鳥獣被害対策マガジン
シカによる被害と、捕獲するための罠について
シカによる農作物被害額は、過去数年にわたって横這い傾向となっているものの、平成30年度では約54億円に達しており、依然として深刻な状況です。イノシシの被害額である47億円を上回っており、最も被害を与える野生鳥獣となっています。 なお、被害があっても申告がないケースもあるため、上記の被害額は実態よりも少ないとも言われています。 また、長期にわたるシカの生息数の増加及び生息域の拡大によって、森林の被害も深刻な状況です。全国の森林の約2割でシカによる被害が確認されており、被害面積は全国で年間約3500ヘクタール(平成30年度)に達しており、野生鳥獣による森林被害の約3/4がシカによるものです。 ここまでシカの被害が広がった要因のひとつとして、シカの高い繁殖力が挙げられます。シカは生育環境がよければ1歳から妊娠し、ほぼ毎年子供を生みます。1度に産むのは1頭ですが、繁殖期には少数のオスが多数のメスを囲う(一夫多妻)であり、オスのまわりの妊娠可能なメスはほとんど妊娠します。 その結果、年率約20%で個体数が増え、4~5年で個体数は倍増するともいわれています。 環境省による推定では、全国で約244万頭のシカが生息(平成29年度末。北海道を除く)、平成26年度以降減少傾向となっていますが、平成初頭が約50万頭だったのに比べると、依然として高い水準で推移しており、捕獲による個体数の削減がまだまだ必要であることが示されています。 環境省はシカの生息頭数を令和5年度までに約150万頭まで減らすことを目標としており、捕獲等による対策の推進が実施されています。 直近の全国シカ被害 多くの地域で、シカによる被害が増えて深刻化しており、各自治体でも対応に苦慮している状況です。 奈良公園周辺 奈良公園(奈良市)は天然記念物のシカ約1300頭が生息しており、年間約1000万人が訪れる人気スポットです。しかしながら、今年は新型コロナウイルスによって観光客が減少し、シカが観光客から鹿せんべいをもらえなくなりました。 その結果、木の実などの餌を求め、シカが市街地や山林部に移動。商店の売り物が食べられたり、周辺の畑や花壇が荒らされるなどの被害が発生しています。 群馬県甘楽町 群馬県は関東地方では最大のりんご生産量を誇ります。甘楽町は豊かな自然を生かして化学農薬を抑えて、「陽光」や「ふじ」などの品種をはじめとした美味しいりんごが生産されています。 しかしながら、近年シカによるリンゴの食害が深刻化しており、今年は収穫が例年の3分の2程度に落ち込みそうな農家や、畑の約半分が被害に遭ったという生産者もいる状況です。 シカによる食害が広がるとともに、町内でのシカの捕獲頭数も右肩上がりとなっており、2015年度は31頭だったのが、本年度は11月4日時点で既に201頭に上っています。 静岡県伊豆半島 かつては、伊豆半島では国有林の中においてシカが保護されており、「鳥獣保護法」により、メスは捕獲禁止、オスは1日1頭と制限がかけられていました。 しかし、伊豆半島や富士山周辺でシカによる食害が深刻化。樹皮剥や下層植生の食害をはじめ、田畑にも被害が出ているため、本年度からメスジカを狙ってわなを集中的に仕掛け、繁殖を抑えるメスジカ重点捕獲を開始しています。 シカを捕獲するには? シカの食害を根本的に減らすには、捕獲による個体数の削減が必要になります。具体的には、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」といった罠を使って捕獲を行います。 以下のページにて、それぞれの罠の特徴や動作について説明していますので、参照くださいませ。※罠の設置には基本的に、「わな猟免許」が必要になります。 各種わな説明&販売ページ 箱罠 シカの捕獲に適した実績多数の箱罠です。出没する場所を選んで設置します。もっと詳しく>> くくり罠 初心者からベテランまで。安くて高捕獲率と好評のくくり罠です。もっと詳しく>> 囲い罠 天面の半分が開いており、条件を満たせば狩猟免許不要で設置できます。もっと詳しく>> よくある質問...
シカによる被害と、捕獲するための罠について
シカによる農作物被害額は、過去数年にわたって横這い傾向となっているものの、平成30年度では約54億円に達しており、依然として深刻な状況です。イノシシの被害額である47億円を上回っており、最も被害を与える野生鳥獣となっています。 なお、被害があっても申告がないケースもあるため、上記の被害額は実態よりも少ないとも言われています。 また、長期にわたるシカの生息数の増加及び生息域の拡大によって、森林の被害も深刻な状況です。全国の森林の約2割でシカによる被害が確認されており、被害面積は全国で年間約3500ヘクタール(平成30年度)に達しており、野生鳥獣による森林被害の約3/4がシカによるものです。 ここまでシカの被害が広がった要因のひとつとして、シカの高い繁殖力が挙げられます。シカは生育環境がよければ1歳から妊娠し、ほぼ毎年子供を生みます。1度に産むのは1頭ですが、繁殖期には少数のオスが多数のメスを囲う(一夫多妻)であり、オスのまわりの妊娠可能なメスはほとんど妊娠します。 その結果、年率約20%で個体数が増え、4~5年で個体数は倍増するともいわれています。 環境省による推定では、全国で約244万頭のシカが生息(平成29年度末。北海道を除く)、平成26年度以降減少傾向となっていますが、平成初頭が約50万頭だったのに比べると、依然として高い水準で推移しており、捕獲による個体数の削減がまだまだ必要であることが示されています。 環境省はシカの生息頭数を令和5年度までに約150万頭まで減らすことを目標としており、捕獲等による対策の推進が実施されています。 直近の全国シカ被害 多くの地域で、シカによる被害が増えて深刻化しており、各自治体でも対応に苦慮している状況です。 奈良公園周辺 奈良公園(奈良市)は天然記念物のシカ約1300頭が生息しており、年間約1000万人が訪れる人気スポットです。しかしながら、今年は新型コロナウイルスによって観光客が減少し、シカが観光客から鹿せんべいをもらえなくなりました。 その結果、木の実などの餌を求め、シカが市街地や山林部に移動。商店の売り物が食べられたり、周辺の畑や花壇が荒らされるなどの被害が発生しています。 群馬県甘楽町 群馬県は関東地方では最大のりんご生産量を誇ります。甘楽町は豊かな自然を生かして化学農薬を抑えて、「陽光」や「ふじ」などの品種をはじめとした美味しいりんごが生産されています。 しかしながら、近年シカによるリンゴの食害が深刻化しており、今年は収穫が例年の3分の2程度に落ち込みそうな農家や、畑の約半分が被害に遭ったという生産者もいる状況です。 シカによる食害が広がるとともに、町内でのシカの捕獲頭数も右肩上がりとなっており、2015年度は31頭だったのが、本年度は11月4日時点で既に201頭に上っています。 静岡県伊豆半島 かつては、伊豆半島では国有林の中においてシカが保護されており、「鳥獣保護法」により、メスは捕獲禁止、オスは1日1頭と制限がかけられていました。 しかし、伊豆半島や富士山周辺でシカによる食害が深刻化。樹皮剥や下層植生の食害をはじめ、田畑にも被害が出ているため、本年度からメスジカを狙ってわなを集中的に仕掛け、繁殖を抑えるメスジカ重点捕獲を開始しています。 シカを捕獲するには? シカの食害を根本的に減らすには、捕獲による個体数の削減が必要になります。具体的には、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」といった罠を使って捕獲を行います。 以下のページにて、それぞれの罠の特徴や動作について説明していますので、参照くださいませ。※罠の設置には基本的に、「わな猟免許」が必要になります。 各種わな説明&販売ページ 箱罠 シカの捕獲に適した実績多数の箱罠です。出没する場所を選んで設置します。もっと詳しく>> くくり罠 初心者からベテランまで。安くて高捕獲率と好評のくくり罠です。もっと詳しく>> 囲い罠 天面の半分が開いており、条件を満たせば狩猟免許不要で設置できます。もっと詳しく>> よくある質問...
森林における鳥獣被害対策の支援について
野生鳥獣による森林被害のうち、約8割を占めるのがシカによる被害です。シカの生息数の増加や生息域の拡大によって、森林が受ける被害は深刻な状況にあります。 被害の内容としては、樹木への食害、樹皮剥ぎ、食害による下層植生の衰退・消失、裸地化などが挙げられます。全国の森林の約2割でシカによる被害が認められており、被害面積は約6,000ヘクタール(東京ドーム約1,200個分)にのぼるといわれています。 シカは繁殖力が高く、環境が良ければほぼ毎年子供を産みます。捕獲を実施しない場合、年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増するといわれます。 そのため、環境省と農林水産省は、シカ(およびイノシシ)に対し、10年かけて生息頭数を半減させることを目指すとしており、シカ被害対策を推進するための様々な補助金支援が国や都道府県によって実施されています。 森林における鳥獣被害対策支援の種類 国が実施している森林のための鳥獣被害対策支援として、以下のような事業があります。 1. シカによる森林被害緊急対策事業 おもに林業関係者が主体となった計画的な捕獲・防除を模範的に実施するための事業です。 A:シカ森林被害防止緊急対策 複数の市町村や森林管理署から構成される協議会が、シカ被害対策の計画を策定して実施する対策です。地域で連携して行う罠による捕獲や、防護柵の設置等の防除活動を実施する事業です。 また、新たにシカの侵入が危惧される地域や、生息密度が高まりつつある地域において、シカの監視体制の強化を図るため、GPS首輪を用いた行動追跡調査や、自動撮影カメラを用いた監視体制の強化も目的としています。イノホイおすすめの自動撮影カメラはこちら>> B:シカ被害対策推進調査 森林におけるシカ被害発生リスクについて、調査分析を行い、必要な対応の検討を実施する事業です。国から民間団体に委託費をもって委託されます。 2. 森林環境保全整備事業 健全な森林の造成・保全を目的として、野生鳥獣による森林被害の防止や、野生鳥獣の移動の制御するための付帯施設(侵入防止柵など)を整備・保全する事業が支援されます。 また、シカの食害を受けた被害森林にて、餌で誘引して罠などによって捕獲する事業も支援されます。都道府県、市町村、森林所有者、森林組合等、森林整備法人等が主体となり実施されます。 3. 鳥獣被害防止総合対策交付金 シカなどの鳥獣侵入防止柵の設置や、捕獲活動の直接経費など市町村が主体となった地域ぐるみの被害防止の取組が支援されます。対象団体は事業計画等を申請することによって、国から交付金が各都道府県を通じて交付されます。こちらの記事に詳しい内容を記載しています。 4. 次世代林業基盤づくり交付金(そのうち、森林・林業再生基盤づくり交付金) 都道府県、市町村等が被害の状況を勘案し、地域の実情に応じて行う被害防止対策に支援が行われます。地域の森林の整備を行うための基盤整備やその活用、林業や木材産業の振興を図るための様々な取組みが交付金によって支援され、森林資源の保護のための野生鳥獣被害防除事業も対象となります。 5. 森林・山村多面的機能発揮対策 里山林は地域住民に継続的に利用されることにより、古くから維持・管理されてきた居住地近くに広がる森林のことですが、近年は荒廃が進んでいます。そこで、地域住民、森林所有者、自伐林家等が協力して行う、里山林の保全管理や資源を利用するための活動に対して、林野庁が交付金による支援を行っています。 活動を実施するために必要な機材及び資材の購入・設置に対しても支援が行われ、例えば、シカ等の野生鳥獣を捕獲するための罠の購入であれば必要額の1/2が支援されます。 支援を受けるには、活動組織を設立する必要があり、組織は地域住民、森林所有者等地域の実情に応じた方(3名以上)で構成される必要があります。交付金の対象となる森林は、活動を行う時点において、森林経営計画が策定されていない森林です。 また、活動組織名、所在地、取組の背景及び概要、3年間の活動計画、年度別の取組内容、計画図、委託内容等を記載した計画書を作成する必要があります。 これらの準備が整えば、地域協議会に対して、支援の申込みを行う流れとなっています。 まとめ シカによる森林被害の減少に貢献するため、上記のような様々な支援が実施されております。上記は国の支援であり、年度や交付金を受ける地域によって内容や規模が変わってくると思いますので、より詳しく知りたい方は、ホームページや、各都道府県の獣害対策関連課などにて確認されるとよろしいかと思います。 なお、イノホイでは罠の購入に必要なお見積りも随時承っております。こちらのフォームからお気軽にご依頼ください。
森林における鳥獣被害対策の支援について
野生鳥獣による森林被害のうち、約8割を占めるのがシカによる被害です。シカの生息数の増加や生息域の拡大によって、森林が受ける被害は深刻な状況にあります。 被害の内容としては、樹木への食害、樹皮剥ぎ、食害による下層植生の衰退・消失、裸地化などが挙げられます。全国の森林の約2割でシカによる被害が認められており、被害面積は約6,000ヘクタール(東京ドーム約1,200個分)にのぼるといわれています。 シカは繁殖力が高く、環境が良ければほぼ毎年子供を産みます。捕獲を実施しない場合、年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増するといわれます。 そのため、環境省と農林水産省は、シカ(およびイノシシ)に対し、10年かけて生息頭数を半減させることを目指すとしており、シカ被害対策を推進するための様々な補助金支援が国や都道府県によって実施されています。 森林における鳥獣被害対策支援の種類 国が実施している森林のための鳥獣被害対策支援として、以下のような事業があります。 1. シカによる森林被害緊急対策事業 おもに林業関係者が主体となった計画的な捕獲・防除を模範的に実施するための事業です。 A:シカ森林被害防止緊急対策 複数の市町村や森林管理署から構成される協議会が、シカ被害対策の計画を策定して実施する対策です。地域で連携して行う罠による捕獲や、防護柵の設置等の防除活動を実施する事業です。 また、新たにシカの侵入が危惧される地域や、生息密度が高まりつつある地域において、シカの監視体制の強化を図るため、GPS首輪を用いた行動追跡調査や、自動撮影カメラを用いた監視体制の強化も目的としています。イノホイおすすめの自動撮影カメラはこちら>> B:シカ被害対策推進調査 森林におけるシカ被害発生リスクについて、調査分析を行い、必要な対応の検討を実施する事業です。国から民間団体に委託費をもって委託されます。 2. 森林環境保全整備事業 健全な森林の造成・保全を目的として、野生鳥獣による森林被害の防止や、野生鳥獣の移動の制御するための付帯施設(侵入防止柵など)を整備・保全する事業が支援されます。 また、シカの食害を受けた被害森林にて、餌で誘引して罠などによって捕獲する事業も支援されます。都道府県、市町村、森林所有者、森林組合等、森林整備法人等が主体となり実施されます。 3. 鳥獣被害防止総合対策交付金 シカなどの鳥獣侵入防止柵の設置や、捕獲活動の直接経費など市町村が主体となった地域ぐるみの被害防止の取組が支援されます。対象団体は事業計画等を申請することによって、国から交付金が各都道府県を通じて交付されます。こちらの記事に詳しい内容を記載しています。 4. 次世代林業基盤づくり交付金(そのうち、森林・林業再生基盤づくり交付金) 都道府県、市町村等が被害の状況を勘案し、地域の実情に応じて行う被害防止対策に支援が行われます。地域の森林の整備を行うための基盤整備やその活用、林業や木材産業の振興を図るための様々な取組みが交付金によって支援され、森林資源の保護のための野生鳥獣被害防除事業も対象となります。 5. 森林・山村多面的機能発揮対策 里山林は地域住民に継続的に利用されることにより、古くから維持・管理されてきた居住地近くに広がる森林のことですが、近年は荒廃が進んでいます。そこで、地域住民、森林所有者、自伐林家等が協力して行う、里山林の保全管理や資源を利用するための活動に対して、林野庁が交付金による支援を行っています。 活動を実施するために必要な機材及び資材の購入・設置に対しても支援が行われ、例えば、シカ等の野生鳥獣を捕獲するための罠の購入であれば必要額の1/2が支援されます。 支援を受けるには、活動組織を設立する必要があり、組織は地域住民、森林所有者等地域の実情に応じた方(3名以上)で構成される必要があります。交付金の対象となる森林は、活動を行う時点において、森林経営計画が策定されていない森林です。 また、活動組織名、所在地、取組の背景及び概要、3年間の活動計画、年度別の取組内容、計画図、委託内容等を記載した計画書を作成する必要があります。 これらの準備が整えば、地域協議会に対して、支援の申込みを行う流れとなっています。 まとめ シカによる森林被害の減少に貢献するため、上記のような様々な支援が実施されております。上記は国の支援であり、年度や交付金を受ける地域によって内容や規模が変わってくると思いますので、より詳しく知りたい方は、ホームページや、各都道府県の獣害対策関連課などにて確認されるとよろしいかと思います。 なお、イノホイでは罠の購入に必要なお見積りも随時承っております。こちらのフォームからお気軽にご依頼ください。
すごいチェーンソーパンツ
チェーンソーを使う時、どんなズボンを穿いていますか?日本の林業現場では、普通の作業用ズボンを穿いて作業を行っている人も多いと思います。作業中にチェーンソーの刃をズボンに当ててしまい、ヒヤっとしたことがある人も多いのでは。また、最近は薪ストーブがブームなので、プロの伐採業者でなくてもチェーンソーを扱う人が増えてきています。 そんな人たちに是非使っていただきたいのがチェーンソーパンツ。チェーンソー作業に特化した機能性、安全性はもちろん、見た目もカッコよいものが登場してきています。この記事ではそんなチェーンソーパンツについて紹介します。 そもそもチェーンソーパンツとは? チェーンソー作業時の思わぬケガから下半身を防護するのがチェーンソーパンツです。以下の動画を観れば、その機能は一目瞭然です。 ※あらゆるケガを完全に防護できるわけではないので、絶対に真似しないでください。 チェーンソーパンツに少しでもチェーンソーの刃が触れると、長い特殊繊維が瞬く間に刃に絡み付き、高速回転を強制ストップさせます。普通の作業ズボンではそうはいかず、刃が衝突する角度や勢いによっては、一瞬でパックリ・バッサリいってしまうことでしょう。 特に不安定な足場でのチェーンソー作業は、重篤な怪我と隣り合わせです。勢いあまって、足の動脈でも切ってしまったら大出血です。現場から病院までは遠いことがほとんどですので、下手をすると命を失ってしまいます。 お値段は普通の作業用ズボンと比べると、やはり高いです。現場でよく見る作業ズボンは、近くの作業服店で2~3000円程で売っていますが、チェーンソーパンツになると大体2~3万円程度します。消耗品だけど安全のためにコストをかけるか、間違えば大怪我だけど安さを選ぶか・・・ ちなみに、日本ではチェーンソーによる事故が年間2,000件以上報告されています。そのなかで負傷の殆どが手足に集中しています。個人的には、大惨事を防げるのであれば数万円のコストは高くないと思います。 人気の高いチェーンソーパンツ チェーンソーパンツの必要性を説明したところで、ここからは人気の高いチェーンソーパンツのメーカーを紹介します。 モンベル(Mont-bell) アウトドア用品で有名な日本発ブランドのモンベル。そのモンベルが登山用ウエア開発で培ったノウハウをベースに開発した、林業用防護パンツを出しました。まずは、チェーンソー防護テスト動画をご覧ください。 モデル名は「バリスティックウルトラロガーパンツ」。筆者はこれまでモンベルのキャンプグッズを愛用していましたが、まさかアウトドアブランドであるモンベルから林業向けのチェンソーパンツが出てくるなんて思っていませんでした。 アウトドアブランドとはいえ、ユーロ規格であるEN 381-5のClass1を取得しており、チェンソー用防護衣としての安全基準をバッチリ満たしています。Class1は、カッターの回転速度20m/秒で刃を当てて裏地を貫通しなければ合格という基準で、現在日本で発売されている防護衣(ズボン・チャプス)はほとんどがClass1です。 表地は高強度の「バリスティックウルトラ」ナイロンが使用されています。バリスティック・ナイロンとは、アメリカのデュポン社が軍用に開発した通常のナイロンの数倍の強度を持つと言われている繊維のことですが、「バリスティックウルトラ」はモンベルが独自開発したもので、一般的なナイロン素材に比べ約3.6倍の引き裂き強度を達成しています。素材から独自開発という点からも、林業用ウェアに対するモンベルの本気度がうかがい知れます。 日本人の体格に合わせた登山用パンツを元にパターンを設計しているので、海外製品にありがちなダボつき感は少ないです。また、膝には立体裁断が施されているので、動きやすく、しゃがんだ作業もしやすい。 お値段も¥19,800(税抜)と比較的お求めやすい価格であることも要チェックポイントです。購入を検討される方は、こちらの取扱説明書もチェックしておくと良いでしょう。ズボンの重量は約1.2kg。 チェーンソーパンツを選ぶ際、全般的に言えることですが、サイズ選びは厳しめにしたほうが良いと思います。モンベルの場合、通常履くズボンのサイズで選ぶと少し大きめかもしれません。 試着できるのであれば是非しておきましょう。試着無しでバリスティックウルトラロガーパンツを購入する場合は、こちらのサイズ表を参考にしてください。 >>公式ページはこちらをクリック。 ハスクバーナ(Husqvarna) 普段からチェーンソーを使う人にはおなじみ、ハスクバーナ。北欧スウェーデンに本社を置くチェーンソーメーカーです。 そのハスクバーナの防護服シリーズが今年はフルモデルチェンジされ、ラインナップが拡充されています。 まずは防護服シリーズ全体のプロモーション動画をどうぞ。すごく雰囲気があります。 ハスクバーナのチェーンソーパンツのラインナップとして複数のモデルがありますが、その中で、先に紹介したモンベルのロガーパンツと同じ価格(¥19,800(税抜))のものが「プロテクティブズボン F-Ⅱ」です。 モンベルと同じEN 381-5のClass1を取得しており、耐久性も同等です。...
すごいチェーンソーパンツ
チェーンソーを使う時、どんなズボンを穿いていますか?日本の林業現場では、普通の作業用ズボンを穿いて作業を行っている人も多いと思います。作業中にチェーンソーの刃をズボンに当ててしまい、ヒヤっとしたことがある人も多いのでは。また、最近は薪ストーブがブームなので、プロの伐採業者でなくてもチェーンソーを扱う人が増えてきています。 そんな人たちに是非使っていただきたいのがチェーンソーパンツ。チェーンソー作業に特化した機能性、安全性はもちろん、見た目もカッコよいものが登場してきています。この記事ではそんなチェーンソーパンツについて紹介します。 そもそもチェーンソーパンツとは? チェーンソー作業時の思わぬケガから下半身を防護するのがチェーンソーパンツです。以下の動画を観れば、その機能は一目瞭然です。 ※あらゆるケガを完全に防護できるわけではないので、絶対に真似しないでください。 チェーンソーパンツに少しでもチェーンソーの刃が触れると、長い特殊繊維が瞬く間に刃に絡み付き、高速回転を強制ストップさせます。普通の作業ズボンではそうはいかず、刃が衝突する角度や勢いによっては、一瞬でパックリ・バッサリいってしまうことでしょう。 特に不安定な足場でのチェーンソー作業は、重篤な怪我と隣り合わせです。勢いあまって、足の動脈でも切ってしまったら大出血です。現場から病院までは遠いことがほとんどですので、下手をすると命を失ってしまいます。 お値段は普通の作業用ズボンと比べると、やはり高いです。現場でよく見る作業ズボンは、近くの作業服店で2~3000円程で売っていますが、チェーンソーパンツになると大体2~3万円程度します。消耗品だけど安全のためにコストをかけるか、間違えば大怪我だけど安さを選ぶか・・・ ちなみに、日本ではチェーンソーによる事故が年間2,000件以上報告されています。そのなかで負傷の殆どが手足に集中しています。個人的には、大惨事を防げるのであれば数万円のコストは高くないと思います。 人気の高いチェーンソーパンツ チェーンソーパンツの必要性を説明したところで、ここからは人気の高いチェーンソーパンツのメーカーを紹介します。 モンベル(Mont-bell) アウトドア用品で有名な日本発ブランドのモンベル。そのモンベルが登山用ウエア開発で培ったノウハウをベースに開発した、林業用防護パンツを出しました。まずは、チェーンソー防護テスト動画をご覧ください。 モデル名は「バリスティックウルトラロガーパンツ」。筆者はこれまでモンベルのキャンプグッズを愛用していましたが、まさかアウトドアブランドであるモンベルから林業向けのチェンソーパンツが出てくるなんて思っていませんでした。 アウトドアブランドとはいえ、ユーロ規格であるEN 381-5のClass1を取得しており、チェンソー用防護衣としての安全基準をバッチリ満たしています。Class1は、カッターの回転速度20m/秒で刃を当てて裏地を貫通しなければ合格という基準で、現在日本で発売されている防護衣(ズボン・チャプス)はほとんどがClass1です。 表地は高強度の「バリスティックウルトラ」ナイロンが使用されています。バリスティック・ナイロンとは、アメリカのデュポン社が軍用に開発した通常のナイロンの数倍の強度を持つと言われている繊維のことですが、「バリスティックウルトラ」はモンベルが独自開発したもので、一般的なナイロン素材に比べ約3.6倍の引き裂き強度を達成しています。素材から独自開発という点からも、林業用ウェアに対するモンベルの本気度がうかがい知れます。 日本人の体格に合わせた登山用パンツを元にパターンを設計しているので、海外製品にありがちなダボつき感は少ないです。また、膝には立体裁断が施されているので、動きやすく、しゃがんだ作業もしやすい。 お値段も¥19,800(税抜)と比較的お求めやすい価格であることも要チェックポイントです。購入を検討される方は、こちらの取扱説明書もチェックしておくと良いでしょう。ズボンの重量は約1.2kg。 チェーンソーパンツを選ぶ際、全般的に言えることですが、サイズ選びは厳しめにしたほうが良いと思います。モンベルの場合、通常履くズボンのサイズで選ぶと少し大きめかもしれません。 試着できるのであれば是非しておきましょう。試着無しでバリスティックウルトラロガーパンツを購入する場合は、こちらのサイズ表を参考にしてください。 >>公式ページはこちらをクリック。 ハスクバーナ(Husqvarna) 普段からチェーンソーを使う人にはおなじみ、ハスクバーナ。北欧スウェーデンに本社を置くチェーンソーメーカーです。 そのハスクバーナの防護服シリーズが今年はフルモデルチェンジされ、ラインナップが拡充されています。 まずは防護服シリーズ全体のプロモーション動画をどうぞ。すごく雰囲気があります。 ハスクバーナのチェーンソーパンツのラインナップとして複数のモデルがありますが、その中で、先に紹介したモンベルのロガーパンツと同じ価格(¥19,800(税抜))のものが「プロテクティブズボン F-Ⅱ」です。 モンベルと同じEN 381-5のClass1を取得しており、耐久性も同等です。...
シカによる森林被害の実態
シカ(ニホンジカ・エゾシカ)の好物は様々な植物です。食べる植物の種類は極めて多く、芝や木の葉だけでなく、食べ物の少ない時期には樹皮も食べます。 一帯の植物を食べつくし、短期間のあいだに山林の姿を変えてしまうほどの被害を与えるため、深刻な問題となっているのは既に広く知られてきているところです。この記事では、その実態を詳しく説明します。 変化が著しい場所はどこ? ベテランの登山者をはじめ、長く山の様子を見ている人がよく言うのは、近年特に山が荒れている様子が顕著だということ。立ったまま枯れる木や、地面がむき出しになった箇所が多く目についたりして、昔と比べると山の植生バランスが明らかにおかしいというのです。 特に、低山を中心にした森林地帯の変化が著しく、かつては原生林が生い茂っていた場所が、今では樹木や植物が枯死し土壌が崩壊しているケースが多く目につくといいます。そして、原因として大きな割合を占めるのが、シカによる食害です。 林野庁によると、平成27年(2015年)度はシカやクマ等の野生鳥獣による森林被害面積は全国で約8000ヘクタール(東京ドーム約1700個分)となっていますが、このうち、シカによる枝葉の食害や剥皮被害が全体の約8割を占めています。 主要な野生鳥獣による森林被害面積(平成27年度)※参照元:林野庁データ 被害を受けた場所の特徴 ディアライン(Deer Line)という言葉をご存知でしょうか。ディアラインとは、シカの採食によって植生上に線ができることです。シカの口が届く高さに沿って、葉っぱが無くなったり、皮を剥かれたりしている場所が露わになるのです。 シカの生息密度が高いほど、ディアラインは顕著に出現します。例えばシカで有名な奈良公園では、2m以下の部分は枝や葉がほとんどなく、このディアラインが特有の景観として広く知られています。 山林において、シカが好まない植物だけ残っているケースや、ほぼ裸地になってしまっているほど被害が深刻なケースでは、ディアラインが多く見られます。そして、裸地上にシカの糞が散見されます。 このような裸地には雨水の流れた跡が痛々しく残り、土砂流出が激しい傾向があります。また、渓流には泥分が多くなり、生態系に大きな影響が出ます。 シカによる食害は、林業にも深刻なダメージを与えます。シカの好物が多い自然林に比べれば被害の度合いは低いですが、植林したスギやヒノキの苗木が食べられてしまったり、年季が経って価値の高くなった木が剥皮被害を受けるなどが起きています。 林業は、「植えれば赤字」と言われるほど、採算性が悪い状況です。その中で、せっかく植林しても、やわらかな苗木があっという間に食べられたりすると、森林所有者の経営意欲は削がれていきます。 防鹿柵で囲ったり、苗を保護する食害防止管(ツリーシェルター)をかぶせるなどの方法はありますが、厳しい林業の現状の中で、林業家がさらなる経済的負担をすることは現実的ではありません。植えても植えても食べられてしまうシカ食害のリスクは、林業にとって致命的ともいえるものです。 シカが増えた理由 このような被害が増えた要因としては、シカの個体数の増加があります。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。 では、なぜシカが増えたのでしょうか。それには、温暖化・天敵絶滅・狩猟者減少などが挙げられます。 温暖化の影響 一つ目の要因として、温暖化によって積雪量が減り、越冬できる個体が増えたことが考えられます。 積雪量が減ると、地面が雪に覆われることも減るため、植物を摂食できる期間やエリアが増えます。 そのため、シカ(特に子ジカ)が冬に餓死によって死ぬ割合が減るのです。シカは早いものでは生後1年の秋あたりから妊娠できるようになり、しかもほぼ毎年妊娠するため、条件さえよければ個体数はどんどん増えます。 1978年のシカの分布と2003年のものを比較すると、積雪の少ない西日本を中心に、全体でおよそ70%ほど分布が拡大したことがわかっています。 ニホンジカの分布と拡大予測 ※参照元:環境省データ 天敵の絶滅 日本ではかつて、ニホンオオカミがシカの天敵として生息していましたが、明治時代に絶滅しました。天敵であるニホンオオカミが絶滅したことも、ニホンジカが増加したひとつの原因といわれています。 そのため、鹿の数を減らすため検討されている1つの案として、外国からオオカミを導入することが検討されています。しかし、安易に外国産のオオカミを導入することは、生態系への様々な影響が懸念されます。...
シカによる森林被害の実態
シカ(ニホンジカ・エゾシカ)の好物は様々な植物です。食べる植物の種類は極めて多く、芝や木の葉だけでなく、食べ物の少ない時期には樹皮も食べます。 一帯の植物を食べつくし、短期間のあいだに山林の姿を変えてしまうほどの被害を与えるため、深刻な問題となっているのは既に広く知られてきているところです。この記事では、その実態を詳しく説明します。 変化が著しい場所はどこ? ベテランの登山者をはじめ、長く山の様子を見ている人がよく言うのは、近年特に山が荒れている様子が顕著だということ。立ったまま枯れる木や、地面がむき出しになった箇所が多く目についたりして、昔と比べると山の植生バランスが明らかにおかしいというのです。 特に、低山を中心にした森林地帯の変化が著しく、かつては原生林が生い茂っていた場所が、今では樹木や植物が枯死し土壌が崩壊しているケースが多く目につくといいます。そして、原因として大きな割合を占めるのが、シカによる食害です。 林野庁によると、平成27年(2015年)度はシカやクマ等の野生鳥獣による森林被害面積は全国で約8000ヘクタール(東京ドーム約1700個分)となっていますが、このうち、シカによる枝葉の食害や剥皮被害が全体の約8割を占めています。 主要な野生鳥獣による森林被害面積(平成27年度)※参照元:林野庁データ 被害を受けた場所の特徴 ディアライン(Deer Line)という言葉をご存知でしょうか。ディアラインとは、シカの採食によって植生上に線ができることです。シカの口が届く高さに沿って、葉っぱが無くなったり、皮を剥かれたりしている場所が露わになるのです。 シカの生息密度が高いほど、ディアラインは顕著に出現します。例えばシカで有名な奈良公園では、2m以下の部分は枝や葉がほとんどなく、このディアラインが特有の景観として広く知られています。 山林において、シカが好まない植物だけ残っているケースや、ほぼ裸地になってしまっているほど被害が深刻なケースでは、ディアラインが多く見られます。そして、裸地上にシカの糞が散見されます。 このような裸地には雨水の流れた跡が痛々しく残り、土砂流出が激しい傾向があります。また、渓流には泥分が多くなり、生態系に大きな影響が出ます。 シカによる食害は、林業にも深刻なダメージを与えます。シカの好物が多い自然林に比べれば被害の度合いは低いですが、植林したスギやヒノキの苗木が食べられてしまったり、年季が経って価値の高くなった木が剥皮被害を受けるなどが起きています。 林業は、「植えれば赤字」と言われるほど、採算性が悪い状況です。その中で、せっかく植林しても、やわらかな苗木があっという間に食べられたりすると、森林所有者の経営意欲は削がれていきます。 防鹿柵で囲ったり、苗を保護する食害防止管(ツリーシェルター)をかぶせるなどの方法はありますが、厳しい林業の現状の中で、林業家がさらなる経済的負担をすることは現実的ではありません。植えても植えても食べられてしまうシカ食害のリスクは、林業にとって致命的ともいえるものです。 シカが増えた理由 このような被害が増えた要因としては、シカの個体数の増加があります。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。 では、なぜシカが増えたのでしょうか。それには、温暖化・天敵絶滅・狩猟者減少などが挙げられます。 温暖化の影響 一つ目の要因として、温暖化によって積雪量が減り、越冬できる個体が増えたことが考えられます。 積雪量が減ると、地面が雪に覆われることも減るため、植物を摂食できる期間やエリアが増えます。 そのため、シカ(特に子ジカ)が冬に餓死によって死ぬ割合が減るのです。シカは早いものでは生後1年の秋あたりから妊娠できるようになり、しかもほぼ毎年妊娠するため、条件さえよければ個体数はどんどん増えます。 1978年のシカの分布と2003年のものを比較すると、積雪の少ない西日本を中心に、全体でおよそ70%ほど分布が拡大したことがわかっています。 ニホンジカの分布と拡大予測 ※参照元:環境省データ 天敵の絶滅 日本ではかつて、ニホンオオカミがシカの天敵として生息していましたが、明治時代に絶滅しました。天敵であるニホンオオカミが絶滅したことも、ニホンジカが増加したひとつの原因といわれています。 そのため、鹿の数を減らすため検討されている1つの案として、外国からオオカミを導入することが検討されています。しかし、安易に外国産のオオカミを導入することは、生態系への様々な影響が懸念されます。...
森林における鳥獣被害の現状
野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカやクマ等による森林被害が深刻化しています。被害面積は、全国で約8,000ヘクタール程となっており(東京ドーム約1700個分)、このうちシカによる被害が約8割、シカ以外(ノネズミ、クマ、カモシカ、イノシシなど)による被害が残り2割を占めます(林野庁平成27年度のデータより引用)。 特に、新たに設立された林業の植地(新植地)は、これらの被害に対して脆弱です。 新植地では、比較的やわらかな葉を持つヒノキの被害が目立つものの、スギをはじめ、すべての植栽木が食害に遭います。特に広葉樹の植栽木はほとんど食べられてしまいます。これらの食害によって、樹木の発育不良、枝分かれや死滅が発生する可能性があり、造林上の大きな障害となります。 また、未来を担う稚樹を含む下層植生※が消失し、林床が裸地化してしまうことによって、土壌が流出し崩壊地が発生する等、国土にとってもさまざまな弊害が懸念されます。 森林のもつ多面的機能への影響だけでなく、森林そのものの存在自体が危ぶまれる状況にもなりかねないのです。 ※下層植生:森林において上木に対する下木(低木)や、草本類からなる植物集団のまとまりのこと。上層木とともに、その地域に特徴的な植生を示し、その土地の環境を知る上での指標となります。 また、森林被害を引き起こす獣類の増加にともない、ヤマビルやマダニの増加もみられます。ヤマビルは山地の奥地に生息していましたが、シカの分布拡大などで山麓まで生息域を拡大しています。また、マダニも野生動物が出没するような環境に多く生息する傾向があり、野生動物の増加によって被害が増えてきています。 マダニやヒルの駆除は、シカ等の獣類の増加と表裏一体であるため、急には減らせないのが現状です。 シカによる森林被害 シカは、どちらかというと山中よりも平坦地を好むため、昔は山の中よりも平坦地に数多く生息していました。しかし、人間の開発等によって、シカは山中で生息するようになりました。食料となる下層植生が豊富にある伐採跡地や、姿を隠せる樹林がまばらに存在するような森林環境を好みます。 また、尾根沿いの平坦地や、陽当たりの良い緩斜面を好み、そのような場所での森林被害が目立ちます。 シカの生息分布は戦後大きく拡大しており、1978年から始まった調査によると、36年のあいだに分布域を約2.5倍に拡大しています。 特に東北地方や日本海側などの積雪の多い地域の拡大が目立ちます。シカは繁殖力が高く、エサの条件がよければメスは毎年妊娠するため、捕獲しないと年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増すると言われています。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。さらに、現在の捕獲率では、10年後(平成35年度)には453万頭と1.5倍に増加することが予測されています。 森林におけるシカ被害としては、更新地等での植栽木等の食害があります。 シカの生息密度が高いエリアの森林では、シカは飢えれば何でも食べるので、シカの口が届く高さの枝葉や樹皮、さらには下層植生がほとんど消失してしまっている場合もあります。 またシカによる樹皮の剥ぎ取りも森林被害として深刻な問題です。剥皮は、シカが樹皮や形成層を食べることによるものと、オスの角こすりによるものがあります。剥皮によって傷ついた樹木は感染する可能性があり、また傷ついた樹木の下部が多く傷つくため、樹木の最も貴重な部分の品質が低下してしまい、林業家にとっても深刻な問題となっています。 シカ以外による森林被害 シカによる被害に比べると、割合は多くありませんが、クマやノネズミ、ノウサギ、エゾジカなどによる森林被害もあります。 ノネズミ、ノウサギによる森林被害 野ネズミのうち、被害をもたらすのはエゾヤチネズミとムクゲネズミで、植栽木の樹皮及び地下の根等の摂食などによる食害です。エゾヤチネズミは、ユーラシア大陸に広く分布するタイリクヤチネズミの亜種で、日本では北海道だけに生息しています。 日本では、北海道を除いてノネズミによる林業被害は大きな問題となっておらず、ムクゲネズミは環境省のレッドリストで準絶滅危惧とされるなど、生息範囲は限られている状況です。一般的には、カラマツやスギが被害を受けやすく、これらに比べるとグイマツ、アカエゾマツ、トドマツは被害を受けにくいですが、いずれの樹種にも被害の発生が報告されています。 また、ノウサギによる森林被害については、広範囲にわたって枯死するような被害はまれで、報告されているのは被害の一部のみだと推測されます。被害を受けても被害木が生き残っていることが多いため、実態が十分に把握されていません。 特に、広葉樹はノウサギを受けやすいと言われており、食害を受けると枯死に至らなくても誤伐などの危険性が高まるため、注意が必要です。 クマ、エゾジカによる森林被害 エゾシカは、日本列島やユーラシア大陸東部に分布するニホンジカの亜種で、日本列島のニホンジカのなかでは最も大型のものです。かつては北海道に広く分布していましたが、明治時代の乱獲や大雪により個体数が減少しました。しかし、近年は北海道の東や日高地方などに残っていた個体群が急増しています。 エゾシカによる被害は、広葉樹やカラマツ類に多く報告されています。広葉樹は植栽面積が少ないため被害面積は小さいものの、被害を受けている割合は高いといえます。エゾシカ被害を受けやすい樹種には、地域によって多少違いがあり、ある地域では被害のなかった樹種が、別の地域では集中的に食害を受けることがあるため、地域ごとに被害状況を把握する必要があります。 クマによる森林被害は、立木の樹皮を剝ぎ、壮齢木の樹皮を歯や爪で剥ぐ「クマ剥ぎ」です。立木の枯損や木材としての価値の低下等の被害を引き起こします。特に伐採適期以上の大径木の被害が顕著な傾向にあります。経済的な損失が大きいため、森林所有者らの林業経営意欲に与える影響も大きいです。 また、クマの主なエサの一つである堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)は、数年周期で豊作と凶作を繰り返すため、凶作の年の場合、農地や集落への出没が増える傾向がみられます。 その他の森林被害...
森林における鳥獣被害の現状
野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカやクマ等による森林被害が深刻化しています。被害面積は、全国で約8,000ヘクタール程となっており(東京ドーム約1700個分)、このうちシカによる被害が約8割、シカ以外(ノネズミ、クマ、カモシカ、イノシシなど)による被害が残り2割を占めます(林野庁平成27年度のデータより引用)。 特に、新たに設立された林業の植地(新植地)は、これらの被害に対して脆弱です。 新植地では、比較的やわらかな葉を持つヒノキの被害が目立つものの、スギをはじめ、すべての植栽木が食害に遭います。特に広葉樹の植栽木はほとんど食べられてしまいます。これらの食害によって、樹木の発育不良、枝分かれや死滅が発生する可能性があり、造林上の大きな障害となります。 また、未来を担う稚樹を含む下層植生※が消失し、林床が裸地化してしまうことによって、土壌が流出し崩壊地が発生する等、国土にとってもさまざまな弊害が懸念されます。 森林のもつ多面的機能への影響だけでなく、森林そのものの存在自体が危ぶまれる状況にもなりかねないのです。 ※下層植生:森林において上木に対する下木(低木)や、草本類からなる植物集団のまとまりのこと。上層木とともに、その地域に特徴的な植生を示し、その土地の環境を知る上での指標となります。 また、森林被害を引き起こす獣類の増加にともない、ヤマビルやマダニの増加もみられます。ヤマビルは山地の奥地に生息していましたが、シカの分布拡大などで山麓まで生息域を拡大しています。また、マダニも野生動物が出没するような環境に多く生息する傾向があり、野生動物の増加によって被害が増えてきています。 マダニやヒルの駆除は、シカ等の獣類の増加と表裏一体であるため、急には減らせないのが現状です。 シカによる森林被害 シカは、どちらかというと山中よりも平坦地を好むため、昔は山の中よりも平坦地に数多く生息していました。しかし、人間の開発等によって、シカは山中で生息するようになりました。食料となる下層植生が豊富にある伐採跡地や、姿を隠せる樹林がまばらに存在するような森林環境を好みます。 また、尾根沿いの平坦地や、陽当たりの良い緩斜面を好み、そのような場所での森林被害が目立ちます。 シカの生息分布は戦後大きく拡大しており、1978年から始まった調査によると、36年のあいだに分布域を約2.5倍に拡大しています。 特に東北地方や日本海側などの積雪の多い地域の拡大が目立ちます。シカは繁殖力が高く、エサの条件がよければメスは毎年妊娠するため、捕獲しないと年率約20%で増加し、4~5年で個体数は倍増すると言われています。 シカの個体数は、平成25(2013)年度末のデータで300万頭を超えており、平成元(1989)年の個体数のなんと10倍に迫る増加を示しています(林野庁データを引用)。さらに、現在の捕獲率では、10年後(平成35年度)には453万頭と1.5倍に増加することが予測されています。 森林におけるシカ被害としては、更新地等での植栽木等の食害があります。 シカの生息密度が高いエリアの森林では、シカは飢えれば何でも食べるので、シカの口が届く高さの枝葉や樹皮、さらには下層植生がほとんど消失してしまっている場合もあります。 またシカによる樹皮の剥ぎ取りも森林被害として深刻な問題です。剥皮は、シカが樹皮や形成層を食べることによるものと、オスの角こすりによるものがあります。剥皮によって傷ついた樹木は感染する可能性があり、また傷ついた樹木の下部が多く傷つくため、樹木の最も貴重な部分の品質が低下してしまい、林業家にとっても深刻な問題となっています。 シカ以外による森林被害 シカによる被害に比べると、割合は多くありませんが、クマやノネズミ、ノウサギ、エゾジカなどによる森林被害もあります。 ノネズミ、ノウサギによる森林被害 野ネズミのうち、被害をもたらすのはエゾヤチネズミとムクゲネズミで、植栽木の樹皮及び地下の根等の摂食などによる食害です。エゾヤチネズミは、ユーラシア大陸に広く分布するタイリクヤチネズミの亜種で、日本では北海道だけに生息しています。 日本では、北海道を除いてノネズミによる林業被害は大きな問題となっておらず、ムクゲネズミは環境省のレッドリストで準絶滅危惧とされるなど、生息範囲は限られている状況です。一般的には、カラマツやスギが被害を受けやすく、これらに比べるとグイマツ、アカエゾマツ、トドマツは被害を受けにくいですが、いずれの樹種にも被害の発生が報告されています。 また、ノウサギによる森林被害については、広範囲にわたって枯死するような被害はまれで、報告されているのは被害の一部のみだと推測されます。被害を受けても被害木が生き残っていることが多いため、実態が十分に把握されていません。 特に、広葉樹はノウサギを受けやすいと言われており、食害を受けると枯死に至らなくても誤伐などの危険性が高まるため、注意が必要です。 クマ、エゾジカによる森林被害 エゾシカは、日本列島やユーラシア大陸東部に分布するニホンジカの亜種で、日本列島のニホンジカのなかでは最も大型のものです。かつては北海道に広く分布していましたが、明治時代の乱獲や大雪により個体数が減少しました。しかし、近年は北海道の東や日高地方などに残っていた個体群が急増しています。 エゾシカによる被害は、広葉樹やカラマツ類に多く報告されています。広葉樹は植栽面積が少ないため被害面積は小さいものの、被害を受けている割合は高いといえます。エゾシカ被害を受けやすい樹種には、地域によって多少違いがあり、ある地域では被害のなかった樹種が、別の地域では集中的に食害を受けることがあるため、地域ごとに被害状況を把握する必要があります。 クマによる森林被害は、立木の樹皮を剝ぎ、壮齢木の樹皮を歯や爪で剥ぐ「クマ剥ぎ」です。立木の枯損や木材としての価値の低下等の被害を引き起こします。特に伐採適期以上の大径木の被害が顕著な傾向にあります。経済的な損失が大きいため、森林所有者らの林業経営意欲に与える影響も大きいです。 また、クマの主なエサの一つである堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)は、数年周期で豊作と凶作を繰り返すため、凶作の年の場合、農地や集落への出没が増える傾向がみられます。 その他の森林被害...