも安全な箱わなが用いられることが多くあります。

箱罠の構造・仕組み

一口に箱罠といっても様々な種類がありますが、いずれもエサを使って獲物を箱の中に誘因します。箱内に獲物が入ることでトリガーが作動し、出入口の落とし戸が閉まります。

箱罠のトリガーについて

トリガーとは、落とし戸が落ちる動作を開始するためのきっかけとなる機構のことです。多種多様なタイプがありますが、大まかには以下に分類されます。

蹴り糸方式

中にトリガーライン(仕掛け線)となるワイヤーを張り、獲物がそれに触れたらゲートが落ちる方式です。箱罠のトリガー方式の中では最も一般的なものです。獲物の体高に合わせて位置や高さを調節します。

踏み板方式

床面に設置した踏み板に、獲物の体重が乗った瞬間に、トリガーが外れて扉が閉まる仕組みです。踏み板方式は、アナグマ、アライグマ、ハクビシンなど小型獣をターゲットとした箱罠に使用されることが多いです。獲物の体重に合わせてトリガーを調節します。

吊り餌方式

金属棒やワイヤーなどのトリガーラインが箱罠の上面からぶら下がっている形状で、先端に餌をつけます。獣が餌を食べようと、餌やトリガーラインを咥えたり、前足でつかんだりすると扉が閉まる仕組みです。

回し棒(回転軸)方式

獲物が箱罠の中に入り、より奥に入るときに、棒が回転したら蓋が落ちる仕組みです。仕組みとしてはシンプルですが警戒心の強い個体の場合、棒に違和感を感じてなかなか檻の中に入らない傾向があります。 入ったとしても棒のところまで行かない、餌を食べても棒を回転させずに外に出てしまうなど、捕獲の効率は他の方式に比べると高くありません。

電動方式

警戒心が強く、目に見えるワイヤー等には絶対に触れようとしない個体などに有効です。構造が他の方式よりも複雑であるため、壊れやすいという欠点もあります。

箱わなの中に入った獣の熱と大きさを赤外線センサーで感知し、内蔵されたモーターで線を巻き取ることで扉を落とす赤外線センサー方式や、Webカメラの映像をスマホ等で見て電動トリガーを動作させる方式など様々な仕組みが登場しています。

箱罠の檻について

ターゲットによって檻の材質や網目の大きさ等が異なります。

ワイヤーメッシュ製の檻

ハクビシンやアナグマ、アライグマなどターゲットが小型の場合に主に用いられます。安価で組み立てやすく、軽いという点がメリットです。一方で耐久性に劣るため、力の強い獲物を捕獲する場合は破損する恐れがあります。

鉄筋製の檻

鉄筋製の檻は、力の強いイノシシやクマなど中~大型獣に向きます。頑丈で安全性が高く、耐用期間が長いのもメリットです。重量があるため運搬が大変で、ワイヤーメッシュに比べると高価であるのがデメリットです。

箱罠の設置や仕掛け方

被害が出ている場合は一刻も早く捕獲したい気持ちが出ますが、焦りは禁物です。特に、臆病で警戒心が強い個体の場合、箱罠を置いてもなかなか近づきません。

また、繁殖力の高い動物の場合、個体数がすぐに増えるため、幼獣をやみくもに捕獲しても被害はなかなか減りません。適切なターゲットを的確に捕えるためのポイントを理解することが重要です。

罠の設置の前に

鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律に基づき、必要な鳥獣捕獲許可や免許を取得します。また設置する箱罠には、住所、氏名、許可者、許可年月日、許可番号、捕獲目的、許可有効期限を明記した標識を装着し、有害鳥獣捕獲許可があることを明示する必要があります。また、罠の設置は必ず捕獲の許可を受けた人が行ってください。

設置場所

まずは何がどのように被害を受けたか確認し、ターゲットが多く出没する場所、よく通る場所を探します。出没場所が特定されていない場合、目撃情報やフィールドサインのあるエリアをパトロールして、設置場所の候補を挙げましょう。

土地所有者の許可が得られる、大型の箱罠の場合は自動車で近づける、罠の設置に十分な広さがある、人の出入りが少ない等も、場所の選定のために重要なチェックポイントです。


獲物が出没しそうな場所の周辺に犬を連れて行くと、その様子からターゲットの有無が分かることもあります。カメラを設置して、ターゲットの動向を確認することも有効です。

場所のアタリがついたら、すぐに罠は設置せず、設置ポイントの候補にエサだけを撒いて食いつきを確認するとよいでしょう。雑食性のターゲットの場合、エサを複数種まいて、好みのエサを調べます。

一番食いつきが良い場所が分かったら、足跡や糞尿、食痕、獣道の様子をよく確認し、罠を設置する位置や方向を決めます。接近してくる方向に入り口を向けて設置するとよいでしょう。



なお、農作地等のすぐ近くに罠を設置すると、餌付けによって他の個体を招いてしまい、被害が拡大してしまう恐れがあります。被害の出ている農作地等から近すぎず、離れすぎない場所に設置するのが良いでしょう。また、野生動物への餌付けは被害を助長する恐れがあるため、餌付けた獲物は確実に捕る意識を持つ必要があります。もし餌付けによって被害の拡大が懸念される場合は、付近の農作物とは異なる種類の餌にしましょう。

設置方法

ターゲットの体高などを考慮して、適切なサイズの箱罠を選択しましょう。罠の高さが足りず、背中が当たると警戒して箱わな内へ入らなくなることがあります。また、トリガーの位置や高さもターゲットの大きさを考慮して設置しましょう。

幼獣と成獣に体格差がある場合は、成獣をターゲットにするほうが効率的です。そのような場合、成獣をターゲットとしてトリガーの位置や高さを決める必要があります。

例えば、イノシシの場合、罠の中に先に入るのはほとんどの場合幼獣です。そこでトリガーが作動してしまうと、幼獣だけ捕獲したものの被害を起こす成獣は逃げてしまい、結果として成獣が罠に警戒して近づかなくなるということになります。

いわゆる、スレたイノシシを増やすことになり、その後の捕獲の難易度が上がることになります。また幼獣を多く獲って捕獲数が上がっても、成獣の繁殖力が高いため個体数の減少に直結しない可能性があります。

箱罠の設置は、ターゲットの警戒心をいかに緩めるかが重要です。たとえば、罠の底面に土を被せて金網を見えなくする等、警戒心を解く工夫をしましょう。さらに、捕獲の効率を上げるのであれば、箱罠とくくり罠の併用によって(例えば箱罠で捕らえやすいウリボウは箱罠で捕獲し、かつ箱罠のすぐ近辺にくくり罠を仕掛けておき、なかなか中に入らない成獣はくくり罠で捕獲する等)、一網打尽にすることも一つの方法です。

餌付け

箱罠による捕獲プロセスのなかで、餌付けは最も重要な作業です。ターゲットの生態をよく理解して、適切な餌付けを行う必要があります。焦らず、徐々にわなの奥に誘いこむ意識が必要です。

設置場所の選定時に、一番良く食べたエサを用いて捕獲を始めましょう。警戒心が強い個体の場合、獲物が箱罠の中で安心してエサを食べるようになるまではトリガーは作動させず、扉は固定しておくと良いでしょう。

最初は、箱罠の外側にも餌をまき、餌の減り方を見ながら、徐々に罠の奥に餌を集め、誘導します。警戒を解くには、数日は必要です。毎日欠かさず、1日で食べきれる量の餌をまきます。箱罠の中の一番奥の餌が完食されるようになれば、トリガーが作動するようにします。

余談ですが、魚釣りが上手な人は、罠による捕獲効率も高い傾向にあります。待ち過ぎるとターゲットの行動が変わることもあるので捕獲タイミングには決断も必要です。捕獲待機状態のまま長期間放置すると事故が起こる恐れもあります。

餌は、ターゲットに応じて多種・多様なものが候補として挙げられると思いますが、ターゲット以外の野生鳥獣が誤って捕獲されないよう配慮する必要があります。選ぶポイントとしては以下があります。

・被害の多い作物
・入手しやすいもの
・臭いで誘引しやすいもの
・取り扱いやすいもの(菓子類・芋類)など

設置期間

ターゲットの種類や被害状況、フィールドサイン等の条件に応じて設置期間の伸縮する必要があります。

たとえば、ヌートリアは比較的短期間(1日~1週間)で捕獲されることが多いですが、アライグマ、ハクビシンは、1~2ヶ月程度が目安です。イノシシやシカの場合、すぐに罠内の餌を食べないことも多いため、1週間から10日は根気よく餌をやり続けましょう。

夜間に捕獲されることが多いため、箱罠設置期間中は、原則として毎朝巡回を行いましょう。エサを食べた痕や、捕獲できなかったもののトリガーの作動が認められた場合、様子をよく観察します。

また、食性・生息域が似ているターゲット以外の種が誤って捕獲される可能性や、民家の多い郊外付近では、犬や猫が捕獲される可能性があります。ターゲット以外が捕獲された場合は速やかに放し、巡回頻度を増やしましょう。

捕獲後の処理

捕獲後はできるだけ速やかに処分を行いましょう。捕獲後の処理は地域によってルールが異なります。詳しくは、お住まいの地域の自治体担当者までお問い合わせください。動物にも人間にも負担が少ない処分の方法を検討しましょう。

また、野生動物には、ダニ、寄生虫その他病原菌や感染症を保有していることがありますので、衛生面に注意してください。