「大きな猪を仕留めてみたい」~ 若き猟師にインタビュー 黒田勇気さん(宮崎県)

猟師インタビュー
宮崎県北部の自然豊かな山あいの集落、美郷町南郷。面積の約9割が山林というこの地域。 過疎化で若者が町から離れていく一方、この地域に残り、山の恩恵を身近に感じながら生活している若者もいます。


美郷町で林業に従事している黒田勇気さん(23歳)もその一人。苗木の植栽や下草の刈払作業などを行い木の成長を手助けする「造林」が本業ですが、休日などには狩猟も行っています。

大人になったら猟に行くのが当たり前だと思っていた

ー狩猟は何歳のときに始めたんですか? 猟銃の免許をとったのが20歳のときなので、そのときからですかね。

写真:猟師である父親の背中を見て育ち、幼い頃から狩猟は生活の一部であった。狩猟もごく自然な流れで始めた。

ーなぜ狩りをしようと思ったんですか?

父も狩りをしていて、それを幼い頃から見ていたので、自分も狩猟免許が取れる年齢になったら猟銃の免許を取らないといけない、そして猟をしないといけないんだろうなと、当たり前のように思っていました。

なので、20歳になったらごく自然な流れで始めていましたね。

ーお父様の狩りをする姿をこれまでに見たことがあると思いますが、逆に嫌だとは思わなかったんですか?

確かに、子どものときはいろいろ手伝わされたりして、よだきい(面倒くさい)としか思わなかったですけど、うーん、なんでしょうね。鉄砲が撃ってみたかったんですよね。父が持っている鉄砲がかっこよくて、子どもの頃から鉄砲のおもちゃで真似ごとみたいなことはしてましたね。

ーでは、猟銃の免許を取得して、一番最初に行った狩りのことは覚えていますか?

覚えてます。そのときは、確か鹿を仕留めたと思います。 鹿が2頭出てきて、狙って撃って当たらなかったんですけど、その鹿が父のところに行って、1頭は父が仕留めて、俺の近くに戻ってきた1頭をようやく仕留めました。

ー初めて自分が撃った弾で獲物を仕留めたとき、どんな心境でした?

足が震えましたね、興奮して(笑) 痩せてたけど、結構大きかったんですよ。それは自分でさばきました。

ーさばくのも自分でやるんですね。さばき方はどうやって身につけたんですか?

子どもの頃から見てましたし、狩りをする前から手伝っていたので自然と覚えました。

(▲写真):慣れた手つきで獲れたイノシシの毛抜きをする黒田さん。子どもの頃から何度もやってきた作業だ。

ー年間、どのくらい狩りに行くんですか?

仕事もありますし、子どももまだ小さいので、月に2回くらいですかね。最近はあまり行けてないですね。

(▲写真):獲れた獲物は余すことなく。自分で獲った獲物を自分で捌き、山の恵みに感謝すると共に、美味しくいただく。

スリルやドキドキ感が狩りの醍醐味

―今までの狩りで一番思い出に残るシーンを教えてください。

去年ですかね。民家の庭先で猪と猟犬がけんかしていて、それを仕留めたときが一番印象に残ってますね。犬がある程度猪を弱らせていたので自分に向かってくることはなかったんですが、猪がすぐそばにいたので恐かったです。だからこそ仕留めたときはすごく嬉しかったですね。

ー一方で、嫌だったシーンはありますか?

狩りの途中で雨が降り出したので、もう今日はやめようってことになって、山の中に入った猟犬を探しに行ったんですよ。

犬探しだけなので鉄砲を持たずに山に入ったんですけど、そしたらちょうど探していた犬と猪が一対一でやり合っていて、急いで鉄砲を取りに行って戻ったらもう猪はいなくなってて、犬はやられていて…。

その犬は命に別状はなかったんですけど、あのとき鉄砲を持って行ってれば、獲物を取り逃がすことはなかったのになと。

ーなんでもそうですが、楽しいことばかりじゃないですよね。では、狩りの楽しさってどんなところにありますか?

うーん、行くまでは準備とかいろいろ面倒だったりするんですけど、行ったらやっぱり面白いんですよね。ドキドキ感とかスリルとか。

あと、1人で行くより、何人かで行ったほうが楽しいですね。1人だと獲物を見る確率が低いけど、みんなで行けば、(獲物を)猟犬で追わせて、あっちいったとかこっちいったとかの興奮したやりとりがおもしろいです。

(▲写真):面積のほとんどが山林である美郷町。若者は町から離れ、75歳以上の割合を示す後期高齢化率も高い。黒田さんの本業は「造林」。仕事や家族の時間の合間を見つけ、休日の限られた時間に狩猟を行う。

ー自分で猟犬を持とうとは思わないんですか?

うーん、よほど好きじゃないと育てられないと思います。養うこともそうですが、訓練などをして、良い猟犬に育てないといけないですし。 でも、やっぱり猟犬がいないと獲物は獲れないですね。

犬で獲物を追わせてちょうどいいところに出さないと、鉄砲を持って立っていても獲物は出てこないですからね。 また、鳥獣被害の対策としても猟犬がいたほうがいいんですよ。犬がワンワン吠えて走り回ったほうが猪はその辺りには寄りつかなくなるので。

ー自分のお子さんには狩りをさせたいと思いますか?

いやー思わないですね。いろいろ大変ですもん。もちろん危険なこともありますし。 でも、本人がやりたいと思うならやらせますよ。自分の父も別に俺に対して狩猟の免許をとれとは言わなかったですし。

ーなるほど。では、猟に関してこれからの目標があれば教えてください。

大きな猪を自分の鉄砲で仕留めてみたいですね。80キロくらいあるやつを。自分ではまだ40キロくらいの猪しか獲ったことがないので。

「山」と関わりながら暮らす

山での仕事も狩りも、自分がやってきたことの結果が目に見えるため達成感があっておもしろいと笑顔で話す黒田さん。

山や自然と、人との関わりを大切にし、山村での生活を楽しんでいるのが印象的でした。また、林業にも狩猟にも誇りをもって取り組んでいることも今回のインタビューでよくわかりました。

大きな猪を仕留めるという目標に向かって、これからも山村の大切な文化である狩猟を受け継ぎ、守っていってほしいと思います。

★イノホイでは、各地の猟師さん、鳥獣被害に悩む農家さん、対策を行う行政の方など、頑張る方の活動を世に広めるためにインタビューを行っております。

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