新潟県のほぼ中心部に位置する長岡市に2018年5月、長岡技術科学大学発のソーシャルベンチャー企業として、鳥獣獣害対策専門のコンサルティングを行う「株式会社うぃるこ」が設立されました。 今回は、その代表を務める山本麻希さんにお話を伺いました。
株式会社うぃるこ 代表取締役 山本麻希さん 長岡技術科学大学准教授、理学博士。野生動物の生態学が専門。ー鳥獣害対策専門のコンサルティングを行う会社を立ち上げた経緯を教えてください。 獣害対策に関する取り組み自体は、長岡技術科学大学の教員となった11年前から行っております。
当時、新潟県は猿の被害が多く、野生動物の生態学が専門だった私に声がかかり、農水省のアドバイザーや環境審議員として県からの依頼を受けて、獣害対策の講演会などを実施していました。
年間80回くらいの講演を行っていたのですが、一人での活動に限界を感じ始めていたころ、新潟大学や国際自然環境アウトドア専門学校などで野生動物の生態学を専門とする教員や学生さんも加わり、組織的に獣害対策に取り組んでいくために、2011年に任意団体(現 NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ)を設立しました。

団体にしたことで、研修会なども継続的に実施できるようになり、獣害対策も行えるようになってきたため、県も獣害対策にきちんと予算をとってくれるようになりました。また、きちんとした専門家に指導してほしいという行政も現れるようになりました。
一方で、岐阜や山梨、千葉など全国には少ない人数で、NPOや小さい会社で苦労しながら獣害対策事業を行っている団体がたくさんありましたので、全国の獣害対策の民間業者が協力して「一般社団法人ふるさとけものネットワーク」という全国で初めての獣害対策の業界団体を立ち上げ、獣害対策の専門家を育てる「けもの塾」を運営するなど、さまざまな活動をしてきました。
新潟ワイルドライフリサーチはその後法人資格を取得し、きちんと収益をあげられる団体になってきたのですが、私は国立大学の教員ということもあり、ボランティアでやっているような状態。私がいなくてもきちんと仕事が回せるくらいの会社の規模にすることで、若い人材が獣害対策支援を生業としてきちんと生活していける会社づくりをしていきたいと考えるようになりました。
そこで、長岡技術科学大学がベンチャー企業立ち上げを推進していることもあり、きちんと経営指導・投資を受けて株式会社を立ち上げることになりました。その結果、同大学初のソーシャルベンチャー企業として、昨年5月に株式会社うぃるこを設立しました。
ー山本さん自身が獣害対策に取り組み始めたきっかけは?

結婚を期に新潟に移住し、6年間、高校の教師をしていましたが、教師を辞めて、獣害対策の専門家の道に進むきっかけとなった出来事が、2006年に新潟県で起きたクマの大量出没でした。 1年に1000件以上のクマの出没事件があり、そのうち500頭以上が殺されたという事実を目の当たりにしたのです。
その対応に関して疑問を感じ、クマの管理状況を調べてみると、きちんとした管理計画もないまま出てきたクマが処分されているという状況でした。 人間と動物が共存するためには、野生動物の生態を知っている専門家がきちんと管理し、正しい獣害対策をやらないと、ただ殺しているだけでは解決しないと考えるようになりました。 例えば、クマは縄張りがないため、出てきたクマを殺しても別のクマが来るだけで、根本的な解決にはなりません。
だからクマを寄せつけている原因(エサなど)をきちんと把握し、電気柵などを設置してその原因となるものに寄せ付けないような対策を集落ごとにしていかなければ、最後の一頭になるまで延々と熊は降りてきてしまいます。 サルに関しては、猟銃等で撃つと群れが分裂し、かえって管理がしにくくなります。
このように動物はそれぞれ生態が異なるため、その動物にあった対策ができるよう、専門家がきちんと啓発をして、正しい獣害対策を行っていくことが大切です。私は一般の人にわかりやすい言葉で獣害対策の正しい知識について説明するのが有識者の務めなんじゃないかと思うのです。
ー 実際にうぃるこではどういった流れで仕事をしているのですか?

獣害対策は基本的に市町村単位で行われていますが、獣害対策の専門家というのは行政担当者にはいません。そこでまず私たちが一番力を入れているのは、異動してきたばかりの県や市町村の新規行政担当者向けに行う初任研修です。年4回、野生動物の生態や調査、被害対策や利活用など最低限の獣害対策の基礎知識を教える研修を行っています。
行政担当者の方にある程度野生動物に関する知識を身につけていただいたうえで、それぞれ被害を出している動物も作っている作物も環境もすべて市町村ごとに異なりますので、被害状況に応じた対策に適切な予算が組めるよう、科学的データに基づいて各市町村の状況に合わせた対策を提案しています。
そして、それぞれの対策事業をプロとして私たちが業務委託を受け、行政と地元住民の方や猟友会の方々の間に入って技術を教える活動をしています。 具体的には、野生動物の生態調査やデータ分析業務、捕獲や防除柵の設置や集落の環境整備に関する実習や勉強会など、獣害対策に関わる事業はすべて行います。
ー野生動物との共存に関して、御社や山本さんが目指す未来とは?

上の図が、私たちが目指す理想の未来です。
現在、日本の中山間地域では過疎化が進み、若い人は仕事を求めて都会に出ていき、お年寄りしか残っていない状態。そのため、本来であれば奥山に動物が住んで里に人がいて、間に里山や中山間地域と呼ばれる山があって、そこが緩衝帯になっていたのですが、その里山が放置され、今や里山に動物が住んでしまい、中山間地域にいる人間と小競り合いのような状態になってしまっています。
このまま中山間地域がなくなってしまえば、当然もう一歩先の都市部に獣害の前線が降りてくるようになるでしょうし、都会のように人間の生活環境が密集している場所は野生動物にとても弱く、猪や猿が出たら交通事故や人身被害、都市パニックを起こす可能性だってあります。
ですから私としては、中山間地域に人がいて都会との間の緩衝帯となるような状態、できれば中山間地域にちゃんと人が住めるような仕組みを作る必要があると考えています。例えば中山間地域の恵みを活かせるような産業ができて農業もちゃんと若い人が入ってやれる仕組みをつくったり、あるいは中山間地域にある農地を管理したり里山の木をちゃんと利活用し、都市で消費するような地産地消の仕組みなども考えられます。
中山間地域をある程度の規模で残していかないと、アーバンアニマル問題も深刻になってしまうため、中核都市と中山間地域のようなバッファゾーンがきちんと存在して奥山に動物がいるというモデル地域をまずは作りたいですね。
獣害というのは生物多様性を守る以上、どうしても発生してしまいますし、かといって人類の大切な財産となる野生動物がいなくなるという選択もまたないわけです。人間と野生動物の両者が存在する以上、必ずそこに摩擦が起こってしまいます。
人間と動物が適切な距離を守り共存していくために、彼らが住む場所を奥山にきちんと残し、私たち人間は里に住みつつ、その間にはきちんとお互いに緊張感のある緩衝帯を作り、その緩衝帯できちんとした正しい獣害対策を支援するプロになりたいと思っています。
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