イノシシ対策を徹底解説!様々な方法を分かりやすく解説

イノシシの防護柵

イノシシによる農業被害は、経済的・精神的にも打撃を与える深刻な問題です。それだけに、被害を軽減させるための対策が重要となってきます。 今回は、イノシシ被害に立ち向かうための対策について、具体的な方法をご紹介します。

対策1.防護柵

防護柵は、イノシシによる被害を水際で食い止める最終防衛ラインです。防護柵の設置には、種類の選択や設置位置のほか、様々なコツがあります。 まずは、防護柵の種類について詳しく見ていきましょう。

有刺鉄線

ご存じ、いくつものとげ(針)のついた鉄線を張り巡らす方法ですが、イノシシに対する進入防止効果は低いといえます。毛皮の厚いイノシシは、有刺鉄線のとげが当たってもそれほどの痛みを感じないようです。

また有刺鉄線のように柔軟性がある柵の場合、20cm程度のすき間があれば成獣のイノシシでもくぐり抜けられます。

ワイヤーメッシュ

強度があり、効果も認められるため、広く用いられています。短所としては、以下が挙げられますので、高さを1.2m以上の柵にする等、工夫が必要です。

  • ・視覚的に警戒させにくいため繰り返し進入を試みられる
  • ・高さが低いと、害獣に飛び越えられる ※イノシシは1m程度の高さの障害物であれば助走なしで飛び越えられます。
  • ・編み目が大きすぎると幼獣が通り抜ける

  • 以下の動画のように、執拗に柵を突破しようとするケースもあります。そのような場合は、柵を物理的に補強しておくだけでなく、必要に応じて電気柵による心理的な防護対策もあわせて実施します。

    防獣ネット・魚網

    柔軟性があり、構造が不安定なため侵入防止効果は高いといえます。起伏の多い場所でも設置がしやすいというメリットも。目の細かいものにすれば目隠し効果も期待できます。短所は、ワイヤーメッシュと同様、視覚的遮断効果がないことや、網の編目を押し広げられたり、食い破られる場合があることです。

    こちらの商品のように、食い破られ対策を施した商品を選ぶと良いでしょう。

    トタン板

    視覚的遮断効果があること、材料費が安くて済むことが大きな強みですが、飛び越える、押し倒す、持ち上げるなどして侵入される事例が多くあります。高さが不十分なため、飛び越される危険もあります。

    網・フェンスの下から潜り込まれないようにする補助的な資材として使います。

    金網・フェンス

    強度が高く、侵入防止効果は高いこと、耐用年数が長いことがメリットです。めっき加工が十分に施された金網柵は耐久性が最も高いといえます。さらに「しのび返し」加工することで、飛び越し防止の効果が期待できます。

    しのび返しとは金網の上部を20~30度折り返すことで、イノシシが見上げると折り返さない柵より20cm高く見えるため、飛び越すことをあきらめるという仕組みです。

    短所は、ワイヤーメッシュと同様、視覚的遮断効果がないことや、接地面の補強がしっかりしていないと、下から侵入される恐れがあること、編目が大きいと幼獣が通り抜ける恐れがあることです。

    電気柵

    防護柵に通電することで、侵入しようとするイノシシに電気ショックを与えるものです。適正に設置・管理できれば、高い効果が期待できます。

    反面、漏電防止などのメンテナンスに労力がかかること、費用が割高であることがデメリットですが、広く用いられている防御施策になります。

    防護柵の効果を上げるには

    防護柵は間違った方法で設置すると、効果が半減してしまい、せっかくの投資が無駄になってしまいます。効果の高い柵を選択し、効果の高い立て方で農地を守りましょう。

    異なる柵を組み合わせて防護する

    イノシシに対する防護柵を設置する際は、それぞれの防護柵の弱点を理解したうえで、弱点を補い合えるように組み合わせで設置すると効果的です。 以下に例を紹介しますので、参考にしてみてください。

    「トタン板」+「電気柵」・・・トタン板で防護したい場所の周囲を囲い、その外側に電気柵を設置する等です。視覚的遮断効果がない柵において、トタン板を組み合わせることは非常に有効です。トタンで囲うことで視覚的に遮断でき、作物などを見えにくくするからです。

    「ワイヤーネット」+「網」・・・金網の外側で、イノシシの足場になりそうな箇所にネットを配置することで、足場を不安定にでき、飛び越え防止効果を期待することができます。イノシシは網を執拗に引っ張る行動をする場合もありますので、それに耐えられるような固定をしておく必要があります。

    「柵の外側にワイヤーメッシュやトタン」・・・イノシシは鼻を使って穴を掘るのが非常に得意です。柵の接地部分の隙間を探して、そこを掘り起こして内部に入ろうとします。そのため、柵の外側にワイヤーメッシュやトタン板を敷いておくと、掘り起こし防止効果が期待できます。

    定期的に点検・補修・改善を行う

    柵を設置した後も、柵の状態に注意を払っておきましょう。破損、ずれやゆがみ、柵の地際の掘り返しなど、定期的にチェックすることが必要です。 トタンやネット、金網等を使用する場合は、地面との接地部分を補強し、隙間を作らないようにします。

    下をくぐられないように、接地面は補強しておきましょう。アンカーピンで地面と金網を固定するのは最低限必要な対策です。

    ※石を重しにしてネットを固定することは避けてください。イノシシは鼻の力で70kgの石でも持ち上げることができます。また石に興味をもってひっくり返す場合もあります。

    周囲をすき間なく囲い、藪があれば刈る

    猪は隙間を探し侵入しようとします。防護する場所の周囲は完全に囲うように柵を設置しましょう。 また、イノシシの体高は60~80cmで、藪(やぶ)や茂みに隠れながら田畑等に侵入します。

    柵の周辺の藪を刈り払うことにより、イノシシが柵に近づきにくい環境ができます。特に、竹藪は好物のタケノコがあり、イノシシを引き寄せますので、思い切って伐採してしまったほうが良いです。

    対策2.忌避剤

    忌避剤とは、イノシシが好まない匂いを発する薬剤のことをいいます。イノシシは非常に嗅覚が優れており、イヌの嗅覚にも匹敵するほどです。この特性を利用して、イノシシが好まない匂いをわざと発生させることで、農作地に近づかせないようにするのが忌避剤の狙いです。

    トウガラシ・ハーブ

    忌避剤には、様々な種類がありますが、一般的なのがトウガラシとハーブです。いずれもイノシシが嫌う匂いで、エリアから遠ざける効果があります。家庭用のトウガラシやハーブで代用することもできますが、鳥獣被害専門の忌避商品も販売されています。単体で効果を発揮すさせるというよりも、既存の対策に加えてさらに効果を出したいときにおすすめです。

    オオカミ尿(ウルフピー)

    ウルフピーとはオオカミの尿のことで、イノシシ対策にしばしば用いられます。古くからイノシシにとって、捕食される可能性があるオオカミは天敵です。

    嗅覚が鋭いイノシシは、オオカミの尿を敏感に嗅ぎ付け、周囲を警戒するようになります。オオカミが尿や体の匂いで自分のなわばりを主張する「マーキング」の習性を利用した対策の1つで、イノシシ対策への効果が期待できます。

    忌避剤の効果を上げるには

    忌避剤は匂いがなにより重要なポイントとなってきます。そのため、雨で忌避剤が流されたり、日数が経ってしまうと、効果が弱くなってしまいます。雨避け対策や、定期的に忌避剤の容量をチェックする他、雨の翌日は忌避剤を撒きなおすといったメンテナンスを欠かさないようにしましょう。

    イノシシの鼻の高さに設置する

    忌避剤の効果を高めるには、設置する高さを意識しましょう。イノシシがより匂いをキャッチしやすくするために、鼻の高さの目安40cm程度に設置します。ウリボウなら20cm程度が目安です。親子での姿が目撃されるなら、40cmと20cmの二箇所の高さに設置しておくことで、より効果が高められるでしょう。

    物理的な対策とセットで利用する

    いくらイノシシが嫌う匂いとはいえ、匂いに慣れてしまうと警戒心は下がってしまいます。また、すでにの農作物被害が発生している場所はイノシシが「安全」と判断してしまい、効果が表れにくいことがあります。

    こうしたケースでは、物理的な対策とセット利用することで、イノシシにより強い警戒心を植え付けましょう。電気柵や箱罠、くくり罠などが効果的です。

    対策3.罠による駆除

    防護柵や忌避剤はイノシシを遠ざける・近づけない上では効果的な対策ですが、イノシシの数を減らすという根本的な対策には駆除が必要です。 駆除では罠を仕掛ける方法が一般的です、罠の種類には大きく「箱罠」と「くくり罠」の2種類が存在します。

    箱罠

    箱罠とは、檻などで作られた箱型の罠です。餌などでおびき寄せたイノシシがトリガーに触れることで出入口が閉まり、檻の中に閉じ込める仕組みになっています。

    箱罠のトリガー(仕掛け)の種類は複数あり、以下が代表的なものです。

    蹴り糸方式:蹴り糸が獲物の体に触れることにより作動する

    踏み板方式:獲物が踏み板を踏むことにより作動する

    ▶回転軸(回し棒)方式:軸が回転することにより作動する

    くくり罠

    くくり罠とは、バネの力を使って作動する罠の種類をいいます。獲物があらかじめ設置した踏み板を足で踏み抜くと、バネの力で罠が作動。 ワイヤーが獣の足を括り(くくり)、捕獲することができます。 サイズは数十センチと箱罠に比べ小さいため、よりピンポイントで罠を設置する必要があります。しかし、価格が安いことから複数箇所へ設置がしやすい点や、車などが侵入しづらい場所への移動や持ち運びが容易です。

    また、誘引用の餌を使用せずに使うこともできるので、周囲の農作地への影響など心配する必要がありません。 くくり罠にはバネの種類が複数あり、それぞれ以下のような特徴があります。

    押しバネ方式:くくり罠に用いられるバネの種類の中で、もっともポピュラー。圧縮させた状態で仕掛けておき、罠が作動した際に圧縮から元にもどろうする力を利用する。

    ▶引きバネ方式:押しバネとは逆にコイル部分が引っ張ぱれた状態で仕掛けておき、戻ろうとする力を利用している。バネの両端にフックが付いている点も特徴。

    ねじりバネ方式:トーションバネまたはキックバネ、ねじりコイルばねとも呼ばれる。コイル部からアーム(足)がついており、コイル部を巻き込む方向に荷重が掛かる。

    罠による防除の効果を上げるには

    箱罠の場合

    【設置場所】 イノシシを捕獲するために箱罠を設置する場合は、まず平らな土地を選びましょう。箱罠を置く場所が不安定な状態では、扉の開閉がスムーズにできずイノシシを取り逃がしてしまう恐れがあります。

    また、そもそも不安定な場所はイノシシが恐れを抱いて近づいてくれません。設置する際の労力や安全性の面を考えても、運搬しやすい平らな土地が最適です。 イノシシを誘引するための餌の撒き方にも工夫を施しましょう。

    いきなり箱罠の中だけに餌を撒いても、イノシシは警戒して近づいてくれません。まずは箱罠周辺に餌を撒きながら、イノシシの警戒心を解いていきましょう。 日々の見回りで餌を食べた痕跡が観察されたら、餌を撒く位置を罠の方向へと徐々に近づけていきます。少しずつ餌の量を増やすなど調整しながら、最終的に箱罠の中へと誘導していきましょう。

    箱罠はイノシシとの持久戦です。焦らず長いスパンで取り組むのが肝心です。

    くくり罠の場合

    くくり罠は仕掛ける場所を丹念に探すことから始めます。イノシシが残した足跡や糞、食痕といったサインから、どのエリアやルートを頻繁に利用しているのかを予測します。とくに鮮度の高いサインであれば、イノシシが近いうちにまた訪れる可能性が高く、捕獲の確率が高まります。イノシシの行動を予測しながら、通り道となりそうな場所に罠を設置しましょう。

    設置する際は、人間の痕跡を可能な限り残さないようにします。イノシシは人間や人工物の匂いを察知すると、警戒心が高まります。匂いを残さないためには、素早く罠を設置するだけでなく、身に付ける服や靴、道具の匂いにも配慮するようにしましょう。

    例えば、熟練の猟師は、

    ・狩猟期は作業用の服を固定する

    ・新品の罠や道具は一度周辺の土をまぶしておいたり、ワイヤーを栗などと一緒に煮込んで光沢や匂いを消す

    ・まぶした土は罠から離れた位置に放棄する

    ・作業中に膝をつく場所には使い古したビニールを用意しておく

    といった工夫をしています。いずれも些細なことに思われますが、野生動物の警戒心はそれほどまで高いということを覚えておきましょう。

    対策4.その他の対策

    その他にもイノシシ対策にはさまざまな方法が挙げられます。

    音による対策

    イノシシは音に対しても敏感です。この習性を利用した対策アイテムが防除威嚇機。光センサーによりイノシシを察知すると、威嚇音を発して農作物からイノシシを遠ざけます。 忌避剤同様、こちらもイノシシの「慣れ」に注意が必要です。ランダムで音を発生させるタイプの活用や、物理的な対策とセットで利用することで、効果を高めていきましょう。

    周辺環境の整備

    イノシシ対策の中で意外と見過ごされがちなのが、周辺環境の整備です。 イノシシは基本的に臆病で警戒心が強い動物です。そのため、農作物に近づく際はなるべく人の目に触れないように注意して近づいてきます。

    このイノシシの格好の隠れ蓑となるのが、高く伸び雑草や生い茂った枝葉です。定期的に雑草や枝葉を刈り取っておくことで、イノシシの隠れ蓑を作らないようにしておきましょう。 また、耕作放棄地に自然に生えた作物はイノシシにとって格好の餌場です。こうした環境は作らないためには、地域住民とのコミュニケーションを図りながら、イノシシ対策を行うことも欠かせません。

    その他にも、お墓の供物や市場に出荷できなずに放置された作物などがあると、イノシシは餌場として学習し頻繁に姿を現します。一度味を占めると対策の難易度は高まるため、まずは自分たちができる身近な環境整備から取り組んでいきましょう。

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