くくり罠、箱罠の罠の選び方

野生動物による被害を減らすために捕獲をこれから始める方、ぼたん肉とも呼ばれる美味なイノシシ肉をはじめとするジビエ料理を味わうために捕獲をする方など、銃猟以外で野生動物の捕獲をするのに必須となるのが「罠」です。

日本では古くからイノシシによる農作物被害を防ぐために落とし穴などの罠が使われてきましたが、現代においては様々な観点から廃れたり禁止されている罠もあります。例えば、昔話などで出てくる「とらばさみ(獣の足をはさんで捕まえる)」は有名ですが、現在においては禁止猟具になります。

そのような中で、現在使用できる罠の種類は、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」の3種類に区分されます。

これらの罠の特徴を踏まえたうえで、設置場所の環境や予算、かけられる労力などを考慮し、適切な罠を選択しましょう。

イノシシ・シカなどの大型獣用罠の選び方

大型獣罠の選び方

※囲い罠は条件を満たせば狩猟免許不要で鳥獣の捕獲を行えます。

箱罠とくくり罠の比較

箱罠は餌を使って複数の獣を一度におびき寄せることが可能ですので、一度に複数の捕獲が可能です。また仕掛けに多くのテクニックを要することがないので、捕獲のハードルはくくり罠よりも低いです。

一方で、くくり罠は罠一つにつき一匹の獣しか捕らえられません。また、くくり罠は獣の足の運びを予想し、踏み込むであろう場所にピンポイントで仕掛ける必要があります。そのため、捕獲するためにはある程度の慣れと経験が必要になります。

しかしながら、箱罠は重量が重くサイズも大きいため一度設置すると移動に手間がかかる点を考慮すると、くくり罠は場所を選ばず手軽に仕掛けられる点が長所になります。また単価が箱罠より安いため、複数個所の設置もコストを抑えられます(ただし、設置数が多いだけ設置作業や見回りに労力がかかります)。

また、経験をお持ちの方にとっては、仕掛け方や部材にオリジナルの工夫を加えることができるのも、くくり罠の魅力です。

箱罠とくくり罠、どちらを選ぶ?

箱罠とくくり罠、どちらを選ぶかはシチュエーションによって変わります。

獣の警戒心によって使い分ける

箱罠は警戒心が低い個体を一網打尽にするのに向いています。罠による捕獲を学習していない個体の場合、箱罠の扉が落ちないようにしたうえで寄せ餌で慣らせば、安全に食べられると認識して比較的簡単に罠の中に入ります。

一方で、特にイノシシの場合、罠を学習して警戒心が高くなっている個体は中々箱罠の内部に入ろうとしません。こういった個体の場合は、くくり罠を使って捕獲するとよいでしょう。

トレイルカメラを使って、獣の動きを観察し、罠の設置を工夫するのも一つの手です。例えば、警戒心の高い個体が箱罠に近づくものの決して中に入ろうとしないような様子が観察された場合、箱罠の数メートル先にくくり罠を設置しておくと効率よく捕獲することができます。

設置する場所によって使い分ける

箱罠はその構造上、扉が傾いたりしないよう平らな場所に設置する必要があります(傾くと、扉がスムーズに動作しなくなる場合があるため)。

また、イノシシ・シカ用箱罠は比較的大きさがあるため、設置はある程度の広さが必要になります。獣道や細い道・狭いところには、くくり罠の設置のほうが向きます。

獣の種類によって使い分ける

くくり罠の場合、主な捕獲対象は、イノシシとシカです。箱罠の場合は、獣の種類に応じて様々なサイズがありますので、対象に合ったものを選ぶと良いでしょう。

箱罠をえらぶ

イノシシ等を捕獲するための機材として、メインで選ばれるのはやはり捕獲檻(箱罠)です。箱罠とは、野生動物を捕獲する場合に用いられる箱状の檻のことで、餌を使って箱の中に獲物を引き寄せて、獲物が中に入ると扉が落ちて捕獲完了!という仕組みです。

くくり罠などの他の罠の場合、獣の動きを予測して設置方法を工夫しなければ、なかなか獲物を捕えることができません。一方、箱罠の場合は餌の力で誘因するので、獣の動きを多少読み違えても捕獲が可能であり、初心者にも向いています。


ターゲットの大きさから選ぶ

箱罠の大きさは、どの獣がターゲットになるかによって、大まかに決めることができます。動物に対して大きすぎる罠を使ってもロスが多くなり、大型獣に対してはそもそも小さすぎる箱罠は使えません。

また、大きいほうが複数頭同時に捕獲できる可能性も高くなりますが、値段も高くなります。 イノシシ・シカなどの大型獣の捕獲に使われる箱罠の標準的なサイズは、高さと幅がそれぞれ1メートル、奥行きが2メートル程度です。

網目の大きさは、狭いほうのピッチが10cm未満のものがほとんどで、ウリボウなどの小型獣もあわせて捕獲することが想定されています。また、この大きさであれば、大型のイノシシの捕獲も可能です。
※大型のイノシシは非常に力が強いため、なるべく頑強な構造の箱罠を選ぶことをお勧めします。

これより一回り小さいサイズもイノシシ・シカ用として多く出回っています。上記サイズと比べると重量がやや軽くなるので、取り回しやすいというメリットがあります。近年関東方面で問題となっているキョンの捕獲にも使えます。

重い箱罠の設置は体力的に厳しいという方や、女性のハンターにもお勧めです。

サルをターゲットにする場合は、罠の外から網目に手をいれて餌を取ったりすることがあるので、その点も考慮した網目のものを選ぶと良いでしょう。


素材や形状から選ぶ

イノシシなど力が強い大型の獣を捕獲する際は、檻に鉄筋などの頑強な素材を使った箱罠を選ぶとよいでしょう。

構造が弱いせいで箱罠が破損し、獣が外に飛び出すと、重大な事故につながる恐れがあります。 一方で、頑強な構造の場合、その分重量も増えてしまいます。力の強くない獣に対して過度に頑強なものを使う必要はありません。

力の強い大型獣でなければ、ワイヤメッシュなどの素材を用いた箱罠でも全く問題ないでしょう。 形状としては片扉式と両扉式があり、大型の箱罠には両扉式が採用される場合もありますが、ほとんどが片扉式となります。

なお両扉式の場合、獣の目線で罠の内部を見たとき突き当りに檻が見えないため、罠の中に歩を進めやすくなる傾向があります。一方の扉を閉めておけば、片扉として使用することも可能です。

箱罠表

イノホイおすすめの箱罠

囲い罠の特徴

箱罠と同様、餌によって獲物を誘因するため、捕獲率は高いです。また面積が広いタイプであれば、工夫次第で一度に多くの獲物を捕獲することが期待できます。 構造上、罠の面積を広げやすいことから、設置場所や捕獲頭数によってカスタムしやすい点や、罠のサイズが大きいため捕獲する獲物を傷つけにくい点も長所の1つです。

なお、囲い罠には特例があり、以下を満たしていれば狩猟免許を取得しなくても捕獲が可能となっています(必ず、設置する地域の自治体担当課に事前に確認するようにしてください)。

※囲い罠特例について

囲い罠

本来、イノシシやシカなどの有害鳥獣を捕獲するには狩猟免許の取得と狩猟者登録が必要です。ただし以下の条件を満たせば狩猟免許がなくても捕獲することができます。

  1. 囲い罠を使用すること
  2. 狩猟期間中であること
  3. 狩猟対象が狩猟鳥獣であること
  4. 農林業者が被害を防ぐために自身が管理する敷地内に罠を設置する場合

上記に該当する場合、許可申請の元、囲い罠を設置することができます。
※地域によって条件が異なります。必ずご購入前に市町村の獣害行政担当課にご確認ください。

くくり罠の特徴

くくり罠の最大の特徴は手軽さです。小型で安価なため、持ち運びが容易に行えて、数を多く仕掛ける方におすすめです。

くくり罠は法廷猟具として認められていますが、イノシシ等を捕獲する場合は、以下の制限があるので注意しましょう。

  • ・輪の直径が12cm以内であること
  • ・締付け防止金具(※1)が装着されていること
  • ・ワイヤーの直径が4mm以上であること
  • ・よりもどし(※2)が装着されていること
くくり罠規制

※1締付け防止金具とは、締め付けすぎて獲物が傷つかないようにするための金具です。容易に輪を広げられる金具(ワイヤーロック)や、輪のしぼりを一定の大きさに制限する金具(ワイヤーストッパー)のことを指し、いずれかが装着されている必要があります。

※2よりもどし(サルカン)とは、ワイヤーとワイヤーを連結するための連結器具を指します。回転するようになっており、糸よれを防ぐことができます。 なお、農林被害が高い水準にある地域の場合、捕獲圧を高めることを目的として、制限が一部解除されている場合もあります。規制の状況を知りたい場合、狩猟者登録をする都道府県に確認してください。

くくり罠表

イノホイおすすめのくくり罠セット商品

イノホイおすすめのセット商品は以下の3タイプ。踏み板、踏み板の台座、仕掛け部分が全てセットになっており、組立作業や工具が不要。届いたらすぐに仕掛けることができます

ハクビシン・アライグマなどの小型獣用罠の選び方

小型獣罠の選び方

小動物用箱罠の特徴

ハクビシンをはじめとする野生鳥獣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)で保護されており、許可なく捕獲することはできません。

ハクビシンを捕獲する場合も、事前に役所への捕獲許可の申請が必要となります。違法な捕獲は罰則の対象となりますので、まずは役所の担当課に問合せましょう。

※ハクビシンは狩猟対象鳥獣に該当しますので、狩猟期間中(11月15日~2月15日)は狩猟に必要な要件を満たしていれば役所での捕獲許可は不要です。

一般的な流れ

以下は、捕獲許可申請手続きの一般的な流れになります。

①捕獲許可申請

各自治体によってそれぞれ指定されている申請書があるので、そちらに必要事項を記入し、窓口に提出します。

捕獲には基本的に箱罠をもちいるため、わな猟免許が必要になります。なお、自宅敷地内で害獣による被害防止が目的とする場合などに限り、狩猟免許が不要な場合もありますので、役所に問合せる際にその点も併せて確認しておきましょう。

②審査

申請された内容を役所が確認し、捕獲が必要かどうかが審査されます。わな猟免許をもっている方が申請した場合は、前年度に狩猟者登録があったか、狩猟災害共済等に加入しているか、過去に鳥獣関係法令に違反していないか等が確認される場合もあります。

③許可証交付

申請者に捕獲許可証が交付されます。申請から許可まで時間がかかることもあるため、被害が見られたら早めに申請しておくと良いでしょう。

④捕獲の実施

捕獲許可の期間が定められていますので、その期間内に捕獲作業を実施します。なお、捕獲したハクビシンは別の場所に放獣せず、申請者が責任をもって処分しなければならない場合がほとんどです。

⑤捕獲結果報告

捕獲許可証を役所に返却する際に、捕獲結果の報告が求められます。

小動物用箱罠をえらぶ

ターゲットの大きさから選ぶ

ハクビシンやアナグマなど、小型獣の個体をターゲットにするのであれば、より小さいサイズ(幅と高さがそれぞれ0.5メートル以下ほど)のものでよいでしょう。

このサイズの箱罠は値段も安く、ホームセンターなどで販売されていることもあります。外来種であるアライグマやヌートリアを捕獲する場合も、小さいサイズの箱罠を使用します。

さらに小さいイタチやテン、リスなどをターゲットにするのであれば、すり抜けを防止するために、網目が3センチ程度の細かいものを選ぶとよいでしょう。

トリガー方式から選ぶ

箱罠を作動させる仕掛け(トリガー)にも、いくつか種類があります。例えば、「蹴り糸方式」はイノシシやシカなどの大型獣の捕獲に採用されることが多いです。箱罠の中に糸を張っておき、ここに力が加わるとトリガーが作動し、扉が落ちます。

罠内に置かれた板の上に足を置くと扉が落ちるのが「踏み板方式」、餌を箱罠内部にぶら下げておき獣がそれを取ろうとして動かすとトリガーが作動して扉が落ちる「餌吊り方式」などもあります。

アライグマやタヌキ、ヌートリア、ハクビシンなどの小型獣の場合は「踏み板方式」や「餌吊り方式」が採用されることが多いです。「蹴り糸方式」であれば、張った糸の上に板を置くなどして「踏み板方式」のように作用させることも可能です。

小動物箱罠表

イノホイおすすめの小動物用箱罠

特定動物専用捕獲器

手先の器用なアライグマや土の中に生息するモグラなど動物の習性や特徴を活かした捕獲器です。対象外の動物を誤って捕獲する心配がありません。

はじめて箱罠の設置をお考えの方へ

日本に生息する鳥獣は鳥獣保護法で守られており、基本的に無断で捕獲することができません。県や市町村などの役所に許可を得て捕獲する「許可捕獲」と、狩猟期間中に狩猟可能な場所で捕獲する「狩猟捕獲」のいずれかがありますが、どちらの場合も、狩猟免許の取得や申請許可などの手続きが必要です。