そこで、今回の記事では電気柵の故障の原因を突き止める方法や修理方法を詳しく解説しています。不具合や故障が起きにくくなる日々のメンテナンス方法や、電気柵を点検するときに役立つアイテムについても解説しているので、電気柵の買い替えや修理を検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
まずは電気柵の仕組みを再確認しよう
電気柵は電気の回路が完成することで、動物に電気ショックが流れる仕組みです。
動物が電柵線に触れると、電流が動物の体を通って地面に流れ、アースを通じて電柵機に戻ることで電気の回路は完成します。
電気柵から発せられる電気ショックは、電気柵が自発的に発生させているわけではなく、動物が電気柵に触れ、回路が完成したときにはじめて電気ショックが発生します。
そのため、電気柵の効果を発揮するためには、電気の回路が完成するような工夫を施すことが重要です。
電気柵のよくある不具合とは
電気柵のよくある不具合には、電源が作動しないことと、電気ショックが弱いことの主に2つがあります。
電気柵が作動していない場合は、配線の接続不良や乾電池・バッテリーの残量が残っていないことが原因の可能性があります。ほかにも、電気柵の本機が故障している場合もあるでしょう。
一方で、電気柵は作動するものの電気ショックが弱い場合は、上述したように電気の回路が完成できない設置方法になっていたり、漏電が起きていたりする可能性が考えられます。
不具合が発生したら、まずはどのような事象が起きているのか問題箇所を特定し、その不具合の原因が何なのかを確認することが、問題解決への一歩になります。
本機?電気柵?まずは問題箇所を特定しよう
電気柵の故障が疑われた際は、まず問題箇所を特定することが重要です。特に、本機と電気柵、どちらに不具合が起きているのかによって対処方法が異なります。
問題箇所を特定するには、まず電気柵から本機を取り外したあと、本機の出力部分とアース部分に直接専用テスターを当てて電圧を測定します。このときに、測定した電圧と各機種のマニュアルに記載してある最大電圧との乖離を確認してみてください。
マニュアルに記載してある最大電圧より測定した電圧が低い場合、本機に問題がある可能性が高いため、配線の確認や乾電池・バッテリーの電池切れの有無を確認してみましょう。
一方で、マニュアルに記載してある最大電圧と測定した電圧が同程度だった場合は、電気柵に問題がある可能性が高いため、ワイヤーやアース、支柱などの設置状況を再確認する必要があります。
なお、マニュアルを紛失した場合は、一般的に7,000V(ボルト)以上の電圧が測定できれば、本機は正常に作動していると判断できるといわれています。
本機に問題があった場合
ここからは、本機に問題があった場合の対応について解説します。本機に問題があることがわかったら、不具合が起きている原因を突き止めることが重要です。不具合の種類は限られているため、一つひとつ丁寧に確認していきましょう。
アース線・高電圧出力線の接続をチェック
まずはアース線や高電圧出力線が正しく接続されているか、再接続などをしてチェックしましょう。高電圧出力線とは本機から電柵線に高電圧の電気を送るためのコードのことです。マニュアルの記載に則って、アース線や高電圧出力線を再接続し、正常に作動するか、もう一度確認してみてください。
なお、アース端子と高電圧出力線が接触していると安全回路が働き放電しないため、注意が必要です。
電池切れ・スイッチの押し忘れをしているかチェック
アース線や高電圧出力線を再接続しても改善がみられなかった場合、本機の電池が切れていたりスイッチを押し忘れていたりする可能性があります。また、乾電池式の場合、電池切れのほかに乾電池を入れる向きが間違っていないか、指定の種類の乾電池を使用しているか、再度確認してみましょう。バッテリー式の場合、充電してみても電気柵が作動しないときは、バッテリーを新しいものに交換することも検討してみてください。
あわせて、マニュアルに記載してある手順に従ってスイッチを入れ直してみる方法も試してみましょう。
故障していたらメーカーに問い合わせる
ここまでの対応をしても電気柵が正常に作動しない場合は、本機の故障が考えられます。メーカーや販売店に修理・点検を依頼しましょう。なお、販売店によっては、購入後1年未満の保証期間内であれば無償修理を行っていたり、修理を依頼している間の代替機の貸し出しを行っていたりする販売店もあります。
対応内容はメーカー・販売店によって異なるので、まずは問い合わせてみることをおすすめします。
電気柵に問題があった場合
ここからは電気柵に問題があった場合の対応方法について解説します。特に電気柵に不具合が起きている場合、外的要因によって問題が発生している可能性も考えられるため、一時的なチェックだけでなく、定期的なメンテナンスでもチェックを行うことが重要です。
電柵線の漏電・断線がないかチェック
本機が正常な場合、まずは電柵線の漏電やワイヤーの断線がないかチェックしましょう。例えば、ワイヤーに雑草や草木が接触していたり、石やトタン板が接触していたりすると漏電の原因に繋がります。
ほかにもワイヤーがたるんだり、断線したりすることで地面に接地している場合は、電気柵に流れる電圧が弱くなる可能性が高くなります。また、ワイヤー同士の結び方が誤っていると漏電に繋がる場合があります。
以下の記事では、電気柵の結び方について詳しく説明しているので、気になる人はあわせてチェックしてみてください。
電気柵の正しい結び方を徹底解説!ワイヤーの種類と選び方も紹介
アースの設置不良がないかチェック
電気柵の漏電・断線を確認したうえで、正常な電圧で電気柵が稼働しない場合は、次にアースの不良をチェックしましょう。具体的には、以下のような状態でアースが設置されていないか確認する必要があります。
- アースが切断している
- アースが端子から抜けている
- アースがしっかりと地面に差し込まれていない
- 本機の性能に応じた必要本数のアースが設置されていない
- 砂地のような乾いた場所にアースを刺している
ほかにも、アースが古くて錆びている場合はアース自体を購入しなければなりません。
支柱・碍子(ガイシ)の状態をチェック
電気柵のワイヤーやアースの設置に問題がなければ、支柱・碍子(ガイシ)の状態をチェックしましょう。誤った支柱の設置方法として挙げられるのは、ワイヤーを直接支柱に巻きつけている場合です。漏電の原因に繋がるため、ワイヤーを支柱に取り付けるときは必ず碍子(ガイシ)を使用してください。
また、碍子(ガイシ)を使っていても、設置している支柱自体に問題があると、漏電の原因に繋がります。例えば、鉄パイプにゴムの素材を巻きつけたり、堆肥袋などのビニールを巻きつけたりしてはいけません。
ほかにも、園芸ポールや木材・竹の支柱を電気柵の支柱などを使っている場合も、電気柵が正常に稼働しない原因に繋がります。電気柵の支柱は専用のものを使用しましょう。
推奨延長距離の範囲内か確認
ここまで説明したチェックポイント以外では、本機の性能以上にワイヤーを架線(距離の延長または段数の追加)したことで電圧が低下するケースもあげられます。そのため、電気柵を設置する機種の推奨延長距離の範囲内で設置することが重要です。推奨延長距離とは、漏電抵抗が多少あることを考慮したうえで使用できる距離の目安のことです。例えば、本機の推奨延長距離が1,500mの場合、750mなら2段、500mなら3段と、推奨延長距離を考慮した段数にする必要があることを覚えておきましょう。
なお、以下の記事では電気柵の設置方法や害獣対策のポイントについても詳しく解説しています。特に電気柵の買い替えを検討している人は、ぜひあわせてチェックしてみてください。
電気柵の設置方法とは?害獣対策のポイントと注意点をご紹介
電気柵の漏電が見つからない場合
電気柵の漏電箇所が見つからない場合は、電気柵を2~3つの区画に区切って確認するとよいでしょう。
例えば周囲が400mの場合、約200mごとに電気柵を区切ります。テスターを使用して、各区画それぞれの電圧を測定しましょう。漏電している区画が確認できたら、さらに半分の100mに区切って測定します。
これを繰り返すと漏電箇所が特定しやすくなるので、特に広範囲に電気柵を設置している人におすすめです。
故障・不具合を防ぐためのメンテナンスと注意点
故障や不具合が起きるリスクを下げるためには、日々のメンテナンスが重要です。メンテナンス時に注意したいポイントは以下のとおりです。
- 下草やツルを定期的に取り除く
- 断線がないか点検し・バッテリーの残量を確認する
- 1本のワイヤーに2台の本機を繋がない
- 本機をビニール袋などで包まない
- 地面に直置きしたり、上下の向きを逆にして設置したりしない
- 雨天時に本機のフタを開けるときは、本体の中に雨が入らないように注意する
- 電池が複数個必要な場合は全て新しいものを使用する
不具合で電気柵が通電されていない間は、野生動物の侵入を許してしまうことになるため、常に電気柵が正常に稼働できるように注意する必要があります。
メンテナンスで役立つアイテムを紹介
日々のメンテナンスや故障があったときに役立つアイテムの一つがテスターです。各メーカーからさまざまな種類のテスターが販売されているため、どれを選べばよいか悩む人も多いのではないでしょうか。
そこで、ここではおすすめのテスターを4商品紹介します。
はじめに紹介するのはアポロの「電気柵 エリアチェッカー AP-CK130A(6LEDタイプ)」です。6つのLEDによって、電気柵の通電状況を簡単に確認できることができます。はじめて使う人でも使用方法に迷う心配は少ないでしょう。
2つ目はアポロの「電気柵用品 デジタルボルトメーター(7セグタイプ)」です。測定中の電圧がデジタル表示されるので、具体的な数値を確認したい人におすすめの商品といえます。
3つ目はタイガーの「クイックテスター TBS-QT1」です。測定ボタンを押しながら、アースに本体を引っ掛けるだけで使用できます。押しボタン式なので、電源スイッチを切り忘れる心配が少ないでしょう。
最後に紹介するのはタイガーの「TBS-DV2 電気柵用 デジタルボルトメーター」です。電圧がデジタルで表示されるので、視認性の高さを期待できることが魅力の商品です。
価格だけで比較するのではなく、用途に合っているかどうかイメージをしながら購入を検討しましょう。
電気柵を修理する場合の費用
電気柵を修理に依頼する場合、ワイヤーやアースなどの部品は買い替えが必要になる場合がほとんどです。
それぞれの部品の買い替えにかかる費用の目安は以下のとおりです。
- ワイヤー:4,000〜10,000円
- アース棒:1,000〜8,000円
- 専用支柱:10,000〜30,000円
- 碍子(ガイシ):1,000〜14,000円
なお、電気柵を修理する場合は、メーカーや販売店の保証期間内であれば無償で対応してもらえる場合があります。
ただし、保証期間内でも故障の原因によっては有償になる場合もあります。修理を依頼する場合の費用は、メーカー・販売店によって異なるので、まずは問い合わせてみましょう。
故障対応をマスターして、電気柵で獣害を効果的に防ごう
今回は、電気柵の故障が疑われる場合の対応方法について解説しました。電気柵が正常に作動していないときは、問題箇所と原因を特定することが重要です。また、電気柵の故障によって野生動物に侵入の隙を与えないようにするには、日々の定期的なメンテナンスや点検が不可欠です。
最近では電気柵の電圧を簡単に測定できるテスターや、交換用の部品・パーツがECサイトで手軽に手に入ります。これらのアイテムも活用しながら、常に電気柵を正常に稼働させ、効果的に害獣対策をしましょう。