くくり罠の材料って何が要るの?

くくり罠材料 パーツ

イノシシやシカ等の野生動物を捕獲するために、多く用いられるのが「くくり罠」。その名の通り、獣の足をワイヤーで「くくる(括る)」ことによって捕獲します。

世の中には様々なタイプのくくり罠があり、市販のものを購入する方もいれば、材料を揃えて自作する方もいらっしゃいます。

市販のものはそれぞれの罠に合った材料が使われており適正なバランスで組み立てられているので、特に初心者の方は市販のものを選ぶのが良いでしょう。

一方で、自作のほうがコストが抑えることができて自分好みのチューニングがやりやすいので、ベテランの方は自作派の方も多くいらっしゃいます。ただし、材料を自分で選定して手配しなければならないのはもちろん、捕獲の経験値・工作の技術や機材が必要になります。

今回は、自作にチャレンジしてみたい方向けに、くくり罠に必要な材料を紹介したいと思います。

くくり罠に必要な材料

くくり罠を作成するには、まず材料と工具を揃える必要があります。罠のタイプによって必要となるものは異なりますが、ここでは跳ね上げ式のくくり罠を例にとって説明します。 跳ね上げ式のくくり罠は、大きく分けて「踏み板」部分と「スプリング」部分で構成されます。

スプリング部分に必要となる材料

スプリング部分は獲物を捉えるためのワイヤー部分とバネ、そして支柱に取り付けるためのワイヤー部分で構成されています。これらが一体となって、ばねの力でワイヤーの輪が締まるような仕掛けを作る必要があります。

①押しバネ

くくり罠に使用するバネ(押しバネ)は、捕獲率を大きく左右するパーツです。バネを圧縮させた状態で仕掛けておき、くくり罠が作動するとバネが元にもどる(伸びる)力によってワイヤーが締まり、獣の足を括ります。

バネの素材はステンレス製やメッキ製のもの等がありますが、錆による劣化を防ぎたいならステンレス製、強度を重視するならメッキ製を選びます。※なお、当店ではへたりの少ないステンレス線材を使用しており、塩ビパイプ内径φ13mmに適したサイズのものを取り扱っています。

②ワイヤーロープ

どのようなくくり罠においても、ワイヤーは必需品になります。

支柱となる立木などにワイヤーを固定する部分と、獣の足を括るための作動部分で計2本のワイヤーが必要になります。ワイヤーが長すぎると捩れやキンクが発生しやすくなり捕獲した獣の可動域も広くなってしまいますが、短いと支柱となる立木等から近い位置に仕掛けなければならなくなるため設置場所に制約がでてしまいます。

各ワイヤーの長さは標準で2メートルほど確保しておき、設置場所の状況や好みに応じて調整すると良いでしょう。切り売りにて少量準備しておくのも良いですが、くくり罠猟においてワイヤーは消耗品なので、100mロール巻き等まとめて購入しておくのも良いでしょう。

③アルミスリーブ

アルミスリーブは②のワイヤーロープで輪っかを作るために必ず必要になる材料になります。ワイヤーロープ径によって適合するスリーブのサイズが変わってくるので、注意しましょう。

くくり罠においては、おもに加工しやすいアルミ製のスリーブが使われます(ステンレススリーブも市販されていますが、アルミよりも高価になります)。輪を作る際は、ワイヤー2回(折り返し往復)通しの2回加締めで固縛します。 アルミクランプ内にワイヤーロープを通して、アームスエージャー等の加締め専用工具を使って締めることで、ワイヤーを固定することができます。

④サルカン

ワイヤーロープの撚れ、ねじれを防止することができることから、「より戻し」とも呼ばれる真鍮製の部品です。②のワイヤーロープの項目で記載したとおり、支柱にくくりつけるワイヤーと、イノシシの足を締めつけるワイヤーをサルカンで連結します。

サルカンで連結させることによって、撚れができにくくなるため、ワイヤーも切れにくくなります。 イノシシ及びニホンジカの捕獲には、サルカン未装着のくくり罠は使用禁止されています。

⑤シャックル

シャックルは、U字型の金具とネジが付いている、ワイヤーを支柱となる立木等に固定する際に使う便利な部品です。ワイヤーを支柱に巻き付けたあとに、シャックルを使って固定します。

⑥くくり金具

一度ワイヤーが締まると戻りづらい構造になっていて、捕らえた獲物を逃がしにくくする為の部品がくくり金具です。捕獲した獣がワイヤーを引っ張るほど、緩みにくくなります。 なお、作動のスムーズさを優先させる場合は、くくり金具を使わずに組み立てる場合もあります。

⑦過締まり防止金具

過度に獣の足を締め付けないようにするために、ワイヤーロープの輪(スネア)のしぼりを一定までにするための金具です。この金具が無ければスネアが目いっぱい締まってしまうため、それを防止するためのものになります。

当店ではストッパー機能がついたものを使用していますが、ワイヤーが過度に締まることを防止できるスペーサー的な機能を果たす金具であれば、どのようなものでも大丈夫です。 イノシシ及びニホンジカの捕獲する際は、過締まり防止金具が装着されていないくくり罠は使用が禁止されています。

⑧ばねストッパー

バネを圧縮した状態で固定するためのストッパーです。これがなければ、そもそもバネを圧縮した状態で保持することができないため、必須の材料となります。

当店では、蝶ねじで固定するタイプのストッパーを使用しており、2ヵ所の蝶ねじで強力に固定することができます。

⑨塩ビ管

くくり罠を仕掛ける際に、圧縮したバネを納めるための塩ビパイプです。塩ビパイプが無くても罠として機能させることができますが、塩ビがあるとバネを圧縮させるとき、バネがむき出しの場合と比べ、セッティングがしやすくなり、また作動時にバネに土や草が巻き込まれるのを防いだり、捕獲後のバネの痛みを軽減できるメリットがあります。

踏み板の作成に必要となる材料

獣が足を置く部分の材料としては、コンパネが最も加工しやすくオススメです。また、コンパネのカットサイズに合った台座を準備する必要があります。台座はアルミを加工して作ったり、塩ビパイプをカットして作ったりします。

一番キモとなるのはスネアを巻き付けるアーム部分です。アルミや鉄を加工して作る方や、塩ビをうまく加工して作る方もいらっしゃいます。

捕獲活動を行う地域によって、使用できるくくり罠の径(スネア径)が異なりますので、 くくり罠を使用の際は、地域の自治体にご確認ください。

くくり罠を作るまえに知っておきたいこと

イノシシやシカをくくり罠で捕獲するにあたって、遵守しなければならない規則があります。罠自体の要件としては、以下に該当するくくり罠は使用が原則禁止されています。

1:獲物を吊り上げてしまうもの

2:ワイヤーの直径が4mm 未満のもの

3:「より戻し」がないもの

4:「締め付け防止金具」がないもの

5: 直径(楕円形の場合は小さい方)が12cm を超えて掛けること

6:1人で31個以上のわなを掛けること

※5については、多くの地域で直径の規制が緩和されています。規制の有無については捕獲を実施する地域の自治体担当課にご確認ください。

まとめ

一般的な跳ね上げ式のくくり罠は、上記で紹介した材料で構成されています。罠の構造や好みにより必要な部材は変わりますが、標準的なものであれば上記部材が揃っていれば問題なく作成できます。

ただし、くくり罠は直接獲物を拘束するため、各々の部品に大きな力がかかります。ワイヤーはもちろん、他の部品についても、くくり罠の構成パーツは基本的に消耗品であることを意識しておくとよいでしょう。

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