鳥獣被害対策マガジン
捕獲獣(イノシシ・シカ等)の止めさしについて
目次 1止めさしの前に 2止めさしの種類 1銃器を使用する方法 2ナイフや槍といった刃物を使用する方法 3電流で感電させる方法 4炭酸ガスなどを用いた化学的な処理 3まとめ ※注意:この記事は、狩猟や鳥獣被害に理解のある方のみ閲覧ください。いわゆる動物愛護観点からのコメントには応じかねます。 近年、鳥獣被害対策として箱罠やくくり罠、囲い罠等を用いて、イノシシやシカ等を捕獲する取り組みが広がってきています。 それに伴い、捕獲するまでのノウハウや、食肉活用についての事例紹介は多く目にするようになりましたが、実際に獣が罠にかかった場合、どのような処理が必要となるかについては、あまり議論が多くないように感じます。 野生獣は想像以上に身体能力が高く(特にイノシシ)、捕獲した獣は生死がかかっているので、予想外の動きを取ることもあります。例えば、くくり罠において足をくくっているワイヤーが獣が動いた拍子に外れ、逆襲されたことによる死亡事故も発生しています。 この記事では、捕獲した獣にできる限り苦痛を与えず、安全かつ速やかに「止めさし」を行う技術について、説明いたします。 止めさしの前に まずは、獣が罠にかかっている現場の状況をしっかりと確認することが重要です。イノシシの捕獲では、わなの見回りや捕獲個体の止めさしの際に、最も事故が発生する確率が高くなります。 いきなり近づいて確認せずに、まずは遠くから双眼鏡などを用いてチェックするのがベストです。遠くからゆっくりと近づき、傾斜のある場合は高いほうから徐々に近づくことが基本です。 くくり罠の場合は、以下がチェックポイントになります。 ▶ワイヤーが獣のどの部位を括っているか ▶括った箇所が抜けかかっていたり、切れかけたりしていないか ▶括った部分の体の部位が、ちぎれかけていないか ▶支点にしている部分からワイヤーが抜けたりしないか ▶獣の可動範囲はどの程度か 箱罠の場合は、以下がチェックポイントになります。 ▶箱罠に破損はないか ▶獣が逃げ出す恐れはないか(扉やストッパーの確認) 離れた場所から、手をたたいたり、大きな声を出して、捕獲された獣の反応を観察するとともに、捕獲された個体の近くに他の個体が潜んでいないかも確認しましょう。 止めさしの種類 止め刺しの種類としては、大きく分けて4つあります。 >1....
捕獲獣(イノシシ・シカ等)の止めさしについて
目次 1止めさしの前に 2止めさしの種類 1銃器を使用する方法 2ナイフや槍といった刃物を使用する方法 3電流で感電させる方法 4炭酸ガスなどを用いた化学的な処理 3まとめ ※注意:この記事は、狩猟や鳥獣被害に理解のある方のみ閲覧ください。いわゆる動物愛護観点からのコメントには応じかねます。 近年、鳥獣被害対策として箱罠やくくり罠、囲い罠等を用いて、イノシシやシカ等を捕獲する取り組みが広がってきています。 それに伴い、捕獲するまでのノウハウや、食肉活用についての事例紹介は多く目にするようになりましたが、実際に獣が罠にかかった場合、どのような処理が必要となるかについては、あまり議論が多くないように感じます。 野生獣は想像以上に身体能力が高く(特にイノシシ)、捕獲した獣は生死がかかっているので、予想外の動きを取ることもあります。例えば、くくり罠において足をくくっているワイヤーが獣が動いた拍子に外れ、逆襲されたことによる死亡事故も発生しています。 この記事では、捕獲した獣にできる限り苦痛を与えず、安全かつ速やかに「止めさし」を行う技術について、説明いたします。 止めさしの前に まずは、獣が罠にかかっている現場の状況をしっかりと確認することが重要です。イノシシの捕獲では、わなの見回りや捕獲個体の止めさしの際に、最も事故が発生する確率が高くなります。 いきなり近づいて確認せずに、まずは遠くから双眼鏡などを用いてチェックするのがベストです。遠くからゆっくりと近づき、傾斜のある場合は高いほうから徐々に近づくことが基本です。 くくり罠の場合は、以下がチェックポイントになります。 ▶ワイヤーが獣のどの部位を括っているか ▶括った箇所が抜けかかっていたり、切れかけたりしていないか ▶括った部分の体の部位が、ちぎれかけていないか ▶支点にしている部分からワイヤーが抜けたりしないか ▶獣の可動範囲はどの程度か 箱罠の場合は、以下がチェックポイントになります。 ▶箱罠に破損はないか ▶獣が逃げ出す恐れはないか(扉やストッパーの確認) 離れた場所から、手をたたいたり、大きな声を出して、捕獲された獣の反応を観察するとともに、捕獲された個体の近くに他の個体が潜んでいないかも確認しましょう。 止めさしの種類 止め刺しの種類としては、大きく分けて4つあります。 >1....
シカの行動や習性を知ろう
目次 1シカの行動と繁殖力 2シカの食性とそれによる被害 3被害を減らすには早期の対策を 全国の野生鳥獣による被害状況のうち、最も被害が深刻なのがシカによるものです。農林水産省の発表した令和元年の農作物被害金額は約53億円に達しており、平成29年度以降の3年間でほとんど被害が減っていない状況です(参考)。なぜシカの被害が減らないのか、その理由は彼らの行動や習性に起因します。 シカの行動と繁殖力 当店イノホイが所在する宮崎県には、えびの高原という鹿の群生地があります。ノリウツギ、イヌツゲ、ヤマウルシや、天然記念物のノカイドウなど自然植生からなる場所が多くあり、これらを好むシカにとって好条件の立地です。 この場所でシカを観察していると、シカは多くの場合、オスとメスは別々に行動していることが分かります。オスには角があってメスは角が無いので見た目で容易に判別できますが、オスの角は毎年春に生え変わるので、角が伸びるまでは体格の違い(オスはガッチリした体格、メスはやや細め)で見分けたりもします。 このうち、メスは群れを作って生活し、あまり行動範囲を広げず定住性が高い傾向があります。一方で、オスは生後1~2年は母親の群れの中で生活しますが、その後は母親のもとを離れます。若いオスが群れを形成する場合もありますが、多くは単独で行動するようになります。 オスは季節によって広く移動しますが、繁殖期(9月末~11月ごろ)を迎えるとメスを求めて群れ近くに出没するようになります。この時期のオスは縄張りを作るようになり、繁殖期特有の鳴き声をよく発したり、オス同士で角を突き合わせて争う光景が見られるようになります。 この争いに勝ったオスは縄張り内のメスの群れと合流して一夫多妻制の集団を形成します。そして繁殖期が終わると、再びオスはメスから離れていきます。 このような行動の結果、メスの群れは高い妊娠率となります。妊娠率は70%以上で、10才を超えても妊娠率が低下しないともいわれます。妊娠期間は約220日で、1回の出産で1頭の子どもを産みます。 雑に計算したとしても、10頭のメスのうち7頭が毎年妊娠するような状態なので、栄養条件が良ければどんどん増えていきます。森林野生動物研究会の研究によると自然増加率は年平均16~20%、3~4年で倍増するという非常に高い繁殖力です。 シカの食性とそれによる被害 シカは一般的に草食性です。地域や植生環境によって食べる植物の種類は変わってきますが、ほとんどの種類の植物を食べます。特に新芽ややわらかい葉っぱを好物としますが、そういった好物の植物が無くなると、それまで食べなかった種類の植物も食べるようになり、さらに植物が少なくなると落ち葉も食べるようになります。 そのため、人間が管理する農作物や雑木林においても被害を受けやすくなります。基本的に人間が植える農作物は栄養価が高いため、シカのターゲットにされやすくなります。田植え直後の苗の引き抜きや食害、収穫期頃の穂先食害、大豆など豆類の草が食べられたりします。 他にも、林業用の苗木が食べられてしまったり、樹齢の高い木においては樹皮や形成層が食べられたり、オスの角こすりによって樹皮が剥がされたりします。 シカは牛と同じで4つに分かれた胃袋(反芻胃)を持つため消化能力が高く、食べ物の質が悪くても十分な栄養を得ることができます。そのため、積雪がない地域においては滅多なことがなければ栄養状態は悪くなりません。上記の繁殖力ともあいまって、放っておくとどんどん被害が増えてしまいます。 被害を減らすには早期の対策を シカ被害は生息密度が高い地域で起こりやすく、また強い繁殖力によって上がった生息密度は容易に下げることができません。シカが多く生息する地域においては、とにかくシカを増やさないことを念頭に、捕獲を積極的に行うこと、柵の設置によって餌となる場所に近づかせないことが基本となります。 また、生息密度が低く被害が散発的であったとしても、個体数が急増する可能性があるため、対策を放棄・放置しないようにすることが重要です。シカ対策 商品一覧はこちら シカ対策 おすすめ商品 激安でも獲れます。くくり罠用踏み板イノシシホイホイ 完成品 年間数千個の出荷実績がある、大人気のくくり罠です。設置に必要なものが全てそろっており、届いてすぐに仕掛けることができます。 ファーレ旭式 箱罠ビッグサイズ【片扉】 異形鉄筋を使用。3分筋:約9mmを使用して格子網を全箇所溶接しております。さらに要所を4分鉄筋、5分鉄筋で補強、非常に頑強な構造です。...
シカの行動や習性を知ろう
目次 1シカの行動と繁殖力 2シカの食性とそれによる被害 3被害を減らすには早期の対策を 全国の野生鳥獣による被害状況のうち、最も被害が深刻なのがシカによるものです。農林水産省の発表した令和元年の農作物被害金額は約53億円に達しており、平成29年度以降の3年間でほとんど被害が減っていない状況です(参考)。なぜシカの被害が減らないのか、その理由は彼らの行動や習性に起因します。 シカの行動と繁殖力 当店イノホイが所在する宮崎県には、えびの高原という鹿の群生地があります。ノリウツギ、イヌツゲ、ヤマウルシや、天然記念物のノカイドウなど自然植生からなる場所が多くあり、これらを好むシカにとって好条件の立地です。 この場所でシカを観察していると、シカは多くの場合、オスとメスは別々に行動していることが分かります。オスには角があってメスは角が無いので見た目で容易に判別できますが、オスの角は毎年春に生え変わるので、角が伸びるまでは体格の違い(オスはガッチリした体格、メスはやや細め)で見分けたりもします。 このうち、メスは群れを作って生活し、あまり行動範囲を広げず定住性が高い傾向があります。一方で、オスは生後1~2年は母親の群れの中で生活しますが、その後は母親のもとを離れます。若いオスが群れを形成する場合もありますが、多くは単独で行動するようになります。 オスは季節によって広く移動しますが、繁殖期(9月末~11月ごろ)を迎えるとメスを求めて群れ近くに出没するようになります。この時期のオスは縄張りを作るようになり、繁殖期特有の鳴き声をよく発したり、オス同士で角を突き合わせて争う光景が見られるようになります。 この争いに勝ったオスは縄張り内のメスの群れと合流して一夫多妻制の集団を形成します。そして繁殖期が終わると、再びオスはメスから離れていきます。 このような行動の結果、メスの群れは高い妊娠率となります。妊娠率は70%以上で、10才を超えても妊娠率が低下しないともいわれます。妊娠期間は約220日で、1回の出産で1頭の子どもを産みます。 雑に計算したとしても、10頭のメスのうち7頭が毎年妊娠するような状態なので、栄養条件が良ければどんどん増えていきます。森林野生動物研究会の研究によると自然増加率は年平均16~20%、3~4年で倍増するという非常に高い繁殖力です。 シカの食性とそれによる被害 シカは一般的に草食性です。地域や植生環境によって食べる植物の種類は変わってきますが、ほとんどの種類の植物を食べます。特に新芽ややわらかい葉っぱを好物としますが、そういった好物の植物が無くなると、それまで食べなかった種類の植物も食べるようになり、さらに植物が少なくなると落ち葉も食べるようになります。 そのため、人間が管理する農作物や雑木林においても被害を受けやすくなります。基本的に人間が植える農作物は栄養価が高いため、シカのターゲットにされやすくなります。田植え直後の苗の引き抜きや食害、収穫期頃の穂先食害、大豆など豆類の草が食べられたりします。 他にも、林業用の苗木が食べられてしまったり、樹齢の高い木においては樹皮や形成層が食べられたり、オスの角こすりによって樹皮が剥がされたりします。 シカは牛と同じで4つに分かれた胃袋(反芻胃)を持つため消化能力が高く、食べ物の質が悪くても十分な栄養を得ることができます。そのため、積雪がない地域においては滅多なことがなければ栄養状態は悪くなりません。上記の繁殖力ともあいまって、放っておくとどんどん被害が増えてしまいます。 被害を減らすには早期の対策を シカ被害は生息密度が高い地域で起こりやすく、また強い繁殖力によって上がった生息密度は容易に下げることができません。シカが多く生息する地域においては、とにかくシカを増やさないことを念頭に、捕獲を積極的に行うこと、柵の設置によって餌となる場所に近づかせないことが基本となります。 また、生息密度が低く被害が散発的であったとしても、個体数が急増する可能性があるため、対策を放棄・放置しないようにすることが重要です。シカ対策 商品一覧はこちら シカ対策 おすすめ商品 激安でも獲れます。くくり罠用踏み板イノシシホイホイ 完成品 年間数千個の出荷実績がある、大人気のくくり罠です。設置に必要なものが全てそろっており、届いてすぐに仕掛けることができます。 ファーレ旭式 箱罠ビッグサイズ【片扉】 異形鉄筋を使用。3分筋:約9mmを使用して格子網を全箇所溶接しております。さらに要所を4分鉄筋、5分鉄筋で補強、非常に頑強な構造です。...
電気柵に必要な部品って?
田畑に害獣を侵入させないために使われる電気柵ですが、今まで取り扱ったことがない人にとっては、どんな部品が必要なのか分かりにくいかと思います。今回は、電気柵を導入するにあたって必要な部品について説明します。 ★おすすめ電気柵 イノホイおすすめの電気柵はこちら。 電気柵の設置に必要な部品 電気柵の一般的な構造や仕組みは、以下の図の通りとなります。田畑の周りに支柱を立てて、柵線(電線)を張っておき、本体(図中赤色の器具。本機とも呼びます)に柵線が接続された状態になっています。 本体(本機) 電気柵に流れる電気ショックの電源となる装置です。各社から様々な商品が販売されています。選ぶポイントとなるのは、「有効距離」です。これは、どの程度の柵線の長さまで対応できるかという本体能力の目安となります。 実際に張る柵線の距離が、有効距離の範囲ギリギリだと、十分な電気ショックを与えられない可能性が出てきます。理由は、わずかな漏電でも電気柵全体に影響を与えやすくなってしまうからです。※電気柵において漏電はしょっちゅう起こる現象です。例えば、草木が柵線に触れている場合は、漏電が生じてしまって電圧は大きく低下します。 柵線の距離は、電気柵を設置する敷地の広さに応じて変わってきます。式であらわすと、周囲長さ×段数が柵線の距離という計算になります。 例として、周囲1000mの畑で電気柵を設置する例で考えてみましょう。 まず、イノシシ対策を例に考えます。イノシシ対策における柵線張り方として一般的なのは、2段張りです。そのため柵線の総距離は1000m×2段=2000mということになります。 次に、シカ対策を例として考えてみます。シカ対策の場合、下段はシカがくぐり抜けないように、また上段はシカが飛び越えられないような高さに設置する必要があります。そのため、30cm程度の間隔で4段張りにしたりします。この場合の柵線の総距離は1000m×4段=4000mということになります。 仮に本体の規格として有効距離が3000mとされている場合は、上記イノシシ対策の張り方であれば対応できますが、上記シカ対策だと 有効距離が実際の柵線の距離よりも短くなってしまいます。 こういった場合は、よりハイパワーな本体を選ぶか、囲うエリアを複数に分けて、本体をそれぞれ設置すると良いでしょう。 本体への電源供給について 電気柵の本体を稼働させるには、電源が必要になります。乾電池やバッテリーで稼働するタイプ、家庭用電源とACアダプタで接続するタイプ、ソーラーパネルで発電した電気をバッテリーに蓄えて稼働するタイプなど、様々なものがあります。 こちらの記事もどうぞ。 電気柵の効果と電源の種類、ソーラー電源のメリットを解説 ほとんどの場合、本体の仕様としてどれだけの時間稼働させられるか、目安が記載されています。例えば、こちらの機種の場合、乾電池駆動にて約30日(1日12時間稼働設定)となります。※使用状況により変動します。 一般的に、有効距離が長いほど出力が高く電力消費が大きくなりますので、稼働時間は短くなります。もちろん、一日何時間稼働させるかによっても、稼働時間は変わってきます。 電池消耗が高ければ、その分電池交換の回数が増えたり、電池消耗によって電圧がかからない時間が生じるリスクがでてきますので、事前にチェックしておくと良いでしょう。 本体を固定するための杭 ほとんどの機種の場合、漏電や転倒・水没などを避けるために、本体を地面から浮かせた状態で本体を設置することが推奨させれています。 そのためには、ホームセンター等で販売されている木杭等を別途で用意する必要があります。 ※支柱としても機能するアース棒が付属しているタイプもあります。 出力高圧線 本体と柵線は直接つなげるのではなく、あいだに出力高圧線を接続します。 アース 本体と地面でアースを取るためのアース線です。アース棒は製品によって形状が異なります。...
電気柵に必要な部品って?
田畑に害獣を侵入させないために使われる電気柵ですが、今まで取り扱ったことがない人にとっては、どんな部品が必要なのか分かりにくいかと思います。今回は、電気柵を導入するにあたって必要な部品について説明します。 ★おすすめ電気柵 イノホイおすすめの電気柵はこちら。 電気柵の設置に必要な部品 電気柵の一般的な構造や仕組みは、以下の図の通りとなります。田畑の周りに支柱を立てて、柵線(電線)を張っておき、本体(図中赤色の器具。本機とも呼びます)に柵線が接続された状態になっています。 本体(本機) 電気柵に流れる電気ショックの電源となる装置です。各社から様々な商品が販売されています。選ぶポイントとなるのは、「有効距離」です。これは、どの程度の柵線の長さまで対応できるかという本体能力の目安となります。 実際に張る柵線の距離が、有効距離の範囲ギリギリだと、十分な電気ショックを与えられない可能性が出てきます。理由は、わずかな漏電でも電気柵全体に影響を与えやすくなってしまうからです。※電気柵において漏電はしょっちゅう起こる現象です。例えば、草木が柵線に触れている場合は、漏電が生じてしまって電圧は大きく低下します。 柵線の距離は、電気柵を設置する敷地の広さに応じて変わってきます。式であらわすと、周囲長さ×段数が柵線の距離という計算になります。 例として、周囲1000mの畑で電気柵を設置する例で考えてみましょう。 まず、イノシシ対策を例に考えます。イノシシ対策における柵線張り方として一般的なのは、2段張りです。そのため柵線の総距離は1000m×2段=2000mということになります。 次に、シカ対策を例として考えてみます。シカ対策の場合、下段はシカがくぐり抜けないように、また上段はシカが飛び越えられないような高さに設置する必要があります。そのため、30cm程度の間隔で4段張りにしたりします。この場合の柵線の総距離は1000m×4段=4000mということになります。 仮に本体の規格として有効距離が3000mとされている場合は、上記イノシシ対策の張り方であれば対応できますが、上記シカ対策だと 有効距離が実際の柵線の距離よりも短くなってしまいます。 こういった場合は、よりハイパワーな本体を選ぶか、囲うエリアを複数に分けて、本体をそれぞれ設置すると良いでしょう。 本体への電源供給について 電気柵の本体を稼働させるには、電源が必要になります。乾電池やバッテリーで稼働するタイプ、家庭用電源とACアダプタで接続するタイプ、ソーラーパネルで発電した電気をバッテリーに蓄えて稼働するタイプなど、様々なものがあります。 こちらの記事もどうぞ。 電気柵の効果と電源の種類、ソーラー電源のメリットを解説 ほとんどの場合、本体の仕様としてどれだけの時間稼働させられるか、目安が記載されています。例えば、こちらの機種の場合、乾電池駆動にて約30日(1日12時間稼働設定)となります。※使用状況により変動します。 一般的に、有効距離が長いほど出力が高く電力消費が大きくなりますので、稼働時間は短くなります。もちろん、一日何時間稼働させるかによっても、稼働時間は変わってきます。 電池消耗が高ければ、その分電池交換の回数が増えたり、電池消耗によって電圧がかからない時間が生じるリスクがでてきますので、事前にチェックしておくと良いでしょう。 本体を固定するための杭 ほとんどの機種の場合、漏電や転倒・水没などを避けるために、本体を地面から浮かせた状態で本体を設置することが推奨させれています。 そのためには、ホームセンター等で販売されている木杭等を別途で用意する必要があります。 ※支柱としても機能するアース棒が付属しているタイプもあります。 出力高圧線 本体と柵線は直接つなげるのではなく、あいだに出力高圧線を接続します。 アース 本体と地面でアースを取るためのアース線です。アース棒は製品によって形状が異なります。...
電気柵の効果と電源の種類、ソーラー電源のメリットを解説
獣の田畑への侵入対策として電気柵は有効な手段の1つですが、電源の供給方法や特徴は商品によって異なります。 本記事では、電気柵の電源の種類やソーラータイプのメリットについてご紹介します。あわせて、電気柵を設置する際のポイントについても解説しています。 電気柵とは?3つの電源の種類 電気柵は、侵入を防止したい敷地の周りに電気を通した柵線を張っておき、獣の侵入を防ぐものです。獣が柵線に触れると、獣の体と電気柵のあいだに電気の経路が形成され、電気ショックが生じる仕組みになっています。電気ショックによって獣に恐怖心を植え付け、農作物に近付かせないようにすることが狙いです。 電気柵には電気を流すための電源が欠かせませんが、電源の種類は大きく3つ挙げられます。 1.乾電池 電源として多く使われているのが、乾電池です。 乾電池は誰でも手軽に入手することができ、導入が容易である点がメリットといえます。田畑の周辺には電源が確保されていることのほうが珍しいですが、乾電池タイプであれば場所を選びません。 デメリットとしては、残量をこまめにチェックして電池切れを起こさないようにする手間がかかることです。多くの機種では、電池の残量が少なくなると資格や音でアラートが出るようになっていますが、日々の作業に追われてついつい後回しにしてしまうことも。 24時間電気柵を稼働させる場合は電池交換の頻度も高くなるため、事前にメーカー公表の稼働時間をチェックしておき、コスト面を試算しておくとよいでしょう。 2.外部電源 2つ目は外部電源です。 自動車用のバッテリー等、電気柵本体の規格に適合する市販のバッテリーを接続したり、家庭用電源を接続するためのACアダプターを接続したりします。 電池の場合は設置場所を選びませんが、外部から電源を引っ張ってくるためには場所の制約が出てしまいます。田畑の周辺には電源が無いことが多いので、そもそも電源を確保できないということがあります。 購入前に、設置予定の場所に電源が届くか予め確認しておく必要があります。また、各メーカーが定める規格に適合しない電源を使うのは、重篤な事故が起こる可能性があるため避けましょう。 3.ソーラー 3つ目は、ソーラーパネルによって発電した電気をバッテリーに溜めて使うタイプです。仮にソーラーパネル無しのタイプをお使いの場合も、後付けできるものがほとんどです。 ソーラーパネルの出力(W=ワット)とバッテリー容量の兼ね合いによって稼働時間が変わってきます。それぞれのメーカーで推奨バッテリーが販売されているので、それを選んだほうが無難です。 コンパクトなタイプだと、5Wのソーラーパネルが一般的です。発電能力が低いため、夜間のみの電気柵を稼働させる場合に適しています。 一方で、昼夜連続の運転や、日照不足の季節、梅雨や降雪が多い時期に稼働させる場合は、電力不足に陥る心配があるため、5Wよりも大きいタイプを選ぶとよいでしょう。 12W程のソーラーパネルであれば比較的発電量が大きくなるので、昼夜連続の仕様でも問題ありません(※設置条件によっても異なります)。 メーカー推奨以外のバッテリーを使う場合は、ソーラーパネルの出力とバッテリーの容量の相性が悪い場合もあるので注意が必要です。 ソーラーパネルが選ばれる理由 電気柵の電源の中でもソーラーパネルが選ばれる理由はいくつか存在します。 まず、電池交換のコストが減る点は大きなメリットです。ソーラーパネル付きタイプのほうが本体価格が高いため、初期導入コストは電池タイプよりも大きくなってしまいますが、長い目でみるとソーラータイプのほうがお得になってきます。 また、電池交換忘れによって不通電となるリスクも減らすことができます。電気柵は動物に物理的なショックを与えるのではなく、心理的な恐怖を植え付け農作物に近付かせないことがポイントになると解説しました。しかし、電気柵に電気が流れていない状態で触れてしまうと、動物が慣れてしまい恐怖感を抱くなくなってしまいます。 電池交換が必要なタイプでは、電池切れにより電気が流れない空白の時間が発生してしまいますが、ソーラーパネルならその心配がありません。 また、ソーラーからの充電が十分でない場合も、電池やバッテリーと併用できるタイプなら自動で切り替えが行えるため、電気が流れない時間をゼロにすることができます。 イノホイで販売している電気柵はソーラー・乾電池・バッテリーの3種類にすべて対応しており、自動で電圧がもっとも高い電源に切り換えます。 ...
電気柵の効果と電源の種類、ソーラー電源のメリットを解説
獣の田畑への侵入対策として電気柵は有効な手段の1つですが、電源の供給方法や特徴は商品によって異なります。 本記事では、電気柵の電源の種類やソーラータイプのメリットについてご紹介します。あわせて、電気柵を設置する際のポイントについても解説しています。 電気柵とは?3つの電源の種類 電気柵は、侵入を防止したい敷地の周りに電気を通した柵線を張っておき、獣の侵入を防ぐものです。獣が柵線に触れると、獣の体と電気柵のあいだに電気の経路が形成され、電気ショックが生じる仕組みになっています。電気ショックによって獣に恐怖心を植え付け、農作物に近付かせないようにすることが狙いです。 電気柵には電気を流すための電源が欠かせませんが、電源の種類は大きく3つ挙げられます。 1.乾電池 電源として多く使われているのが、乾電池です。 乾電池は誰でも手軽に入手することができ、導入が容易である点がメリットといえます。田畑の周辺には電源が確保されていることのほうが珍しいですが、乾電池タイプであれば場所を選びません。 デメリットとしては、残量をこまめにチェックして電池切れを起こさないようにする手間がかかることです。多くの機種では、電池の残量が少なくなると資格や音でアラートが出るようになっていますが、日々の作業に追われてついつい後回しにしてしまうことも。 24時間電気柵を稼働させる場合は電池交換の頻度も高くなるため、事前にメーカー公表の稼働時間をチェックしておき、コスト面を試算しておくとよいでしょう。 2.外部電源 2つ目は外部電源です。 自動車用のバッテリー等、電気柵本体の規格に適合する市販のバッテリーを接続したり、家庭用電源を接続するためのACアダプターを接続したりします。 電池の場合は設置場所を選びませんが、外部から電源を引っ張ってくるためには場所の制約が出てしまいます。田畑の周辺には電源が無いことが多いので、そもそも電源を確保できないということがあります。 購入前に、設置予定の場所に電源が届くか予め確認しておく必要があります。また、各メーカーが定める規格に適合しない電源を使うのは、重篤な事故が起こる可能性があるため避けましょう。 3.ソーラー 3つ目は、ソーラーパネルによって発電した電気をバッテリーに溜めて使うタイプです。仮にソーラーパネル無しのタイプをお使いの場合も、後付けできるものがほとんどです。 ソーラーパネルの出力(W=ワット)とバッテリー容量の兼ね合いによって稼働時間が変わってきます。それぞれのメーカーで推奨バッテリーが販売されているので、それを選んだほうが無難です。 コンパクトなタイプだと、5Wのソーラーパネルが一般的です。発電能力が低いため、夜間のみの電気柵を稼働させる場合に適しています。 一方で、昼夜連続の運転や、日照不足の季節、梅雨や降雪が多い時期に稼働させる場合は、電力不足に陥る心配があるため、5Wよりも大きいタイプを選ぶとよいでしょう。 12W程のソーラーパネルであれば比較的発電量が大きくなるので、昼夜連続の仕様でも問題ありません(※設置条件によっても異なります)。 メーカー推奨以外のバッテリーを使う場合は、ソーラーパネルの出力とバッテリーの容量の相性が悪い場合もあるので注意が必要です。 ソーラーパネルが選ばれる理由 電気柵の電源の中でもソーラーパネルが選ばれる理由はいくつか存在します。 まず、電池交換のコストが減る点は大きなメリットです。ソーラーパネル付きタイプのほうが本体価格が高いため、初期導入コストは電池タイプよりも大きくなってしまいますが、長い目でみるとソーラータイプのほうがお得になってきます。 また、電池交換忘れによって不通電となるリスクも減らすことができます。電気柵は動物に物理的なショックを与えるのではなく、心理的な恐怖を植え付け農作物に近付かせないことがポイントになると解説しました。しかし、電気柵に電気が流れていない状態で触れてしまうと、動物が慣れてしまい恐怖感を抱くなくなってしまいます。 電池交換が必要なタイプでは、電池切れにより電気が流れない空白の時間が発生してしまいますが、ソーラーパネルならその心配がありません。 また、ソーラーからの充電が十分でない場合も、電池やバッテリーと併用できるタイプなら自動で切り替えが行えるため、電気が流れない時間をゼロにすることができます。 イノホイで販売している電気柵はソーラー・乾電池・バッテリーの3種類にすべて対応しており、自動で電圧がもっとも高い電源に切り換えます。 ...
対馬市におけるイノシシ・シカ対策のご紹介
長崎県対馬市は日本海の西に位置する島です。九州と韓国の間の対馬海峡に浮かび、「国境の島」とも呼ばれています。博多港までは航路で132キロ、韓国までは直線距離で49.5キロ。日本の中で朝鮮半島に最も近いという地理的条件から、大陸と日本の架け橋として数多くの文化・歴史が息づいています。 1.豊かな自然が残る対馬。島の89%が山林で占められている 特産品も多く、海鮮やしいたけ・地酒などをはじめ、縄文後期の原種そば「対州そば」など多くのグルメを味わうことができます。 また近年では、世界的に話題となった時代劇アクションゲーム「Ghost of Tsushima」(ゴーストオブツシマ)の舞台としても注目を集めました。 島の大きさは、南北82キロ・東西18キロ、面積は約708平方キロ。沖縄本島と北方四島を除けば、佐渡島・奄美大島に次ぐ大きさです。 山林が面積の89%を占める自然豊かな島ですが、一方でイノシシやシカによる農作物被害や林業被害、山の下草が無くなるといった生態系被害に悩まされています。 こうした被害を受け対馬市では、イノシシ・シカに対する対策を実施すると共に、イノシシ・シカに負けない地域づくり・人づくりに向けてさまざまな取り組みをしています。 今回は、対馬市役所 農林水産部の日高様に、対馬市におけるイノシシ・シカ対策についてお話を伺いましたので、ご紹介します(以下敬称略)。 対馬市でのイノシシ・シカ被害の現状 2.イノシシやシカが多く生息し農作物・森林被害が発生している -まずは、対馬でのイノシシ・シカ被害の現状からお聞かせください 日高:対馬市では現在、イノシシ・シカの増加により、食い荒らしや踏み倒しによる農作物被害、樹脂剥ぎによる森林被害、さらには下層植生減少や土砂流出によって生態系にも被害が及んでいるのが現状です。近年ではイノシシやシカが市街地付近でも出没しており、接触事故なども発生しています。 3.「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」対馬市公式HPより 対馬は今から約300年前に、イノシシによる農業被害に悩む百姓を助けるため、対馬藩で農業振興に尽力した陶山訥庵(すやま とつあん)が中心となって「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」が実施され、9年間の歳月をかけてイノシシを絶滅させたという歴史があります。 しかし、今から30年ほどまえに島外から持ち込まれたイノシシが野生化し、平成6年に一頭の成獣が捕獲されたことを皮切りに、被害が全島に及ぶようになりました。 シカによる被害も顕著になってきています。対馬に生息するシカは、対馬にのみ生息するキュシュウジカの亜種です。1960年代は、捕獲圧の上昇により個体数が減少したことを受け、県の天然記念物に指定され、一切の捕獲が禁止されました。しかしながら、その後個体数が増加し、農林業被害が発生するようになったため、1981年から有害捕獲が開始され、2006年に天然記念物指定が解除されるに至っています。 イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況 -イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況はいかがでしょうか? 日高:被害の拡大を受けて市では他の有害鳥獣捕獲地域と同様、被害を引き起こすイノシシやシカを捕獲した際には報奨金を交付する制度を導入しました。その効果もあり、2019年度の捕獲実績はシカが約8,236頭、イノシシは約5,367頭という結果になりました。1か月に最大1,000頭捕獲したという実績もあります。 しかし、依然として被害は減少しておらず、捕獲のペースが追いついていなのが現状です。とくに森林被害は深刻です。田畑への農作物被害に対しては防護柵やワイヤーメッシュを用いることで被害額が減少傾向にありますが、森林被害はカバーするエリアも広く、より捕獲圧を上げていかなければなりません。 森林被害の削減に向けての新しい対策 -被害を削減するために、今後を見据え新しい対策へ取り組んでいるとお伺いしました 日高:対馬市では全国に先駆け、主に森林被害を低減させるための補助事業として、シカ捕獲用のくくり罠を助成する事業を開始しました。 4.対馬市で導入するくくり罠 現在、捕獲方法の内訳としては、銃器を使った捕獲が約3割、罠を使った捕獲が約7割になっています。銃器による捕獲はどうしても許可・規制等の問題があることから限定的となり、猟友会の方へのご負担も大きくなってしまいます。そこで、ハードルが低い罠を使用することでも十分な捕獲実績を出せることに注目し、シカ捕獲用のくくり罠1,500個を助成することにしました。 5.猟友会の協力の元、助成用の罠を念入りにチェックする...
対馬市におけるイノシシ・シカ対策のご紹介
長崎県対馬市は日本海の西に位置する島です。九州と韓国の間の対馬海峡に浮かび、「国境の島」とも呼ばれています。博多港までは航路で132キロ、韓国までは直線距離で49.5キロ。日本の中で朝鮮半島に最も近いという地理的条件から、大陸と日本の架け橋として数多くの文化・歴史が息づいています。 1.豊かな自然が残る対馬。島の89%が山林で占められている 特産品も多く、海鮮やしいたけ・地酒などをはじめ、縄文後期の原種そば「対州そば」など多くのグルメを味わうことができます。 また近年では、世界的に話題となった時代劇アクションゲーム「Ghost of Tsushima」(ゴーストオブツシマ)の舞台としても注目を集めました。 島の大きさは、南北82キロ・東西18キロ、面積は約708平方キロ。沖縄本島と北方四島を除けば、佐渡島・奄美大島に次ぐ大きさです。 山林が面積の89%を占める自然豊かな島ですが、一方でイノシシやシカによる農作物被害や林業被害、山の下草が無くなるといった生態系被害に悩まされています。 こうした被害を受け対馬市では、イノシシ・シカに対する対策を実施すると共に、イノシシ・シカに負けない地域づくり・人づくりに向けてさまざまな取り組みをしています。 今回は、対馬市役所 農林水産部の日高様に、対馬市におけるイノシシ・シカ対策についてお話を伺いましたので、ご紹介します(以下敬称略)。 対馬市でのイノシシ・シカ被害の現状 2.イノシシやシカが多く生息し農作物・森林被害が発生している -まずは、対馬でのイノシシ・シカ被害の現状からお聞かせください 日高:対馬市では現在、イノシシ・シカの増加により、食い荒らしや踏み倒しによる農作物被害、樹脂剥ぎによる森林被害、さらには下層植生減少や土砂流出によって生態系にも被害が及んでいるのが現状です。近年ではイノシシやシカが市街地付近でも出没しており、接触事故なども発生しています。 3.「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」対馬市公式HPより 対馬は今から約300年前に、イノシシによる農業被害に悩む百姓を助けるため、対馬藩で農業振興に尽力した陶山訥庵(すやま とつあん)が中心となって「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」が実施され、9年間の歳月をかけてイノシシを絶滅させたという歴史があります。 しかし、今から30年ほどまえに島外から持ち込まれたイノシシが野生化し、平成6年に一頭の成獣が捕獲されたことを皮切りに、被害が全島に及ぶようになりました。 シカによる被害も顕著になってきています。対馬に生息するシカは、対馬にのみ生息するキュシュウジカの亜種です。1960年代は、捕獲圧の上昇により個体数が減少したことを受け、県の天然記念物に指定され、一切の捕獲が禁止されました。しかしながら、その後個体数が増加し、農林業被害が発生するようになったため、1981年から有害捕獲が開始され、2006年に天然記念物指定が解除されるに至っています。 イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況 -イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況はいかがでしょうか? 日高:被害の拡大を受けて市では他の有害鳥獣捕獲地域と同様、被害を引き起こすイノシシやシカを捕獲した際には報奨金を交付する制度を導入しました。その効果もあり、2019年度の捕獲実績はシカが約8,236頭、イノシシは約5,367頭という結果になりました。1か月に最大1,000頭捕獲したという実績もあります。 しかし、依然として被害は減少しておらず、捕獲のペースが追いついていなのが現状です。とくに森林被害は深刻です。田畑への農作物被害に対しては防護柵やワイヤーメッシュを用いることで被害額が減少傾向にありますが、森林被害はカバーするエリアも広く、より捕獲圧を上げていかなければなりません。 森林被害の削減に向けての新しい対策 -被害を削減するために、今後を見据え新しい対策へ取り組んでいるとお伺いしました 日高:対馬市では全国に先駆け、主に森林被害を低減させるための補助事業として、シカ捕獲用のくくり罠を助成する事業を開始しました。 4.対馬市で導入するくくり罠 現在、捕獲方法の内訳としては、銃器を使った捕獲が約3割、罠を使った捕獲が約7割になっています。銃器による捕獲はどうしても許可・規制等の問題があることから限定的となり、猟友会の方へのご負担も大きくなってしまいます。そこで、ハードルが低い罠を使用することでも十分な捕獲実績を出せることに注目し、シカ捕獲用のくくり罠1,500個を助成することにしました。 5.猟友会の協力の元、助成用の罠を念入りにチェックする...
オオカミの尿を使った鳥獣対策について
農林水産省が令和2年11月に発表した「鳥獣被害の現状と対策」によると、平成30年度の野生鳥獣による農作物被害額は158億円に上りました。年度単位の推移では減少傾向にあるものの、依然として被害額は大きく継続的な鳥獣対策が不可欠となっています。 そのため、被害を引き起こす獣に対して様々な対策品が登場していますが、その中で自然環境や景観を壊さず、自然や動物に優しい鳥獣対策として開発されたのが、オオカミの尿を使った忌避対策です。 オオカミの尿(ウルフピー)を使った対策とは? 太古からオオカミは野生動物にとって天敵として恐れられてきました。オオカミの捕食対象となるイノシシやシカなどの動物はとくに警戒心が強く、生き残るために捕食者の気配や匂いを忌避する本能をもっています。 こうした習性を野生動物対策に利用したのが、オオカミの尿(ウルフピー)を使う対策です。オオカミが尿や体の匂いで自分のなわばりを主張する「マーキング」を害獣対策に応用したもので、具体的にはオオカミから採取した尿を専用の容器を使って設置します。 イノシシやシカ等の野生動物は、この匂いを警戒しエリアに近付かなくなるため、田畑においても害獣を忌避させる効果を期待することができます。 またウルフピーは人工の添加物を使わないため、使用するエリアの環境に影響を与えることがありません。 例えば、無農薬栽培に取り組む場合や、農作物に利用する水を汚染するといった心配がないため「自然や動物に優しい」野生動物対策といえます。設置する手間が比較的容易な点もウルフピーの特徴です。 ウルフピーには恐怖を誘起する特徴がある では、どうして野生動物はウルフピーを警戒するのでしょうか。この理由に関しては研究論文が発表されています。 2015年に発表された『恐怖の匂い : オオカミ尿由来の恐怖を誘起するピラジン誘導体カクテルP-mix』(柏柳誠、長田和実、宮園貞治)では、ウルフピーに動物が忌避行動や強い恐怖行動(不動化)を引き起こす物質が含まれていることを突き止めました。 P-mixと呼ばれるこの物質は、動物の嗅覚を刺激し恐怖行動を誘起。動物は周囲にオオカミがいるという危険を本能的に察知し、忌避行動を取ります。これがウルフピーを野生動物が警戒する理由です。 忌避効果がないという研究結果もある 一方で、ウルフピーは忌避効果がないという研究も発表されています。 農研機構が発表した『イノシシ対策に使われているオオカミ尿には忌避効果がない』によると、ウルフピーを吸収させたワラを使ってイノシシの忌避効果を検証したところ、大きな有意性は見られませんでした。 理由としては諸説あり、当初は忌避効果があるものの動物が慣れてしまう、ウルフピーの設置方法が適切でなかった、日本にはオオカミが生息していないため獣がオオカミの縄張りを認知しない、といった可能性も考えられます。とはいえ、獣の行動を見て確認するしか確かめる術がないため、証明が難しいところです。 ただ、実際に導入した結果として、効果が見られたという声も多くあるため、忌避行動や強い恐怖行動を引き起こす物質はたしかに存在するが、野生動物対策において「絶対的な効果を保証するものではない」という点を押さえておくことが重要です。 効果的なウルフピーの活用方法は? ここまで、ウルフピーの効果をご紹介しました。ここからは、より効果的にウルフピーを活用するための方法について見ていきましょう。 物理的な防御と併用して使用する ウルフピーを使用する場合は、防護柵やネット等、物理的な防御と組み合わせて使用するのがおすすめです。 すでにご紹介したように、ウルフピーには忌避行動や強い恐怖行動を引き起こす物質が含まれており、一定の忌避効果がみられます。しかし、動物の慣れや種類によっては効果が認められない(低い)ケースもあることから、物理的な防御を併用して使うことで、より効果を高めることができます。 ウルフピーと物理的な防御を上手に組み合わせることで、対策効果を高めていきましょう。 設置場所の間隔幅や高さを細かく調整する 設置場所を細かく調整することも、ウルフピーの効果を高める方法の1つです。具体的には、被害をくい止めたいエリアを囲むようにしてウルフピーを設置します。また、動物のサイズによって設置する間隔幅を調整してみましょう。 〇イノシシ、シカ、クマなどの大型動物:約5~6mごとに設置 〇サル、ハクビシンなどの小型動物:約3~4mごとに設置 とくに侵入が多い箇所は間隔幅を狭めると効果が高まります。あわせて、ウルフピーを設置する高さも、対象動物の鼻の高さを意識して設置するのがおすすめです。...
オオカミの尿を使った鳥獣対策について
農林水産省が令和2年11月に発表した「鳥獣被害の現状と対策」によると、平成30年度の野生鳥獣による農作物被害額は158億円に上りました。年度単位の推移では減少傾向にあるものの、依然として被害額は大きく継続的な鳥獣対策が不可欠となっています。 そのため、被害を引き起こす獣に対して様々な対策品が登場していますが、その中で自然環境や景観を壊さず、自然や動物に優しい鳥獣対策として開発されたのが、オオカミの尿を使った忌避対策です。 オオカミの尿(ウルフピー)を使った対策とは? 太古からオオカミは野生動物にとって天敵として恐れられてきました。オオカミの捕食対象となるイノシシやシカなどの動物はとくに警戒心が強く、生き残るために捕食者の気配や匂いを忌避する本能をもっています。 こうした習性を野生動物対策に利用したのが、オオカミの尿(ウルフピー)を使う対策です。オオカミが尿や体の匂いで自分のなわばりを主張する「マーキング」を害獣対策に応用したもので、具体的にはオオカミから採取した尿を専用の容器を使って設置します。 イノシシやシカ等の野生動物は、この匂いを警戒しエリアに近付かなくなるため、田畑においても害獣を忌避させる効果を期待することができます。 またウルフピーは人工の添加物を使わないため、使用するエリアの環境に影響を与えることがありません。 例えば、無農薬栽培に取り組む場合や、農作物に利用する水を汚染するといった心配がないため「自然や動物に優しい」野生動物対策といえます。設置する手間が比較的容易な点もウルフピーの特徴です。 ウルフピーには恐怖を誘起する特徴がある では、どうして野生動物はウルフピーを警戒するのでしょうか。この理由に関しては研究論文が発表されています。 2015年に発表された『恐怖の匂い : オオカミ尿由来の恐怖を誘起するピラジン誘導体カクテルP-mix』(柏柳誠、長田和実、宮園貞治)では、ウルフピーに動物が忌避行動や強い恐怖行動(不動化)を引き起こす物質が含まれていることを突き止めました。 P-mixと呼ばれるこの物質は、動物の嗅覚を刺激し恐怖行動を誘起。動物は周囲にオオカミがいるという危険を本能的に察知し、忌避行動を取ります。これがウルフピーを野生動物が警戒する理由です。 忌避効果がないという研究結果もある 一方で、ウルフピーは忌避効果がないという研究も発表されています。 農研機構が発表した『イノシシ対策に使われているオオカミ尿には忌避効果がない』によると、ウルフピーを吸収させたワラを使ってイノシシの忌避効果を検証したところ、大きな有意性は見られませんでした。 理由としては諸説あり、当初は忌避効果があるものの動物が慣れてしまう、ウルフピーの設置方法が適切でなかった、日本にはオオカミが生息していないため獣がオオカミの縄張りを認知しない、といった可能性も考えられます。とはいえ、獣の行動を見て確認するしか確かめる術がないため、証明が難しいところです。 ただ、実際に導入した結果として、効果が見られたという声も多くあるため、忌避行動や強い恐怖行動を引き起こす物質はたしかに存在するが、野生動物対策において「絶対的な効果を保証するものではない」という点を押さえておくことが重要です。 効果的なウルフピーの活用方法は? ここまで、ウルフピーの効果をご紹介しました。ここからは、より効果的にウルフピーを活用するための方法について見ていきましょう。 物理的な防御と併用して使用する ウルフピーを使用する場合は、防護柵やネット等、物理的な防御と組み合わせて使用するのがおすすめです。 すでにご紹介したように、ウルフピーには忌避行動や強い恐怖行動を引き起こす物質が含まれており、一定の忌避効果がみられます。しかし、動物の慣れや種類によっては効果が認められない(低い)ケースもあることから、物理的な防御を併用して使うことで、より効果を高めることができます。 ウルフピーと物理的な防御を上手に組み合わせることで、対策効果を高めていきましょう。 設置場所の間隔幅や高さを細かく調整する 設置場所を細かく調整することも、ウルフピーの効果を高める方法の1つです。具体的には、被害をくい止めたいエリアを囲むようにしてウルフピーを設置します。また、動物のサイズによって設置する間隔幅を調整してみましょう。 〇イノシシ、シカ、クマなどの大型動物:約5~6mごとに設置 〇サル、ハクビシンなどの小型動物:約3~4mごとに設置 とくに侵入が多い箇所は間隔幅を狭めると効果が高まります。あわせて、ウルフピーを設置する高さも、対象動物の鼻の高さを意識して設置するのがおすすめです。...
シカによる被害と、捕獲するための罠について
シカによる農作物被害額は、過去数年にわたって横這い傾向となっているものの、平成30年度では約54億円に達しており、依然として深刻な状況です。イノシシの被害額である47億円を上回っており、最も被害を与える野生鳥獣となっています。 なお、被害があっても申告がないケースもあるため、上記の被害額は実態よりも少ないとも言われています。 また、長期にわたるシカの生息数の増加及び生息域の拡大によって、森林の被害も深刻な状況です。全国の森林の約2割でシカによる被害が確認されており、被害面積は全国で年間約3500ヘクタール(平成30年度)に達しており、野生鳥獣による森林被害の約3/4がシカによるものです。 ここまでシカの被害が広がった要因のひとつとして、シカの高い繁殖力が挙げられます。シカは生育環境がよければ1歳から妊娠し、ほぼ毎年子供を生みます。1度に産むのは1頭ですが、繁殖期には少数のオスが多数のメスを囲う(一夫多妻)であり、オスのまわりの妊娠可能なメスはほとんど妊娠します。 その結果、年率約20%で個体数が増え、4~5年で個体数は倍増するともいわれています。 環境省による推定では、全国で約244万頭のシカが生息(平成29年度末。北海道を除く)、平成26年度以降減少傾向となっていますが、平成初頭が約50万頭だったのに比べると、依然として高い水準で推移しており、捕獲による個体数の削減がまだまだ必要であることが示されています。 環境省はシカの生息頭数を令和5年度までに約150万頭まで減らすことを目標としており、捕獲等による対策の推進が実施されています。 直近の全国シカ被害 多くの地域で、シカによる被害が増えて深刻化しており、各自治体でも対応に苦慮している状況です。 奈良公園周辺 奈良公園(奈良市)は天然記念物のシカ約1300頭が生息しており、年間約1000万人が訪れる人気スポットです。しかしながら、今年は新型コロナウイルスによって観光客が減少し、シカが観光客から鹿せんべいをもらえなくなりました。 その結果、木の実などの餌を求め、シカが市街地や山林部に移動。商店の売り物が食べられたり、周辺の畑や花壇が荒らされるなどの被害が発生しています。 群馬県甘楽町 群馬県は関東地方では最大のりんご生産量を誇ります。甘楽町は豊かな自然を生かして化学農薬を抑えて、「陽光」や「ふじ」などの品種をはじめとした美味しいりんごが生産されています。 しかしながら、近年シカによるリンゴの食害が深刻化しており、今年は収穫が例年の3分の2程度に落ち込みそうな農家や、畑の約半分が被害に遭ったという生産者もいる状況です。 シカによる食害が広がるとともに、町内でのシカの捕獲頭数も右肩上がりとなっており、2015年度は31頭だったのが、本年度は11月4日時点で既に201頭に上っています。 静岡県伊豆半島 かつては、伊豆半島では国有林の中においてシカが保護されており、「鳥獣保護法」により、メスは捕獲禁止、オスは1日1頭と制限がかけられていました。 しかし、伊豆半島や富士山周辺でシカによる食害が深刻化。樹皮剥や下層植生の食害をはじめ、田畑にも被害が出ているため、本年度からメスジカを狙ってわなを集中的に仕掛け、繁殖を抑えるメスジカ重点捕獲を開始しています。 シカを捕獲するには? シカの食害を根本的に減らすには、捕獲による個体数の削減が必要になります。具体的には、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」といった罠を使って捕獲を行います。 以下のページにて、それぞれの罠の特徴や動作について説明していますので、参照くださいませ。※罠の設置には基本的に、「わな猟免許」が必要になります。 各種わな説明&販売ページ 箱罠 シカの捕獲に適した実績多数の箱罠です。出没する場所を選んで設置します。もっと詳しく>> くくり罠 初心者からベテランまで。安くて高捕獲率と好評のくくり罠です。もっと詳しく>> 囲い罠 天面の半分が開いており、条件を満たせば狩猟免許不要で設置できます。もっと詳しく>> よくある質問...
シカによる被害と、捕獲するための罠について
シカによる農作物被害額は、過去数年にわたって横這い傾向となっているものの、平成30年度では約54億円に達しており、依然として深刻な状況です。イノシシの被害額である47億円を上回っており、最も被害を与える野生鳥獣となっています。 なお、被害があっても申告がないケースもあるため、上記の被害額は実態よりも少ないとも言われています。 また、長期にわたるシカの生息数の増加及び生息域の拡大によって、森林の被害も深刻な状況です。全国の森林の約2割でシカによる被害が確認されており、被害面積は全国で年間約3500ヘクタール(平成30年度)に達しており、野生鳥獣による森林被害の約3/4がシカによるものです。 ここまでシカの被害が広がった要因のひとつとして、シカの高い繁殖力が挙げられます。シカは生育環境がよければ1歳から妊娠し、ほぼ毎年子供を生みます。1度に産むのは1頭ですが、繁殖期には少数のオスが多数のメスを囲う(一夫多妻)であり、オスのまわりの妊娠可能なメスはほとんど妊娠します。 その結果、年率約20%で個体数が増え、4~5年で個体数は倍増するともいわれています。 環境省による推定では、全国で約244万頭のシカが生息(平成29年度末。北海道を除く)、平成26年度以降減少傾向となっていますが、平成初頭が約50万頭だったのに比べると、依然として高い水準で推移しており、捕獲による個体数の削減がまだまだ必要であることが示されています。 環境省はシカの生息頭数を令和5年度までに約150万頭まで減らすことを目標としており、捕獲等による対策の推進が実施されています。 直近の全国シカ被害 多くの地域で、シカによる被害が増えて深刻化しており、各自治体でも対応に苦慮している状況です。 奈良公園周辺 奈良公園(奈良市)は天然記念物のシカ約1300頭が生息しており、年間約1000万人が訪れる人気スポットです。しかしながら、今年は新型コロナウイルスによって観光客が減少し、シカが観光客から鹿せんべいをもらえなくなりました。 その結果、木の実などの餌を求め、シカが市街地や山林部に移動。商店の売り物が食べられたり、周辺の畑や花壇が荒らされるなどの被害が発生しています。 群馬県甘楽町 群馬県は関東地方では最大のりんご生産量を誇ります。甘楽町は豊かな自然を生かして化学農薬を抑えて、「陽光」や「ふじ」などの品種をはじめとした美味しいりんごが生産されています。 しかしながら、近年シカによるリンゴの食害が深刻化しており、今年は収穫が例年の3分の2程度に落ち込みそうな農家や、畑の約半分が被害に遭ったという生産者もいる状況です。 シカによる食害が広がるとともに、町内でのシカの捕獲頭数も右肩上がりとなっており、2015年度は31頭だったのが、本年度は11月4日時点で既に201頭に上っています。 静岡県伊豆半島 かつては、伊豆半島では国有林の中においてシカが保護されており、「鳥獣保護法」により、メスは捕獲禁止、オスは1日1頭と制限がかけられていました。 しかし、伊豆半島や富士山周辺でシカによる食害が深刻化。樹皮剥や下層植生の食害をはじめ、田畑にも被害が出ているため、本年度からメスジカを狙ってわなを集中的に仕掛け、繁殖を抑えるメスジカ重点捕獲を開始しています。 シカを捕獲するには? シカの食害を根本的に減らすには、捕獲による個体数の削減が必要になります。具体的には、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」といった罠を使って捕獲を行います。 以下のページにて、それぞれの罠の特徴や動作について説明していますので、参照くださいませ。※罠の設置には基本的に、「わな猟免許」が必要になります。 各種わな説明&販売ページ 箱罠 シカの捕獲に適した実績多数の箱罠です。出没する場所を選んで設置します。もっと詳しく>> くくり罠 初心者からベテランまで。安くて高捕獲率と好評のくくり罠です。もっと詳しく>> 囲い罠 天面の半分が開いており、条件を満たせば狩猟免許不要で設置できます。もっと詳しく>> よくある質問...
絶品ジビエ!鹿肉料理レシピ~高級編。
ジビエとは、フランス語のgibierをカタカナ読みにしたもので、ハンターが狩猟によって捕獲した野生鳥獣(souvage:ソバージュ)を食材として利用することを指します。 中世ヨーロッパでは、上流貴族が嗜みとして狩りを行い、領地で獲った鳥獣の肉を食していました。そのため、特にフランス料理界でジビエ肉は古くから高級食材として重宝され、特別な料理に使われてきました。 ヨーロッパの高級食材店に行くと、精肉売場のショーケースには家畜肉と一緒にジビエ肉が並んでいたりします。野ウサギ(lièvre:リエヴル)、マガモ(colvert:コルヴェル)、キジ(faisan:フザン)、イノシシ(sanglier:サングリエ)などがありますが、中でも王様は鹿(chevreuil:シュヴルイユ)です。 鹿肉は他の肉と比べて脂質が少なく、高たんぱく低カロリー、鉄分やミネラルが豊富であることが特徴です。高級フレンチコースのメインとして使われることも多く、一流シェフが様々なテクニックや趣向を凝らします。 鹿肉の赤ワイン&チョコレートソース ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay)氏は、スコットランド出身の3つ星シェフです。ヨーロッパでとても人気のあるシェフで、英国ロンドンにある3つのレストランで、合計7つのミシュランの星を持ちます。 こちらの動画では、ゴードン・ラムゼイ氏が鹿肉の赤ワイン&チョコレートソースについて説明しています。 まず、オリーブオイルとバターで鹿肉の表面を焼いたのち、水分を逃さないためにバターを包んでいる紙で鹿肉を包み、オーブンで加熱します。 その間に、パンチェッタ(豚のバラ肉)、エシャロットとニンニク、挽いた黒コショウ、タイム(肉料理の風味づけに使われるハーブ)を軽く炒め、赤ワインを加えます。チキンブイヨンを加え、酢とダークチョコレートで仕上げをすると、赤ワイン&チョコレートソースの出来上がり。 赤ワインとチョコレートという一見変わった組み合わせのソースですが、フランス料理では肉料理を引き立てるためによく使われるものです。ゴードン・ラムゼイ氏は、スパイスやハーブの風味を調和させて肉の臭みを消し、苦みと甘みのバランスによって主役となる鹿肉の味を存分に引き立てるよう仕上げています。 鹿の鞍下肉にカボチャ、シャントレル、葉野菜を添えて 鹿肉も部位によって味や特徴が異なりますが、鞍下肉は牛肉でいうところのフィレにあたり、ロースのモモよりの部分です。とても柔らかく、フランス料理では極上部位とされます。 こちらの動画では、英国出身ミシュラン2つ星シェフ、ミシェル・ルー(Michel Roux Jr.)氏が鹿の鞍下肉を料理しています。ローストした鞍下肉に、秋の味覚としてカボチャ、シャントレル(アンズタケ)、クルミ、トレビスなどが添えられます。 アンズタケは日本ではあまり知られてないキノコですが、海外では食用キノコとして重宝されており、鹿肉を使った伝統料理に多く登場します。フランスでは「ジロール」や「シャントレル」と呼ばれ、アンズの香りがします。身近で採れるきのこであることから、高級なトリュフとは異なり庶民的なキノコとして広く親しまれています。 トレビスはヨーロッパ原産の赤紫色をした野菜で、見た目は紫キャベツに似ています。別名赤チコリと呼ばれ、苦みが特徴的。少量使うだけで映える食材です。 ミシェル・ルー氏は、これらの野菜とフルーティーで柔らかい鹿肉をマッチさせて、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味のバランスが取れるよう仕上げています。 鹿肉と野菜・果物のなべ焼き 以下の動画は、フランスのベルサイユ宮殿入場口のすぐそばにある人気店Ore - Ducasse au château de Versaillesのシェフ、Stephane Duchiron氏による鹿肉と野菜・果物のなべ焼き(キャセロール)です。 キャセロールはフランスで古くから伝わる伝統料理で、野菜などを調味料と共にとろ火で煮込んだものです。乾燥させた鹿肉のフィレをローストし、キャベツやニンジン、キノコ、洋ナシや玉ねぎなどのキャセロールを添えています。 肉と果物を一緒に食すことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、果実は鹿肉のポテンシャルを最大限に引き出すと言われるほど相性が良いです。旬の野菜や果物を、おいしくいただけるレシピです。...
絶品ジビエ!鹿肉料理レシピ~高級編。
ジビエとは、フランス語のgibierをカタカナ読みにしたもので、ハンターが狩猟によって捕獲した野生鳥獣(souvage:ソバージュ)を食材として利用することを指します。 中世ヨーロッパでは、上流貴族が嗜みとして狩りを行い、領地で獲った鳥獣の肉を食していました。そのため、特にフランス料理界でジビエ肉は古くから高級食材として重宝され、特別な料理に使われてきました。 ヨーロッパの高級食材店に行くと、精肉売場のショーケースには家畜肉と一緒にジビエ肉が並んでいたりします。野ウサギ(lièvre:リエヴル)、マガモ(colvert:コルヴェル)、キジ(faisan:フザン)、イノシシ(sanglier:サングリエ)などがありますが、中でも王様は鹿(chevreuil:シュヴルイユ)です。 鹿肉は他の肉と比べて脂質が少なく、高たんぱく低カロリー、鉄分やミネラルが豊富であることが特徴です。高級フレンチコースのメインとして使われることも多く、一流シェフが様々なテクニックや趣向を凝らします。 鹿肉の赤ワイン&チョコレートソース ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay)氏は、スコットランド出身の3つ星シェフです。ヨーロッパでとても人気のあるシェフで、英国ロンドンにある3つのレストランで、合計7つのミシュランの星を持ちます。 こちらの動画では、ゴードン・ラムゼイ氏が鹿肉の赤ワイン&チョコレートソースについて説明しています。 まず、オリーブオイルとバターで鹿肉の表面を焼いたのち、水分を逃さないためにバターを包んでいる紙で鹿肉を包み、オーブンで加熱します。 その間に、パンチェッタ(豚のバラ肉)、エシャロットとニンニク、挽いた黒コショウ、タイム(肉料理の風味づけに使われるハーブ)を軽く炒め、赤ワインを加えます。チキンブイヨンを加え、酢とダークチョコレートで仕上げをすると、赤ワイン&チョコレートソースの出来上がり。 赤ワインとチョコレートという一見変わった組み合わせのソースですが、フランス料理では肉料理を引き立てるためによく使われるものです。ゴードン・ラムゼイ氏は、スパイスやハーブの風味を調和させて肉の臭みを消し、苦みと甘みのバランスによって主役となる鹿肉の味を存分に引き立てるよう仕上げています。 鹿の鞍下肉にカボチャ、シャントレル、葉野菜を添えて 鹿肉も部位によって味や特徴が異なりますが、鞍下肉は牛肉でいうところのフィレにあたり、ロースのモモよりの部分です。とても柔らかく、フランス料理では極上部位とされます。 こちらの動画では、英国出身ミシュラン2つ星シェフ、ミシェル・ルー(Michel Roux Jr.)氏が鹿の鞍下肉を料理しています。ローストした鞍下肉に、秋の味覚としてカボチャ、シャントレル(アンズタケ)、クルミ、トレビスなどが添えられます。 アンズタケは日本ではあまり知られてないキノコですが、海外では食用キノコとして重宝されており、鹿肉を使った伝統料理に多く登場します。フランスでは「ジロール」や「シャントレル」と呼ばれ、アンズの香りがします。身近で採れるきのこであることから、高級なトリュフとは異なり庶民的なキノコとして広く親しまれています。 トレビスはヨーロッパ原産の赤紫色をした野菜で、見た目は紫キャベツに似ています。別名赤チコリと呼ばれ、苦みが特徴的。少量使うだけで映える食材です。 ミシェル・ルー氏は、これらの野菜とフルーティーで柔らかい鹿肉をマッチさせて、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味のバランスが取れるよう仕上げています。 鹿肉と野菜・果物のなべ焼き 以下の動画は、フランスのベルサイユ宮殿入場口のすぐそばにある人気店Ore - Ducasse au château de Versaillesのシェフ、Stephane Duchiron氏による鹿肉と野菜・果物のなべ焼き(キャセロール)です。 キャセロールはフランスで古くから伝わる伝統料理で、野菜などを調味料と共にとろ火で煮込んだものです。乾燥させた鹿肉のフィレをローストし、キャベツやニンジン、キノコ、洋ナシや玉ねぎなどのキャセロールを添えています。 肉と果物を一緒に食すことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、果実は鹿肉のポテンシャルを最大限に引き出すと言われるほど相性が良いです。旬の野菜や果物を、おいしくいただけるレシピです。...
足くくり罠によるシカの捕獲
ニホンジカは近年、生息分布が拡大しており、個体数も増加しています。それに伴い、農林産物や森林への食害が深刻化しているため、多くの自治体でシカの個体数を減らして被害を抑える必要があると判断されています。 参考記事:シカによる森林被害の実態 個体数を減らす方法として狩猟圧を高めることが選択されますが、多く採用されるのは箱罠やくくり罠による捕獲です。この記事では、くくり罠によるシカの捕獲について説明します。 くくり罠の種類 現在、色々なメーカーから様々なタイプのくくり罠が販売されています。また、くくり罠による成果は仕掛ける人間の技術や知識に大きく左右されることもあり、個人でカスタマイズした罠を設置する狩猟者も多くいます。 くくり罠の分類 大きな分類として、胴くくりと足くくりの2種類があります。その名の通り、ターゲットの胴を括るものと、足を括るものに区分されますが、シカやイノシシがターゲットの場合、足くくり罠が採用される場合がほとんどです。 胴くくりは、獲物が早ければ30分ほどで欝血死してしまう場合があり、また輪の直径には制限があるので今はほとんど使用されません。 くくり罠の構造 構造として、ほとんどがバネの力によって括る仕様ですが、バネの種類によって構造が異なります。 ・バネが開くことによって締まる方式(松葉式) ・バネが伸びる力によって締まる、押しバネ方式 ・バネが縮む力によって締まる、引きバネ方式 作動方式 筒のなかに踏み込むことによって作動する踏み込み式がほとんどですが、他にも蹴り糸に獣が触れることで作動するものもあります。 さらに、稼働方向によっても分類され、圧縮した押しばねが上(高さ)方向に伸びあがって括り輪が締まる縦引き式と、バネの力が横方向に働いて括り輪が締まる横引き式、踏み板に付属した枠によって括り輪が上に誘導される跳ね上げ式などがあります。 以下の動画は、押しバネ跳ね上げ式です。 罠を仕掛ける前に注意しておきたいこと 以下のようなくくり罠の使用は禁止されていますので、注意しましょう。 ・体を吊り上げてしまうもの ・ワイヤーの直径が4mm 未満のもの ・「より戻し」がないもの ・「締め付け防止金具」がないもの ・直径(楕円形の場合は小さい方)が 12cm を超えて掛けること※知事によって規制は緩和されます。径の制限については各自治体担当課にお問合せください。 ・1人で 31 個以上のわなを掛けること...
足くくり罠によるシカの捕獲
ニホンジカは近年、生息分布が拡大しており、個体数も増加しています。それに伴い、農林産物や森林への食害が深刻化しているため、多くの自治体でシカの個体数を減らして被害を抑える必要があると判断されています。 参考記事:シカによる森林被害の実態 個体数を減らす方法として狩猟圧を高めることが選択されますが、多く採用されるのは箱罠やくくり罠による捕獲です。この記事では、くくり罠によるシカの捕獲について説明します。 くくり罠の種類 現在、色々なメーカーから様々なタイプのくくり罠が販売されています。また、くくり罠による成果は仕掛ける人間の技術や知識に大きく左右されることもあり、個人でカスタマイズした罠を設置する狩猟者も多くいます。 くくり罠の分類 大きな分類として、胴くくりと足くくりの2種類があります。その名の通り、ターゲットの胴を括るものと、足を括るものに区分されますが、シカやイノシシがターゲットの場合、足くくり罠が採用される場合がほとんどです。 胴くくりは、獲物が早ければ30分ほどで欝血死してしまう場合があり、また輪の直径には制限があるので今はほとんど使用されません。 くくり罠の構造 構造として、ほとんどがバネの力によって括る仕様ですが、バネの種類によって構造が異なります。 ・バネが開くことによって締まる方式(松葉式) ・バネが伸びる力によって締まる、押しバネ方式 ・バネが縮む力によって締まる、引きバネ方式 作動方式 筒のなかに踏み込むことによって作動する踏み込み式がほとんどですが、他にも蹴り糸に獣が触れることで作動するものもあります。 さらに、稼働方向によっても分類され、圧縮した押しばねが上(高さ)方向に伸びあがって括り輪が締まる縦引き式と、バネの力が横方向に働いて括り輪が締まる横引き式、踏み板に付属した枠によって括り輪が上に誘導される跳ね上げ式などがあります。 以下の動画は、押しバネ跳ね上げ式です。 罠を仕掛ける前に注意しておきたいこと 以下のようなくくり罠の使用は禁止されていますので、注意しましょう。 ・体を吊り上げてしまうもの ・ワイヤーの直径が4mm 未満のもの ・「より戻し」がないもの ・「締め付け防止金具」がないもの ・直径(楕円形の場合は小さい方)が 12cm を超えて掛けること※知事によって規制は緩和されます。径の制限については各自治体担当課にお問合せください。 ・1人で 31 個以上のわなを掛けること...