鳥インフルエンザには「高病原性鳥インフルエンザ」と「低病原性鳥インフルエンザ」がありますが、このうち「高病原性鳥インフルエンザ」は感染力が強く、致死率の高い鳥類の感染症です。
一方で、「低病原性鳥インフルエンザ」は、症状が出ない場合もあれば、咳や粗い呼吸などの軽い呼吸器症状が出たり産卵率が下がったりする場合もありますが、低病原性であっても、家きんの間で感染を繰り返すうちに高病原性に変異する可能性があります。
いずれも国内での発生は、海外から飛来する渡り鳥がウイルスを持ち込むことによるものであると考えられています。これら鳥インフルエンザの発生を予防するには、農場内へのウイルス侵入を防止することが最も重要です。
鳥インフルエンザが発生してしまうと、対応に大きな労力やコストがかかり、また風評被害など直接的でない影響も出る恐れがあるため、日頃からも多くの家きん飼養農場や関連施設において予防対策が徹底されていますが、冬の渡り鳥が国内に滞在するシーズンは特に緊張感が高まります。
多くの農場の場合、各都道府県が行う指導等にしたがって対策を行っているものの、そのうえでさらに自衛的な手段を取れているケースはまだまだ多くありません。
受け身の姿勢ではなく積極的な自衛手段を取るには、基本となる知識が必要となります。そこで、今回は鳥インフルエンザウイルスの侵入が予想される経路を大きく3つに分け、予防のポイントと基本的な対策についてお伝えします。
1. 人・車両等による鳥インフルエンザの侵入を予防
鳥インフルエンザウイルスは人や車両、資材など、あらゆるものに付着して侵入する可能性があります。そのため、農場や家きん舎の出入口では消毒などの衛生対策が必須です。
特に家きん舎の入口は最終の防疫ポイントですので、細心の注意を払いましょう。
具体策
では、ここから農場のポイントごとの侵入予防対策について紹介します。
<農場出入口>
門や侵入防止柵、チェーン等を設備し、入出場時以外に意図せぬ外部からの出入りが発生しないように出来る限り閉じておきましょう。「部外者立入禁止」の看板も設置することをお勧めします。
また、農場出入口には車両消毒装置(ゲート式車両消毒装置・動力噴霧機など)を設置し、出入りする車両の消毒を出来る限り実施するようにします。消毒を終えた車両は指定の場所に駐車します。
徹底した飼育管理を行っている農場の中には、餌の運搬・家畜の出荷の際に、運送会社と専属契約して専用トラックを使用している事業者もいらっしゃいます。 安全・衛生管理を最重点にしている良い事例です。
ここで重要となるのは、消毒をしたからといって、すべてのウイルスが除去される訳ではないということです。
すべてのウイルスを除去するのは消毒ではなく滅菌といいますが、農場において滅菌処理を行うことは不可能であり、「消毒したから大丈夫」という考え方ではなく、消毒してもウイルスが侵入する可能性があることを意識しておく事が重要です。
そのため、外部から持ち込むものは徹底して消毒するようにします。農場へ持ち込まれる資材や器材、宅配便品(他養鶏場と接触の可能性のあるものは特に)なども表面を消毒するようにしましょう。
<家きん舎出入口>
外来者の出入りや私物の持ち込みは最小限にすることが基本となります。入口には踏込消毒槽を設置し、消毒液は毎日交換します。 舎内に入場する際は、専用の衣服・履物等に更衣します。舎外の汚れを持ち込まないよう、衛生的な区画と非衛生的な区画を確実に分けましょう。
例えば、すのこを設置して手前で履物を脱ぎ、すのこに乗ってから舎内専用の履物に履き替えるといったことも効果的です。 舎内で使用する器材や資材は、洗浄・消毒を行ってから持ち込みましょう。
家きん舎ごとの入口に踏込消毒槽と手指消毒用の手押式消毒器、または消毒薬噴霧器等を設置します。 入場の際は農場専用の衣服等に更衣します。更衣室では殺菌灯を点灯し、交換前後の衣服・履物を分けて保管したり、一方通行にしたりと、交換前の汚れが交換後の衣服等に伝播しない構造にしましょう。
また、更衣室にはできる限りシャワー室と洗濯室を設備します。入口・出口にはそれぞれ踏込消毒槽を設置し、消毒液は毎日交換します。
2. 野鳥・野生生物による鳥インフルエンザウイルスの侵入を予防
先述した通り、渡り鳥が国内へ鳥インフルエンザウイルスを持ち込み、そのウイルスが野鳥や動物を媒介して家きん舎に侵入する可能性があります。家きん舎周辺にはいろいろな生物が住んでおり、すべてを排除することは困難ですが、なるべく数を減らし、侵入させない対策をとりましょう。
具体策
ここから、家きん周辺に野鳥や野生動物が侵入するのを防ぐ対策を紹介します。
<家きん舎>
スズメやカラスなどの野鳥対策として、2cm以下の網目の防鳥ネットや金網の設置は必須です。防鳥ネットは隙間ができないように上部から覆い、垂らすように張ることがポイント。ゆったりと張ることで、破れにくくもなります。また、破損を見つけた場合はすぐに補修しましょう。
ネズミ等が侵入しそうな小さな隙間もふさぎます。ネズミは個体によっては1.5cmの隙間でも侵入できるので、100%隙間を塞ぐというのは困難です。もしネズミを発見したら侵入経路を特定し、捕獲装置の設置や殺鼠剤の使用などにより駆除しましょう。また、小さな動物が農場に近づかないよう、対応エリアを広めにとっておくことも有効です。
家きん舎に出入りしたらすぐに扉を閉めましょう。強風にあおられたり、野生生物にこじ開けられたりしないように、扉の前に重しを置いておくこと良いでしょう。
<家きん舎周辺>
野生生物が侵入・滞在しづらい環境を作ることがポイントです。草刈りや木の伐採、電柱の撤去などを行い、できるだけ開けた空間を作りましょう。また、周囲に飼料がこぼれていたり、生ゴミが捨てられたりしていないか確認するなど、清潔を保ちます。
家きん舎周辺や農場敷地周縁、農場内の道路に定期的に消石灰を散布しましょう。消石灰は鳥インフルエンザウイルスの消毒効果だけでなく、野生生物の忌避や、足跡等が残ることにより侵入経路を特定しやすいなどの効果も得られます。
3. 飲用水・飼料の汚染による鳥インフルエンザウイルスの侵入を予防
河川水や湖沼水は野鳥の排せつ物等により、鳥インフルエンザウイルスに汚染されている可能性があるため、消毒が必要です。また、飼料保管庫なども野生生物が餌を求めて侵入したり、排せつ物等により汚染される可能性がありますので、家きん舎と同様の対策を行います。
具体策
飲用水・飼料の汚染による鳥インフルエンザウイルスの侵入を予防するには具体的にどうすでばよいのか、説明していきます。
<飲用水>
家きんの飲用水には、新鮮な水道水を使用しましょう。また、水道水は貯留したままにしておくと塩素濃度が低下するため、注意が必要です。 水道水以外の水(野生動物の排せつ物等が混入する可能性のある水)を飲用水として使用する場合は、次亜塩素酸ナトリウムなどで遊離塩素濃度が0.1ppm以上となるように調整しましょう。
飼養衛生管理基準でも、点滴式の塩素消毒と塩素濃度のモニタリングが推奨されています。
<飼料>
貯蔵には蓋付きの容器やタンクを使用します。周囲に飼料がこぼれた場合は、直ちに取り除きましょう。また、袋詰め飼料などを保管する倉庫や堆肥舎、死体保管庫等にも野生生物は侵入します。家きん舎と同様に、防鳥ネット等の設置や、隙間をふさぐなどの対策をとりましょう。
まとめ
今回は鳥インフルエンザの発生を予防するために、「ウイルスを侵入させない」という観点から、さまざまな防止対策をお伝えしました。防疫対策をするにも膨大な費用がかかり、生産者の方々にとっては大変な痛手となります。しかし、工夫をすることで抑えられるコストもあります。
また、お伝えした対策をすでに実施済みという方も、防鳥ネットが破損していないか、新たな隙間ができていないかなど、対策場所の定期的な確認を継続していきましょう。
箱罠
くくり罠
パーツ類
電気柵
自作キット
防獣グッズ
監視カメラ

箱罠
くくり罠
囲い罠
防除・忌避グッズ
電気柵
罠監視用カメラ
運搬グッズ
罠作動検知センサー
狩猟お役立ち品
ジビエ調理器具
狩猟関連書籍
防鳥グッズ
農業資材・機械
ジビエ
イノシシ
シカ
キョン
サル
アライグマ
アナグマ
ハクビシン
タヌキ
ヌートリア
ネズミ
モグラ
クマ
ハト
カラス