日本人とイノシシの関係は、稲作よりも古いものであり、農耕が広がるにつれてイノシシ被害も増えていきました。猪垣などにもみられるように、日本人は古くからイノシシ被害に悩まされてきましたが、近年では農業が継続できない程深刻な事態に至るケースも見受けられます。
特に、山間地・山麓地ではイノシシによる農作物被害が深刻で、大きな問題となっています。 では対策としてイノシシを根絶するべきでしょうか?答えは「No」です。生態系への影響など様々な観点から選択すべき対策ではありません。
しかし、消極的な防除だけでは被害を減らすことは困難です。イノシシによる農林被害を効果的に防ぐためには、イノシシの生態や行動を詳しく理解し、共存・共生するための総合的な対策を練る必要があります。
この記事では、イノシシの生態や行動に対する誤解によって、意味のない対策を実施することのないよう、イノシシの生態・行動を詳しく解説します。
イノシシの生態
日本に生息するイノシシの種類と生息域
日本に生息するイノシシは、本州・四国・九州に広く分布するニホンイノシシと、奄美大島から南のエリアや沖縄に分布するリュウキュウイノシシの2つの亜種に分類されます。他に、豚とイノシシの交配によって生まれたイノブタという雑種は日本中に広く生息しています。常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、水田放棄地や竹林などに生息し、これらに隣接する水田や農耕地に出没して、作物を荒らすケースが多いです。また、市街地に現れる場合もあります。 食物や水のある場所、茂みなど隠れるところのある場所や、人間活動の少ない場所が好みです。
その分布は年々広がってきており、1978年から2014年までの36年間でイノシシの生息域は約1.7倍に拡大しています。

上図:イノシシの分布とその拡大予測(環境省ホームページから抜粋)
イノシシは冬眠をしないことから、寒い地域の分布は少ないですが、温暖化に伴い、年々分布の北限が広がっている傾向です。食べ物
イノシシは雑食性で基本的には何でも食べますが、多くは植物質のものを食べます。ブナの果実であるドングリや栗の実、キノコ、柔らかい植物の新芽や根などを好んで食べます。
また、地中の芋やタケノコ、ワラビなども掘って食べます。また、サツマイモを掘り集め、カヤをかぶせて貯蔵したりすることもあります。農作物の被害として多いのは、稲やサツマイモ、豆類、サトウキビなどです。一晩で稲が全滅された事例も報告されています。
ほかにヘビやカエル、昆虫類、サワガニ、ミミズなども食べます。畑や芝生に発生したミミズをイノシシが食べることによって土地が荒らされる事例もあります。市街地に出没するイノシシは生ゴミも食べます。
これまで数年被害を受けていなかった作物や植物も、突如として食べだす場合もあり、油断は禁物です。身体能力
体の大きさや構造
ニホンイノシシの成獣は、体重が60kg~100kg程度ですが、リュウキュウイノシシはそれより小型で、大きくても体重は60kg程度です。
体長はニホンイノシシが140cm~170cm前後ですが、リュウキュウイノシシの体長は90~140cm程度です。いずれも、オスの方がメスよりも体が大きいです。 厚い毛皮に覆われており、硬いとげなどが体に当たってもそれほど痛みを感じないほどです。
体型はブタに似ていますが、ブタよりも前半身が発達しています。オスメス共に下あごの犬歯が発達して牙状になっていますが、オスは特に発達しています。
また、嗅覚が非常に優れており、イヌの嗅覚に匹敵するといわれています。一方で、視力は弱く、人間でいうところの0.1を下回る程度であり、敵や餌の発見は嗅覚・聴覚に頼っているようです。
走る速さや跳躍力
時速45kmで走る事も可能といわれています。猟犬でも追いつけないことがあるほどの走力があります。猪突猛進という言葉にあるような直進しかできないというイメージは誤りで、急停止や急発進、急な方向転換もできます。跳躍力も高く、1歳未満の子イノシシでも70cm程の跳躍力があり、成獣なら助走なしで1mを飛び越えます。1.2mの柵を飛び越えたという報告もあります。防護柵を設置する際は、飛び越されない高さのものを設置することが重要です。
また、飛ぶよりくぐり抜けるほうを選ぶ習性があり、狭い隙間でも20cmの高さがあれば成獣でも潜り抜けます。
力の強さ
鼻先で70kgの物を持ち上げる力があります。突進力も強く、その攻撃は同じ体重の人間の攻撃よりも何倍も速いといわれます。大人の人間でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険があるほどです。
噛む力も非常に強く指を噛み切られるという事故も発生しています。またオスの場合、強い力で鼻先をしゃくり上げるようにして攻撃する場合があります。牙の位置がちょうど成人の太ももの高さに当たるため、イノシシから大腿動脈を裂かれ失血によって死亡する事故も発生しています。
生育や寿命
イノシシの繁殖期は12月から1月にかけて始まり、約3ケ月間続きます。繁殖期のオスは発情期特有の臭いを出し、食欲を減らして痩せながらも、メスを捜して活発に徘徊するようになります(この時期のオスの肉は、かなり臭みがあります)。
メスの発情期は3日程で、その間に交尾を終えると、オスはまた別の発情したメスを探して交尾します。メスは多産で春に2~8頭の子を産みます。春の出産に失敗したメスの中には、発情して秋に子どもを産む例もあります。妊娠期間は約120日程度です。
なお、イノブタは年中繁殖でき、繁殖力はイノシシの5倍とも言われています。 幼獣には縞模様があり、「ウリボウ」などと呼ばれます。この縞模様は授乳期を過ぎた生後約4か月程度で消えます。
成長が速く、1歳半で性成熟に達し、野生では多くのメスが2歳程度で初産します。オスは生後1年程で群れから離れ単独で生活するようになります。一方、メスは子供と一緒に家族単位の群れを形成して行動します。
行動範囲は里山付近の場合には半径数百メートル内ですが、3~5km程度に及ぶ場合もあります。特有のなわばりは持たず、複数の群れが同一エリアを利用することもあります。生活圏内には餌場、寝床、水場、ヌタうち※を行うヌタ場などがあります。
※ヌタうちは、体に付着したダニなど寄生虫を落としたり、体温調節を行うための行為で、人間でいうところの沐浴や風呂のようなものです。
生後3年間の自然死亡率が高く、平均寿命は2~3年程度です。なお狩猟圧が高い地域では、成獣の死亡率は高く、毎年半数近くが狩猟で死亡しますので、平均寿命が2年を下回ります。しかし、条件が良ければ10年程度生きることも可能といわれています。
イノシシの性格や行動
性格
性格としては非常に神経質で、警戒心の強い動物です。普段見慣れないものに遭遇した場合、それをできるだけ避けようとしますので、基本的には人間を避けます。 しかし、不用意に近づくと攻撃をしてくることもあります。
発情期や分娩の後は特に攻撃的になります。背中の毛を逆立たせたり、挙動不審に動き回ったり、「シュー」「カッカッカッ」「クチャクチャクチャ」という音を音を発したり、こちらから後ずさりしながら地面を擦るといった行動は、イノシシの威嚇行動です。
また、慣れると大胆になるという性格も合わせもっており、人に慣れたイノシシが買い物袋などを狙って人を襲うという事例もあります。
※イノシシが近づいてきた場合、慌てず目を離さずに、ゆっくりと後ずさりしてください。急に動くとイノシシも驚いて予想外の行動を起こす場合があります。
スーパーの袋や食べ物を狙って近づいてきた場合は、食べ物や袋を体から遠くに放してください。不用意に追いかける等、イノシシを興奮させることは避けましょう。
行動
一般的にイノシシは夜行性動物といわれていますが、本来は昼行性です。夜間の行動が多いのは、人間が活動している時間帯を避けるからです。警戒心が強いため、餌場や寝床、水場は頻繁に変え、出来るだけ自分の行動を掴まれないように行動します。
しかし、人間に対する警戒心が低下すると、昼間でも堂々と活動します。人里に進入するルートは統一されている場合が多く、人里から出ていく場合も同じルートを使う傾向にあります。
嗅覚に優れる鼻を使って、ものの感触を探る行動をよくとります。とくに隙間や窪み、境界線といった場所を丹念に鼻で調べる習性があります。鼻の高さはニホンイノシシの成獣で約40cm、幼獣(ウリボウ)で約20cmです。因みに、電気柵を設置する場合は、柵線を鼻が当たるあたりに通すと、高い防護効果が見込めます。
学習能力は高く、強度の甘い金網程度なら、簡単に突破します。 一度学習したことは半年以上記憶しているとされ、「餌場」と認識すれば、執拗に何度も侵入するようになります。
侵入に成功した他のイノシシを真似るといった行動もとります。光、音、匂いを使った防除に対しても、危険がないと知られるとすぐに慣れてしまいます。生態や行動を考慮した被害対策
イノシシは繁殖力が高いため、被害防除だけでなく駆除も行う必要があります。行動圏は意外と狭いため、特定の地域に被害が集中している場合は、近くにイノシシが定住していると考えてよいでしょう。
生息地を把握して、定住する個体を駆除することが重要です。 また、臭いや味による忌避資材は、あくまで一時的な効果しかないと考えたほうが良いでしょう。忌避資材によって忌避行動が確認されたと思っても、実のところは臆病な性質から普段と違うものを避けていただけで、慣れると全く効果がなくなったというパターンがほとんどです。
本質的にイノシシを忌避させるのであれば、イノシシが人間の近くで定住しないようにする環境づくりが重要です。そのためには、以下の対策が挙げられます。
被害を放置すると、イノシシが大胆になっていき、被害エリアが拡大する場合もあります。上記の対策を地域全体で取組むこと、そして取組を継続して行うことが大切です。
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