4月から6月にかけては、鳩の被害が最も増える季節です。被害を受けていないうちは鳩の存在に対して何とも思わないのですが、実際に被害を受けると非常に悩ましい存在に感じるようになります。
よくある鳩の被害内容
鳩が人間に与える被害の多くは、糞と鳴き声です。まだ軽度であれば、特に深刻な被害に感じられませんが、重篤になってくると精神的な被害だけでなく、経済的・身体的にも被害を受ける可能性があります。
鳩はたくさん糞をする
鳩は非常に大食漢で、一日に体重の1割ほどの量の餌を食べます。体重60キロの人間でいうと、毎日6キロほどの食事をする換算になります。人間の1回の平均食事量は、800グラム~1キロ程と言われますので、毎日5~6回食事を取るのと同じようなものです。
食べる量が多いということは、その分排出される量も多いということ。鳩の糞の量は他の鳥と比べても多く、また気に入った場所に長く滞在する習性があります。さらに、鳩自身は自分の糞が周りにあると安心する習性もあります。そのため、一定の場所に大量の糞や抜けた羽が堆積するということも珍しくありません。
また、鳩は気に入った場所に執着する強い習性があります。糞を清掃する際に鳩を追い出そうとすると、非常に臭い糞をしながら動き回るものの、なかなかその場所から離れようとしません。
以下の動画では、ベランダの室外機に執着する鳩が糞をまき散らしながら歩き回るものの、なかなか逃げない様子が確認できます。なんとかベランダから追い出しても、鳩は遠巻きからこちらを観察しており、ベランダに戻ることを諦めずに機会を伺っている様子もみられます。
鳩の糞が媒介する病気
“rats with wings(羽のあるネズミ・空飛ぶネズミ)”という言葉があります。これは、1980年のアメリカ映画「スターダスト・メモリー(原題:Stardust Memories)」で主演のウディ・アレンが野生の鳩に対して放った言葉です。
このような呼び方をされる理由は、鳩が媒介する病原菌にあります。多くの場合、病原菌を含んだ鳩の糞が乾燥して粒子状になり、人体に吸い込まれたり傷口や粘膜に付着した結果、感染が起こります。
野生鳥獣は様々な病原菌をもっていますが、中でも鳩は大量に糞をすること、群れること、人間の生活エリア付近にいることから、病気を媒介するリスクが高いのです。 また、鳩に寄生するダニや吸血性の昆虫によって人間が被害を受ける可能性もあります。
鳩が媒介する病原菌や寄生虫によって、人間が重篤な健康被害を受けるケースは稀ですが、免疫力が弱い人は影響を受けやすくなるので、注意が必要です。
糞は金属やコンクリートを腐食させる
人間は体内のアンモニアを尿素として排出しますが、鳥類は難水性の尿酸として糞と一緒に排出します。水に溶けにくい糞であるため、雨風があってもこびりついたままとなりやすく、糞に含まれる酸性分によって金属や塗装の腐食やコンクリートの劣化を引き起こす場合があります。
2007年にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで起きた橋の崩落事故は、橋げたなどに溜まったハトの糞が鉄骨を腐食させたことが原因という説もあるほど。 長期間付着するほど劣化が起こりやすく、事故や資産価値の低下につながる可能性もあるので、重篤化する前に対処しておくことが大切です。
鳩の羽音や鳴き声による騒音
鳩が人間の生活エリア近くにいると、「ホー、ホー」「ボーボー、ポッポー」と鳴き声が聞こえることがあります。 これは繁殖期に雄が雌を呼ぶための声であったり、縄張りを主張するための鳴き声です。
たまに聞こえる程度であれば気にならないのですが、家や事務所に住み着かれた場合、耳障りの範囲を超えて騒音ともいえる状況になります。 静かな場所で急に「バサバサッ」といった羽音が間近で聞こえたり、朝早くから元気よく鳴き声が聞こえたりすることが頻繁に起こると、かなりのストレスになります。
鳩被害が起こる理由
鳩の被害件数がピークになるのは5月から6月にかけて。また被害場所の約8割が個人宅で、ベランダや屋根における糞害が多くの割合を占めます。 もともと鳩は天敵を避けるために、崖の割れ目など高所にある周りが囲まれた場所に巣をつくる習性があります。
都市部において似たような環境となるのが、ベランダや屋根となります。特に、空き家のベランダにある室外機や屋根に設置したソーラーパネル下などは、人間もカラスもネコも来にくい恰好の場所になるわけです。
さらに、都市部は人間が鳩に餌をやるケースもあるので栄養状態も良好となり、鳩が人間の生活エリア付近で繁殖しやすい環境が整っていることになります。
鳩被害を受けたら
被害を放置すると、どんどん重篤化するのが鳩被害の特徴です。被害が軽微なうちに対策することが需要で、糞を見つけたら綺麗にする、鳩が気に入りそうな場所は物理的に防護する、忌避剤等で寄せ付けないようにするといった内容になります。
帰巣本能によって執着が強い状態でも、しっかりと対策すれば2週間~1ヶ月ほどで諦めて他の場所に移ります。別の場所に移れば、新しい場所への帰巣本能が働くため、その鳩は来なくなります。