アナグマは、古くから日本人に馴染みのある野生動物です。例えば、「同じ穴の狢(ムジナ)」という言葉があります。
一見別のように見えても、実は同類の悪党であることをを指す言葉ですが、この「狢(ムジナ)」とはアナグマの異称です。
タヌキと間違えられることも多いアナグマですが、タヌキとは似て非なる動物です。この記事では、アナグマの特徴や、鳥獣被害対策としての対応方法を説明します。
アナグマの特徴
アナグマはイタチ科に属する動物で、日本の固有種であるニホンアナグマのことを指します。基本的に夜行性で、日中は巣穴で休息します。性格は温厚で、他の動物と争わずにうまく共存することが多いです。
警戒心も強くないので、人間が近づいても逃げないことがあります。餌探しなど、他のことに気を取られていると、そばにいる人間に気づかないこともあります。
体の大きさや体つき
頭胴長は約40~60センチ程度、体重は10kg前後です。体の大きさや色が似ていることから、タヌキやアライグマ、ハクビシンなどと見間違えられることも多くあります。
指は前肢、後肢ともに5本あり、親指はほかの4本の指から離れていて、どの指にも鋭い爪があります。
分布
九州、四国、本州などに広く分布しています。おもに里山の森林域で土中にトンネル状の巣穴を掘って生活します。巣穴は地下で複雑につながっており、出入口が複数あります。
なお、タヌキは自ら巣穴を掘ることはしませんが、アナグマが掘った巣穴の内部をタヌキが休息・繁殖のために利用することがあり、前述の「同じ穴の狢(ムジナ)」はここから生まれた言葉であると考えられます。
話は逸れますが、愛らしい見た目で人気の犬種ダックスフンドは、ドイツ語でアナグマを指すダックス(Dachs)と、犬を指すフント(Hund)を合わせたことが語源で、巣穴の中にいるアナグマを狩る目的で手足を短く改良された種です。
都市部に出没するケースもあり、建物の天井や床下などに住み着く場合もあります。家屋に侵入されてしまうと、床下に無数の穴を掘られたり、溜め糞という習性によって床下に大量に糞をしたり、その結果として悪臭や害虫の発生を引き起こす原因になることがあります。
食性
雑食性です。昆虫やカエル、モグラ、ミミズなど動物質のものを好みますが、果実類などを食べることもあります。トウモロコシ、スイカ、イチゴなどの農作物が食害を受ける場合もありますが、掘り起こしによって作物が被害を受ける場合もあります。
タヌキ等との違い
タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科ですが、食性や行動で似た部分が多く、古来からこの二種は混合されてきました。例えば、「タヌキ寝入り」と呼ばれる擬死行動は、アナグマでも見られます。
ちなみに、冒頭でムジナとは、主にアナグマのことを指すと書きましたが、地方によってはタヌキやハクビシンを指したり、これらの種をはっきり区別することなくまとめて指している場合もあります。
主な見分け方としては、尾の外観による識別です。タヌキもアナグマも、20センチに満たない短い尾を持ちますが、タヌキの尾にはしま模様がありますので、そこで見分けます。他にも、アナグマはタヌキにくらべて鼻が大きく耳が小さく見えることや、指の本数がタヌキは4本だがアナグマは5本で鋭い爪を持つといった点でも見分けることができます。
ハクビシンもアナグマと見間違えられることの多い動物ですが、ハクビシンには額から鼻にかけて白い線があるのと、尾が長いこと、鼻がピンク色であることなどから見分けることができます。
ハクビシンは高いところを好み、アナグマは低いところが好むため、屋根裏に住み着くケースはハクビシンの場合が多いです。
参考記事:ハクビシン対策について
他にも、アライグマと混同されるケースがあります。 日本固有種であるタヌキやアナグマと異なり、アライグマは外来種です。タヌキやアナグマとの違いとして、長いふさふさとした尾に黒い横縞がアライグマにはある点が挙げられます。
また、アライグマも足には5本の指がありますが、アライグマの指はアナグマと比べると長いことが特徴です。
参考記事:アライグマの生態・対策・駆除について
なお、アナグマはアライグマとの競合などによって生息数が減少しているとも言われています。繁殖率もそこまで高くないため、自治体によっては絶滅危惧種Ⅱ類や準絶滅危惧種などに指定されています(地域によっては、近年の個体数は回復傾向にあるともいわれます)。
アナグマ対策について
アナグマ、タヌキ、アライグマ、ハクビシンなどの小型獣を防除対象とする場合、手段としては捕獲を採用するケースが多いです。
そして、捕獲には小型の箱罠を使用します。 アライグマは、外来生物法で指定された特定外来生物であり、生態系や人の生命・身体への影響、農林水産業への被害を防止することを目的に積極的な防除の対象となっています。
一方で、アナグマは鳥獣保護法で定められる狩猟鳥獣に含まれるものの、県によっては捕獲禁止または制限を行っている場合があります。 そのため、捕獲を行う前に、捕獲可能かどうかを自治体に確認しておく必要があります。
もちろん、法定猟法である罠を使用して捕獲する場合は、狩猟免許や登録が前提です。また、猟期以外に捕獲を実施する場合は、有害鳥獣駆除の許可が必要です。 ホームセンターなどでも売られている折り畳み式の箱罠で捕獲を行うことが可能です。
しかしながら、アナグマやアライグマは比較的力が強く、特に体の大きい個体の場合、捕獲できても罠の隙間を押し広げて逃げてしまう場合がありますので、強度の強い罠を選ぶと良いでしょう(イノホイおすすめの罠はこちら>>)。
箱罠の大きさとしては、高さ・幅ともに30cm程度、奥行は80cm程度のもので対応できますが、大き目の個体の場合や捕獲効率を上げたい場合は、高さや幅にもう少し余裕を持たせましょう。
雑食性のため、餌は果樹をはじめ様々なものが使われます。警戒心も強くないので、捕獲の難易度はそれほど高くありません。
タヌキやハクビシン、アライグマを狙った罠で混獲されることもあります。 田畑への侵入を防ぐ場合は、地面を掘って入ってくることを防ぐことが重要です。
防護柵を採用する場合、柵の下部30cm程度を地面に埋め込みましょう。ただし、高さが40cm程度だと、乗り越えようとする場合がありますので、埋め込みすぎて、柵を上から超えられないように高さを補うなど工夫しましょう。
アナグマの肉
最後に、アナグマの肉についてですが、非常に美味です。基本的には、さっぱりしておりクセもなく、特に脂が美味しいです(ただし、個体によっては非常に臭みがある場合もあります)。昔話で出てくるタヌキ汁は、おそらくアナグマの肉を使った汁だと推測されます。
ジビエとして出回るケースも稀にあるため、機会があればトライしてみることをお勧めします。