イノシシによる被害は里山に住む人にとって身近な問題です。中でも農業を営む方にとっては、作物を育て食し、売っていかなくてはならない中で、そこにイノシシ被害を受けてしまうことは大きな打撃になります。
高齢化や過疎化の影響もあり農家の経営はただでさえ苦しいですが、田畑が荒らされることが追い打ちとなり、営農意欲まで奪い取られてしまいます。 農林水産省の発表によると、イノシシによる農林水産被害額は平成30年度で約47億円となっており、農業を営む人にとっては死活問題となる深刻な事態です。
イノシシ被害の例
全国の野生鳥獣による農作物被害額は平成30年度で158億円となっています。被害を与える鳥獣はある程度限定されており、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。
このうち、イノシシによる被害は全体の約3割に達しています。 ※公表等されている被害は限定的で、正確な情報が把握されていなかったり、被害が少ない・程度が軽い場合もあるため、未公表の被害も多々あると思われます。
農作物に係る被害
イノシシによって人間が被害を被る中で、もっとも深刻なのは農作物が荒らされるケースです。中でもイネの被害金額は非常に高く、全国で24億円に達しています。
イノシシは雑食であるため、被害作物は多岐にわたります。また、栄養価が高く比較的消化しやすい部位を好むため、季節ごとに状況の良い作物を選んで集中して食害する傾向があります。イネの他にも、果樹や野菜、いも類の被害が顕著となっています。
食害だけでなく、田畑を掘り返されたり踏み荒らされたりして駄目にされる被害もあります。
被害の面積でみると、イネで3600ヘクタール、果樹で1000ヘクタールに達しています。因みに、1000ヘクタール(ha)は、東京ドーム約213個分の広さです。

人身被害
イノシシは身体能力が高く、襲われて人身被害を受けるケースもあります。市街地でも多く発生していますが、こう言った場所では罠を使った捕獲が難しかったり、銃器の使用ができなかったりするため、簡単に解決できないケースも散見されます。
環境省は平成28年から人身被害件数を集計していますが、それによると被害件数は毎年50件前後、被害人数は50~70人前後を推移しています(狩猟や捕獲作業にともなう人身被害は除いた数値です)。被害が多い地域は、兵庫県、香川県、栃木県です。
こういった被害が起こる背景として、市街地にイノシシが出没するようになり、ゴミや餌付けなどによってイノシシが人慣れしてしまったことが考えられます。 また、市街地でのイノシシ被害の場合、住民が自身ごととしてとらえる意識は低く、自分たちで対策等を行うのではなく行政へ対応を求める場合が多く、地域ぐるみでの対策が困難となりがちです。
生活環境被害
人身被害以外にも、交通事故やゴミ集積場を荒らす、家屋侵入等といった生活環境被害を受けるケースもあります。
これも、餌付けやゴミの放置をおこなった結果、人慣れしたイノシシが人間の生活圏内で被害を起こすようになった背景があります。 こういった状況をふまえ、人身被害や生活環境被害が多く発生している神戸市では、2014年に東灘区・中央区で相次いで発生したイノシシによる人身事故を受けて、神戸市では餌付け行為を指導・禁止する取り組みを強化するため、公表の規定等を追加する条例の改正を行いました。
イノシシ条例(神戸市いのししからの危害の防止に関する条例)
庭やクリーンステーションを荒らされるといった生活環境への被害や、人が噛み付かれたり、イノシシが原因で交通事故が起こるなど、イノシシ問題は、地域の住民の方にとって重大な問題となり、2002年5月1日から施行されました。求められる被害対策とは?
害獣が入ってこないよう柵を設置したり忌避剤を散布することですが、あくまで防御としての対策であり、根本解決とは言えません。被害が増えれば増えるほどメンテナンスにも労力がかかるため積極的な獣害対策の必要性が出てきます。
イノシシやシカなどに対する積極的な対策の方法としては、銃猟とわな猟があります。近年、ほとんどの地域で、銃猟による捕獲数よりもわな猟での捕獲数が上回っています。
環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」(平成25年12月)を共同で取りまとめており、「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(令和5年度)までに半減」することを当面の捕獲目標としています。
この目標を達成するため、環境省では、鳥獣保護管理法に基づき、集中的かつ広域的に管理を図る必要がある鳥獣としてニホンジカ及びイノシシを「指定管理鳥獣」に指定するとともに、都道府県等による捕獲事業を交付金により支援しています。
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まとめ
最近は、テレビでもイノシシ被害や捕獲について取り上げられるようになってきていることから、都市部に住む人にも少しずつ認知が広がってきています。
しかしながら、身近な問題でない限りは自分事として捉えることは難しいもの。生命を奪うことについて嫌悪感を示す人も多く、被害を受ける当事者との認識のギャップは埋まりません。
イノシシ対策を効果的に実施するには、多くの人に被害の実態を知ってもらうことも重要であり、積極的な啓発活動も必要とされます。
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