「ジビエ肉をもっと日常に」~若草hutte&co-ba miyazaki 店長・山師 今西 正さん(宮崎県)

若草hutte(ヒュッテ) & co-ba miyazaki ジビエ料理

宮崎県宮崎市の中心部にある若草通商店街は、アパレルショップやレストラン、雑貨屋など、それぞれ独自の魅力が光る個店が立ち並ぶ場所である。そのメインストリートから北側の脇道に入って少し行くと、どことなく「山」の雰囲気を感じるカフェが見つかる。

そのカフェの名前は若草hutte(ヒュッテ) & co-ba miyazaki。 軒先には薪が積んであり、「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが立っている。夕食時を少し過ぎた時間の店内を覗くと、友人との会話を楽しむ女性、コーヒーを飲んでほっと一息ついている男性、レジ前で持ち帰り用のスイーツを選ぶ女性、皆それぞれの時間を楽しんでいる様子が伺える。

(▲写真(上)):若草hutte & co-ba miyazaki外観。若草通りの脇には、車が通れない細い路地があり、そこを進むと穴場的なお店が多く見つかる。

店内に入ってカウンター席に座る。そして、注文したコーヒーを待ちながらお店の様子を眺めてみる。木を基調とした造りの店内は暖かな光にゆったりとした雰囲気。お酒を注文する人もおり、どうやら今はバータイムのようだ。決して騒がしくはなく、少し飲んだ後の2軒目に友人や同僚とゆっくりと語らいたいときにも使えそうである。

(▲写真(上)):店内は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした時間が流れる。ランチタイムは11時半~14時半、カフェタイム10時~23時半、バータイム17時~23時半。

出てきたコーヒーを飲みながら、ふと外にある「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが気になり、マスターに尋ねてみる。

「お店のランチメニューやbarのおつまみ、イベントメニュー等で宮崎産のジビエ肉を出しています。初めてジビエを召し上がった方にも『臭くない。クセが無い。おいしい。』と好評です。特に鹿肉はヘルシーで、女性のお客様が多く注文されます。鉄分豊富で低カロリーなので、糖質制限されているお客様が注文することも最近は多いですね。」

気さくなマスターは私の問いかけに丁寧に答えてくれる。聞くと、家は宮崎県美郷町で林業を営まれており、マスターの肩書は山師。林業に従事する傍ら、シカやイノシシによる被害が多いことを目の当たりにしてきたという。

(▲写真(上)):店舗を切り盛りするのは、パーマが特徴の山師・今西 正さん。

店舗をオープンしたのは2017年8月11日「山の日」。ジビエや椎茸、野菜などの山の恵みを店舗で提供し、「山と街をつなぐ場所」としてHUTTEを運営してきた。 近年の鳥獣害の増加を受け、全国で捕獲されるシカやイノシシの数は大幅に増加している。

猟期だけでなく年間を通して有害駆除による捕獲が行われているケースも多い。 環境省の直近の発表によると、平成29年度のニホンジカ捕獲数は601,200頭、イノシシの捕獲数は545,400頭、合計で1,146,600頭に達している。

これだけの数の捕獲が行われているのだから、それらの肉がもっと多く流通しても良いはずだが、実際には一般消費者の食卓にあがる機会はそうそうない。ハンターの場合は、狩猟によって捕獲した獲物の肉を有効活用することが多いものの、それ以外のケースでは、ほとんどが廃棄物として焼却・埋設処分されているのが現状なのである。

(▲写真(上)):レジ前には持ち帰り・お土産用のジビエ商品や、山師ならではの椎茸、ケーキや大福などのスイーツなども展開している。

最近でこそ、ジビエ肉としてメディア等で取り上げられるようになってはきたものの、一般消費者にとっては馴染みが薄く、まだまだ取り扱う店舗は少ない。そもそも店舗で使うジビエ肉は、基準を満たした加工施設で製造されたものでなければならないが、各地の獣肉処理の仕組みはまだまだ整備の途上であり、安定供給にはほど遠い。

「僕は猟師ではありませんが、店舗で提供するメニューを通じて、多くの人にジビエ肉の魅力を知ってもらうことはできると思い、ジビエメニューはお店を始めてから毎日出しています。使用する肉は、宮崎県内の加工施設から仕入れる高品質のものです。これらの肉を当たり前に食べてもらうようにならないと、現状は変わりません。」と今西さんは語る。

(▲写真(上)):HUTTEには様々な人が集まる。もちろんカフェ利用の人も多いが、仕事終わりにコワーキングスペースで勉強利用する人、イベントを主催して情報発信する人など、使い方は人それぞれ。当然、美味いジビエを求めてやってくる人も。

また、山と街をつなぐ場所というコンセプトのもと、カフェの2階3階はコワーキングスペース※となっている。仕事スペースとしての利用だけでなく、商品の展示発表会やセミナー、ワークショップなど、各種イベントにも利用され、様々な人が交流する場となっている。それらの交流から新たな価値が生まれる手助けをすることを目指しているそうだ。

※コワーキングスペース:おもに同一の団体ではない人たちが、仕事を行うスペースを共有している空間のこと。

(▲写真(上)):2階のコワーキングスペース。冷暖房やプリンター、Wi-fi完備。貸し切りで講演会や各種イベントに利用されることも多い。3階はプレミアムスペースで、契約者のみが利用できる。

特に地方ではシャッター商店街が増え続けている現状がある。そういった中で、独自の魅力を持ち、あらたな価値を発信できるHUTTEのようなお店が商店街の中に増えることで、地域の活性化につなげることができるのではないだろうか。

最近では、様々な人が交流する場という特色を生かし、美郷町の女性ハンターによるトーク&料理イベント「ジビエ女子ナイト」を開催し、狩猟やジビエ、今年度美郷町に初めてできるジビエ加工施設のことなどを紹介したそうだ。多様なコミュニケーションの中で、鳥獣被害やジビエ活用に関する新たなアイデアがここから生まれるかもしれない。

(▲写真(上)):最近開催された、ジビエ女子ナイトの一コマ。現役女性ハンターが猟に関するリアルな話や、ジビエの楽しみ方を伝えた。年齢・職業を問わず、様々な人が楽しく参加できるイベントが開催されるのもHUTTEの魅力だ。

▼ お店への道順や、お問合せ先は以下を参照ください。

【若草hutte & co-ba miyazaki】 若草通アーケードから、四季通りとハイカラ通りの間にある細い路地を北側に入り、右手側。1階にキッズスペース、2階に授乳室も完備。

住所:〒880-0805 宮崎県宮崎市橘通東3丁目5-33 電話:0985-41-5359 HUTTEのFacebookページはこちら>>


当店ではジビエの販売も行っております。是非ご検討ください。

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