※注意:この記事は、狩猟や鳥獣被害に理解のある方のみ閲覧ください。いわゆる動物愛護観点からのコメントには応じかねます。
近年、鳥獣被害対策として箱罠やくくり罠、囲い罠等を用いて、イノシシやシカ等を捕獲する取り組みが広がってきています。 それに伴い、捕獲するまでのノウハウや、食肉活用についての事例紹介は多く目にするようになりましたが、実際に獣が罠にかかった場合、どのような処理が必要となるかについては、あまり議論が多くないように感じます。
野生獣は想像以上に身体能力が高く(特にイノシシ)、捕獲した獣は生死がかかっているので、予想外の動きを取ることもあります。例えば、くくり罠において足をくくっているワイヤーが獣が動いた拍子に外れ、逆襲されたことによる死亡事故も発生しています。
この記事では、捕獲した獣にできる限り苦痛を与えず、安全かつ速やかに「止めさし」を行う技術について、説明いたします。
止めさしの前に
まずは、獣が罠にかかっている現場の状況をしっかりと確認することが重要です。イノシシの捕獲では、わなの見回りや捕獲個体の止めさしの際に、最も事故が発生する確率が高くなります。
いきなり近づいて確認せずに、まずは遠くから双眼鏡などを用いてチェックするのがベストです。遠くからゆっくりと近づき、傾斜のある場合は高いほうから徐々に近づくことが基本です。
くくり罠の場合は、以下がチェックポイントになります。
▶ワイヤーが獣のどの部位を括っているか
▶括った箇所が抜けかかっていたり、切れかけたりしていないか
▶括った部分の体の部位が、ちぎれかけていないか
▶支点にしている部分からワイヤーが抜けたりしないか
▶獣の可動範囲はどの程度か
箱罠の場合は、以下がチェックポイントになります。
▶箱罠に破損はないか
▶獣が逃げ出す恐れはないか(扉やストッパーの確認)
離れた場所から、手をたたいたり、大きな声を出して、捕獲された獣の反応を観察するとともに、捕獲された個体の近くに他の個体が潜んでいないかも確認しましょう。
止めさしの種類
止め刺しの種類としては、大きく分けて4つあります。
>1. 銃器を使用する方法
最も威力が大きい方法です。基本的には一発弾のスラッグ弾を使用します。威力の高いプレチャージ式の空気銃が使用されることもあります。使用する銃器に応じて、「第一種銃猟」または「第二種銃猟」の免許と、「銃所持」の許可が必要です。
離れたところからでも止めをさすことができることや、大型の個体でも安全に対処できることがメリットです。
銃器を止めさしに使用する場合、注意すること
まず、銃猟禁止区域など、銃が使用できない場所があるため、そのような場所に該当しないことを事前にチェックしておきましょう。
また、矢先に民家や人がいないか必ず確認し、バックストップ(弾が範囲を越えて行かない為の遮蔽物)をきちんと確保しましょう。 跳弾にはくれぐれも注意する必要があります。発砲の際は、銃所持者以外は銃所持者の後ろ側に立ち、できるだけ木などの陰に隠れるようにしましょう。
参考動画:80キロオーバー!大物イノシシ猟スラッグ弾止めさし
シカの場合は、頭部か首、心臓を狙います。またイノシシの場合は、眉間、こめかみ(耳のうしろ)、心臓を狙います。
しかしながら、心臓を的にした場合、損傷が大きかったり、弾の破片が肉に入り込んだりするため、食肉活用が難しくなる場合があります。
また、後処理の際に血抜けが悪くなり、くさみが強く残る場合もあります。 空気銃で頭部を狙う場合は、頭蓋骨に対して、弾の入射角度が垂直になるように狙いましょう。角度が浅すぎる場合、頭蓋骨で弾がすべって跳弾する可能性があります。
2. ナイフや槍といった刃物を使用する方法
刃物などで心臓や頸動脈を刺し、止めをさす方法です。ハンマーや木の棒で獣を失神させてから刃物で止めを刺す場合もあります。
前提として、獣の脚や鼻などをワイヤーやロープでしっかりと保定しておく必要があります。動き回る獣の止めをさすのは、相当難しく、危険です。 例えば、イノシシの場合、保定する道具には以下のようなものがあります。
鼻くくり
イノシシの牙によるしゃくり上げを封じるための道具で、最も一般的な保定具です。イノシシの鼻や首、足に掛けることで、イノシシの動きを制限することができます。 くくり罠にかかったイノシシの動きをさらに制限する際に用います。棒を突き出した瞬間にロープを引き絞るように操作します。
また足くくりと同様の原理で、イノシシの鼻がぶつかるとバネの力でワイヤーが締まる仕組みのものもあります。当店では、足くくりにも、鼻くくりにも兼用できるタイプを販売しております。興味のある方は、こちらのページをご覧ください。
ロープ・足錠
足を固定して、獣の動きを完全に封じます。
チョン掛け
くくりわなのバネやワイヤーに引っ掛け、イノシシが自由に動ける範囲を制限します。 以下の動画では、鼻くくりやロープでイノシシを保定し、動きを封じています。
箱罠の場合は、網目に角材などを通して、獣の可動域を狭めていくのも一つの手です。あらかじめ装着していた可動式の床や天井で空間を狭める方法もあります。
シカを刃物で止めを刺す場合は、首に刃を入れて頸動脈を切るようにします。開口部をなるべく小さくして、食道まで切ってしまわないように注意しましょう。 イノシシを刃物で止めを刺す場合は、喉元や心臓などに刺しましょう。
箱罠の場合は、刺した後に獣が暴れて柄が折れたりする場合があるので、すぐに抜くよう心がけましょう。
なお、止め刺しに使う刃物については、軽犯罪法第 1 条第 2 号により「正当な理由がなく携帯すること」は禁止されているため、捕獲時以外は携帯しないよう注意が必要です。
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3. 電流で感電させる方法
自動車やバイクに使われるような小型バッテリーを用いて、捕獲獣に電極を接触させて電気を流す方法です。捕獲獣の動きがある程度制限されている状態でないと実施できない方法なので、獣の可動域が広い場合は、保定具等を使って脚や鼻などをしっかりと保定しておく必要があります。
食肉活用を前提とする場合、電気で獣を動けなくした後に、刃物類で止めを刺す方法が用いられます。電気で止めさしをする場合は、免許や許可が不要で、経験が浅い場合も対応ができ、血が流れないため罠や器具の汚れも抑えられます。
基本的には、片方の電極を顔や首などの上半身に、もう片方の電極を臀部やモモなどの下半身に接触させ、心臓に電気を流します。この際、脂肪が少ない部位を狙います。 金属でできた箱罠の場合、罠自体をアースにして通電する場合もあります。
電気の性質や装置の構造に関する基本的な知識があることが前提で、漏電や感電に十分注意する必要があります。電圧が高いほど、事故が発生する確率が高くなりますので、過剰に昇圧することは避けましょう。
事故を避けるため、使用時には、ゴム手袋やゴム長靴など、電気を通さない装備をすること、川の中や降雨時の使用を避けることを留意しておきましょう。
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4. 炭酸ガスなどを用いた化学的な処理
箱罠で捕獲した際に、罠ごと専用の箱に入れて、箱に炭酸ガスを注入し、箱内に充填させ、殺処分する方法です。
ガスによる処理は、シカやイノシシのようにある程度体のサイズが大きい獣においては、装置自体が大掛かりになるため適していませんが、アライグマなどの小型獣に対しては有効な方法であり、広く用いられています(安楽死のための規定基準に従って実施する必要があります)。
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まとめ
安全かつ迅速に処理を行うためには、状況に応じて様々な止め刺し方法を用意しておくことです。罠を設置する際に様々なケースを想定しておき、対処方法を予め用意しておきましょう。
ターゲット以外の獣がかかった場合は、放獣することも考えなければなりませんし、たくさんの罠に一度にかかる場合の対処方法も考慮しておく必要があります。銃による処置が自身で行えない場合は、銃猟師と事前に連絡をとっておきましょう。
あらかじめ、かかる労力や時間、費用などよくシミュレーションしておきましょう。 止め刺し後の処置については、こちらの記事をご覧ください>>イノシシの解体・捌き方【※閲覧注意】
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