設置場所や動物の種類によっても、電気柵の設置方法には違いがあります。
今回は電気柵の設置方法をステップごとに解説します。動物の種類別のポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
電気柵の設置方法を5つのステップで解説
電気柵は、農作物を育てる畑の周囲を電気が流れる柵で囲み、野生動物の侵入を防ぐ獣害対策です。 柵に触れた動物を駆除するのではなく、柵に触れたときに一瞬発生する電気刺激でショックを与えます。心理的な恐怖感を与え「柵に近づかない」ことを学習させ、動物を畑から遠ざけるのが目的です。しかし、設置の仕方が誤っていたり、正しく動作しなかったりすると、動物は電気柵を怖いと認識せず効果が下がってしまいます。
では、きちんと電気柵の効果を発揮し、大切な農作物を守るための正しい設置方法を、ステップ別に見ていきましょう。
ステップ1.必要な機材や道具を揃える
まずは電気柵の設置に必要な機材と、作業時に使う道具を揃えます。【電気柵に必要な機材】
・本体
・支柱
・クリップ(碍子:がいし)
・電柵線
・アース
・簡易テスター(検電器)
・ゲートハンドル
・危険表示板
電気柵を設置するには、上記の機材を揃える必要があります。
専門的な知識や経験がある場合や交換部品が欲しいといった場合は、個別に機材を購入しても問題ありません。しかし初めて電気柵を設置するなら市販のセット商品を購入するのがおすすめです。必要な機材をまとめて揃えられ、すぐに設置作業に取りかかれます。
またセット購入の方が単品購入よりも価格もお得になっています。新しい農地に電気柵を設置するなら、セット商品でまとめて購入すると手間がかからないでしょう。
【設置作業に必要な道具】
・ゴムハンマーまたはプラハンマー
・ハサミまたはニッパー
・作業用の手袋
設置作業には、杭や支柱を打ち込むためのゴムハンマーやプラハンマーが必要です。鉄アハンバーは支柱を傷付ける恐れがあるため避けるようにしてください。
また、電柵線を切るためのハサミやニッパーも用意しておきましょう。怪我の防止に作業用の手袋も用意しておくと安心です。
ステップ2.設置前の準備をする
必要な機材や道具を揃えたら、電気柵を設置するための準備を行います。具体的には、設置する土地の整備です。まず設置個所の下草を刈り取ってしまいます。雑草が電気柵に触れると漏電が発生し、本体が正常に動作しない可能性があります。
また背の高い雑草は野生動物が身を潜めるには格好の環境となるため、きれいに刈り取っておきましょう。電気柵の近くに木がある場合は、枝の伸び具合も確認しておきます。
支柱部分は直接地面に打ち込むため、地面がデコボコしているならきれいに整地しておきましょう。場所によって高低差があると、野生動物が地面を掘って侵入してしまうため、できるだけ高低差が生まれない環境を準備しておきます。
ステップ3.支柱と柵を設置する
次に支柱と柵を設置していきます。手順は次のとおりです。1.支柱にクリップを取り付ける
2.支柱を地面に打ち込む(地面に対して20~30cm程度)
3.クリップに沿って横に柵線を張り巡らせていく
4.横に張った柵線を縦につなぐ
5.ゲートハンドルを取り付ける
6.危険表示板を設置する
動物 |
イノシシ |
シカ |
サル |
柵の間隔 |
20cm間隔 |
30cm間隔 |
20cm間隔 |
段数 |
2〜3段 |
4段 |
8段 |
支柱の間隔 |
200〜400cm |
300〜400cm |
300〜400cm |
支柱には事前にクリップ(碍子:がいし)を取り付けておきます。
上記の表にあるように、対象となる動物の種類によって、柵の段数を調整します。例えばイノシシなら2段張り、シカなら4段張りといった具合です。
クリップはこの段数の数に合わせて取り付けていきしょう。取り付け位置はあとで調整が可能です。
支柱はぐらぐらしないよう地面に対して20~30cm程度打ち込んでください。打ち込む間隔も、動物の種類によって距離を調節します。 注意したいのが、傾斜地と支柱の距離です。
傾斜地の近くに支柱を打ち込むと、傾斜を降ってきた勢いで野生動物が電気柵を飛び越える可能性があります。傾斜地と支柱とは2m程度距離を取るようにしてください。
また、さきほど地面に高低差があると動物が侵入する恐れがあるとご紹介しました。どうしても高低差が発生する場合は、その部分だけ柵の段数を増やし、隙間ができないよう工夫してみましょう。
ステップ4.本体とアースを設置する
柵の設置が終わったら、本体を取り付けていきます。 本体の種類によって、ポールに差し込むタイプやネジを使って取り付けるタイプがあります。製品の取り扱い説明書を読み、取り付けをおこなってください。また、太陽光パネルが付いているタイプの本体は、十分に日があたる場所を選んで設置しましょう。 次にアース線を地面深くに埋め込んでいきます。
石場を避け、湿り気のある場所に埋め込むのがポイントです。
ステップ5.電気を通してテスターで確認する
最後に実際に電気を通して、テスターで確認をおこないます。テストは一箇所だけでなく、複数箇所を確認して電圧が安定しているかチェックしてください。電気柵を設置したら、その日から稼動を開始させます。一晩でも稼動しない間に動物が侵入すると、「電気柵は怖くない」と学習してします。これでは電気柵の効果を発揮できません。電気柵の取り付け作業はその日のうちに稼動できるよう、時間と人手を確保しておきましょう。
動物別の設置ポイント
最後に代表的な動物の種類ごとに、電気柵を設置する際のポイントをご紹介します。1.イノシシ
イノシシは鼻が非常に敏感なので、鼻の高さに柵線があたるよう設置するのがポイントです。毛で覆われている体の部分に触れると、効果が下がってしまいます。イノシシの鼻の位置は20~30cm程度なので、この高さに柵を取り付けてください。またイノシシは地面を掘って柵の下から侵入を試みる場合があります。地面の高低差がある場所は、柵の段数を増やすなどして隙間が生まれないようにしましょう。
2.シカ
シカは跳躍力があり、電気柵を飛び越えて侵入する力があります。こうした侵入を防止するために、傾斜地と支柱の距離をしっかり保つのがポイントです。支柱の高さもやや高くしておくと効果的でしょう。 またシカは跳躍力があるとはいえ、やはり被害で多いのは下段からのくぐり抜けです。高低差がある場所は段数を増やすなど、隙間をしっかりケアするようにしてください。
3.サル
サルは他の動物に比べて体のサイズが小さいため、電気柵の段数を多めにしてください。8段程度が目安です。また周りに高い木や電柱などがあると、高所まで登って飛び込んで侵入してきます。電気柵とサルが登りそうな箇所とは、ある程度距離を取り、不要な枝は切り落とすなどして対策を講じておきましょう。
まとめ
今回は電気柵の設置方法や、動物別の対策のポイントについて解説しました。 電気柵は獣害対策に効果的な方法ですが、設置方法に誤りや隙があると、動物の侵入を許してしまいます。しっかりポイントを押さえて、効果を最大限引き出しましょう。 また電気柵と合わせてアニマルフェンスやネットなど、物理的な防御対策をおこなうと効果がさらに高まります。大切な農作物を守るために、万全の環境を整えておきましょう。
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