牧場のアブ対策について

牧場のアブ対策 アブの習性

牧場において、牛はアブやハエ等といった害虫の攻撃を多く受けます。その結果、ストレスによって牛の餌の食いつきが減ったり、落ち着きが無くなったりして増体率や乳量が低下してしまいます。

特に、夏場は気温の上昇とともにアブが多く飛来する時期になりますので、安定した家畜の生産性を保つためにも、対策が必要になります。

アブの習性

卵は植物の葉裏などに産下され、約1週間で孵化します。孵化すると幼虫は水中または地上に落下します。 幼虫の時期のアブは、湿った土中で昆虫の幼虫やミミズなどを捕食しながらウジ虫状で生息しています(湿地などに素足で入ると幼虫によって刺咬被害を受けることもあります)。

幼虫の期間は長く、1~3年ほどにわたって脱皮を繰り返しながら成虫になります。※餌が不足したり、天候が不順であれば、幼虫の発育が遅延し、羽化する年が違ってきます。

アブの成虫はハチに似ていますが、羽が1対だけです。頭部には大きな複眼(数百~数万の小さな眼の集まり)とその間に短い触覚が生えており、それによって獲物を発見したり、天敵が襲ってきていることを察知したりします。

吸血するのは蚊などと同様にメスのみで、卵巣の発育に必要な栄養を得るために吸血しますが、オスは樹液や花蜜を吸います。

アブによる家畜の被害

メスのアブの口は大顎と小顎が剣状になっており、動物の皮膚を裂いてそこから滲み出す血液を吸血する構造になっています。そのため、吸血時は動物に強い痛みを与えます。

牛の場合、アブの攻撃に対して脚を蹴り上げたり、頭を背中等に激しく当てたり、尾を背骨より高い位置に振り上げたりと、様々な忌避行動をします。 その結果、牛の採食量が減ったり、ストレスにより乳量が減少したりしてしまいます。

牛白血病について

牛白血病は牛白血病ウイルスの感染で起こるリンパ球系細胞の癌で、治療法はありません。削痩、元気消失、食欲不振、乳量減少、下痢、便秘などの症状から始まり、最終的に全身のリンパ節の腫脹、眼球突出などがみられます。

非常に微量の血液でも感染が成立し、感染牛を吸血したアブが他の健康牛を吸血すること等によって感染が広がります。

代表的なアブの種類

吸血行動はアブの種類によって異なります。家畜をよく吸血する種類もいれば、人を好む種類もいます。成虫の出現時期は夏季に集中する傾向が見られますが、同じ種でも暖地では発生時期が早まり、寒地では遅れる傾向が見られます。

発生する期間は1か月前後のものが多いですが、メクラアブ、シロフアブなどはやや長めです。 多くの種は気温が18℃以上で活動が盛んになりますが、30℃以上の高い気温になると、活動はかえって抑制される傾向もあります。また、雨の日や風の日はアブの行動も抑制されます。

シロフアブ:体長2センチ内外、体は灰黒色で、胸背に灰色の5本の縦線がある。6月中旬〜9月中旬に発生し、日中に人や牛を好んで吸血する。

ゴマフアブ:体長0.8~1.2センチ内外、羽に点状の斑紋をもつ。胸背部は黒褐色で5本の縦線がある。7月から9月にかけて現れ、日中も夕方も激しく人や家畜を襲って吸血活動を行う。

アカアブ:体長2.5センチ内外、体は灰褐色または灰黒色で、胸背は青黒く、腹背中央に三角斑がある。

アカウシハブ:体長3センチ内外と大型で、頭部、触覚が橙色、胸背は黒褐色で5本の黄色い縦線がある。6月中旬〜9月上旬に発生し、7月中旬〜8月上旬がピークで、人や牛馬に対して日中に吸血活動を見せる。人では上半身を、ウシやウマでは背中の部分を襲う習性があり、1回の吸血量は0.6mlと多い。

メクラアブ:体長約1センチ、羽に大きな黒色の斑紋がある。胸部と腹背部は黒色、腹背に大きな黄色斑がある。5月から9月にかけて発生し、日中に吸血活動を行う。

イヨシロオビアブ:体長1.5センチ内外、体は黒色で、胸部は暗灰色、腹部は黒色で白色の横帯がある。7月上旬〜9月下旬に発生し、8月上旬〜中旬がピークで、日中よりも早朝や夕方の薄暮時に盛んに吸血行動をする。※無吸血で最初の産卵をし、その後激しく吸血するようになって2回目の産卵をする。

キンイロアブ:体長約1~1.3センチ、全体が黄金色で、眼は緑色である。7月上旬〜9月下旬に発生し、日中に人の頭部を集中的に襲う。

アブの防除方法

害虫の防除には、その発生源をなくすことが基本です。しかしながら、幼虫の時期のアブの生息場所は湿った土中で広い範囲に分布していることから、発生源に対する薬剤散布が難しく効果が期待できません。

幼虫時の効果的な防除方法はなく、成虫に対する防除が主になります。

薬剤(ポアオン・イヤタッグ等)の使用

牛の背部に塗布した薬剤により、忌避効果や接触時に殺虫するものです。塗布後一定期間の効果があります。薬剤によっては搾乳牛に使用出来るものと出来ないものがあるので、事前に獣医師等に相談して使用しましょう。

アブが吸血するのは短時間であるため、速効性の殺虫剤でないと寄生阻止の効果が期待できません。

トラップの使用

シルエットや色・温度・動く部位等で視覚的に誘因したり、動物が呼気として排出する炭酸ガスを用いて物質的に誘因したりすることで、アブを捕える方法です。

炭酸ガスで誘因するタイプは、誘引源にドライアイスかボンベ入りの液体炭酸ガスを用います。炭酸ガスの補給や流量調節に労力・コストがかかる点が難点です。

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物理的防除

アブの進入を防ぐために畜舎の窓に防虫網を張ったり、入口に縄のれんを垂らしたりします。しかしながら、夏季は暑熱が促進されてしまう点が難点です。放牧施設の庇蔭舎は暗所を嫌うアブの種が畜体に寄生するのを軽減するのに役立ちます。

まとめ

アブ防除の問題は畜産の場面だけでなく、最近ではリゾート地やレジャー産業の面でも関心が高まっています。しかしながらアブは多様で広域な環境に生息しているため、発生を完全に抑えることは不可能です。状況に応じた各種防除方法を用いて、被害軽減のためのアブ対策を立てることが重要となります。

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