鳥獣被害対策マガジン
イノシシが佐世保市内の住宅地に現れ、住民を襲う
10月1日、午前7時55分ごろ、長崎県佐世保市の住宅地にイノシシが現れ、2人が手などをかまれた。被害を受けたのは、車いすに乗っていた59歳の男性と、89歳の女性で、指の骨を折る大けがであった。 他にも、原付バイクや車に衝突し、警察や猟友会が警戒していたところ、午後になって2人を襲ったと見られるイノシシが市内で発見され、駆除された。体長約1.2メートル、推定体重70~79kgのメスのイノシシであった。 上記被害発生後、目撃者から通報を受けた警察と消防は、佐世保市に速やかに情報提供し、市が捕獲のため猟友会に連絡。現場付近では防災行政無線やチラシで住民に注意を呼び掛けていたという。 長崎県内でイノシシによる人身被害の報告は本年度初めてであったが、2015年度と16年度の被害報告はともに2件だった。 長崎県はこれを受け、10月5日、関係部署の連絡会議を開き、今後イノシシなど野生動物の出現に備え、関係機関の連絡体制や役割を定めたマニュアルを作成する方針を確認した。会議には県警の担当部署も参加した。
イノシシが佐世保市内の住宅地に現れ、住民を襲う
10月1日、午前7時55分ごろ、長崎県佐世保市の住宅地にイノシシが現れ、2人が手などをかまれた。被害を受けたのは、車いすに乗っていた59歳の男性と、89歳の女性で、指の骨を折る大けがであった。 他にも、原付バイクや車に衝突し、警察や猟友会が警戒していたところ、午後になって2人を襲ったと見られるイノシシが市内で発見され、駆除された。体長約1.2メートル、推定体重70~79kgのメスのイノシシであった。 上記被害発生後、目撃者から通報を受けた警察と消防は、佐世保市に速やかに情報提供し、市が捕獲のため猟友会に連絡。現場付近では防災行政無線やチラシで住民に注意を呼び掛けていたという。 長崎県内でイノシシによる人身被害の報告は本年度初めてであったが、2015年度と16年度の被害報告はともに2件だった。 長崎県はこれを受け、10月5日、関係部署の連絡会議を開き、今後イノシシなど野生動物の出現に備え、関係機関の連絡体制や役割を定めたマニュアルを作成する方針を確認した。会議には県警の担当部署も参加した。
森林における鳥獣被害の現状
野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカやクマ等による森林被害が深刻化しています。被害面積は、全国で約8,000ヘクタール程となっており(東京ドーム約1700個分)、このうちシカによる被害が約8割、シカ以外(ノネズミ、クマ、カモシカ、イノシシなど)による被害が残り2割を占めます(林野庁平成27年度のデータより引用)。 特に、新たに設立された林業の植地(新植地)は、これらの被害に対して脆弱です。 新植地では、比較的やわらかな葉を持つヒノキの被害が目立つものの、スギをはじめ、すべての植栽木が食害に遭います。特に広葉樹の植栽木はほとんど食べられてしまいます。これらの食害によって、樹木の発育不良、枝分かれや死滅が発生する可能性があり、造林上の大きな障害となります。 また、未来を担う稚樹を含む下層植生※が消失し、林床が裸地化してしまうことによって、土壌が流出し崩壊地が発生する等、国土にとってもさまざまな弊害が懸念されます。 森林のもつ多面的機能への影響だけでなく、森林そのものの存在自体が危ぶまれる状況にもなりかねないのです。 ※下層植生:森林において上木に対する下木(低木)や、草本類からなる植物集団のまとまりのこと。上層木とともに、その地域に特徴的な植生を示し、その土地の環境を知る上での指標となります。 また、森林被害を引き起こす獣類の増加にともない、ヤマビルやマダニの増加もみられます。ヤマビルは山地の奥地に生息していましたが、シカの分布拡大などで山麓まで生息域を拡大しています。また、マダニも野生動物が出没するような環境に多く生息する傾向があり、野生動物の増加によって被害が増えてきています。 マダニやヒルの駆除は、シカ等の獣類の増加と表裏一体であるため、急には減らせないのが現状です。 シカによる森林被害 シカは、どちらかというと山中よりも平坦地を好むため、昔は山の中よりも平坦地に数多く生息していました。しかし、人間の開発等によって、シカは山中で生息するようになりました。食料となる下層植生が豊富にある伐採跡地や、姿を隠せる樹林がまばらに存在するような森林環境を好みます。 また、尾根沿いの平坦地や、陽当たりの良い緩斜面を好み、そのような場所での森林被害が目立ちます。 シカの生息分布は戦後大きく拡大しており、1978年から始まった調査によると、36年のあいだに分布域を約2.5倍に拡大しています。 特に東北地方や日本海側などの積雪の多い地域の拡大が目立ちます。シカは繁殖力が高く、エサの条件がよければメスは毎年妊娠するため、捕獲しないと年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増すると言われています。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。さらに、現在の捕獲率では、10年後(平成35年度)には453万頭と1.5倍に増加することが予測されています。 森林におけるシカ被害としては、更新地等での植栽木等の食害があります。 シカの生息密度が高いエリアの森林では、シカは飢えれば何でも食べるので、シカの口が届く高さの枝葉や樹皮、さらには下層植生がほとんど消失してしまっている場合もあります。 またシカによる樹皮の剥ぎ取りも森林被害として深刻な問題です。剥皮は、シカが樹皮や形成層を食べることによるものと、オスの角こすりによるものがあります。剥皮によって傷ついた樹木は感染する可能性があり、また傷ついた樹木の下部が多く傷つくため、樹木の最も貴重な部分の品質が低下してしまい、林業家にとっても深刻な問題となっています。 シカ以外による森林被害 シカによる被害に比べると、割合は多くありませんが、クマやノネズミ、ノウサギ、エゾジカなどによる森林被害もあります。 ノネズミ、ノウサギによる森林被害 野ネズミのうち、被害をもたらすのはエゾヤチネズミとムクゲネズミで、植栽木の樹皮及び地下の根等の摂食などによる食害です。エゾヤチネズミは、ユーラシア大陸に広く分布するタイリクヤチネズミの亜種で、日本では北海道だけに生息しています。 日本では、北海道を除いてノネズミによる林業被害は大きな問題となっておらず、ムクゲネズミは環境省のレッドリストで準絶滅危惧とされるなど、生息範囲は限られている状況です。一般的には、カラマツやスギが被害を受けやすく、これらに比べるとグイマツ、アカエゾマツ、トドマツは被害を受けにくいですが、いずれの樹種にも被害の発生が報告されています。 また、ノウサギによる森林被害については、広範囲にわたって枯死するような被害はまれで、報告されているのは被害の一部のみだと推測されます。被害を受けても被害木が生き残っていることが多いため、実態が十分に把握されていません。 特に、広葉樹はノウサギを受けやすいと言われており、食害を受けると枯死に至らなくても誤伐などの危険性が高まるため、注意が必要です。 クマ、エゾジカによる森林被害 エゾシカは、日本列島やユーラシア大陸東部に分布するニホンジカの亜種で、日本列島のニホンジカのなかでは最も大型のものです。かつては北海道に広く分布していましたが、明治時代の乱獲や大雪により個体数が減少しました。しかし、近年は北海道の東や日高地方などに残っていた個体群が急増しています。 エゾシカによる被害は、広葉樹やカラマツ類に多く報告されています。広葉樹は植栽面積が少ないため被害面積は小さいものの、被害を受けている割合は高いといえます。エゾシカ被害を受けやすい樹種には、地域によって多少違いがあり、ある地域では被害のなかった樹種が、別の地域では集中的に食害を受けることがあるため、地域ごとに被害状況を把握する必要があります。 クマによる森林被害は、立木の樹皮を剝ぎ、壮齢木の樹皮を歯や爪で剥ぐ「クマ剥ぎ」です。立木の枯損や木材としての価値の低下等の被害を引き起こします。特に伐採適期以上の大径木の被害が顕著な傾向にあります。経済的な損失が大きいため、森林所有者らの林業経営意欲に与える影響も大きいです。 また、クマの主なエサの一つである堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)は、数年周期で豊作と凶作を繰り返すため、凶作の年の場合、農地や集落への出没が増える傾向がみられます。 その他の森林被害...
森林における鳥獣被害の現状
野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカやクマ等による森林被害が深刻化しています。被害面積は、全国で約8,000ヘクタール程となっており(東京ドーム約1700個分)、このうちシカによる被害が約8割、シカ以外(ノネズミ、クマ、カモシカ、イノシシなど)による被害が残り2割を占めます(林野庁平成27年度のデータより引用)。 特に、新たに設立された林業の植地(新植地)は、これらの被害に対して脆弱です。 新植地では、比較的やわらかな葉を持つヒノキの被害が目立つものの、スギをはじめ、すべての植栽木が食害に遭います。特に広葉樹の植栽木はほとんど食べられてしまいます。これらの食害によって、樹木の発育不良、枝分かれや死滅が発生する可能性があり、造林上の大きな障害となります。 また、未来を担う稚樹を含む下層植生※が消失し、林床が裸地化してしまうことによって、土壌が流出し崩壊地が発生する等、国土にとってもさまざまな弊害が懸念されます。 森林のもつ多面的機能への影響だけでなく、森林そのものの存在自体が危ぶまれる状況にもなりかねないのです。 ※下層植生:森林において上木に対する下木(低木)や、草本類からなる植物集団のまとまりのこと。上層木とともに、その地域に特徴的な植生を示し、その土地の環境を知る上での指標となります。 また、森林被害を引き起こす獣類の増加にともない、ヤマビルやマダニの増加もみられます。ヤマビルは山地の奥地に生息していましたが、シカの分布拡大などで山麓まで生息域を拡大しています。また、マダニも野生動物が出没するような環境に多く生息する傾向があり、野生動物の増加によって被害が増えてきています。 マダニやヒルの駆除は、シカ等の獣類の増加と表裏一体であるため、急には減らせないのが現状です。 シカによる森林被害 シカは、どちらかというと山中よりも平坦地を好むため、昔は山の中よりも平坦地に数多く生息していました。しかし、人間の開発等によって、シカは山中で生息するようになりました。食料となる下層植生が豊富にある伐採跡地や、姿を隠せる樹林がまばらに存在するような森林環境を好みます。 また、尾根沿いの平坦地や、陽当たりの良い緩斜面を好み、そのような場所での森林被害が目立ちます。 シカの生息分布は戦後大きく拡大しており、1978年から始まった調査によると、36年のあいだに分布域を約2.5倍に拡大しています。 特に東北地方や日本海側などの積雪の多い地域の拡大が目立ちます。シカは繁殖力が高く、エサの条件がよければメスは毎年妊娠するため、捕獲しないと年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増すると言われています。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。さらに、現在の捕獲率では、10年後(平成35年度)には453万頭と1.5倍に増加することが予測されています。 森林におけるシカ被害としては、更新地等での植栽木等の食害があります。 シカの生息密度が高いエリアの森林では、シカは飢えれば何でも食べるので、シカの口が届く高さの枝葉や樹皮、さらには下層植生がほとんど消失してしまっている場合もあります。 またシカによる樹皮の剥ぎ取りも森林被害として深刻な問題です。剥皮は、シカが樹皮や形成層を食べることによるものと、オスの角こすりによるものがあります。剥皮によって傷ついた樹木は感染する可能性があり、また傷ついた樹木の下部が多く傷つくため、樹木の最も貴重な部分の品質が低下してしまい、林業家にとっても深刻な問題となっています。 シカ以外による森林被害 シカによる被害に比べると、割合は多くありませんが、クマやノネズミ、ノウサギ、エゾジカなどによる森林被害もあります。 ノネズミ、ノウサギによる森林被害 野ネズミのうち、被害をもたらすのはエゾヤチネズミとムクゲネズミで、植栽木の樹皮及び地下の根等の摂食などによる食害です。エゾヤチネズミは、ユーラシア大陸に広く分布するタイリクヤチネズミの亜種で、日本では北海道だけに生息しています。 日本では、北海道を除いてノネズミによる林業被害は大きな問題となっておらず、ムクゲネズミは環境省のレッドリストで準絶滅危惧とされるなど、生息範囲は限られている状況です。一般的には、カラマツやスギが被害を受けやすく、これらに比べるとグイマツ、アカエゾマツ、トドマツは被害を受けにくいですが、いずれの樹種にも被害の発生が報告されています。 また、ノウサギによる森林被害については、広範囲にわたって枯死するような被害はまれで、報告されているのは被害の一部のみだと推測されます。被害を受けても被害木が生き残っていることが多いため、実態が十分に把握されていません。 特に、広葉樹はノウサギを受けやすいと言われており、食害を受けると枯死に至らなくても誤伐などの危険性が高まるため、注意が必要です。 クマ、エゾジカによる森林被害 エゾシカは、日本列島やユーラシア大陸東部に分布するニホンジカの亜種で、日本列島のニホンジカのなかでは最も大型のものです。かつては北海道に広く分布していましたが、明治時代の乱獲や大雪により個体数が減少しました。しかし、近年は北海道の東や日高地方などに残っていた個体群が急増しています。 エゾシカによる被害は、広葉樹やカラマツ類に多く報告されています。広葉樹は植栽面積が少ないため被害面積は小さいものの、被害を受けている割合は高いといえます。エゾシカ被害を受けやすい樹種には、地域によって多少違いがあり、ある地域では被害のなかった樹種が、別の地域では集中的に食害を受けることがあるため、地域ごとに被害状況を把握する必要があります。 クマによる森林被害は、立木の樹皮を剝ぎ、壮齢木の樹皮を歯や爪で剥ぐ「クマ剥ぎ」です。立木の枯損や木材としての価値の低下等の被害を引き起こします。特に伐採適期以上の大径木の被害が顕著な傾向にあります。経済的な損失が大きいため、森林所有者らの林業経営意欲に与える影響も大きいです。 また、クマの主なエサの一つである堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)は、数年周期で豊作と凶作を繰り返すため、凶作の年の場合、農地や集落への出没が増える傾向がみられます。 その他の森林被害...
イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】
目次 1何から始める?市街地のイノシシ対策 1イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 2普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 3人身被害が発生する可能性が高く、緊急対処が必要な場合 猪(イノシシ)は数を減らしていると思っている人も多いですが、そうではありません。 2013年度末のデータでは、イノシシはおよそ98万頭いると推定され、平成元年の個体数の3倍以上となっています。その被害は深刻化・広域化しており、市街地でも「庭を荒らす」「生ゴミをあさる」「イノシシに買い物袋を奪われる」などといった被害が報告されるようになっています。 またイノシシに襲われることによる人身被害の危険もあります。イノシシは、本来神経質で臆病な性質ですが、非常に突進力が強く大人でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険があります。自宅庭先で人が襲われて死亡するという事故まで発生しています(クリックすると朝日新聞記事にジャンプします)。 そのため、市街地でイノシシの目撃情報があれば、行政と住民が協力した対策が必要になりますが、やり方を誤ると重篤な人身事故が起こる可能性もあります。 安全を確保しつつ成果をあげるためには、どのような対処・対策を実施すればよいのでしょうか? 何から始める?市街地のイノシシ対策 市街地における対策は、人身被害の起こるリスクに応じて内容が変わります。ケース別に対処・対策の内容とコツを挙げていきます。 1. イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 住宅地から離れた山中や農地にて、単発的に目撃情報があるような状況です。 人間に対するイノシシの警戒心は比較的高い状態ですので、めったに人前には姿を現さないでしょう。 まずは耕作放棄地などの荒れ地をメンテナンスすること、必要に応じて農地への侵入防止を行うこと、イノシシを捕獲するのに適した場所があれば、「箱罠」等を用いて捕獲するといった対策が必要になります。 別記事で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。 2. 普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 イノシシが人の生活圏にあるものを餌と認識し、出没している状態です。 この場合、住宅地や集落に近い農地の中でも同一エリアでイノシシの目撃情報が多発します。このような状況に至るまでには、地域住民の餌付け行為、もしくは無意識にイノシシに餌を与える行為(例:生ごみを放置する)が必ずあります。 特に意図的にイノシシに餌を与えている場合、イノシシは人を恐れず大胆になります。その結果、イノシシが人を襲うようになり人身事故が発生することになります。 イノシシに買い物袋を奪われる、体当たりされる、噛まれる、庭を掘り返される、ごみステーションが荒らされる、といったことが報告されるまでになると、人に積極的に近づいてくる状態ですので非常に重篤な状態です。 まずやるべきことは、その地域に住む住民の理解を得ることです。 住民への啓蒙活動 とにかく餌を与えてはいけない(あるいは餌となるものを放置しない)ことを、住民が理解・徹底することが重要です。ゴミ出しルールを厳格に遵守することも必要です。 なお地域住民の中には、動物愛護の考え方(飢えた動物に餌をあげることが愛護に通じるという考え方)をもっている人もいます。 このような人は、餌付けをしないようにすることや、対策・駆除行為をすることに抵抗を感じます。こうした考え方をもつ人に対しては、正しい情報を理解してもらう必要があります。 イノシシが人を恐れなくなると人を襲うようになり、重篤な事件につながる恐れがあること、その結果駆除しなければならない数が増えてしまうことをチラシや説明を通じてきちんと理解してもらいましょう。...
イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】
目次 1何から始める?市街地のイノシシ対策 1イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 2普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 3人身被害が発生する可能性が高く、緊急対処が必要な場合 猪(イノシシ)は数を減らしていると思っている人も多いですが、そうではありません。 2013年度末のデータでは、イノシシはおよそ98万頭いると推定され、平成元年の個体数の3倍以上となっています。その被害は深刻化・広域化しており、市街地でも「庭を荒らす」「生ゴミをあさる」「イノシシに買い物袋を奪われる」などといった被害が報告されるようになっています。 またイノシシに襲われることによる人身被害の危険もあります。イノシシは、本来神経質で臆病な性質ですが、非常に突進力が強く大人でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険があります。自宅庭先で人が襲われて死亡するという事故まで発生しています(クリックすると朝日新聞記事にジャンプします)。 そのため、市街地でイノシシの目撃情報があれば、行政と住民が協力した対策が必要になりますが、やり方を誤ると重篤な人身事故が起こる可能性もあります。 安全を確保しつつ成果をあげるためには、どのような対処・対策を実施すればよいのでしょうか? 何から始める?市街地のイノシシ対策 市街地における対策は、人身被害の起こるリスクに応じて内容が変わります。ケース別に対処・対策の内容とコツを挙げていきます。 1. イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 住宅地から離れた山中や農地にて、単発的に目撃情報があるような状況です。 人間に対するイノシシの警戒心は比較的高い状態ですので、めったに人前には姿を現さないでしょう。 まずは耕作放棄地などの荒れ地をメンテナンスすること、必要に応じて農地への侵入防止を行うこと、イノシシを捕獲するのに適した場所があれば、「箱罠」等を用いて捕獲するといった対策が必要になります。 別記事で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。 2. 普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 イノシシが人の生活圏にあるものを餌と認識し、出没している状態です。 この場合、住宅地や集落に近い農地の中でも同一エリアでイノシシの目撃情報が多発します。このような状況に至るまでには、地域住民の餌付け行為、もしくは無意識にイノシシに餌を与える行為(例:生ごみを放置する)が必ずあります。 特に意図的にイノシシに餌を与えている場合、イノシシは人を恐れず大胆になります。その結果、イノシシが人を襲うようになり人身事故が発生することになります。 イノシシに買い物袋を奪われる、体当たりされる、噛まれる、庭を掘り返される、ごみステーションが荒らされる、といったことが報告されるまでになると、人に積極的に近づいてくる状態ですので非常に重篤な状態です。 まずやるべきことは、その地域に住む住民の理解を得ることです。 住民への啓蒙活動 とにかく餌を与えてはいけない(あるいは餌となるものを放置しない)ことを、住民が理解・徹底することが重要です。ゴミ出しルールを厳格に遵守することも必要です。 なお地域住民の中には、動物愛護の考え方(飢えた動物に餌をあげることが愛護に通じるという考え方)をもっている人もいます。 このような人は、餌付けをしないようにすることや、対策・駆除行為をすることに抵抗を感じます。こうした考え方をもつ人に対しては、正しい情報を理解してもらう必要があります。 イノシシが人を恐れなくなると人を襲うようになり、重篤な事件につながる恐れがあること、その結果駆除しなければならない数が増えてしまうことをチラシや説明を通じてきちんと理解してもらいましょう。...
ICTを活用した鳥獣害対策
鳥獣害対策の担い手不足を補おうと新技術導入が広がっている。農水省の調査の結果、情報通信技術(ICT)を駆使した鳥獣害対策に42道府県312市町村が取り組んでいることが分かった。 鳥獣害対策としてのドローン導入や、遠隔監視によって設置した罠の捕獲状況を確認する手間を削減したり、おりに獣が入ったら遠隔操作で閉める等、作業の効率化が期待され、今後ICT活用はさらに広がる見通しだ。
ICTを活用した鳥獣害対策
鳥獣害対策の担い手不足を補おうと新技術導入が広がっている。農水省の調査の結果、情報通信技術(ICT)を駆使した鳥獣害対策に42道府県312市町村が取り組んでいることが分かった。 鳥獣害対策としてのドローン導入や、遠隔監視によって設置した罠の捕獲状況を確認する手間を削減したり、おりに獣が入ったら遠隔操作で閉める等、作業の効率化が期待され、今後ICT活用はさらに広がる見通しだ。