猟中の獣検知に。サーマルカメラを使ってみよう。

猟中の獣検知に。サーマルカメラを使ってみよう。

サーマルカメラは、サーマル(thermal:熱)という名が示す通り、熱を検知して可視化できるカメラです。サーマルカメラによって可視化された映像はサーモグラフィと呼ばれ、動物や物質の温度が高いところと低いところが色で分かれて表示されます。

工事・建設現場での構造物診断や、キャンプ・登山などのアウトドアアクティビティ、防犯、研究用途などサーマルカメラには幅広い用途がありますが、もちろん狩猟の際にも獣の行動を検知する強力なツールとして役立ちます。

まず、サーマルカメラの原理

太陽光が当たるとモノは温かくなることは、地球上に住む人類にとって当たり前の自然現象です。そのメカニズムを解明しようとした1700年代の天文学者ウィリアム・ハーシェルは、太陽光の中に目には見えないが、物を温めることができる部分があることを発見しました。その光は、赤色の光よりも外側(長波長側)の波長をもつことから、「赤外線」と名付けられ、赤外線の中でも波長の長い領域の光は「遠赤外線」と呼ばれるようになりました。

地球上の物質はすべて遠赤外線を発しています。そして、温度が高ければ高いほど、遠赤外線の放射量(エネルギー)は多くなります。サーマルカメラにはその遠赤外線を検出するセンサーが搭載されており、遠赤外線エネルギーの強弱を検知することで物質の温度を検知します。

サーマルカメラに使われるセンサーは、「ボロメータ」とよばれる小型センサーを集積したもの(マイクロボロメータ)が主流です。撮影対象から受けた遠赤外線は、カメラに搭載されたレンズを通してボロメータに入射しますが、ボロメータの赤外線吸収層は温度変化によって電気抵抗値が変化します。 この電気抵抗値の変化を使って、放射強度を読み取るという仕組みです。

サーマルカメラの性能を示す項目

サーマルカメラの性能を示す項目には、以下のようなものがありますので、選ぶ際の基準とすると良いでしょう。

画素数

デジタルカメラでいう画素と同じです。数値が大きいほど、より遠くのもの、微細なものをよりはっきりと写します。

画角

横×縦の画角を表わします。数値が大きい程広角になります。

IFOV

カメラが検知できる対象の最小の寸法です。例えば、11mradは11mm角の寸法のものを検出できます。IFOVは、実際の撮影対象寸法の3~5倍となるものを選ぶことが推奨されます。

NETD

カメラが検出できる温度差です。数値が小さいほど画面のノイズが少なく温度差が鮮明な画像になります。

フォーカス

フォーカスフリー(固定焦点)のものや、手動フォーカス・オートフォーカス(デジタルカメラと同じ)があります。

最近のサーマルカメラの実力

人間がもつ五感よりも獣の感覚の方が鋭いため、こちらの存在を獣に先に察知されてしまう場合が多くある思います。特にイノシシの場合は警戒心が強く嗅覚も犬並みに鋭いため、狩猟の際にハンターが五感をフル活用したとしてもイノシシより先に検知することは困難です。

しかし、サーマルカメラを使えば、彼らの存在や動きを簡単に検知できます。例えば、解像度が160×120ピクセルのサーマルカメラで30メートル程先のイノシシを撮影すると、以下の動画のように見えます。

また、解像度640×512ピクセルのサーマルカメラ搭載のドローンで、上空からイノシシを撮影すると、以下の動画のようになります。

狩猟で使えるシチュエーション

狩猟において、サーマルカメラが最も活躍するのは、半矢の獲物を探すとき。一発で仕留められなかった場合、獲物は物陰などに隠れてじっとしていることが多くあります。そういった場合、猟犬がいなくては、たとえ獲物が出血していたとしても痕跡を見逃してしまい、発見するのが困難となるケースが多々あります。

でも、サーマルカメラがあれば、獲物を見失ったおおよその方向さえわかれば、探索が可能になります。流れ出たばかりの血の痕跡などが周囲と異なった色で表示されるので、容易に探し出せることが期待できます。

他にも、例えば不意な熊との遭遇など、出会いたくない動物を早期に発見する際にも使えます。万一遭遇してしまったら、適切に対処するしかないのですが(※参考記事:持っておくと心強い。「熊よけ」スプレー)、やはり一番安全なのは至近距離となる前に早期発見して逃げることです。

なお、撮影対象が樹木に完全に隠れている場合、遠赤外線が木々に遮られてしまうため、検知が難しくなります。撮影対象が茂った枝葉に隠れている場合は、枝葉が二重三重と重なっていなければ確認できますが、木々に視界を多く遮られたエリアでの猟には、あまり向かないかもしれません。

また、中型犬程度の大きさ以上の動物であればサーマルカメラで検知することができますが、鳥のような小型の生物の発見は困難な場合もあります(周囲の状況やスペックにもよります)。

おすすめサーマルカメラ

いろいろな種類のあるサーマルカメラですが、ここで狩猟に使えるおすすめサーマルカメラをいくつか紹介いたします。

Seek Thermal社「Reveal pro EC」

実戦に耐えうるスペックを持ち、携帯電話ほどの大きさで持ち運びも楽なのが、Seek Thermal社の「Reveal pro EC」。公表スペックは、画素数320×240ピクセル、画角32度、検出距離は約550m。大きさが12×6×3cm、バッテリー駆動時間が通常モードで約4時間。

以下の動画では、「Reveal pro EC」を使って、対象の距離が離れるにつれてサーマルカメラの映像がどのように変わるかを観ることができます。

お値段は10万円前後とややお高め。

キャタピラー社サーマルカメラ搭載スマホ「CAT S60」

大手建設機材メーカーであるキャタピラー社からは、プロフェッショナル仕様のサーマルカメラ搭載スマホ「CAT S60」が発売されています

現場の道具として使うことはもちろん、普通にスマホとして使う場合も、その重厚さや機能性に注目を浴びること請け合いです。SOSボタンを押すと、予め登録しておいた連絡先に座標情報とメッセージが送信される機能や、気圧計等も内蔵されてますので、山歩きする人にもおススメできます。

水深5 mに60分間浸しても起動可能な防水・防塵性能、耐衝撃性も優れています。※以下の動画で、これでもかというほど落下させてテストしてます。

難点としては普通のスマホと比べるとやや重い点、画素数は80×60ピクセルで、専用のサーマルカメラと比べるとやや撮影機能に劣る点が挙げられます。現在のお値段は五万円弱~。

Seek Thermal社「CompactPRO EC」

お手持ちのスマートフォンに直接接続し、操作するタイプも発売されています。なかでも、
Seek thermal社の「CompactPRO EC」は、狩猟に耐えうる高性能カメラモジュールが搭載されています。画素数は320×240ピクセル。

スマートフォンに直接接続するため、充電の必要がなく、アプリをスマートフォンにダウンロードしておけばすぐに使用できます。画像はスマートフォンに保存されるため、撮影した静止画や動画をすぐに送信できます。もちろん、Android用・iphone用の両方が販売されていますので、お使いのスマートフォンに合ったものを選びましょう。

まとめ

テクノロジーの進化によって、どんどん便利・高機能になっていく電子機器。サーマルカメラも進歩してきており、そのうち猟犬代わりになるほど便利なものが発売される日も近いかもしれません。

それなりにお値段がするものが多いですが、サイズもコンパクトで、ガジェット好きにはたまらないほど多くの機能を搭載しているものもあります。優秀な猟犬と共に猟をする方や、半矢にすることがない腕を持つ熟練ハンターにとってはあまり活用するタイミングがないものかもしれませんが、あればそれなりに重宝しますよ。

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