鳥獣被害対策マガジン
200kg超えのイノシシを捕獲!巨大イノシシを仕留めたハンター・吉澤崇幸さんにインタビュー
2019年11月17日、神奈川県清川村煤ケ谷で巨大イノシシを仕留めたという一報がイノホイに入ってきました。 今回は、その巨大イノシシを仕留めた神奈川県在住の吉澤崇幸さんに、狩猟を始めたきっかけや、巨大イノシシを仕留めた際の様子などについてお話をお聞きしました。 ハンター塾をきっかけに狩猟の道へ ー狩猟はいつから、何がきっかけで始められたのですか? 吉澤さん:2014年に神奈川県で行われたハンター塾に参加したのがきっかけです。 もともと猟に興味はあったんですが、猟銃を使う狩猟はなんとなく敷居が高く、周りに猟をしている人もいなかったため、始めるきっかけを探していました。 そこで、神奈川県猟友会が企画する「ハンター塾」というハンター養成講座の第1回目が行われるというのをたまたま耳にして、幼馴染の同級生と参加したんです。 ハンター塾では、狩猟や猟銃の免許の取得方法、それに伴う手続きなど、狩猟を始めるまでの手順などを教えてもらいました。 せっかくの機会だし、時間はかかるけど自分にもできそうだなと思ったので、ハンター塾を受講した後、すぐに猟銃の免許を取得しました。 ただ、猟銃の免許を取得しても、周りに猟をしている人が誰もいなかったんで、どうやって猟を始めればいいのかわからず、神奈川県猟友会に電話で相談するところから始めました。 そして、稲田支部の会長さんがたまたま近所に住んでいることがわかり、紹介していただいて、仲間に入れていただきました。なので、猟自体を始めたのは5年くらい前からですね。 猟のグループって、特に大物猟は危険が伴うので、新参者を入れてくれるとこって少ないんですよ。だから射撃会に参加したり猟関連の会に参加したりして名前覚えてもらうことから始めなきゃだめだよっていうのも言われました。 千葉の猟もたまたま声をかけてもらって行ってますけど、声をかけてもらえなかったらそこも参加していなかった。そういう伝手みたいなのがないと、免許だけ取ったってなかなか猟に出ることはできないんです。 (▲写真の説明):普段はイノシシ猟を中心に狩りをしており、車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲で活動を行っている。 ー普段はどの地域で、何人くらいで猟をされているのですか? 吉澤さん:神奈川、千葉、山梨で狩猟許可をもらっていて、イノシシ猟を中心に狩りをしているため、メインの猟場は千葉県木更津周辺です。車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲の猟場でやっています。 基本的にイノシシを狙っているのですが、神奈川の猟区に入るときはシカが多いので、シカも出たら獲ります。 イノシシを獲りたいんですけど、イノシシだけを狙うのはなかなか難しいため、シカを10頭獲るよりイノシシを1頭獲りたいなっていう人が多いんです(笑) 特に神奈川の場合はイノシシよりシカが多く、逆に千葉はシカよりイノシシが多いため、千葉をメインに行くことが多いですね。 あと、千葉での猟と神奈川での猟はグループが違います。 神奈川でやるときは基本的にはグループ猟なので、大人数で巻き狩りをやりますが、千葉は人が集まらなくても、1人、2人でもやりますね。 (▲写真の説明):大物相手でもハンターをしっかりサポートする猟犬たち。 ー神奈川のグループ猟は何人くらいでされているのですか? 吉澤さん:神奈川って特殊な地域で、猟区がいくつかあり、猟区設定者の定める猟区管理規定により管理されています。 基本的には所属するグループがあるんですけど、あまり少ない人数だとグループ猟(巻き狩り)になりません。 最近は高齢化などの影響もあり猟をする人が減っているので、場所に応じていくつかのグループが共同で猟をしていましたが、今では1つのグループになって猟をしている感じですね。 猟期のときは、基本毎週土日に猟に行っています。平日はそれぞれ仕事をしているので、ほかのメンバーとかも予定が合いません。 年齢層的には下は20代から上は80代。うちのグループはやっと少しずつ若い人たちが入ってきて、それまでは自分が一番下くらいな感じでした。 その20代のメンバーは、ベテランのハンターがたまたま猟友会の狩猟の申し込みのときに見かけて声をかけて連れてきました(笑) 猟をしたいって自ら志願してくる人はなかなかいないので、勧誘活動しないと若い人は入ってこないですね。...
200kg超えのイノシシを捕獲!巨大イノシシを仕留めたハンター・吉澤崇幸さんにインタビュー
2019年11月17日、神奈川県清川村煤ケ谷で巨大イノシシを仕留めたという一報がイノホイに入ってきました。 今回は、その巨大イノシシを仕留めた神奈川県在住の吉澤崇幸さんに、狩猟を始めたきっかけや、巨大イノシシを仕留めた際の様子などについてお話をお聞きしました。 ハンター塾をきっかけに狩猟の道へ ー狩猟はいつから、何がきっかけで始められたのですか? 吉澤さん:2014年に神奈川県で行われたハンター塾に参加したのがきっかけです。 もともと猟に興味はあったんですが、猟銃を使う狩猟はなんとなく敷居が高く、周りに猟をしている人もいなかったため、始めるきっかけを探していました。 そこで、神奈川県猟友会が企画する「ハンター塾」というハンター養成講座の第1回目が行われるというのをたまたま耳にして、幼馴染の同級生と参加したんです。 ハンター塾では、狩猟や猟銃の免許の取得方法、それに伴う手続きなど、狩猟を始めるまでの手順などを教えてもらいました。 せっかくの機会だし、時間はかかるけど自分にもできそうだなと思ったので、ハンター塾を受講した後、すぐに猟銃の免許を取得しました。 ただ、猟銃の免許を取得しても、周りに猟をしている人が誰もいなかったんで、どうやって猟を始めればいいのかわからず、神奈川県猟友会に電話で相談するところから始めました。 そして、稲田支部の会長さんがたまたま近所に住んでいることがわかり、紹介していただいて、仲間に入れていただきました。なので、猟自体を始めたのは5年くらい前からですね。 猟のグループって、特に大物猟は危険が伴うので、新参者を入れてくれるとこって少ないんですよ。だから射撃会に参加したり猟関連の会に参加したりして名前覚えてもらうことから始めなきゃだめだよっていうのも言われました。 千葉の猟もたまたま声をかけてもらって行ってますけど、声をかけてもらえなかったらそこも参加していなかった。そういう伝手みたいなのがないと、免許だけ取ったってなかなか猟に出ることはできないんです。 (▲写真の説明):普段はイノシシ猟を中心に狩りをしており、車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲で活動を行っている。 ー普段はどの地域で、何人くらいで猟をされているのですか? 吉澤さん:神奈川、千葉、山梨で狩猟許可をもらっていて、イノシシ猟を中心に狩りをしているため、メインの猟場は千葉県木更津周辺です。車で1時間半から2時間くらいで行ける範囲の猟場でやっています。 基本的にイノシシを狙っているのですが、神奈川の猟区に入るときはシカが多いので、シカも出たら獲ります。 イノシシを獲りたいんですけど、イノシシだけを狙うのはなかなか難しいため、シカを10頭獲るよりイノシシを1頭獲りたいなっていう人が多いんです(笑) 特に神奈川の場合はイノシシよりシカが多く、逆に千葉はシカよりイノシシが多いため、千葉をメインに行くことが多いですね。 あと、千葉での猟と神奈川での猟はグループが違います。 神奈川でやるときは基本的にはグループ猟なので、大人数で巻き狩りをやりますが、千葉は人が集まらなくても、1人、2人でもやりますね。 (▲写真の説明):大物相手でもハンターをしっかりサポートする猟犬たち。 ー神奈川のグループ猟は何人くらいでされているのですか? 吉澤さん:神奈川って特殊な地域で、猟区がいくつかあり、猟区設定者の定める猟区管理規定により管理されています。 基本的には所属するグループがあるんですけど、あまり少ない人数だとグループ猟(巻き狩り)になりません。 最近は高齢化などの影響もあり猟をする人が減っているので、場所に応じていくつかのグループが共同で猟をしていましたが、今では1つのグループになって猟をしている感じですね。 猟期のときは、基本毎週土日に猟に行っています。平日はそれぞれ仕事をしているので、ほかのメンバーとかも予定が合いません。 年齢層的には下は20代から上は80代。うちのグループはやっと少しずつ若い人たちが入ってきて、それまでは自分が一番下くらいな感じでした。 その20代のメンバーは、ベテランのハンターがたまたま猟友会の狩猟の申し込みのときに見かけて声をかけて連れてきました(笑) 猟をしたいって自ら志願してくる人はなかなかいないので、勧誘活動しないと若い人は入ってこないですね。...
ジビエの認知度向上と地域の雇用創出を目指す「美郷ジビエ工房」
宮崎県北部に位置する美郷町。人口約4800人、山林が約90%を占める自然豊かな町です。古くから狩猟文化が根付き、鳥獣と人間が上手に共存してきました。 しかし現在、人口減少や高齢化が進み、里山の利用や維持管理が難しくなるとともに、深刻な鳥獣被害に悩まされています。 今年4月、鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の許可(以下、鳥獣捕獲許可という)で捕獲したイノシシやシカの食肉としての新たな活用を図るため、美郷町ジビエ振興協議会を発足、県の補助金を活用し、南郷地区に「美郷ジビエ工房」を設立しました。 今回は、美郷町における鳥獣害の実態やジビエの活用法などについて、美郷町役場 農林振興課の小林雅朗さんと森本早美さんにお話を伺いました。 多くの関係者の思いが詰まった施設建設 ー「美郷ジビエ工房」とはどんな施設ですか? 森本さん 美郷町内で捕獲されたイノシシ、シカを精肉加工する施設です。この施設では、解体から精肉加工までを行っています。 施設は美郷町南郷の水清谷地区にあり、今年4月から稼働しています。 ー施設を作ったきっかけ、目的を教えてください。 小林さん 構想としては、もうずいぶん前からありました。 これまでは、イノシシやシカの肉は一部の方が個人間で楽しむ食材でした。しかしながら、それだと世の中に広くジビエの存在を知ってもらうことが難しく、普及は進まないだろうと考えていました。 また、鳥獣捕獲許可などで捕獲したイノシシやシカはほとんどが埋却処理されていたため、有害鳥獣を資源として有効活用する方法を模索していました。 そこで学校給食でのジビエ料理の提供やスーパーなどでの販売を視野に入れた、加工処理施設建設の計画が立ち上がりました。 施設建設が実現するまでには長い年月を要しましたが、賛同してくださる方のご協力も得てようやく稼働するまでに至りました。 深刻な鳥獣被害の実態 ー鳥獣被害の状況を教えてください。 森本さん 美郷町での昨年度の被害額は1192万円でした。鳥獣捕獲許可で捕獲した数はイノシシが1126頭、シカが1210頭。そのうち、イノシシ421頭、シカ850頭がこの南郷地区で捕獲されています。町内でも南郷地区は特に被害が深刻なんです。 小林さん 被害額といっても、自宅で消費するような出荷を目的としていない農作物は、被害が大きくても被害額として現れていない部分もあります。 また、ある地域の町有林は植林するたびに新芽がシカの食害に遭い、もう30年くらい木が育っていない状態です。 ーこの施設ではどのような流れで作業が行われるのですか? 森本さん この施設で扱えるのは、町内の猟師が捕獲した後、すぐに血抜きし、2時間以内に持ち込まれたシカ、イノシシのみです。 荷受室・解体室で個体をきれいに洗浄、剥皮、そして解体します。 その後、加工室にて枝肉をロースやモモなど部位ごとに分け真空パック処理し、冷凍保存します。 シカに関しては年中加工していますが、イノシシは狩猟延長期間の11月1日〜3月15日のみ加工し、6月頃まで販売しており、町内外の飲食店や宿泊施設など、主に業者向けに販売しています。 鮮度や衛生面・食の安全面は牛や豚などの家畜よりもかなり厳しく管理していますし、良い肉質を保つための工夫も行っています。 「ジビエで町全体を盛り上げたい」 ー今後の戦略・目標を教えてください。 小林さん 今は精肉加工までしか行っていませんが、いずれは一次処理から食品加工まで行い、ジビエを使ったメニューを学校給食などでも出せるといいなと思っています。 また、県内のほかの地域ではシカカレーやジャーキーなどジビエ加工品が出ていますが、新たな加工品の開発にも力を入れていきたいです。そうすることで、美郷町内で新たな雇用を生み出すことにつながると考えています。...
ジビエの認知度向上と地域の雇用創出を目指す「美郷ジビエ工房」
宮崎県北部に位置する美郷町。人口約4800人、山林が約90%を占める自然豊かな町です。古くから狩猟文化が根付き、鳥獣と人間が上手に共存してきました。 しかし現在、人口減少や高齢化が進み、里山の利用や維持管理が難しくなるとともに、深刻な鳥獣被害に悩まされています。 今年4月、鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の許可(以下、鳥獣捕獲許可という)で捕獲したイノシシやシカの食肉としての新たな活用を図るため、美郷町ジビエ振興協議会を発足、県の補助金を活用し、南郷地区に「美郷ジビエ工房」を設立しました。 今回は、美郷町における鳥獣害の実態やジビエの活用法などについて、美郷町役場 農林振興課の小林雅朗さんと森本早美さんにお話を伺いました。 多くの関係者の思いが詰まった施設建設 ー「美郷ジビエ工房」とはどんな施設ですか? 森本さん 美郷町内で捕獲されたイノシシ、シカを精肉加工する施設です。この施設では、解体から精肉加工までを行っています。 施設は美郷町南郷の水清谷地区にあり、今年4月から稼働しています。 ー施設を作ったきっかけ、目的を教えてください。 小林さん 構想としては、もうずいぶん前からありました。 これまでは、イノシシやシカの肉は一部の方が個人間で楽しむ食材でした。しかしながら、それだと世の中に広くジビエの存在を知ってもらうことが難しく、普及は進まないだろうと考えていました。 また、鳥獣捕獲許可などで捕獲したイノシシやシカはほとんどが埋却処理されていたため、有害鳥獣を資源として有効活用する方法を模索していました。 そこで学校給食でのジビエ料理の提供やスーパーなどでの販売を視野に入れた、加工処理施設建設の計画が立ち上がりました。 施設建設が実現するまでには長い年月を要しましたが、賛同してくださる方のご協力も得てようやく稼働するまでに至りました。 深刻な鳥獣被害の実態 ー鳥獣被害の状況を教えてください。 森本さん 美郷町での昨年度の被害額は1192万円でした。鳥獣捕獲許可で捕獲した数はイノシシが1126頭、シカが1210頭。そのうち、イノシシ421頭、シカ850頭がこの南郷地区で捕獲されています。町内でも南郷地区は特に被害が深刻なんです。 小林さん 被害額といっても、自宅で消費するような出荷を目的としていない農作物は、被害が大きくても被害額として現れていない部分もあります。 また、ある地域の町有林は植林するたびに新芽がシカの食害に遭い、もう30年くらい木が育っていない状態です。 ーこの施設ではどのような流れで作業が行われるのですか? 森本さん この施設で扱えるのは、町内の猟師が捕獲した後、すぐに血抜きし、2時間以内に持ち込まれたシカ、イノシシのみです。 荷受室・解体室で個体をきれいに洗浄、剥皮、そして解体します。 その後、加工室にて枝肉をロースやモモなど部位ごとに分け真空パック処理し、冷凍保存します。 シカに関しては年中加工していますが、イノシシは狩猟延長期間の11月1日〜3月15日のみ加工し、6月頃まで販売しており、町内外の飲食店や宿泊施設など、主に業者向けに販売しています。 鮮度や衛生面・食の安全面は牛や豚などの家畜よりもかなり厳しく管理していますし、良い肉質を保つための工夫も行っています。 「ジビエで町全体を盛り上げたい」 ー今後の戦略・目標を教えてください。 小林さん 今は精肉加工までしか行っていませんが、いずれは一次処理から食品加工まで行い、ジビエを使ったメニューを学校給食などでも出せるといいなと思っています。 また、県内のほかの地域ではシカカレーやジャーキーなどジビエ加工品が出ていますが、新たな加工品の開発にも力を入れていきたいです。そうすることで、美郷町内で新たな雇用を生み出すことにつながると考えています。...
野生動物との共存を目指す鳥獣害対策のプロ集団|株式会社うぃるこ/山本麻希さん
新潟県のほぼ中心部に位置する長岡市に2018年5月、長岡技術科学大学発のソーシャルベンチャー企業として、鳥獣獣害対策専門のコンサルティングを行う「株式会社うぃるこ」が設立されました。 今回は、その代表を務める山本麻希さんにお話を伺いました。 株式会社うぃるこ 代表取締役 山本麻希さん 長岡技術科学大学准教授、理学博士。野生動物の生態学が専門。 ー鳥獣害対策専門のコンサルティングを行う会社を立ち上げた経緯を教えてください。 獣害対策に関する取り組み自体は、長岡技術科学大学の教員となった11年前から行っております。 当時、新潟県は猿の被害が多く、野生動物の生態学が専門だった私に声がかかり、農水省のアドバイザーや環境審議員として県からの依頼を受けて、獣害対策の講演会などを実施していました。 年間80回くらいの講演を行っていたのですが、一人での活動に限界を感じ始めていたころ、新潟大学や国際自然環境アウトドア専門学校などで野生動物の生態学を専門とする教員や学生さんも加わり、組織的に獣害対策に取り組んでいくために、2011年に任意団体(現 NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ)を設立しました。 団体にしたことで、研修会なども継続的に実施できるようになり、獣害対策も行えるようになってきたため、県も獣害対策にきちんと予算をとってくれるようになりました。また、きちんとした専門家に指導してほしいという行政も現れるようになりました。 一方で、岐阜や山梨、千葉など全国には少ない人数で、NPOや小さい会社で苦労しながら獣害対策事業を行っている団体がたくさんありましたので、全国の獣害対策の民間業者が協力して「一般社団法人ふるさとけものネットワーク」という全国で初めての獣害対策の業界団体を立ち上げ、獣害対策の専門家を育てる「けもの塾」を運営するなど、さまざまな活動をしてきました。 新潟ワイルドライフリサーチはその後法人資格を取得し、きちんと収益をあげられる団体になってきたのですが、私は国立大学の教員ということもあり、ボランティアでやっているような状態。私がいなくてもきちんと仕事が回せるくらいの会社の規模にすることで、若い人材が獣害対策支援を生業としてきちんと生活していける会社づくりをしていきたいと考えるようになりました。 そこで、長岡技術科学大学がベンチャー企業立ち上げを推進していることもあり、きちんと経営指導・投資を受けて株式会社を立ち上げることになりました。その結果、同大学初のソーシャルベンチャー企業として、昨年5月に株式会社うぃるこを設立しました。 ー山本さん自身が獣害対策に取り組み始めたきっかけは? 結婚を期に新潟に移住し、6年間、高校の教師をしていましたが、教師を辞めて、獣害対策の専門家の道に進むきっかけとなった出来事が、2006年に新潟県で起きたクマの大量出没でした。 1年に1000件以上のクマの出没事件があり、そのうち500頭以上が殺されたという事実を目の当たりにしたのです。 その対応に関して疑問を感じ、クマの管理状況を調べてみると、きちんとした管理計画もないまま出てきたクマが処分されているという状況でした。 人間と動物が共存するためには、野生動物の生態を知っている専門家がきちんと管理し、正しい獣害対策をやらないと、ただ殺しているだけでは解決しないと考えるようになりました。 例えば、クマは縄張りがないため、出てきたクマを殺しても別のクマが来るだけで、根本的な解決にはなりません。 だからクマを寄せつけている原因(エサなど)をきちんと把握し、電気柵などを設置してその原因となるものに寄せ付けないような対策を集落ごとにしていかなければ、最後の一頭になるまで延々と熊は降りてきてしまいます。 サルに関しては、猟銃等で撃つと群れが分裂し、かえって管理がしにくくなります。 このように動物はそれぞれ生態が異なるため、その動物にあった対策ができるよう、専門家がきちんと啓発をして、正しい獣害対策を行っていくことが大切です。私は一般の人にわかりやすい言葉で獣害対策の正しい知識について説明するのが有識者の務めなんじゃないかと思うのです。 ー 実際にうぃるこではどういった流れで仕事をしているのですか? 獣害対策は基本的に市町村単位で行われていますが、獣害対策の専門家というのは行政担当者にはいません。そこでまず私たちが一番力を入れているのは、異動してきたばかりの県や市町村の新規行政担当者向けに行う初任研修です。年4回、野生動物の生態や調査、被害対策や利活用など最低限の獣害対策の基礎知識を教える研修を行っています。 行政担当者の方にある程度野生動物に関する知識を身につけていただいたうえで、それぞれ被害を出している動物も作っている作物も環境もすべて市町村ごとに異なりますので、被害状況に応じた対策に適切な予算が組めるよう、科学的データに基づいて各市町村の状況に合わせた対策を提案しています。 そして、それぞれの対策事業をプロとして私たちが業務委託を受け、行政と地元住民の方や猟友会の方々の間に入って技術を教える活動をしています。 具体的には、野生動物の生態調査やデータ分析業務、捕獲や防除柵の設置や集落の環境整備に関する実習や勉強会など、獣害対策に関わる事業はすべて行います。...
野生動物との共存を目指す鳥獣害対策のプロ集団|株式会社うぃるこ/山本麻希さん
新潟県のほぼ中心部に位置する長岡市に2018年5月、長岡技術科学大学発のソーシャルベンチャー企業として、鳥獣獣害対策専門のコンサルティングを行う「株式会社うぃるこ」が設立されました。 今回は、その代表を務める山本麻希さんにお話を伺いました。 株式会社うぃるこ 代表取締役 山本麻希さん 長岡技術科学大学准教授、理学博士。野生動物の生態学が専門。 ー鳥獣害対策専門のコンサルティングを行う会社を立ち上げた経緯を教えてください。 獣害対策に関する取り組み自体は、長岡技術科学大学の教員となった11年前から行っております。 当時、新潟県は猿の被害が多く、野生動物の生態学が専門だった私に声がかかり、農水省のアドバイザーや環境審議員として県からの依頼を受けて、獣害対策の講演会などを実施していました。 年間80回くらいの講演を行っていたのですが、一人での活動に限界を感じ始めていたころ、新潟大学や国際自然環境アウトドア専門学校などで野生動物の生態学を専門とする教員や学生さんも加わり、組織的に獣害対策に取り組んでいくために、2011年に任意団体(現 NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ)を設立しました。 団体にしたことで、研修会なども継続的に実施できるようになり、獣害対策も行えるようになってきたため、県も獣害対策にきちんと予算をとってくれるようになりました。また、きちんとした専門家に指導してほしいという行政も現れるようになりました。 一方で、岐阜や山梨、千葉など全国には少ない人数で、NPOや小さい会社で苦労しながら獣害対策事業を行っている団体がたくさんありましたので、全国の獣害対策の民間業者が協力して「一般社団法人ふるさとけものネットワーク」という全国で初めての獣害対策の業界団体を立ち上げ、獣害対策の専門家を育てる「けもの塾」を運営するなど、さまざまな活動をしてきました。 新潟ワイルドライフリサーチはその後法人資格を取得し、きちんと収益をあげられる団体になってきたのですが、私は国立大学の教員ということもあり、ボランティアでやっているような状態。私がいなくてもきちんと仕事が回せるくらいの会社の規模にすることで、若い人材が獣害対策支援を生業としてきちんと生活していける会社づくりをしていきたいと考えるようになりました。 そこで、長岡技術科学大学がベンチャー企業立ち上げを推進していることもあり、きちんと経営指導・投資を受けて株式会社を立ち上げることになりました。その結果、同大学初のソーシャルベンチャー企業として、昨年5月に株式会社うぃるこを設立しました。 ー山本さん自身が獣害対策に取り組み始めたきっかけは? 結婚を期に新潟に移住し、6年間、高校の教師をしていましたが、教師を辞めて、獣害対策の専門家の道に進むきっかけとなった出来事が、2006年に新潟県で起きたクマの大量出没でした。 1年に1000件以上のクマの出没事件があり、そのうち500頭以上が殺されたという事実を目の当たりにしたのです。 その対応に関して疑問を感じ、クマの管理状況を調べてみると、きちんとした管理計画もないまま出てきたクマが処分されているという状況でした。 人間と動物が共存するためには、野生動物の生態を知っている専門家がきちんと管理し、正しい獣害対策をやらないと、ただ殺しているだけでは解決しないと考えるようになりました。 例えば、クマは縄張りがないため、出てきたクマを殺しても別のクマが来るだけで、根本的な解決にはなりません。 だからクマを寄せつけている原因(エサなど)をきちんと把握し、電気柵などを設置してその原因となるものに寄せ付けないような対策を集落ごとにしていかなければ、最後の一頭になるまで延々と熊は降りてきてしまいます。 サルに関しては、猟銃等で撃つと群れが分裂し、かえって管理がしにくくなります。 このように動物はそれぞれ生態が異なるため、その動物にあった対策ができるよう、専門家がきちんと啓発をして、正しい獣害対策を行っていくことが大切です。私は一般の人にわかりやすい言葉で獣害対策の正しい知識について説明するのが有識者の務めなんじゃないかと思うのです。 ー 実際にうぃるこではどういった流れで仕事をしているのですか? 獣害対策は基本的に市町村単位で行われていますが、獣害対策の専門家というのは行政担当者にはいません。そこでまず私たちが一番力を入れているのは、異動してきたばかりの県や市町村の新規行政担当者向けに行う初任研修です。年4回、野生動物の生態や調査、被害対策や利活用など最低限の獣害対策の基礎知識を教える研修を行っています。 行政担当者の方にある程度野生動物に関する知識を身につけていただいたうえで、それぞれ被害を出している動物も作っている作物も環境もすべて市町村ごとに異なりますので、被害状況に応じた対策に適切な予算が組めるよう、科学的データに基づいて各市町村の状況に合わせた対策を提案しています。 そして、それぞれの対策事業をプロとして私たちが業務委託を受け、行政と地元住民の方や猟友会の方々の間に入って技術を教える活動をしています。 具体的には、野生動物の生態調査やデータ分析業務、捕獲や防除柵の設置や集落の環境整備に関する実習や勉強会など、獣害対策に関わる事業はすべて行います。...
「ジビエ肉をもっと日常に」~若草hutte&co-ba miyazaki 店長・山師 今西 正...
宮崎県宮崎市の中心部にある若草通商店街は、アパレルショップやレストラン、雑貨屋など、それぞれ独自の魅力が光る個店が立ち並ぶ場所である。そのメインストリートから北側の脇道に入って少し行くと、どことなく「山」の雰囲気を感じるカフェが見つかる。 そのカフェの名前は「若草hutte(ヒュッテ) & co-ba miyazaki」。 軒先には薪が積んであり、「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが立っている。夕食時を少し過ぎた時間の店内を覗くと、友人との会話を楽しむ女性、コーヒーを飲んでほっと一息ついている男性、レジ前で持ち帰り用のスイーツを選ぶ女性、皆それぞれの時間を楽しんでいる様子が伺える。 (▲写真(上)):若草hutte & co-ba miyazaki外観。若草通りの脇には、車が通れない細い路地があり、そこを進むと穴場的なお店が多く見つかる。 店内に入ってカウンター席に座る。そして、注文したコーヒーを待ちながらお店の様子を眺めてみる。木を基調とした造りの店内は暖かな光にゆったりとした雰囲気。お酒を注文する人もおり、どうやら今はバータイムのようだ。決して騒がしくはなく、少し飲んだ後の2軒目に友人や同僚とゆっくりと語らいたいときにも使えそうである。 (▲写真(上)):店内は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした時間が流れる。ランチタイムは11時半~14時半、カフェタイム10時~23時半、バータイム17時~23時半。 出てきたコーヒーを飲みながら、ふと外にある「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが気になり、マスターに尋ねてみる。 「お店のランチメニューやbarのおつまみ、イベントメニュー等で宮崎産のジビエ肉を出しています。初めてジビエを召し上がった方にも『臭くない。クセが無い。おいしい。』と好評です。特に鹿肉はヘルシーで、女性のお客様が多く注文されます。鉄分豊富で低カロリーなので、糖質制限されているお客様が注文することも最近は多いですね。」 気さくなマスターは私の問いかけに丁寧に答えてくれる。聞くと、家は宮崎県美郷町で林業を営まれており、マスターの肩書は山師。林業に従事する傍ら、シカやイノシシによる被害が多いことを目の当たりにしてきたという。 (▲写真(上)):店舗を切り盛りするのは、パーマが特徴の山師・今西 正さん。 店舗をオープンしたのは2017年8月11日「山の日」。ジビエや椎茸、野菜などの山の恵みを店舗で提供し、「山と街をつなぐ場所」としてHUTTEを運営してきた。 近年の鳥獣害の増加を受け、全国で捕獲されるシカやイノシシの数は大幅に増加している。 猟期だけでなく年間を通して有害駆除による捕獲が行われているケースも多い。 環境省の直近の発表によると、平成29年度のニホンジカ捕獲数は601,200頭、イノシシの捕獲数は545,400頭、合計で1,146,600頭に達している。 これだけの数の捕獲が行われているのだから、それらの肉がもっと多く流通しても良いはずだが、実際には一般消費者の食卓にあがる機会はそうそうない。ハンターの場合は、狩猟によって捕獲した獲物の肉を有効活用することが多いものの、それ以外のケースでは、ほとんどが廃棄物として焼却・埋設処分されているのが現状なのである。 (▲写真(上)):レジ前には持ち帰り・お土産用のジビエ商品や、山師ならではの椎茸、ケーキや大福などのスイーツなども展開している。 最近でこそ、ジビエ肉としてメディア等で取り上げられるようになってはきたものの、一般消費者にとっては馴染みが薄く、まだまだ取り扱う店舗は少ない。そもそも店舗で使うジビエ肉は、基準を満たした加工施設で製造されたものでなければならないが、各地の獣肉処理の仕組みはまだまだ整備の途上であり、安定供給にはほど遠い。 「僕は猟師ではありませんが、店舗で提供するメニューを通じて、多くの人にジビエ肉の魅力を知ってもらうことはできると思い、ジビエメニューはお店を始めてから毎日出しています。使用する肉は、宮崎県内の加工施設から仕入れる高品質のものです。これらの肉を当たり前に食べてもらうようにならないと、現状は変わりません。」と今西さんは語る。 (▲写真(上)):HUTTEには様々な人が集まる。もちろんカフェ利用の人も多いが、仕事終わりにコワーキングスペースで勉強利用する人、イベントを主催して情報発信する人など、使い方は人それぞれ。当然、美味いジビエを求めてやってくる人も。 また、山と街をつなぐ場所というコンセプトのもと、カフェの2階3階はコワーキングスペース※となっている。仕事スペースとしての利用だけでなく、商品の展示発表会やセミナー、ワークショップなど、各種イベントにも利用され、様々な人が交流する場となっている。それらの交流から新たな価値が生まれる手助けをすることを目指しているそうだ。 ※コワーキングスペース:おもに同一の団体ではない人たちが、仕事を行うスペースを共有している空間のこと。 (▲写真(上)):2階のコワーキングスペース。冷暖房やプリンター、Wi-fi完備。貸し切りで講演会や各種イベントに利用されることも多い。3階はプレミアムスペースで、契約者のみが利用できる。 特に地方ではシャッター商店街が増え続けている現状がある。そういった中で、独自の魅力を持ち、あらたな価値を発信できるHUTTEのようなお店が商店街の中に増えることで、地域の活性化につなげることができるのではないだろうか。...
「ジビエ肉をもっと日常に」~若草hutte&co-ba miyazaki 店長・山師 今西 正...
宮崎県宮崎市の中心部にある若草通商店街は、アパレルショップやレストラン、雑貨屋など、それぞれ独自の魅力が光る個店が立ち並ぶ場所である。そのメインストリートから北側の脇道に入って少し行くと、どことなく「山」の雰囲気を感じるカフェが見つかる。 そのカフェの名前は「若草hutte(ヒュッテ) & co-ba miyazaki」。 軒先には薪が積んであり、「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが立っている。夕食時を少し過ぎた時間の店内を覗くと、友人との会話を楽しむ女性、コーヒーを飲んでほっと一息ついている男性、レジ前で持ち帰り用のスイーツを選ぶ女性、皆それぞれの時間を楽しんでいる様子が伺える。 (▲写真(上)):若草hutte & co-ba miyazaki外観。若草通りの脇には、車が通れない細い路地があり、そこを進むと穴場的なお店が多く見つかる。 店内に入ってカウンター席に座る。そして、注文したコーヒーを待ちながらお店の様子を眺めてみる。木を基調とした造りの店内は暖かな光にゆったりとした雰囲気。お酒を注文する人もおり、どうやら今はバータイムのようだ。決して騒がしくはなく、少し飲んだ後の2軒目に友人や同僚とゆっくりと語らいたいときにも使えそうである。 (▲写真(上)):店内は落ち着いた雰囲気で、ゆったりとした時間が流れる。ランチタイムは11時半~14時半、カフェタイム10時~23時半、バータイム17時~23時半。 出てきたコーヒーを飲みながら、ふと外にある「美郷ジビエ」と書かれたのぼりが気になり、マスターに尋ねてみる。 「お店のランチメニューやbarのおつまみ、イベントメニュー等で宮崎産のジビエ肉を出しています。初めてジビエを召し上がった方にも『臭くない。クセが無い。おいしい。』と好評です。特に鹿肉はヘルシーで、女性のお客様が多く注文されます。鉄分豊富で低カロリーなので、糖質制限されているお客様が注文することも最近は多いですね。」 気さくなマスターは私の問いかけに丁寧に答えてくれる。聞くと、家は宮崎県美郷町で林業を営まれており、マスターの肩書は山師。林業に従事する傍ら、シカやイノシシによる被害が多いことを目の当たりにしてきたという。 (▲写真(上)):店舗を切り盛りするのは、パーマが特徴の山師・今西 正さん。 店舗をオープンしたのは2017年8月11日「山の日」。ジビエや椎茸、野菜などの山の恵みを店舗で提供し、「山と街をつなぐ場所」としてHUTTEを運営してきた。 近年の鳥獣害の増加を受け、全国で捕獲されるシカやイノシシの数は大幅に増加している。 猟期だけでなく年間を通して有害駆除による捕獲が行われているケースも多い。 環境省の直近の発表によると、平成29年度のニホンジカ捕獲数は601,200頭、イノシシの捕獲数は545,400頭、合計で1,146,600頭に達している。 これだけの数の捕獲が行われているのだから、それらの肉がもっと多く流通しても良いはずだが、実際には一般消費者の食卓にあがる機会はそうそうない。ハンターの場合は、狩猟によって捕獲した獲物の肉を有効活用することが多いものの、それ以外のケースでは、ほとんどが廃棄物として焼却・埋設処分されているのが現状なのである。 (▲写真(上)):レジ前には持ち帰り・お土産用のジビエ商品や、山師ならではの椎茸、ケーキや大福などのスイーツなども展開している。 最近でこそ、ジビエ肉としてメディア等で取り上げられるようになってはきたものの、一般消費者にとっては馴染みが薄く、まだまだ取り扱う店舗は少ない。そもそも店舗で使うジビエ肉は、基準を満たした加工施設で製造されたものでなければならないが、各地の獣肉処理の仕組みはまだまだ整備の途上であり、安定供給にはほど遠い。 「僕は猟師ではありませんが、店舗で提供するメニューを通じて、多くの人にジビエ肉の魅力を知ってもらうことはできると思い、ジビエメニューはお店を始めてから毎日出しています。使用する肉は、宮崎県内の加工施設から仕入れる高品質のものです。これらの肉を当たり前に食べてもらうようにならないと、現状は変わりません。」と今西さんは語る。 (▲写真(上)):HUTTEには様々な人が集まる。もちろんカフェ利用の人も多いが、仕事終わりにコワーキングスペースで勉強利用する人、イベントを主催して情報発信する人など、使い方は人それぞれ。当然、美味いジビエを求めてやってくる人も。 また、山と街をつなぐ場所というコンセプトのもと、カフェの2階3階はコワーキングスペース※となっている。仕事スペースとしての利用だけでなく、商品の展示発表会やセミナー、ワークショップなど、各種イベントにも利用され、様々な人が交流する場となっている。それらの交流から新たな価値が生まれる手助けをすることを目指しているそうだ。 ※コワーキングスペース:おもに同一の団体ではない人たちが、仕事を行うスペースを共有している空間のこと。 (▲写真(上)):2階のコワーキングスペース。冷暖房やプリンター、Wi-fi完備。貸し切りで講演会や各種イベントに利用されることも多い。3階はプレミアムスペースで、契約者のみが利用できる。 特に地方ではシャッター商店街が増え続けている現状がある。そういった中で、独自の魅力を持ち、あらたな価値を発信できるHUTTEのようなお店が商店街の中に増えることで、地域の活性化につなげることができるのではないだろうか。...
「大きな猪を仕留めてみたい」~ 若き猟師にインタビュー 黒田勇気さん(宮崎県)
宮崎県北部の自然豊かな山あいの集落、美郷町南郷。面積の約9割が山林というこの地域。 過疎化で若者が町から離れていく一方、この地域に残り、山の恩恵を身近に感じながら生活している若者もいます。 美郷町で林業に従事している黒田勇気さん(23歳)もその一人。苗木の植栽や下草の刈払作業などを行い木の成長を手助けする「造林」が本業ですが、休日などには狩猟も行っています。 大人になったら猟に行くのが当たり前だと思っていた ー狩猟は何歳のときに始めたんですか? 猟銃の免許をとったのが20歳のときなので、そのときからですかね。 写真:猟師である父親の背中を見て育ち、幼い頃から狩猟は生活の一部であった。狩猟もごく自然な流れで始めた。 ーなぜ狩りをしようと思ったんですか? 父も狩りをしていて、それを幼い頃から見ていたので、自分も狩猟免許が取れる年齢になったら猟銃の免許を取らないといけない、そして猟をしないといけないんだろうなと、当たり前のように思っていました。 なので、20歳になったらごく自然な流れで始めていましたね。 ーお父様の狩りをする姿をこれまでに見たことがあると思いますが、逆に嫌だとは思わなかったんですか? 確かに、子どものときはいろいろ手伝わされたりして、よだきい(面倒くさい)としか思わなかったですけど、うーん、なんでしょうね。鉄砲が撃ってみたかったんですよね。父が持っている鉄砲がかっこよくて、子どもの頃から鉄砲のおもちゃで真似ごとみたいなことはしてましたね。 ーでは、猟銃の免許を取得して、一番最初に行った狩りのことは覚えていますか? 覚えてます。そのときは、確か鹿を仕留めたと思います。 鹿が2頭出てきて、狙って撃って当たらなかったんですけど、その鹿が父のところに行って、1頭は父が仕留めて、俺の近くに戻ってきた1頭をようやく仕留めました。 ー初めて自分が撃った弾で獲物を仕留めたとき、どんな心境でした? 足が震えましたね、興奮して(笑) 痩せてたけど、結構大きかったんですよ。それは自分でさばきました。 ーさばくのも自分でやるんですね。さばき方はどうやって身につけたんですか? 子どもの頃から見てましたし、狩りをする前から手伝っていたので自然と覚えました。 (▲写真):慣れた手つきで獲れたイノシシの毛抜きをする黒田さん。子どもの頃から何度もやってきた作業だ。 ー年間、どのくらい狩りに行くんですか? 仕事もありますし、子どももまだ小さいので、月に2回くらいですかね。最近はあまり行けてないですね。 (▲写真):獲れた獲物は余すことなく。自分で獲った獲物を自分で捌き、山の恵みに感謝すると共に、美味しくいただく。 スリルやドキドキ感が狩りの醍醐味 ―今までの狩りで一番思い出に残るシーンを教えてください。 去年ですかね。民家の庭先で猪と猟犬がけんかしていて、それを仕留めたときが一番印象に残ってますね。犬がある程度猪を弱らせていたので自分に向かってくることはなかったんですが、猪がすぐそばにいたので恐かったです。だからこそ仕留めたときはすごく嬉しかったですね。 ー一方で、嫌だったシーンはありますか? 狩りの途中で雨が降り出したので、もう今日はやめようってことになって、山の中に入った猟犬を探しに行ったんですよ。 犬探しだけなので鉄砲を持たずに山に入ったんですけど、そしたらちょうど探していた犬と猪が一対一でやり合っていて、急いで鉄砲を取りに行って戻ったらもう猪はいなくなってて、犬はやられていて…。...
「大きな猪を仕留めてみたい」~ 若き猟師にインタビュー 黒田勇気さん(宮崎県)
宮崎県北部の自然豊かな山あいの集落、美郷町南郷。面積の約9割が山林というこの地域。 過疎化で若者が町から離れていく一方、この地域に残り、山の恩恵を身近に感じながら生活している若者もいます。 美郷町で林業に従事している黒田勇気さん(23歳)もその一人。苗木の植栽や下草の刈払作業などを行い木の成長を手助けする「造林」が本業ですが、休日などには狩猟も行っています。 大人になったら猟に行くのが当たり前だと思っていた ー狩猟は何歳のときに始めたんですか? 猟銃の免許をとったのが20歳のときなので、そのときからですかね。 写真:猟師である父親の背中を見て育ち、幼い頃から狩猟は生活の一部であった。狩猟もごく自然な流れで始めた。 ーなぜ狩りをしようと思ったんですか? 父も狩りをしていて、それを幼い頃から見ていたので、自分も狩猟免許が取れる年齢になったら猟銃の免許を取らないといけない、そして猟をしないといけないんだろうなと、当たり前のように思っていました。 なので、20歳になったらごく自然な流れで始めていましたね。 ーお父様の狩りをする姿をこれまでに見たことがあると思いますが、逆に嫌だとは思わなかったんですか? 確かに、子どものときはいろいろ手伝わされたりして、よだきい(面倒くさい)としか思わなかったですけど、うーん、なんでしょうね。鉄砲が撃ってみたかったんですよね。父が持っている鉄砲がかっこよくて、子どもの頃から鉄砲のおもちゃで真似ごとみたいなことはしてましたね。 ーでは、猟銃の免許を取得して、一番最初に行った狩りのことは覚えていますか? 覚えてます。そのときは、確か鹿を仕留めたと思います。 鹿が2頭出てきて、狙って撃って当たらなかったんですけど、その鹿が父のところに行って、1頭は父が仕留めて、俺の近くに戻ってきた1頭をようやく仕留めました。 ー初めて自分が撃った弾で獲物を仕留めたとき、どんな心境でした? 足が震えましたね、興奮して(笑) 痩せてたけど、結構大きかったんですよ。それは自分でさばきました。 ーさばくのも自分でやるんですね。さばき方はどうやって身につけたんですか? 子どもの頃から見てましたし、狩りをする前から手伝っていたので自然と覚えました。 (▲写真):慣れた手つきで獲れたイノシシの毛抜きをする黒田さん。子どもの頃から何度もやってきた作業だ。 ー年間、どのくらい狩りに行くんですか? 仕事もありますし、子どももまだ小さいので、月に2回くらいですかね。最近はあまり行けてないですね。 (▲写真):獲れた獲物は余すことなく。自分で獲った獲物を自分で捌き、山の恵みに感謝すると共に、美味しくいただく。 スリルやドキドキ感が狩りの醍醐味 ―今までの狩りで一番思い出に残るシーンを教えてください。 去年ですかね。民家の庭先で猪と猟犬がけんかしていて、それを仕留めたときが一番印象に残ってますね。犬がある程度猪を弱らせていたので自分に向かってくることはなかったんですが、猪がすぐそばにいたので恐かったです。だからこそ仕留めたときはすごく嬉しかったですね。 ー一方で、嫌だったシーンはありますか? 狩りの途中で雨が降り出したので、もう今日はやめようってことになって、山の中に入った猟犬を探しに行ったんですよ。 犬探しだけなので鉄砲を持たずに山に入ったんですけど、そしたらちょうど探していた犬と猪が一対一でやり合っていて、急いで鉄砲を取りに行って戻ったらもう猪はいなくなってて、犬はやられていて…。...
猟が身近にあった生活―猟師の娘からみた狩猟文化
宮崎県北部の山間部で生まれ育った私には、狩猟はとても身近な文化。父も祖父も林業の傍ら、狩猟の時期は猟に出かけていました。 とにかく狩りが好き。今でも狩猟時期に実家へ帰ると、「昨日獲った猪は丸々肥えとった」とか「今日は犬が(猪に)切られた」など、狩りに特段興味もない私に延々と狩りの話をしてきます(笑) 猟師がいる家庭に育った人間であればおそらく同じような経験をしていると思いますが、30余年生きてきた私が経験した、猟にまつわるお話です。 狩猟を身近なものとして子ども時代を過ごした執筆者からみた狩猟文化の一端として読んでいただければ幸いです。 猟の相棒「猟犬」 狩りをする上で猟犬はなくてはならない存在。私の家にも猟犬が十数匹いました。小屋から脱走する犬を捕まえたり、犬のエサを運んだり、子犬と遊んだり…。 とても大事にしている犬が猪にやられたときなどは、子どもながらに涙したことを覚えています。また、猟がない時期は犬を軽トラに乗せて、父と山へ犬の運動に出かけることも。 舗装していないガタガタ道を軽トラで登っていき、そこで犬を降ろして、家までの道中を軽トラの後ろについて走らせるといった感じです。 たくさんの猟師が集まる時期 狩猟期間の11月15日から2月15日の間、私の家には多くの人が集まって来ていました。猟で仕留めた猪や鹿をさばき、獲物の収穫を山の神様に感謝するためです。 自宅に人がたくさん集まるのは子どもながらに嬉しい反面、やれ皿を持ってこいだの、まな板を持ってこいだのと、いろいろと手伝わされるのはとても嫌だった記憶があります(笑) いろりを囲んでその日の獲物を味わいながら、狩りの様子を語り合う猟師たち。 収穫があった日にはほぼ必ずと言っていいほど見られた光景です。今は高齢化も進んで狩りをする人も減り、大勢で集まって猟をする機会も少なくなりましたが、私が子どもの頃の狩猟時期は、とても賑わいがあって活気あふれる大好きな時間でした。 獲物の解体 猪や鹿の解体は子どもの頃からよく見ていました。 猪はお湯をかけて毛を剃り、さばき台の上に乗せていくつかの包丁を使い分けてさばいていました。 まだ死んだ猪の体には湯気が出るほどあたたかさが残っており、内蔵を取り出す瞬間は気持ち悪いと思いながらも、その体の作りや手つきを興味深く観察していたのを覚えています。 また、先の細い包丁や大きめのカッターナイフであばら骨を手際よく身から剥がしていく作業は、見ていて楽しかったです。 鹿の解体は、首の部分にロープを引っ掛けて吊るし、ナイフを使って皮を剥いでいきます。鹿の解体についてはなんとなく苦手で、独特な血の匂いと、皮を剥いだ後の鹿の異様な姿がその要因になってるのだと思います。 とっておきの料理 猪肉や鹿肉などはお店にも売られているため、食べたことがある方もいらっしゃると思いますが、猟師のいる家庭では肉以外の部位も食べます。猪の骨は大きな鍋で、骨から肉が離れるようになるまで炊きます。 骨にかぶりついてそこに付いた肉を一生懸命食べていた幼少期を今でも思い出します。鹿の骨は塩コショウをつけて炭火で焼いて食べていました。 それから、猪は内臓やあかふく(肺)も食べます。 内臓はきれいな水で何度も何度も洗って処理をしたものを味噌で煮込みます。家畜の豚などと違って、どんぐりなど木の実を食べている猪はアクがよく出るため、丁寧に処理する必要があるそうです。 肺は砂糖醤油で甘辛く炒め煮のような調理法で食べます。肺はふわふわ、気管はコリコリとした食感で、濃いめの味付けが一度食べたら忘れられない味と食感です。 「当たり前じゃない」ことは、じつは当たり前 猟師の家庭に育った私にとっては、おそらく普通の人には当たり前でないことが当たり前でした。殺生してそれを家でさばいて食べるという行為は一見残虐ですが、スーパーに売っている鳥や豚や鶏も、自分が見ていないだけで誰かが同じことをして私たちの口に入っているのです。 途中の過程を見ていないだけで、その行為は当たり前のこと。そんなことに気づかせてくれたのも、猟師の家庭に育ったからこそだと思っています。父や祖父、そして故郷に感謝です。 獣害対策 おすすめ商品...
猟が身近にあった生活―猟師の娘からみた狩猟文化
宮崎県北部の山間部で生まれ育った私には、狩猟はとても身近な文化。父も祖父も林業の傍ら、狩猟の時期は猟に出かけていました。 とにかく狩りが好き。今でも狩猟時期に実家へ帰ると、「昨日獲った猪は丸々肥えとった」とか「今日は犬が(猪に)切られた」など、狩りに特段興味もない私に延々と狩りの話をしてきます(笑) 猟師がいる家庭に育った人間であればおそらく同じような経験をしていると思いますが、30余年生きてきた私が経験した、猟にまつわるお話です。 狩猟を身近なものとして子ども時代を過ごした執筆者からみた狩猟文化の一端として読んでいただければ幸いです。 猟の相棒「猟犬」 狩りをする上で猟犬はなくてはならない存在。私の家にも猟犬が十数匹いました。小屋から脱走する犬を捕まえたり、犬のエサを運んだり、子犬と遊んだり…。 とても大事にしている犬が猪にやられたときなどは、子どもながらに涙したことを覚えています。また、猟がない時期は犬を軽トラに乗せて、父と山へ犬の運動に出かけることも。 舗装していないガタガタ道を軽トラで登っていき、そこで犬を降ろして、家までの道中を軽トラの後ろについて走らせるといった感じです。 たくさんの猟師が集まる時期 狩猟期間の11月15日から2月15日の間、私の家には多くの人が集まって来ていました。猟で仕留めた猪や鹿をさばき、獲物の収穫を山の神様に感謝するためです。 自宅に人がたくさん集まるのは子どもながらに嬉しい反面、やれ皿を持ってこいだの、まな板を持ってこいだのと、いろいろと手伝わされるのはとても嫌だった記憶があります(笑) いろりを囲んでその日の獲物を味わいながら、狩りの様子を語り合う猟師たち。 収穫があった日にはほぼ必ずと言っていいほど見られた光景です。今は高齢化も進んで狩りをする人も減り、大勢で集まって猟をする機会も少なくなりましたが、私が子どもの頃の狩猟時期は、とても賑わいがあって活気あふれる大好きな時間でした。 獲物の解体 猪や鹿の解体は子どもの頃からよく見ていました。 猪はお湯をかけて毛を剃り、さばき台の上に乗せていくつかの包丁を使い分けてさばいていました。 まだ死んだ猪の体には湯気が出るほどあたたかさが残っており、内蔵を取り出す瞬間は気持ち悪いと思いながらも、その体の作りや手つきを興味深く観察していたのを覚えています。 また、先の細い包丁や大きめのカッターナイフであばら骨を手際よく身から剥がしていく作業は、見ていて楽しかったです。 鹿の解体は、首の部分にロープを引っ掛けて吊るし、ナイフを使って皮を剥いでいきます。鹿の解体についてはなんとなく苦手で、独特な血の匂いと、皮を剥いだ後の鹿の異様な姿がその要因になってるのだと思います。 とっておきの料理 猪肉や鹿肉などはお店にも売られているため、食べたことがある方もいらっしゃると思いますが、猟師のいる家庭では肉以外の部位も食べます。猪の骨は大きな鍋で、骨から肉が離れるようになるまで炊きます。 骨にかぶりついてそこに付いた肉を一生懸命食べていた幼少期を今でも思い出します。鹿の骨は塩コショウをつけて炭火で焼いて食べていました。 それから、猪は内臓やあかふく(肺)も食べます。 内臓はきれいな水で何度も何度も洗って処理をしたものを味噌で煮込みます。家畜の豚などと違って、どんぐりなど木の実を食べている猪はアクがよく出るため、丁寧に処理する必要があるそうです。 肺は砂糖醤油で甘辛く炒め煮のような調理法で食べます。肺はふわふわ、気管はコリコリとした食感で、濃いめの味付けが一度食べたら忘れられない味と食感です。 「当たり前じゃない」ことは、じつは当たり前 猟師の家庭に育った私にとっては、おそらく普通の人には当たり前でないことが当たり前でした。殺生してそれを家でさばいて食べるという行為は一見残虐ですが、スーパーに売っている鳥や豚や鶏も、自分が見ていないだけで誰かが同じことをして私たちの口に入っているのです。 途中の過程を見ていないだけで、その行為は当たり前のこと。そんなことに気づかせてくれたのも、猟師の家庭に育ったからこそだと思っています。父や祖父、そして故郷に感謝です。 獣害対策 おすすめ商品...
絶品ジビエ!鹿肉料理レシピ~高級編。
ジビエとは、フランス語のgibierをカタカナ読みにしたもので、ハンターが狩猟によって捕獲した野生鳥獣(souvage:ソバージュ)を食材として利用することを指します。 中世ヨーロッパでは、上流貴族が嗜みとして狩りを行い、領地で獲った鳥獣の肉を食していました。そのため、特にフランス料理界でジビエ肉は古くから高級食材として重宝され、特別な料理に使われてきました。 ヨーロッパの高級食材店に行くと、精肉売場のショーケースには家畜肉と一緒にジビエ肉が並んでいたりします。野ウサギ(lièvre:リエヴル)、マガモ(colvert:コルヴェル)、キジ(faisan:フザン)、イノシシ(sanglier:サングリエ)などがありますが、中でも王様は鹿(chevreuil:シュヴルイユ)です。 鹿肉は他の肉と比べて脂質が少なく、高たんぱく低カロリー、鉄分やミネラルが豊富であることが特徴です。高級フレンチコースのメインとして使われることも多く、一流シェフが様々なテクニックや趣向を凝らします。 鹿肉の赤ワイン&チョコレートソース ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay)氏は、スコットランド出身の3つ星シェフです。ヨーロッパでとても人気のあるシェフで、英国ロンドンにある3つのレストランで、合計7つのミシュランの星を持ちます。 こちらの動画では、ゴードン・ラムゼイ氏が鹿肉の赤ワイン&チョコレートソースについて説明しています。 まず、オリーブオイルとバターで鹿肉の表面を焼いたのち、水分を逃さないためにバターを包んでいる紙で鹿肉を包み、オーブンで加熱します。 その間に、パンチェッタ(豚のバラ肉)、エシャロットとニンニク、挽いた黒コショウ、タイム(肉料理の風味づけに使われるハーブ)を軽く炒め、赤ワインを加えます。チキンブイヨンを加え、酢とダークチョコレートで仕上げをすると、赤ワイン&チョコレートソースの出来上がり。 赤ワインとチョコレートという一見変わった組み合わせのソースですが、フランス料理では肉料理を引き立てるためによく使われるものです。ゴードン・ラムゼイ氏は、スパイスやハーブの風味を調和させて肉の臭みを消し、苦みと甘みのバランスによって主役となる鹿肉の味を存分に引き立てるよう仕上げています。 鹿の鞍下肉にカボチャ、シャントレル、葉野菜を添えて 鹿肉も部位によって味や特徴が異なりますが、鞍下肉は牛肉でいうところのフィレにあたり、ロースのモモよりの部分です。とても柔らかく、フランス料理では極上部位とされます。 こちらの動画では、英国出身ミシュラン2つ星シェフ、ミシェル・ルー(Michel Roux Jr.)氏が鹿の鞍下肉を料理しています。ローストした鞍下肉に、秋の味覚としてカボチャ、シャントレル(アンズタケ)、クルミ、トレビスなどが添えられます。 アンズタケは日本ではあまり知られてないキノコですが、海外では食用キノコとして重宝されており、鹿肉を使った伝統料理に多く登場します。フランスでは「ジロール」や「シャントレル」と呼ばれ、アンズの香りがします。身近で採れるきのこであることから、高級なトリュフとは異なり庶民的なキノコとして広く親しまれています。 トレビスはヨーロッパ原産の赤紫色をした野菜で、見た目は紫キャベツに似ています。別名赤チコリと呼ばれ、苦みが特徴的。少量使うだけで映える食材です。 ミシェル・ルー氏は、これらの野菜とフルーティーで柔らかい鹿肉をマッチさせて、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味のバランスが取れるよう仕上げています。 鹿肉と野菜・果物のなべ焼き 以下の動画は、フランスのベルサイユ宮殿入場口のすぐそばにある人気店Ore - Ducasse au château de Versaillesのシェフ、Stephane Duchiron氏による鹿肉と野菜・果物のなべ焼き(キャセロール)です。 キャセロールはフランスで古くから伝わる伝統料理で、野菜などを調味料と共にとろ火で煮込んだものです。乾燥させた鹿肉のフィレをローストし、キャベツやニンジン、キノコ、洋ナシや玉ねぎなどのキャセロールを添えています。 肉と果物を一緒に食すことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、果実は鹿肉のポテンシャルを最大限に引き出すと言われるほど相性が良いです。旬の野菜や果物を、おいしくいただけるレシピです。...
絶品ジビエ!鹿肉料理レシピ~高級編。
ジビエとは、フランス語のgibierをカタカナ読みにしたもので、ハンターが狩猟によって捕獲した野生鳥獣(souvage:ソバージュ)を食材として利用することを指します。 中世ヨーロッパでは、上流貴族が嗜みとして狩りを行い、領地で獲った鳥獣の肉を食していました。そのため、特にフランス料理界でジビエ肉は古くから高級食材として重宝され、特別な料理に使われてきました。 ヨーロッパの高級食材店に行くと、精肉売場のショーケースには家畜肉と一緒にジビエ肉が並んでいたりします。野ウサギ(lièvre:リエヴル)、マガモ(colvert:コルヴェル)、キジ(faisan:フザン)、イノシシ(sanglier:サングリエ)などがありますが、中でも王様は鹿(chevreuil:シュヴルイユ)です。 鹿肉は他の肉と比べて脂質が少なく、高たんぱく低カロリー、鉄分やミネラルが豊富であることが特徴です。高級フレンチコースのメインとして使われることも多く、一流シェフが様々なテクニックや趣向を凝らします。 鹿肉の赤ワイン&チョコレートソース ゴードン・ラムゼイ(Gordon Ramsay)氏は、スコットランド出身の3つ星シェフです。ヨーロッパでとても人気のあるシェフで、英国ロンドンにある3つのレストランで、合計7つのミシュランの星を持ちます。 こちらの動画では、ゴードン・ラムゼイ氏が鹿肉の赤ワイン&チョコレートソースについて説明しています。 まず、オリーブオイルとバターで鹿肉の表面を焼いたのち、水分を逃さないためにバターを包んでいる紙で鹿肉を包み、オーブンで加熱します。 その間に、パンチェッタ(豚のバラ肉)、エシャロットとニンニク、挽いた黒コショウ、タイム(肉料理の風味づけに使われるハーブ)を軽く炒め、赤ワインを加えます。チキンブイヨンを加え、酢とダークチョコレートで仕上げをすると、赤ワイン&チョコレートソースの出来上がり。 赤ワインとチョコレートという一見変わった組み合わせのソースですが、フランス料理では肉料理を引き立てるためによく使われるものです。ゴードン・ラムゼイ氏は、スパイスやハーブの風味を調和させて肉の臭みを消し、苦みと甘みのバランスによって主役となる鹿肉の味を存分に引き立てるよう仕上げています。 鹿の鞍下肉にカボチャ、シャントレル、葉野菜を添えて 鹿肉も部位によって味や特徴が異なりますが、鞍下肉は牛肉でいうところのフィレにあたり、ロースのモモよりの部分です。とても柔らかく、フランス料理では極上部位とされます。 こちらの動画では、英国出身ミシュラン2つ星シェフ、ミシェル・ルー(Michel Roux Jr.)氏が鹿の鞍下肉を料理しています。ローストした鞍下肉に、秋の味覚としてカボチャ、シャントレル(アンズタケ)、クルミ、トレビスなどが添えられます。 アンズタケは日本ではあまり知られてないキノコですが、海外では食用キノコとして重宝されており、鹿肉を使った伝統料理に多く登場します。フランスでは「ジロール」や「シャントレル」と呼ばれ、アンズの香りがします。身近で採れるきのこであることから、高級なトリュフとは異なり庶民的なキノコとして広く親しまれています。 トレビスはヨーロッパ原産の赤紫色をした野菜で、見た目は紫キャベツに似ています。別名赤チコリと呼ばれ、苦みが特徴的。少量使うだけで映える食材です。 ミシェル・ルー氏は、これらの野菜とフルーティーで柔らかい鹿肉をマッチさせて、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味のバランスが取れるよう仕上げています。 鹿肉と野菜・果物のなべ焼き 以下の動画は、フランスのベルサイユ宮殿入場口のすぐそばにある人気店Ore - Ducasse au château de Versaillesのシェフ、Stephane Duchiron氏による鹿肉と野菜・果物のなべ焼き(キャセロール)です。 キャセロールはフランスで古くから伝わる伝統料理で、野菜などを調味料と共にとろ火で煮込んだものです。乾燥させた鹿肉のフィレをローストし、キャベツやニンジン、キノコ、洋ナシや玉ねぎなどのキャセロールを添えています。 肉と果物を一緒に食すことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、果実は鹿肉のポテンシャルを最大限に引き出すと言われるほど相性が良いです。旬の野菜や果物を、おいしくいただけるレシピです。...
猟師メシが教えてくれる滋味豊かなジビエの味
最近テレビや雑誌などでも特集が組まれ、注目を浴びている「ジビエ」。 日本でも以前よりは身近になったジビエ料理ですが、牛肉や豚肉に比べるとどこかとっつきにくく、ちょっと食べづらそうというイメージをもたれがち…。 ジビエをおいしく食べるには、普段からよく食べているであろうプロに聞くのが一番!ということで、実際に宮崎県の猟師さんを尋ねてきた結果を報告します。 そもそもジビエとは? 「ジビエ」はフランス語で、イノシシやシカ、野ウサギ、キジなど、狩猟によって捕獲された野生鳥獣の肉を表す言葉。古くから狩猟が盛んなヨーロッパでは、ジビエ料理は馴染みのある食文化です。 かつては上流階級の貴族しか食べられない貴重なジビエ料理でしたが、今では狩猟が解禁される時期には肉屋の店先やマルシェなどで毛や羽がついたままのジビエが並ぶほど、フランスなどでは身近な食材として扱われています。 日本でのジビエ料理 寿司やそばなどをはじめとする日本食は、穀物や野菜、魚といった食材が一般的で、肉を食べる習慣は欧米よりもたらされたイメージが強いですが、日本でも古くから狩猟が行われており、イノシシ、シカなども食されていました。 特に寒さの厳しい山間部では、ジビエは貴重なタンパク源だったのです。 昨今取りざたされている鳥獣被害の問題で、捕獲した鳥獣を地域資源として食材に利用する動きもあり、ジビエ料理が注目されるようになりましたが、スーパーなど身近な場所で扱っているところはまだまだ少ないのが現状です。 ヘルシーで栄養価が高い 野生独特のにおいや肉質のジビエですが、血抜きや内臓を取り除くなど捕獲時の適切な処理と食材に合わせた調理法で、とてもおいしく食べられます。 また、高たんぱく低カロリーで、鉄分やビタミンB2などの栄養素も豊富に含まれています。 猟師のジビエ料理 ジビエをおいしく食べるには、普段からよく食べているであろう猟師さんに聞くのが一番!ということで、実際に尋ねてみました。 イノシシ肉 イノシシ肉といえば日本ではぼたん鍋が有名ですが、もっとシンプルにイノシシ肉の旨味を味わうならやっぱり塩焼き。 どの猟師さんもおすすめする食べ方です。 フライパンでも悪くはありませんが、炭で焼くと余計な脂も落ち、格段においしくなります。 旨味をたっぷり含んだ肉汁が逃げないよう、ブロックのまま焼くのがポイント。 焼く前に塩をふったイノシシ肉のブロックを網の上に乗せ、まんべんなく焼き色と焦げ目がついたら火からおろし、薄くスライス。それをまた網の上に乗せ、火を通して焼きたてをいただきましょう。若いイノシシは肉が柔らかく、クセもほとんどないため、ジビエ初心者にはおすすめです。 シカ肉 シカ肉は脂肪が少なくとってもヘルシー。赤身でさっぱりした味わいです。 捕獲してすぐに処理していれば臭みは少なくなりますが、においを気にせずさらにおいしく食べる方法はたれに漬け込むこと。 猟師さんによって味付けは異なりますが、すりおろしたニンニクと醤油、酒、砂糖を合わせた特製のたれに数時間漬け込み、それを炭火で焼いて食べます。 焼きすぎると硬くなってしまうので、程よく火が通れば食べごろです。 噛めばにんにく醤油の香ばしい風味と鹿肉の旨味がじゅわっと口いっぱいに広がり、あと引くおいしさ。 漬け込む時間や肉の切り方によって味の濃さは変わりますが、あまり漬け込みすぎると味が濃くなりすぎるため、鹿肉の風味を楽しむなら、30分~1時間程度で十分でしょう。 ジビエ以外にも山の幸がいっぱいの猟師メシ この日はたまたま、川でとってきた天然のウナギも味わうことができました。お店で食べるものより身が分厚く締まっていて、食べ応えのある食感。川魚特有の臭みはありません。...
猟師メシが教えてくれる滋味豊かなジビエの味
最近テレビや雑誌などでも特集が組まれ、注目を浴びている「ジビエ」。 日本でも以前よりは身近になったジビエ料理ですが、牛肉や豚肉に比べるとどこかとっつきにくく、ちょっと食べづらそうというイメージをもたれがち…。 ジビエをおいしく食べるには、普段からよく食べているであろうプロに聞くのが一番!ということで、実際に宮崎県の猟師さんを尋ねてきた結果を報告します。 そもそもジビエとは? 「ジビエ」はフランス語で、イノシシやシカ、野ウサギ、キジなど、狩猟によって捕獲された野生鳥獣の肉を表す言葉。古くから狩猟が盛んなヨーロッパでは、ジビエ料理は馴染みのある食文化です。 かつては上流階級の貴族しか食べられない貴重なジビエ料理でしたが、今では狩猟が解禁される時期には肉屋の店先やマルシェなどで毛や羽がついたままのジビエが並ぶほど、フランスなどでは身近な食材として扱われています。 日本でのジビエ料理 寿司やそばなどをはじめとする日本食は、穀物や野菜、魚といった食材が一般的で、肉を食べる習慣は欧米よりもたらされたイメージが強いですが、日本でも古くから狩猟が行われており、イノシシ、シカなども食されていました。 特に寒さの厳しい山間部では、ジビエは貴重なタンパク源だったのです。 昨今取りざたされている鳥獣被害の問題で、捕獲した鳥獣を地域資源として食材に利用する動きもあり、ジビエ料理が注目されるようになりましたが、スーパーなど身近な場所で扱っているところはまだまだ少ないのが現状です。 ヘルシーで栄養価が高い 野生独特のにおいや肉質のジビエですが、血抜きや内臓を取り除くなど捕獲時の適切な処理と食材に合わせた調理法で、とてもおいしく食べられます。 また、高たんぱく低カロリーで、鉄分やビタミンB2などの栄養素も豊富に含まれています。 猟師のジビエ料理 ジビエをおいしく食べるには、普段からよく食べているであろう猟師さんに聞くのが一番!ということで、実際に尋ねてみました。 イノシシ肉 イノシシ肉といえば日本ではぼたん鍋が有名ですが、もっとシンプルにイノシシ肉の旨味を味わうならやっぱり塩焼き。 どの猟師さんもおすすめする食べ方です。 フライパンでも悪くはありませんが、炭で焼くと余計な脂も落ち、格段においしくなります。 旨味をたっぷり含んだ肉汁が逃げないよう、ブロックのまま焼くのがポイント。 焼く前に塩をふったイノシシ肉のブロックを網の上に乗せ、まんべんなく焼き色と焦げ目がついたら火からおろし、薄くスライス。それをまた網の上に乗せ、火を通して焼きたてをいただきましょう。若いイノシシは肉が柔らかく、クセもほとんどないため、ジビエ初心者にはおすすめです。 シカ肉 シカ肉は脂肪が少なくとってもヘルシー。赤身でさっぱりした味わいです。 捕獲してすぐに処理していれば臭みは少なくなりますが、においを気にせずさらにおいしく食べる方法はたれに漬け込むこと。 猟師さんによって味付けは異なりますが、すりおろしたニンニクと醤油、酒、砂糖を合わせた特製のたれに数時間漬け込み、それを炭火で焼いて食べます。 焼きすぎると硬くなってしまうので、程よく火が通れば食べごろです。 噛めばにんにく醤油の香ばしい風味と鹿肉の旨味がじゅわっと口いっぱいに広がり、あと引くおいしさ。 漬け込む時間や肉の切り方によって味の濃さは変わりますが、あまり漬け込みすぎると味が濃くなりすぎるため、鹿肉の風味を楽しむなら、30分~1時間程度で十分でしょう。 ジビエ以外にも山の幸がいっぱいの猟師メシ この日はたまたま、川でとってきた天然のウナギも味わうことができました。お店で食べるものより身が分厚く締まっていて、食べ応えのある食感。川魚特有の臭みはありません。...