長崎県対馬市は日本海の西に位置する島です。九州と韓国の間の対馬海峡に浮かび、「国境の島」とも呼ばれています。博多港までは航路で132キロ、韓国までは直線距離で49.5キロ。日本の中で朝鮮半島に最も近いという地理的条件から、大陸と日本の架け橋として数多くの文化・歴史が息づいています。

1.豊かな自然が残る対馬。島の89%が山林で占められている
特産品も多く、海鮮やしいたけ・地酒などをはじめ、縄文後期の原種そば「対州そば」など多くのグルメを味わうことができます。 また近年では、世界的に話題となった時代劇アクションゲーム「Ghost of Tsushima」(ゴーストオブツシマ)の舞台としても注目を集めました。
島の大きさは、南北82キロ・東西18キロ、面積は約708平方キロ。沖縄本島と北方四島を除けば、佐渡島・奄美大島に次ぐ大きさです。
山林が面積の89%を占める自然豊かな島ですが、一方でイノシシやシカによる農作物被害や林業被害、山の下草が無くなるといった生態系被害に悩まされています。 こうした被害を受け対馬市では、イノシシ・シカに対する対策を実施すると共に、イノシシ・シカに負けない地域づくり・人づくりに向けてさまざまな取り組みをしています。
今回は、対馬市役所 農林水産部の日高様に、対馬市におけるイノシシ・シカ対策についてお話を伺いましたので、ご紹介します(以下敬称略)。
対馬市でのイノシシ・シカ被害の現状

2.イノシシやシカが多く生息し農作物・森林被害が発生している
-まずは、対馬でのイノシシ・シカ被害の現状からお聞かせください
日高:対馬市では現在、イノシシ・シカの増加により、食い荒らしや踏み倒しによる農作物被害、樹脂剥ぎによる森林被害、さらには下層植生減少や土砂流出によって生態系にも被害が及んでいるのが現状です。近年ではイノシシやシカが市街地付近でも出没しており、接触事故なども発生しています。

3.「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」対馬市公式HPより
対馬は今から約300年前に、イノシシによる農業被害に悩む百姓を助けるため、対馬藩で農業振興に尽力した陶山訥庵(すやま とつあん)が中心となって「猪鹿追詰(ちょろくおいつめ)」が実施され、9年間の歳月をかけてイノシシを絶滅させたという歴史があります。
しかし、今から30年ほどまえに島外から持ち込まれたイノシシが野生化し、平成6年に一頭の成獣が捕獲されたことを皮切りに、被害が全島に及ぶようになりました。
シカによる被害も顕著になってきています。対馬に生息するシカは、対馬にのみ生息するキュシュウジカの亜種です。1960年代は、捕獲圧の上昇により個体数が減少したことを受け、県の天然記念物に指定され、一切の捕獲が禁止されました。しかしながら、その後個体数が増加し、農林業被害が発生するようになったため、1981年から有害捕獲が開始され、2006年に天然記念物指定が解除されるに至っています。
イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況
-イノシシ・シカ被害への対策や捕獲の状況はいかがでしょうか?
日高:被害の拡大を受けて市では他の有害鳥獣捕獲地域と同様、被害を引き起こすイノシシやシカを捕獲した際には報奨金を交付する制度を導入しました。その効果もあり、2019年度の捕獲実績はシカが約8,236頭、イノシシは約5,367頭という結果になりました。1か月に最大1,000頭捕獲したという実績もあります。
しかし、依然として被害は減少しておらず、捕獲のペースが追いついていなのが現状です。とくに森林被害は深刻です。田畑への農作物被害に対しては防護柵やワイヤーメッシュを用いることで被害額が減少傾向にありますが、森林被害はカバーするエリアも広く、より捕獲圧を上げていかなければなりません。
森林被害の削減に向けての新しい対策
-被害を削減するために、今後を見据え新しい対策へ取り組んでいるとお伺いしました
日高:対馬市では全国に先駆け、主に森林被害を低減させるための補助事業として、シカ捕獲用のくくり罠を助成する事業を開始しました。

4.対馬市で導入するくくり罠
現在、捕獲方法の内訳としては、銃器を使った捕獲が約3割、罠を使った捕獲が約7割になっています。銃器による捕獲はどうしても許可・規制等の問題があることから限定的となり、猟友会の方へのご負担も大きくなってしまいます。そこで、ハードルが低い罠を使用することでも十分な捕獲実績を出せることに注目し、シカ捕獲用のくくり罠1,500個を助成することにしました。

5.猟友会の協力の元、助成用の罠を念入りにチェックする
具体的には、この冬期、対馬市有害鳥獣被害対策強化月間を設定し、シカを捕獲した方に対して、くくり罠を提供します。
これまで罠を仕掛ける機会がなかった方や、くくり罠を使用してこなかった方にも、事業を通して「きっかけ」を作ることができれば、島全体で広く対策に協力していただくことができます。
いままで捕獲実績が少なかった方も、この取り組みによって数を増やしていければ、捕獲圧を高めていくことができます。
-地域や猟友会と連携して取り組む訳ですね
日高:はい。くくり罠の配布には猟友会の方が事業主体となってご協力いただきます。地域と猟友会が協力して取り組む体制を築くことで、捕獲圧を上げて被害を削減していくことが狙いです。
まとめ
対馬市では島おこしの一環として、捕獲したイノシシやシカの「皮」を使ったレザークラフト製品の開発にも取り組んでいます。鳥獣対策に取り組みつつ、島おこしにも役立てることが狙いです。

6.捕獲したイノシシやシカの皮を使ったレザークラフトで島おこし
鳥獣対策には、行政や猟友会、地域住民が一体となって協力して取り組むことが大切です。対馬市が新たに取り組むくくり罠の提供事業も、地域一体でイノシシやシカの被害をくい止めるための対策といえます。

7.ジビエ肉として有効活用。ふるさと納税でも販売している
全国でも先駆けとなるこの取り組みは、鳥獣被害に悩む他の自治体にとっても今後の鳥獣被害対策を検討する上で、貴重な参考材料となるのではないでしょうか。
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