市街地でのイノシシ出没が頻発
今年は市街地でのイノシシ出没が相次ぎました。 例えば、京都市の市街地では今年10頭のイノシシが確認されており、6月には京都大の学生寮「熊野寮」に出現。11月には平安神宮近くで体当たりされた男性が腕の骨を折るといった事故も発生しています。さらに、12月には左京区永観堂町の東山中学・高校校内に2頭が出現したというニュースも。
これまで人間の生活エリアとは距離を置いていたイノシシが市街地の中心部に出没するケースは年々増えてきており、市街地に住む一般の人も、イノシシに遭遇した際にどうしたら良いのか知っておく必要が出てきています。
万が一市街地でイノシシに遭遇した場合は、静かにゆっくりその場を離れること、無理に追い払おうとしたり攻撃を加えようとしたりしないこと、興奮させないようにすることが大切です。
参考記事: イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】 名所における鳥獣被害の現状 高松市のショッピングモールにイノシシが侵入 5人けが
鳥獣被害対策にICTやAI導入
今年は情報通信技術(ICT)を活用した獣害防除対策の事例をよく目にしました。
農水省による調査の結果、ICTを駆使した鳥獣害対策に42道府県312市町村が取り組んでいることが分かりました。鳥獣害対策としてのドローン導入や、遠隔監視によって設置した罠の捕獲状況を確認する手間を削減したり、おりに獣が入ったら遠隔操作で閉める等、作業の効率化が期待され、今後ICT活用はさらに広がる見通しです。
参考記事:ICTを活用した鳥獣害対策
さらには、AI(人工知能)を鳥獣被害対策に活かすという動きも出てきています。今年は、人工知能の深層学習(ディープラーニング)を使って暗視カメラで撮った害獣を検知する手法をNTTドコモが開発したというニュースがありました。
撮影した動画から切り取った連続する複数の画像を入力して特徴を抽出することで、イノシシなどの大きい動物からタヌキなどの小さい動物まで、8割の精度で検知できたとのこと。 近い将来、自宅に居ながら鳥獣対策が完結できるという時代がくるかもしれません。
イノシシ捕獲数証明で尻尾の提出義務付け(農林水産省)
来年4月以降、イノシシ捕獲の証明方法が変更されます。変更内容としては、写真と尻尾をそろえて提出することを義務化されることとなります。写真は頭を右向きにし、スプレーで体に日付などを入れて撮るよう統一することが求められます。
この変更にいたった背景として、駆除した猟師が、自治体から報酬を不正に受け取るケースが相次いことが挙げられます。これまで明らかとなっている不正の手口は、同じ個体を角度を変えて撮影した写真を別の個体として申請したりするもので、確認の緩さを突く内容であったため、今回のルール改正によって改善が期待されます。
狩猟者と自治体担当者双方の負荷が増えてしまう可能性もありますが、駆除の内容はルールに則ってしっかり証明することが重要になります。
参考記事:イノシシ捕獲数証明で尻尾の提出義務付けへ
捕獲獣の食肉活用が進む
今年は、捕獲したイノシシやシカを食資源として活用する試みが広がってきたことを実感した年でした。飲食店での活用や観光に生かそうと、解体処理施設や食肉流通システムの整備を進めたり、ブランド化する取り組みについてニュースで目にする機会が多かったように思います。
12月22日に閣議決定された2018年度政府予算案では、農林水産省が新たな「ジビエ倍増モデル整備事業」として五億五千万円を計上しています。交付金を出し、ジビエが安定供給されてビジネスとして成り立つのを支援するというものです。
個人的には、獲れた獣を資源として有効活用することは非常にポジティブな動きであると考えます。ビジネスとして成り立たせるためにはまだまだ課題が多いですが、鳥獣被害対策を行う人にとって食肉活用は一つのモチベーション源になるのではないでしょうか。
まとめ
上記のダイジェストを鑑みると、市街地における鳥獣被害対策や、ICTの活用は来年ますます重要になってくると予想されます。また、害獣駆除について正確な知識を習得することや、関係機関と地域が連携して継続的した取り組みを行っていくことは必須になります。
来る年が、皆さまにとって幸多き一年でありますよう。