200kg超えのイノシシを捕獲!巨大イノシシを仕留めたハンター・吉澤崇幸さんにインタビュー

200㎏超えイノシシを仕留めたハンター吉澤崇幸さんにインタビュー

2019年11月17日、神奈川県清川村煤ケ谷で巨大イノシシを仕留めたという一報がイノホイに入ってきました。

今回は、その巨大イノシシを仕留めた神奈川県在住の吉澤崇幸さんに、狩猟を始めたきっかけや、巨大イノシシを仕留めた際の様子などについてお話をお聞きしました。

ハンター塾をきっかけに狩猟の道へ

ー狩猟はいつから、何がきっかけで始められたのですか?
吉澤さん:2014年に神奈川県で行われたハンター塾に参加したのがきっかけです。 もともと猟に興味はあったんですが、猟銃を使う狩猟はなんとなく敷居が高く、周りに猟をしている人もいなかったため、始めるきっかけを探していました。

そこで、神奈川県猟友会が企画する「ハンター塾」というハンター養成講座の第1回目が行われるというのをたまたま耳にして、幼馴染の同級生と参加したんです。 ハンター塾では、狩猟や猟銃の免許の取得方法、それに伴う手続きなど、狩猟を始めるまでの手順などを教えてもらいました。

せっかくの機会だし、時間はかかるけど自分にもできそうだなと思ったので、ハンター塾を受講した後、すぐに猟銃の免許を取得しました。 ただ、猟銃の免許を取得しても、周りに猟をしている人が誰もいなかったんで、どうやって猟を始めればいいのかわからず、神奈川県猟友会に電話で相談するところから始めました。

そして、稲田支部の会長さんがたまたま近所に住んでいることがわかり、紹介していただいて、仲間に入れていただきました。なので、猟自体を始めたのは5年くらい前からですね。

猟のグループって、特に大物猟は危険が伴うので、新参者を入れてくれるとこって少ないんですよ。だから射撃会に参加したり猟関連の会に参加したりして名前覚えてもらうことから始めなきゃだめだよっていうのも言われました。

千葉の猟もたまたま声をかけてもらって行ってますけど、声をかけてもらえなかったらそこも参加していなかった。そういう伝手みたいなのがないと、免許だけ取ったってなかなか猟に出ることはできないんです。

(▲写真の説明):普段はイノシシ猟を中心に狩りをしており、車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲で活動を行っている。

ー普段はどの地域で、何人くらいで猟をされているのですか?

吉澤さん:神奈川、千葉、山梨で狩猟許可をもらっていて、イノシシ猟を中心に狩りをしているため、メインの猟場は千葉県木更津周辺です。車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲の猟場でやっています。

基本的にイノシシを狙っているのですが、神奈川の猟区に入るときはシカが多いので、シカも出たら獲ります。 イノシシを獲りたいんですけど、イノシシだけを狙うのはなかなか難しいため、シカを10頭獲るよりイノシシを1頭獲りたいなっていう人が多いんです(笑) 特に神奈川の場合はイノシシよりシカが多く、逆に千葉はシカよりイノシシが多いため、千葉をメインに行くことが多いですね。

あと、千葉での猟と神奈川での猟はグループが違います。 神奈川でやるときは基本的にはグループ猟なので、大人数で巻き狩りをやりますが、千葉は人が集まらなくても、1人、2人でもやりますね。

写真の説明):大物相手でもハンターをしっかりサポートする猟犬たち。

ー神奈川のグループ猟は何人くらいでされているのですか?

吉澤さん:神奈川って特殊な地域で、猟区がいくつかあり、猟区設定者の定める猟区管理規定により管理されています。 基本的には所属するグループがあるんですけど、あまり少ない人数だとグループ猟(巻き狩り)になりません。

最近は高齢化などの影響もあり猟をする人が減っているので、場所に応じていくつかのグループが共同で猟をしていましたが、今では1つのグループになって猟をしている感じですね。 猟期のときは、基本毎週土日に猟に行っています。平日はそれぞれ仕事をしているので、ほかのメンバーとかも予定が合いません。

年齢層的には下は20代から上は80代。うちのグループはやっと少しずつ若い人たちが入ってきて、それまでは自分が一番下くらいな感じでした。 その20代のメンバーは、ベテランのハンターがたまたま猟友会の狩猟の申し込みのときに見かけて声をかけて連れてきました(笑) 猟をしたいって自ら志願してくる人はなかなかいないので、勧誘活動しないと若い人は入ってこないですね。

写真の説明):猟師仲間との一コマ。山に入ると日常の仕事のことも忘れてリフレッシュできる。かけがえのないひと時だ。

ベテランハンターも認める“規格外の大きさ”

ー吉澤さんが仕留めた巨大イノシシの大きさを具体的に教えてください。
吉澤さん:オスのイノシシで、測ってはいないのですが軽トラックの荷台の横幅を越えていたので、おそらくおしりから鼻の先まで150cmはあったんじゃないかと思います。

体重もそのまま秤にかけることは不可能なので、解体して精肉だけ測ったところ、106kgくらいありました。骨や皮、内臓なども含めるとおそらく200kg近くにはなるんじゃないかと思います。 周りのみんなも重さが想定できないくらいの大きさで、山の中で内臓だけ出しましたが、内臓を出さなかったら男4人で引っ張ってもピクリとも動きませんでした。

比較的足場の良い場所で仕留めたので、通常なら30分くらいですぐに運び出せるくらいの距離だったんですが、その巨大イノシシは運び出すのに5時間くらいかかってしまいました。 牙はそこまで長くはなかったので、おそらく栄養豊富なエサを大量に食べて成長したタイプの個体だと思います。

ベテランハンターが言うには、そこまで歳をとっているわけでもなさそうだし、長く生きているからといって大きくなるわけではないと。 後から聞いた話だと、仕留めたイノシシは以前から目撃されていた個体で、すごいのがいるってその付近では有名だったらしいです。

近くに豚小屋があって、豚小屋の付近で美味しいエサを食べてたんじゃないかって言われていたので、それが獲れたんじゃないかと思います。 狩猟歴40年ほどのベテランの人でも「これは規格外だ」と言うくらいの大きさ。せっかくだから情報発信したほうがいいと勧められて、ブログも始めました。

写真の説明):仕留めたイノシシの脚と人間の手のひらを比べてみた。この蹄からもどれだけ大きなイノシシだったのか容易に想像できる

ー巨大イノシシを捕獲したときの様子を詳しく教えてください。

吉澤さん:11月17日、場所は神奈川県の煤ケ谷。その日は地元の山に詳しいガイド役のセコ(※1)さん1人を含め、計8人でのグループ猟でした。メンバーが集合して、9時くらいから山を登り始め、実際に猟を始めたのは9時半ごろです。 山に登りつつタツマ(※2)を張っていて、獲物が通る可能性が一番高そうだなっていうところに予想して立ってたんです。

(※1)セコ…獲物を追い出す役割
(※2)タツマ…イノシシが通りそうな場所に先回りして人を配置し、自分の近くに来たものを仕留める役割

しばらくすると、「すごく大きい獲物が行ったから気を付けろ」と無線で連絡が入り、獲物が通る道は完全にわかっていたので、身体を木に添えて銃を構え、来たらすぐ撃てるようにと待っていました。そして、ちょうど自分の真下の20m先くらいに登ってきたときに、急所をめがけて撃ったところ、ちょうど頭の下の脊椎に弾が当たりました。

大きいイノシシだと一発当たったくらいじゃ走って逃げてしまうんですけど、たまたまいい場所に当たったから一発で転がったんです。 止めさしのために、崖下の転がったイノシシのところへ降りていくと、脊髄を撃ってるので動けないんですが、まだピンピンしてて。

そのとき犬も絡んでいたので、早く仕留めないと犬がイノシシにやられてしまうため、なるべく早くと思い、10~15mのところまで近寄って行き、耳の裏の下あたりを撃ってようやく仕留めました。 そのあと血抜きをしようと思って転がしたんですが、重すぎて全く動かないため、無線で応援を呼んで、それで最終的には6人くらい集まって引っ張り出しました。

「デカいって言ってもこんなに大きいのは考えられない」と、応援に来てくれたみんなもびっくりしていました。 たまたま自分の近くにイノシシがやってきて、運良く一発で転がしましたけど、たぶん他の場所に当たってたらそのまま走って逃げて行っちゃうような大きさだったので。

写真ではあまり大きく見えないんですけど、でも実物見たら結構デカいんですよ(笑) 大きさというよりすごい重さなので、1m動かしては休憩というのを繰り返し、その場に6人いて休憩もしつつ、5時間かかってやっと軽トラックの荷台に載せることができました。

写真の説明):仕留めたイノシシと一緒に撮った写真。ベテランハンターも認める“規格外の大きさ”ということがよく分かる

「とにかく重く、運ぶのに疲労困憊で感傷に浸る間もなく(笑)」

ー巨大イノシシを撃った瞬間、仕留めた瞬間はどんな気持ちでした?
吉澤さん:経験としてそんなに多くはないんですが、だいたい獲物を仕留めたときってなぜか冷静で、そのときはイノシシが登ってくる音も聞こえていたし、撃つために猟銃を構えられる余裕がありました。

巻き狩りでタツマを張っていて、追い出されたイノシシがどこに来るかだいたい予想ができましたし、大きいイノシシなのでそんなに素早く突っ走ることもできないため、イノシシが出てきて狙いを定めて撃てる状況だったというのもあるかもしれません。

それに、大きなイノシシを獲った前日、前々日も千葉や神奈川で狩りをしていて、そのときも100kg級のイノシシが出たんですが、撃ち損じて逃がしてしまったんです。そのときはがっかりしたのと同時に、悔しい思いもあって、今回は狙いは絶対に外さないようにって気合を入れてました。

ー大きなイノシシを仕留めた実感がわいてきたのはどのタイミングですか?
吉澤さん:血抜きをするため転がそうとしたときに、全然転がらなかったことですね。「これ尋常じゃない。今まであり得ない、なんだこれは!」っていう(笑) みんな実際見たらただ事じゃないって感じになって。でも、そのあとは獲物を引っ張っていかないといけなかったので運ぶのに疲れちゃって、感傷に浸る間もありませんでした(笑)

日常にはない世界が山にはある

写真の説明):猟の世界に入って、初めて仕留めたイノシシと。これからも、楽しむことを大切に続けていきたいとのこと。

ー猟をしていて一番好きな時間は?

吉澤さん:山に入ると仕事のことも忘れて、下手したら携帯の電波も入らないところもあるので、何の干渉も受けないじゃないですか。一人で歩いてれば一人だけの時間なので、結構そういう空間が異世界というか、日常にはない世界で、そんな時間を作れるのが結構楽しいです。普通の生活じゃ体験できないようなことが山にはたくさんあるので。

ー吉澤さんのこれからの狩りの目標を教えてください。
吉澤さん:目標は特にないですね。僕は完全に趣味でやっているので、獲物が獲れても獲れなくても毎週山に通っていますし、短い限られた猟期を楽しむためには、猟期以外でも山に行ったりします。 勉強ではないですけど、山を回って地形を覚えたり、イノシシが通るルートを見つけてきたりとかすると、獲物が獲れる確率も上がりますし。

目標というよりは、安全に、そしてなるべく楽しめればいいかなって思っています。

自分はたまたま運良く、いろんな巡り合わせで経験を積むことができていますが、結局獲物を見ないで3、4年過ごす人や、猟銃の引き金を引くことなく5年過ごすってことも結構あって、つまらなくなって辞めちゃう人も多いんですよ。 狩猟ってそんなに簡単なことではないですし、グループ猟だと人が多い分だけ自分が獲物を仕留める確率も少なくなります。 でもそれはそれで楽しい。

仲間が仕留めて獲物が獲れれば、自分が仕留めていなくても楽しいっていう人が猟をずっと続けているのかなって思ってます。これからも猟そのものを楽しめればいいですね。

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