狩猟では、遠くにいる獲物を確認し、的確に仕留めるために双眼鏡が欠かせません。双眼鏡にはさまざまな種類や機能を持つものがありますが、狩猟で使う場合、狩猟用として役立つスペックのあるものを選ぶ必要があります。
本記事では、狩猟用の双眼鏡に必要な機能や選び方について詳しく解説します。狩猟で使う双眼鏡を探すときにぜひ参考にしてください。
目次
狩猟用の双眼鏡が必要な理由
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まず、狩猟に双眼鏡が必要な理由を詳しく見ていきましょう。
獲物を探す
狩猟は、どこにいるか分からない獲物を探して狩りをすることです。そのため、獲物を探すために肉眼よりも遠くや詳細を見られる双眼鏡が役に立ちます。
獲物を探す目的で双眼鏡を使う場合、単純に高倍率であればいいというわけではありません。高倍率と低倍率の双眼鏡にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
【高倍率の双眼鏡】
メリット:より大きく見えるため、細かいところまで探せる
デメリット:視野が狭いため、双眼鏡で見られる範囲以外のところで動きがあっても気付けない
【低倍率の双眼鏡】
メリット:視野を広く取れる
デメリット:拡大率が低いため、獲物の一部しか見えないようなシーンでは見つけにくい
視野の広さと拡大率は、どちらも狩猟では大切です。そのため、狩猟用の双眼鏡を選ぶときにはバランスの良いものが使いやすいということになるでしょう。
また、狩を行う場所に合わせて双眼鏡の機能を選ぶことも重要です。たとえば、見通しの良い山で狩猟を行う場合は、高倍率の双眼鏡が役に立ちますし、見通しの悪い山なら低倍率の双眼鏡の方が使いやすいでしょう。
獲物を確認する
獲物が見えたときに詳細を確認するためにも、双眼鏡は必要です。「右手で動く気配がした」「前方に黒っぽいものが見える」など、獲物かどうかを判断したり、獲物の種類などを確認したりするときは、高倍率の双眼鏡が適しています。
高倍率の双眼鏡は、比較的大きくて重いものが多いですが、狩猟の確認のためだけに使うのであれば、長時間持って覗く必要はないため問題なく使えるでしょう。
障害物の向こう側を見る
視界の悪いところで、その向こう側にあるものを確認したいときにも双眼鏡は使えます。たとえば、前方にある藪の向こう側を見たい場合、密度の薄い藪であれば双眼鏡を藪の向こう側にフォーカスを合わせることで、藪がぼやけてその向こう側のものだけを見ることができます。
遠くを見るだけではなく、このような使い方をしたい場合も、高倍率の方が使いやすいかもしれません。
狩猟に使う双眼鏡を選ぶときのチェックポイント
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狩猟用の双眼鏡を選ぶときに、実際にチェックしたいポイントを詳しく紹介します。
ブランド
日本のメーカーの双眼鏡は、世界的にもレベルが高いことで知られています。NIKON、PENTAX、KOWA、VIXEN、KENKO、HINODEなどがよいでしょう。
メーカーごとにレンズコーティングのこだわりが異なるため、覗いたときの見え方や色調などに差がありますが、好みのものを選んでください。また、高性能な双眼鏡を考えるのなら、ツァイスやスワロフスキーといった海外ブランドもおすすめです。
倍率
双眼鏡の倍率が高ければ、対象物を大きく見られますが、その分視界が暗くなります。狩猟用に使うのであれば、8倍以下のものがよいでしょう。10倍以上の双眼鏡になると視野が狭くなり、手ぶれが出やすくなるうえ、対象物がある程度大きくないと暗くなってしまいます。
倍率が低ければ明るく映るし、倍率が高ければ暗くなるのが基本です。4倍、6倍、8倍の双眼鏡は、使いやすさで選んでよいでしょう。8倍は遠くまで見えますが視野が狭い、4倍は遠くまでは見通せませんが視野が広くなり、肉眼で見えにくいものを見る場合に役立ちます。
レンズ径
対物のレンズ径は、大きくなるほど明るく視野も広くなります。しかし、レンズ径が大きくなると、双眼鏡の大きさや重さもアップします。口径が大きいほど視界が広く明るくなり、口径が小さくなれば小型で軽くなると覚えておきましょう。
20口径前後の双眼鏡は、とてもコンパクトで持ち歩きに便利です。25口径前後も小型に分類されます。35口径前後になると中型で、40口径以上は大型の双眼鏡に分けられるでしょう。また、比較的手頃な価格の双眼鏡を選ぶ場合でも、口径を大きくすることで視野を明るくできるため狩猟にも対応できます。
プリズム方式
双眼鏡のプリズム方式も確認しましょう。プリズムとは、三角の反射鏡のことです。対物レンズを通じて入ってきた光は像が逆さまになっているため、何度か鏡に当てて正しい方向に直すのがプリズムです。
双眼鏡のプリズム方式は大きく分けてポロプリズムとダハプリズムの2つがあります。ポロプリズムの双眼鏡は、接眼レンズと対物レンズの軸がずれていているため、覗いたときに横に大きく映りますが、一方のダハプリズムは軸が一緒で真っ直ぐに伸びています。
ポロプリズムは、シンプルな反射を利用しており、ダハプリズムは複雑なプリズムを使うことで双眼鏡をコンパクトにしている点が特徴です。ポロプリズムの方が反射の回数も少なく全反射させるため、光を損失することがほとんどありません。
ダハプリズムは、反射回数が多いため光の損失が起こります。ポロプリズムの双眼鏡の方がコスパが良く、見え方はダハプリズムの双眼鏡に匹敵します。ダハプリズムはコンパクトな大きさですが、同等のスペックで比較するとポロプリズムの方が軽量です。
ひとみ径
狩猟用の双眼鏡選びで重視したいのが、ひとみ径です。ひとみ径とは、双眼鏡に映る像が目に入る大きさのことです。像の明るさを示す数値で、倍率の違う双眼鏡同士の比較にも役立ちます。人間の瞳孔の大きさは、明るさによって変化します。日中なら約2〜~3mm、暗いところでは最大7mmほどです。
日中の狩猟であれば、ひとみ径は2mmの双眼鏡でも問題ありませんが、夕方や夜の時間帯や悪天候で使う場合は暗く感じるでしょう。そのため、使用する環境に合った双眼鏡を選ばなければいけません。ひとみ径が大きければ、どんな状況でも使えるといえますが、必要以上に明るいと双眼鏡を長時間覗いた場合に疲労につながることもあるでしょう。
ひとみ径と狩猟の環境との関係は以下を参考にしてください。
2mm台:晴天や直射日光の当たる場所
3mm台:晴天〜くもり、明るい木陰くらい
4mm台:山林や低光量の環境
5mm台:低光量の深い森や暗がり、ため池のハングオーバー
双眼鏡の明るさはひとみ径で判断できますが、光の損失はプリズムやレンズなども影響するため、ひとみ径が同じでも高級な双眼鏡は明るく見えます。
アイレリーフ
アイレリーフは、双眼鏡の接眼レンズから瞳までの距離のことです。アイレリーフが短いと視界を広く取りやすくなります。また、アイレリーフが長いとさっと覗いたときに焦点が合いやすくなります。
双眼鏡は全体的にスコープよりアイレリーフが短い傾向にあるため、狩猟する際にメガネを使用する方は、ロングアイレリーフモデルの方が使いやすいでしょう。
実視界
双眼鏡を覗いたときに見える部分のことです。広い方が良いですが、狩猟で双眼鏡を使う場合は、獲物らしき目星を付けてから覗くことが多いため、それほど影響を感じないことがほとんどです。
実視界よりも口径による影響が大きいため、選ぶときは口径の方を重視した方がよいでしょう。
重さ
狩猟に使う双眼鏡の場合、重さも重要なポイントになります。猟のスタイルによって、どの程度の重さの双眼鏡なら持てるかを考えましょう。車の流し猟であれば、大きくて重い双眼鏡でも問題ありません。しかし、山林を歩いて狩猟する場合は、なるべくコンパクトで軽いものの方が楽です。
狩猟に必要なほかの荷物も考えて、双眼鏡の重さと大きさを選びましょう。
価格
双眼鏡の価格は、口径によって差があります。そのため、口径の異なる双眼鏡を価格だけで比較するのはやめましょう。小型のダハプリズムの双眼鏡なら1〜2万円、中型機で2〜3万円、大型機は3万円程度が同レベルと考えてください。
狩猟に必要な倍率と口径を決めてから、価格ごとに機種を検討してみるとよいでしょう。
双眼鏡の選び方
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双眼鏡の選び方を紹介します。どの猟を行うのか、そのシーンを想定して使いやすい双眼鏡を選んでみてください。
まずは、狩猟の方法によって使いやすい双眼鏡の大きさや重さを考えましょう。首にかけて持ち歩くなら、中型機よりも小さいものがおすすめです。流し猟なら大型の双眼鏡でもよいでしょう。
次に、狩猟する場所によってひとみ径を決めます。明るい場所での狩猟ならひとみ径3mm以上、暗い場所や物陰などにも行くのであればひとみ径4mm以上が目安です。
狩猟用の双眼鏡は、獲物探しと識別に使うことがほとんどですが、識別をあまりしないのであれば、明るさを控えめにして超小型の双眼鏡にして機動性を上げるのもよいでしょう。
狩猟方法が決まっていない場合は、中型機種で8倍の30口径台がおすすめです。狩猟や双眼鏡の持ち歩きに慣れていない方でも、疲れずに使える重さです。可能であれば、お店で実際の双眼鏡を持ってみるとよいでしょう。
狩猟用の双眼鏡は使う場所や目的に合わせて選ぼう
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双眼鏡は狩猟に必要なアイテムの1つです。獲物を探したり識別したりする際に使いますが、双眼鏡は倍率や口径などによってさまざまなものがあるため、どれを選べばいいのかわからないという方も少なくありません。
価格だけで選んでしまうと、暗すぎたり視野が狭くなりすぎたりしてしまい使いづらいこともあります。
狩猟の方法に合わせて、倍率や口径、ひとみ径などが適したものを選びましょう。大きさや重さも使いやすさにつながるので、使うシーンを想定し、ほかに持ち歩くアイテムも考えてちょうどいいサイズを見つけてください。