名所における鳥獣被害の現状

名所における鳥獣被害の現状

近年、野生鳥獣が人間の生活エリアに侵入することが多くなり、名所においても鳥獣被害が頻発するようになりました。

通行人との接触が起きたり、予定していたイベントが中止されたり、食害によって景観が損なわれてしまう事例が発生しています。また、特定外来生物も生息域を広げており、人間が入り込まないようなエリアにおいても確認されるようになってきています。

琵琶湖疏水 京都

京都市山科区の琵琶湖疏水沿いでは、菜の花と桜が春の風物詩となっています。菜の花と桜のコントラストによって、美しい景観が楽しめる名所として広く知られており、近年では外国人観光客も増えています。

この名所を支えるのが、近隣住民でつくる「なの花ボランティアグループ」。JR山科駅から北へ500メートルほどの疏水両岸に、20年以上前から菜の花を毎年丹精込めて育てています。

来春からは、観光船も本格運航する予定です。 しかしながら、数年前から獣害に悩まされており、特に今年は被害が深刻と言います。イノシシが地面を掘り返したり、シカが苗を食べたような痕跡や足跡が、種まき以来相次いで見つかっており、例年の5~6割ほどしか咲かないかもしれないと危惧されています。

防護ネットを張ったり、忌避剤を散布していますが、被害は収まっていないのが現状です。

文化財指定庭園 兼六園 石川

石川県金沢市にある日本庭園、兼六園。岡山市の後楽園と水戸市の偕楽園と並んで日本三名園の一つに数えられている名所で、2009年のミシュラン観光ガイドにおいて最高評価の3つ星に選ばれたこともあります。

四季折々、色々な表情を見せてくれる兼六園ですが、四季ごとに実施されるライトアップのイベントが特に人気で、幻想的な情景が楽しめるため多くの人が訪れる催事となっています。

今年12月6日午後7時ごろ、兼六園職員がイノシシを目撃し、ライトアップイベント中に園が閉鎖され、観光客らが避難するという事態になりました。金沢中署によると、隣接する金沢城公園でも同様にイノシシが目撃されているようで、事故を防ぐために注意喚起を行っている状況です。

平安神宮 京都

名所の多い京都府ですが、平安神宮でも獣害が報告されています。平安神宮は、幕末の動乱や遷都に対する復興事業として、明治時代に建設された神社です。

参拝者数にくらべて境内が広い平安神宮ですが、今年11月に体長約1メートル程のイノシシが現れ、逃走。逃走中に平安神宮西側の建設現場で作業中の50代男性に衝突したという事故が発生しています。男性は左腕を骨折しました。

イノシシはそのまま西へ逃走を続け、最後は中京区の二条城西側の堀に飛び込み、溺死しました。他にも京都市では、観光客に人気の寺などが多くある東部の東山のふもとでイノシシの目撃が相次いだり、市内の高校にイノシシが侵入したりする事件が発生しています。

知床の世界遺産域 北海道

知床は、北半球において流氷が接岸する場所の最南端です。海洋生態系と陸上生態系の相関によって特異な生態系が見られることや、動植物とも北方系と南方系の両種が混在する多様性が見られ、希少種の生息地や越冬地になっていることから、2005年に自然遺産に登録されました。

しかし、昨年設置されたエゾジカ調査用のカメラを回収し確認したところ、縞模様の尾を持つ動物が映っており、特定外来生物アライグマであると特定。世界自然遺産区域にまで生息域を広げていることが確認されたため、絶滅危惧種のシマフクロウなど、知床の生態系が脅かされる可能性が危惧されています。

参考記事:アライグマの生態・対策・駆除について

国指定史跡 伊勢堂岱遺跡 秋田

伊勢堂岱遺跡(いせどうたいいせき)は、秋田県北秋田市脇神にある縄文時代後期前半の遺跡です。

昨年環境整備を終え、ガイダンス施設「伊勢堂岱縄文館」も新たにオープンし、伊勢堂岱遺跡をはじめとした北秋田市内の縄文遺跡の出土品を展示した展示室や、遺跡をわかりやすく解説した映像を上映していました。

しかし今年はクマの目撃が伊勢堂岱遺跡周辺で相次いだため、6月から一般公開を中止していました。7月15日から公開を部分的に再開する予定で、前日に職員が見回りを行っていたところ、50代の男性職員がクマに襲われ、額や手にけがをしました。

そのため、閉鎖延長が決定され、2018年4月の公開を目指して遺跡周辺の立木伐採など環境整備を進めている状況です。

このような現状を打開するために

名所においては、害獣対策を実施することが他の場所よりも困難になります。人身事故が起こる可能性を極力排除しつつ、害獣の生態・行動を理解した対策を講じる必要があります。

突然獣が出現した場合、捕獲を無理に行うことはやめましょう。また、捕獲作業中、危険が生じた場合はただちに作業を中止すること。捕獲の実施が不可能な場合には、追い払い対応に移行しましょう。

例えば、イノシシの場合、可能な限り山際まで追跡して、侵入経路を特定することが重要です。侵入経路を把握しておけば、山中へ逃走したイノシシを捕獲できる可能性が高まります。

参考記事:イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】

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