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イノシシやシカを始め、クマやサル、アライグマやハクビシンなどの野生動物によって人間が被害を被ることを「獣害」と呼びます。農作物を食べられる被害が最も多く、特に収穫前の作物を食い荒らされて駄目にされたときは、本当に歯がゆい思いをします。
そのため何かしらの対策を考える必要が出てきますが、これから初めて獣害対策に取り組む人にとっては何から手をつけてよいのか分からず、効果が期待できない打ち手をとってしまって失敗する例も見受けられます。
労多くして功少なしとならないよう、今回は害獣たちの習性や行動を理解し、成功するための獣害対策について動物別に解説します。
獣害対策に大切な3つの考え方
どの動物の対策においても必要となる基本的な考え方があります。それは、①対策を人任せにしない、②組織的に対応する、③各対策のやり方を正しく理解する の3点です。
①対策を人任せにしない
一番重要なのは、当事者意識です。獣害だけでなく他の問題に対処するときも同じですが、特に獣害対策においては各人で温度差が出やすくなります。一人一人が自分事として捉えることができなければ、問題解決に至らなかったり、余計な時間やコストがかかったりしてしまいます。
「駆除や防護は役所や猟友会に任せているから問題ない」「放っておいてもそのうち解決するだろう」という人任せの意識は捨てて、自分の土地は自分で守る姿勢で臨むようにしましょう。
②組織的に対応する
前述の①にも関連しますが、一人でできる事には限りがあります。地域の協力がなければ根本解決に繋がりません。
たとえば、所有者不明の誰も収穫しない果樹が地域にあり放置されていたら、それに寄せられて獣は人里に近づいてきます。このような場合、地域でルールを定めたうえで対処する必要が出てきます。
③各対策のやり方を正しく理解する
対策自体は合っていても、それを正しく行わなければ十分な効果を発揮できません。例えば、電気柵を設置する場合、草刈りをせずに設置してしまうと電線に触れた草へ漏電が起こり、追い払いに十分な電気ショックを与えることができません。各種対策のただしい方法を理解して、実行しなければなりません。
詳しい解説記事はこちら
最新のデータを元に獣害の現状と種類について解説します。被害を食い止めるためには個人での対策には限界があり、グループや地域を挙げての取り組みが欠かせません。◎獣害の種類と対策について>>
動物別の獣害対策は?
いずれの動物に対しても、取る方法は1:防ぐ、2:追い払う(寄せ付けない)、3:捕獲するのいずれかになります。以下に動物別に概要を記載していますので、ご覧ください。
イノシシの獣害対策
身体能力と警戒心が高く、鋭い嗅覚が特徴です。防護のためのネットを張っても、食いちぎって侵入してくる場合もあるので、物理的に強めの防護柵と電気柵の併用が効果が高くなります。
忌避剤も市販されていますが、それ単体ではなく、防護柵と併用して補助的な効果を狙う形が効果的です。
捕獲には大型箱罠やくくり罠を用いますが、興奮すると人間にも向かってきますので、捕獲した際は細心の注意が必要です。以下の記事で生態や対策方法をまとめていますので、ご参考ください。
イノシシの生態や対策についてもっと詳しく
イノシシの生態や行動に対する誤解によって、意味のない対策を実施することのないよう、イノシシの生態・行動を詳しく解説します。
◎イノシシの生態・行動を詳しく解説>>
シカの獣害対策
農業被害だけでなく、林業被害も多くあるのが特徴です。跳躍力があるため、高さのある防護柵と電気柵の併用が効果的です。また繁殖力が高いため、生息密度を増やさないという心構えのもと、捕獲も積極的に進めます。
捕獲するにはイノシシ同様、大型箱罠やくくり罠を用います。学習能力の高いイノシシよりも捕獲難易度は低く、捕獲時も基本的には人に向かった攻撃はなく、逃げる行動を取る傾向があります。
シカの生態や対策についてもっと詳しく
シカの行動や習性を説明するとともに、繁殖力やオスメスの違い、なぜシカの被害が減らないのか解説します。
◎シカの行動や習性を知ろう>>
クマの獣害対策
被害防止に多く用いられるのは電気柵です。また生ごみや作物残滓はしっかり片づけて、誘引しないよう地域全体での取り組みや、できるだけ遭遇が必要です。
なお熊(ツキノワグマ)は狩猟対象獣であるものの、生息頭数が少ないことから多くの地域で有害捕獲や狩猟による捕獲が制限されています。そのため、捕獲を行おうとする場合は地域の担当課に捕獲可能かどうか確認する必要があります。
熊の生態や対策についてもっと詳しく
毎日のように熊による被害が発生している中で、人身被害を未然に防止するためにも、できるかぎり対策しておくのが望ましいでしょう。そのための詳細を説明します。◎クマの生態と被害防止対策>>
サルの獣害対策
視覚に頼って情報を得る、群れで行動する、学習能力が高い、という点が特徴です。人馴れすると厄介になるため、餌をあげない・放置しないという配慮とともに、地域ぐるみの積極的な追い払いを行います。
慣れて人間の生活エリア付近に出没を繰り返す場合もあり、そういった個体は箱罠を使って捕獲します。イノシシ・シカ用箱罠は頑丈な反面、目が大きいため手先の器用なサルには向きません。そのため一回り小さく、網目の細かいものを使用します。
頭が良いため、捕獲難易度は高くなりますが、地域に餌となる作物が少ないタイミングで捕獲すると良いでしょう。移動経路が明確な場合は、くくり罠も有効です。
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ハクビシンの獣害対策
高所移動が得意で、家屋への侵入もあります。侵入防止・餌となるものを減らす・捕獲が基本対策になります。
侵入防止にはネット・ワイヤーメッシュやトタン、電気柵が用いられます。また捕獲には箱罠が多く用いられます。個体サイズより一回り大きめの箱罠であれば捕獲可能で、折り畳みタイプの廉価版も多く使われています。多く果物などを用いて誘引し、捕獲します。
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糞尿によって家屋や文化財を汚損するなど、さまざまなハクビシン被害が報告されています。 この記事では、ハクビシンの特徴や被害対策について説明します。 ◎ハクビシン対策について>>
アライグマの獣害対策
特定外来生物のため、日本における根絶が目標とされているものの、繁殖力が強いため全国的に繁殖が広がっています。
ハクビシンと同様の箱罠等を用いて捕獲しますが、外来生物法によって様々な規制があるため、まずは地域の担当課に連絡しましょう。捕獲の代行や、自身で捕獲する場合も他の動物を捕獲する際の規制がアライグマでは緩和されている場合があります。
アライグマの生態・対策についてもっと詳しく
アライグマは本来日本には生息しない外来種。農業被害や人への危害、感染症をもたらす可能性もあることから、対策や駆除を行わなければなりません。アライグマ被害に頭を悩ませる方に向けて、対策や駆除の方法、生態について解説します。 ◎アライグマの生態・対策・駆除について>>
アナグマの獣害対策
特に九州においては多くの被害が報告されています。ハクビシンと同様、侵入防止・餌となるものを減らす・捕獲が基本対策になります。捕獲には箱罠が用いられ、難易度も高くありませんが、鋭い爪があるので注意が必要です。
アナグマの特徴と対策についてもっと詳しく
タヌキと間違えられることも多いアナグマですが、この記事では、アナグマの特徴や、鳥獣被害対策としての対応方法を説明します。◎アナグマの特徴と対策について>>
ヌートリアの獣害対策
アライグマと同様、特定外来生物に指定されています。おもに水辺で生息し、ヌートリアが水辺から上がってくる場所や巣穴付近に箱罠を設置して捕獲します。他の動物にも言えることですが、彼らの恰好の通り道となる藪や下草は刈り払うようにしましょう。
ヌートリアの特徴と対策についてもっと詳しく
ヌートリアは南アメリカ原産の大ネズミで、特定外来生物です。水辺の植物を旺盛に食べることから、西日本を中心に稲などへの農業被害が報告されています。その生態や対策について詳しく記載します。◎ヌートリアの特徴と対策について>>
タヌキの獣害対策
対策方法としては、ハクビシン・アライグマ・ハクビシンと同様です。おもに夜行性であり、夜に作物を食べにくることが多いです。
捕獲にはハクビシン用と同様の箱罠が用いられますが、イノシシ用の大型箱罠の餌に寄ってくることも多くあります。寄せ餌は安価で油分が多いものが良いでしょう。
タヌキの生態・対策についてもっと詳しく
タヌキは田畑や家庭菜園に侵入して作物を食べたり、糞を落としたりするため、厄介者でもあります。そんなタヌキの生態や被害対策について、今回は説明します。◎タヌキの生態を理解して対策を学ぼう>>
ネズミの獣害対策
飲食業や式場を営む方にとっては天敵となります。業者に依頼するのが最も早いですが、自身で捕獲する際は、ネズミの侵入経路を見極めて罠や粘着シートを設置します。
ビルや大型施設の場合は当社でも見積もりを承っておりますので、ご相談ください。
ネズミの生態・対策についてもっと詳しく
古くから人間の生活にさまざまな被害を与えてきたネズミですが、現代においても、大都市のビル内部など都市の環境に巧みに適応して増加し、問題を引き起こしています。その対策について詳しく記載します。◎ネズミ被害に困った!種類や習性を知って、適切な対策を。>>