鳥獣被害対策マガジン
イノシシ被害について
イノシシによる被害は里山に住む人にとって身近な問題です。中でも農業を営む方にとっては、作物を育て食し、売っていかなくてはならない中で、そこにイノシシ被害を受けてしまうことは大きな打撃になります。 高齢化や過疎化の影響もあり農家の経営はただでさえ苦しいですが、田畑が荒らされることが追い打ちとなり、営農意欲まで奪い取られてしまいます。 農林水産省の発表によると、イノシシによる農林水産被害額は平成30年度で約47億円となっており、農業を営む人にとっては死活問題となる深刻な事態です。 イノシシ被害の例 全国の野生鳥獣による農作物被害額は平成30年度で158億円となっています。被害を与える鳥獣はある程度限定されており、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。 このうち、イノシシによる被害は全体の約3割に達しています。 ※公表等されている被害は限定的で、正確な情報が把握されていなかったり、被害が少ない・程度が軽い場合もあるため、未公表の被害も多々あると思われます。 農作物に係る被害 イノシシによって人間が被害を被る中で、もっとも深刻なのは農作物が荒らされるケースです。中でもイネの被害金額は非常に高く、全国で24億円に達しています。 イノシシは雑食であるため、被害作物は多岐にわたります。また、栄養価が高く比較的消化しやすい部位を好むため、季節ごとに状況の良い作物を選んで集中して食害する傾向があります。イネの他にも、果樹や野菜、いも類の被害が顕著となっています。 食害だけでなく、田畑を掘り返されたり踏み荒らされたりして駄目にされる被害もあります。 被害の面積でみると、イネで3600ヘクタール、果樹で1000ヘクタールに達しています。因みに、1000ヘクタール(ha)は、東京ドーム約213個分の広さです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシの生態・行動を詳しく解説 人身被害 イノシシは身体能力が高く、襲われて人身被害を受けるケースもあります。市街地でも多く発生していますが、こう言った場所では罠を使った捕獲が難しかったり、銃器の使用ができなかったりするため、簡単に解決できないケースも散見されます。 環境省は平成28年から人身被害件数を集計していますが、それによると被害件数は毎年50件前後、被害人数は50~70人前後を推移しています(狩猟や捕獲作業にともなう人身被害は除いた数値です)。被害が多い地域は、兵庫県、香川県、栃木県です。 こういった被害が起こる背景として、市街地にイノシシが出没するようになり、ゴミや餌付けなどによってイノシシが人慣れしてしまったことが考えられます。 また、市街地でのイノシシ被害の場合、住民が自身ごととしてとらえる意識は低く、自分たちで対策等を行うのではなく行政へ対応を求める場合が多く、地域ぐるみでの対策が困難となりがちです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】 生活環境被害 人身被害以外にも、交通事故やゴミ集積場を荒らす、家屋侵入等といった生活環境被害を受けるケースもあります。 これも、餌付けやゴミの放置をおこなった結果、人慣れしたイノシシが人間の生活圏内で被害を起こすようになった背景があります。 こういった状況をふまえ、人身被害や生活環境被害が多く発生している神戸市では、2014年に東灘区・中央区で相次いで発生したイノシシによる人身事故を受けて、神戸市では餌付け行為を指導・禁止する取り組みを強化するため、公表の規定等を追加する条例の改正を行いました。 イノシシ条例(神戸市いのししからの危害の防止に関する条例) 庭やクリーンステーションを荒らされるといった生活環境への被害や、人が噛み付かれたり、イノシシが原因で交通事故が起こるなど、イノシシ問題は、地域の住民の方にとって重大な問題となり、2002年5月1日から施行されました。 しかし、一部の住民が餌付けをやめなかったことから、市街地でのイノシシ出没が止まらず、イノシシへの餌付け等を禁止する「規制区域」の指定や、悪質な条例違反者に対する措置を盛り込んだ条例改正が行われました。 条例の内容は以下の通りとなります。 1.市はイノシシによる被害の防止のため、積極的に啓発活動を行います。 2.市は住民の方の意見を聴いて、規制区域を定めます。 3.規制区域では、...
イノシシ被害について
イノシシによる被害は里山に住む人にとって身近な問題です。中でも農業を営む方にとっては、作物を育て食し、売っていかなくてはならない中で、そこにイノシシ被害を受けてしまうことは大きな打撃になります。 高齢化や過疎化の影響もあり農家の経営はただでさえ苦しいですが、田畑が荒らされることが追い打ちとなり、営農意欲まで奪い取られてしまいます。 農林水産省の発表によると、イノシシによる農林水産被害額は平成30年度で約47億円となっており、農業を営む人にとっては死活問題となる深刻な事態です。 イノシシ被害の例 全国の野生鳥獣による農作物被害額は平成30年度で158億円となっています。被害を与える鳥獣はある程度限定されており、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。 このうち、イノシシによる被害は全体の約3割に達しています。 ※公表等されている被害は限定的で、正確な情報が把握されていなかったり、被害が少ない・程度が軽い場合もあるため、未公表の被害も多々あると思われます。 農作物に係る被害 イノシシによって人間が被害を被る中で、もっとも深刻なのは農作物が荒らされるケースです。中でもイネの被害金額は非常に高く、全国で24億円に達しています。 イノシシは雑食であるため、被害作物は多岐にわたります。また、栄養価が高く比較的消化しやすい部位を好むため、季節ごとに状況の良い作物を選んで集中して食害する傾向があります。イネの他にも、果樹や野菜、いも類の被害が顕著となっています。 食害だけでなく、田畑を掘り返されたり踏み荒らされたりして駄目にされる被害もあります。 被害の面積でみると、イネで3600ヘクタール、果樹で1000ヘクタールに達しています。因みに、1000ヘクタール(ha)は、東京ドーム約213個分の広さです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシの生態・行動を詳しく解説 人身被害 イノシシは身体能力が高く、襲われて人身被害を受けるケースもあります。市街地でも多く発生していますが、こう言った場所では罠を使った捕獲が難しかったり、銃器の使用ができなかったりするため、簡単に解決できないケースも散見されます。 環境省は平成28年から人身被害件数を集計していますが、それによると被害件数は毎年50件前後、被害人数は50~70人前後を推移しています(狩猟や捕獲作業にともなう人身被害は除いた数値です)。被害が多い地域は、兵庫県、香川県、栃木県です。 こういった被害が起こる背景として、市街地にイノシシが出没するようになり、ゴミや餌付けなどによってイノシシが人慣れしてしまったことが考えられます。 また、市街地でのイノシシ被害の場合、住民が自身ごととしてとらえる意識は低く、自分たちで対策等を行うのではなく行政へ対応を求める場合が多く、地域ぐるみでの対策が困難となりがちです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】 生活環境被害 人身被害以外にも、交通事故やゴミ集積場を荒らす、家屋侵入等といった生活環境被害を受けるケースもあります。 これも、餌付けやゴミの放置をおこなった結果、人慣れしたイノシシが人間の生活圏内で被害を起こすようになった背景があります。 こういった状況をふまえ、人身被害や生活環境被害が多く発生している神戸市では、2014年に東灘区・中央区で相次いで発生したイノシシによる人身事故を受けて、神戸市では餌付け行為を指導・禁止する取り組みを強化するため、公表の規定等を追加する条例の改正を行いました。 イノシシ条例(神戸市いのししからの危害の防止に関する条例) 庭やクリーンステーションを荒らされるといった生活環境への被害や、人が噛み付かれたり、イノシシが原因で交通事故が起こるなど、イノシシ問題は、地域の住民の方にとって重大な問題となり、2002年5月1日から施行されました。 しかし、一部の住民が餌付けをやめなかったことから、市街地でのイノシシ出没が止まらず、イノシシへの餌付け等を禁止する「規制区域」の指定や、悪質な条例違反者に対する措置を盛り込んだ条例改正が行われました。 条例の内容は以下の通りとなります。 1.市はイノシシによる被害の防止のため、積極的に啓発活動を行います。 2.市は住民の方の意見を聴いて、規制区域を定めます。 3.規制区域では、...
シカ・イノシシの個体数について
一昨日、環境省より平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果が公開されました。それによると、現時点で最新の推定値として、平成28(2016)年度末の全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約272万頭、イノシシの推定個体数は中央値約89万頭となり、前年度に引き続き減少傾向であることが明らかになりました。 個体数推定のための統計手法について シカは低い初産齢とほぼ毎年出産するという特徴があります。またイノシシは多産で、春に2~8頭の子を産みます。そのため、シカやイノシシは、大型哺乳類の中では短期間で大幅な個体数変動をおこなう種といえます。 しかしながら、このような場合の生息密度や個体数を精度高く推定する方法は確立されていません。上記の環境省の個体数推定では、①個体数(翌年)=個体数(ある年)×自然増加率-捕獲数、②個体数(翌年)=個体数(ある年)×ある年と翌年の生息数指標の変化率という2つの前提のうえ、階層ベイズモデルが用いられています。 階層ベイズモデルとは 階層ベイズモデルとは、「ベイズ理論」という統計手法を多段階にして導き出すモデルです。この推定モデルは、個体数推定のほかにも様々な分野で活用されています。概念としては「ベイズ理論」と対をなす「頻度論」と比較すると理解しやすいかと思います。 頻度論 コインを投げたときの裏表を例に挙げると、頻度論ではコインを投げたとき表が出る確率は二分の一です。頻度論では、無限回試行を前提とした確率で考え、主観的なパラメータは排除されます。 ベイズ理論 頻度論が無限回試行を前提としているのに対し、ベイズ理論は、その時点で持ち合わせた情報をもとにした一回限りの確率を積み重ねるという考え方をします。 また、ベイズ理論では主観性を考慮します。 そのためベイズ理論においては、現時点でデータが全くなかったとしても、主観的な数値によってとりあえず事前に確率を設定しておくことができます。この確率を事前確率といいます。 例えば、コインを投げる人はコイン投げの達人だから、表ばかり出すことを狙ってくるはずだ、だから表が出る事前確率は五分の四だ、といったような主観を入れることが可能なわけです。 そして、事前確率を設定したのち、何らかの新たな情報を得て、出した確率を事後確率といい、事後確率は新たな情報によって更新されていきます。新たな情報を手に入れたら、前回は事後確率だったものが事前確率となって、さらに確率の更新が行われるという仕組みになります。 どんどんデータを足して更新していけば、現象をより詳しく説明できる分布を推定することができるようになります。先ほど例に出したコイン投げで考えると、コイン投げの結果のデータを足して更新していけば、表が出る確率は二分の一というのが最もありえるモデルで、0や1に近いモデルほどありえなさそう、といった形の確率分布になります。 ベイズモデルを使った推定値は、点推定値と標準偏差、信用区間を基本に報告されます。点推定値とは確率分布の代表値のことで、中央値や平均値をおもに使います。信用区間とは、たとえば90%信用区間であれば「90%の確率でその範囲に真値がある」という区間になります。 シカ・イノシシの個体数の推定値について さて、平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定に話を戻すと、以下の結果が得られています。 ニホンジカの個体数推定結果 2016年度末における全国のニホンジカ(本州以南。北海道を除く)の個体数は、中央値で約272万頭となっています。50%信用区間では約237~314万頭で、90%信用区間であれば約199万~396万頭です。 イノシシの個体数推定結果 2016年度末における全国のイノシシの個体数は、中央値で約89万頭となっています。50%信用区間(50%の確率でその範囲に真値がある)は約80万~99万頭で、90%信用区間であれば約70万~116万頭です。 捕獲数の推移 環境省及び農林水産省は、2013年12月の「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」において、「ニホンジカ及びイノシシの生息数を10年後(2023年度)までに半減」することを当面の捕獲目標に設定しました。 具体的には、本州以南のニホンジカは、2013年度の推定値である261万頭を2023年度までに半減、またイノシシについては88 万頭から2023年度に50万頭まで減少させることを目指すとしていました。 これに伴い、捕獲数も年々増加しており、2016年度ではシカの捕獲数は約58万頭、イノシシの捕獲数は約62万頭に達しています(詳細な数値はこちらをご覧ください)。ここ10年の狩猟免許保持者数がほぼ横ばいであることを考えると、少ない捕獲者が効率的に狩猟圧を上げることができているといえます。 しかしながら、今回の個体数推定の結果、今の捕獲率※を維持した場合、2023年にはニホンジカの個体数が207万頭になるとされており、上記の目標に達することができない見込みとなっています。...
シカ・イノシシの個体数について
一昨日、環境省より平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果が公開されました。それによると、現時点で最新の推定値として、平成28(2016)年度末の全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約272万頭、イノシシの推定個体数は中央値約89万頭となり、前年度に引き続き減少傾向であることが明らかになりました。 個体数推定のための統計手法について シカは低い初産齢とほぼ毎年出産するという特徴があります。またイノシシは多産で、春に2~8頭の子を産みます。そのため、シカやイノシシは、大型哺乳類の中では短期間で大幅な個体数変動をおこなう種といえます。 しかしながら、このような場合の生息密度や個体数を精度高く推定する方法は確立されていません。上記の環境省の個体数推定では、①個体数(翌年)=個体数(ある年)×自然増加率-捕獲数、②個体数(翌年)=個体数(ある年)×ある年と翌年の生息数指標の変化率という2つの前提のうえ、階層ベイズモデルが用いられています。 階層ベイズモデルとは 階層ベイズモデルとは、「ベイズ理論」という統計手法を多段階にして導き出すモデルです。この推定モデルは、個体数推定のほかにも様々な分野で活用されています。概念としては「ベイズ理論」と対をなす「頻度論」と比較すると理解しやすいかと思います。 頻度論 コインを投げたときの裏表を例に挙げると、頻度論ではコインを投げたとき表が出る確率は二分の一です。頻度論では、無限回試行を前提とした確率で考え、主観的なパラメータは排除されます。 ベイズ理論 頻度論が無限回試行を前提としているのに対し、ベイズ理論は、その時点で持ち合わせた情報をもとにした一回限りの確率を積み重ねるという考え方をします。 また、ベイズ理論では主観性を考慮します。 そのためベイズ理論においては、現時点でデータが全くなかったとしても、主観的な数値によってとりあえず事前に確率を設定しておくことができます。この確率を事前確率といいます。 例えば、コインを投げる人はコイン投げの達人だから、表ばかり出すことを狙ってくるはずだ、だから表が出る事前確率は五分の四だ、といったような主観を入れることが可能なわけです。 そして、事前確率を設定したのち、何らかの新たな情報を得て、出した確率を事後確率といい、事後確率は新たな情報によって更新されていきます。新たな情報を手に入れたら、前回は事後確率だったものが事前確率となって、さらに確率の更新が行われるという仕組みになります。 どんどんデータを足して更新していけば、現象をより詳しく説明できる分布を推定することができるようになります。先ほど例に出したコイン投げで考えると、コイン投げの結果のデータを足して更新していけば、表が出る確率は二分の一というのが最もありえるモデルで、0や1に近いモデルほどありえなさそう、といった形の確率分布になります。 ベイズモデルを使った推定値は、点推定値と標準偏差、信用区間を基本に報告されます。点推定値とは確率分布の代表値のことで、中央値や平均値をおもに使います。信用区間とは、たとえば90%信用区間であれば「90%の確率でその範囲に真値がある」という区間になります。 シカ・イノシシの個体数の推定値について さて、平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定に話を戻すと、以下の結果が得られています。 ニホンジカの個体数推定結果 2016年度末における全国のニホンジカ(本州以南。北海道を除く)の個体数は、中央値で約272万頭となっています。50%信用区間では約237~314万頭で、90%信用区間であれば約199万~396万頭です。 イノシシの個体数推定結果 2016年度末における全国のイノシシの個体数は、中央値で約89万頭となっています。50%信用区間(50%の確率でその範囲に真値がある)は約80万~99万頭で、90%信用区間であれば約70万~116万頭です。 捕獲数の推移 環境省及び農林水産省は、2013年12月の「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」において、「ニホンジカ及びイノシシの生息数を10年後(2023年度)までに半減」することを当面の捕獲目標に設定しました。 具体的には、本州以南のニホンジカは、2013年度の推定値である261万頭を2023年度までに半減、またイノシシについては88 万頭から2023年度に50万頭まで減少させることを目指すとしていました。 これに伴い、捕獲数も年々増加しており、2016年度ではシカの捕獲数は約58万頭、イノシシの捕獲数は約62万頭に達しています(詳細な数値はこちらをご覧ください)。ここ10年の狩猟免許保持者数がほぼ横ばいであることを考えると、少ない捕獲者が効率的に狩猟圧を上げることができているといえます。 しかしながら、今回の個体数推定の結果、今の捕獲率※を維持した場合、2023年にはニホンジカの個体数が207万頭になるとされており、上記の目標に達することができない見込みとなっています。...
一度は食べてみたい!絶品イノシシ肉ジビエ料理の食べ方やレシピ5選。
猟師にとってはおなじみのイノシシ肉ですが、その食べ方は一般の方にとってはそれほど馴染みがないものかもしれません。一般的な豚肉と比べると個体差が大きいですが、良質なシシ肉はまさに絶品の一言につきます。 この記事では、猪肉をおいしくいただくための料理レシピを紹介します。 まず、猪肉の特徴から 高たんぱく低カロリーであることが大きな特徴です。江戸時代には猪肉は薬とされたほどで、良質のたんぱく質やビタミンが豊富に含まれています。 豚肉における同じ部位で比較すると、ミネラル・タンパク質は猪肉の方が多いです。脂肪やビタミンB1は豚肉の方が多く、猪肉の脂肪は豚肉の半分以下ともいわれます。若い個体のほうが加熱後も肉質が柔らかく肉汁の量が多い傾向があります。 肉の質を左右するのが、と殺時の放血(血抜き)です。 血抜きをいかに丁寧にするかによって、臭みが全く変わってきます(※参考記事:イノシシの解体・捌き方)。さらに、料理で使用する前に、塩水につけてもみこんでおくと臭みが弱まります。 なお、猪肉にはいくつかの別称があります。「獅子に牡丹(取り合わせのよいもののたとえ)」の、「獅子」を「猪」にいい換えたことを語源として「牡丹肉(ぼたんにく)」と呼ばれたり、江戸時代に獣肉を食べることを良しとしない風潮が強かったことを名残として「山鯨(やまくじら)」と呼ばれたりもします。 もちろん、部位によっても、肉質に特徴があります。 ロース:脂肪の乗り、肉質共にバランスの取れた部位。肉の柔らかさに加え脂肪の旨みが濃いのが特徴。 バラ肉:一般的に三枚肉とも呼ばれる部位。もっとも脂肪の比率の多い部位です。脂肪の美味しさを堪能したいのであれば、バラ肉がおすすめです。 モモ肉:白身より赤身比率が多いのが特徴です。赤身の旨みを味わいたいのであれば、この部位がおすすめです。バラ肉と併せて盛付けると、赤白濃淡がはっきりした美しい盛付になります。 絶品イノシシ肉ジビエレシピ5選 うんちくも述べたところで、ここからは絶品イノシシ料理レシピを紹介してまいります。 その1:シシ鍋(牡丹鍋) 猪肉料理として、真っ先に挙げられるのが牡丹鍋。美味であることはもちろん、たっぷりの野菜と猪肉パワーで滋養強壮効果も抜群です。ちなみに、俳人・与謝蕪村が「静々に五徳にすえにけり薬食」と詠んでいますが、ここでいう薬食とは牡丹鍋のことです。 2~3人前でしし肉300gほど、薄切りにしたものを使います。具材としてベーシックなのは、豆腐・にんじん・ごぼう・長ねぎ・しめじ・白菜・もやし・水菜といったところです。薬味としてにんにくや生姜も少々加えます。 水は800cc程度で、味付けはお好みで。味噌味の場合、和風だしの素大さじ1、昆布・酒・みりん・味噌大さじ2、塩小さじ1/4を加えます。 しし肉と固めの野菜(にんじん・ごぼうなど)を煮込み、肉が柔らかくなったら水菜以外を入れ、火が通ったらさらに味噌で味を整えます。その後、ひと煮立ちしたら水菜を入れてさらにひと煮立ちしてから、いただきます。 その2:炭火焼き レシピも何も、猪肉をただ炭火で焼くだけなのですが、とにかく美味しいです。塩コショウで味付けするだけでも十分いけますが、焼いた肉と梅ニンニクを一緒に食べると最高です。イノシシパワーとニンニクパワーの合体技で、猟期の山歩きも元気いっぱいにこなすことができます。 ★元祖梅にんにくの販売ページはこちらから>> その3: 猪肉チャーシュー(焼猪) 猪肉(バラ肉)350gで2~3人前になります。下準備として、猪肉全体をフォークで刺し、味の染み込みと火の通りをよくさせておきます。その後、型崩れを防ぐためにタコ糸で巻きます。お店に売っているようなチャーシューにしたければ、巻きチャーシューに挑戦するのも良いでしょう。 タコ糸で肉を巻いたら、強火のフライパンで猪肉に焦げ目をつけます。 その後、圧力鍋に猪肉を入れ、生姜スライス、白ネギ、砂糖、しょうゆ、酒、水を入れ、圧力をかけ、蒸気がでてきたら、強火のまま10分、中火で10分、火を止め余熱で15分ほど煮込みます。 フタをあけ猪肉に竹串を刺してみて、透明な肉汁が出てくればOKです。後はフタをせず、ふたたび火にかけ、時々、猪肉を裏表転がしながら煮詰めていきます。 その4:猪肉のカツ(シシカツ) トンカツならぬ、シシカツです。猪ロース肉を使いますが、あらかじめ筋や大きな脂身を取り除いておきます。また、衣をつける前に、肉をビールやワインに長時間漬け込んでおくと、臭みもばっちり取れます。...
一度は食べてみたい!絶品イノシシ肉ジビエ料理の食べ方やレシピ5選。
猟師にとってはおなじみのイノシシ肉ですが、その食べ方は一般の方にとってはそれほど馴染みがないものかもしれません。一般的な豚肉と比べると個体差が大きいですが、良質なシシ肉はまさに絶品の一言につきます。 この記事では、猪肉をおいしくいただくための料理レシピを紹介します。 まず、猪肉の特徴から 高たんぱく低カロリーであることが大きな特徴です。江戸時代には猪肉は薬とされたほどで、良質のたんぱく質やビタミンが豊富に含まれています。 豚肉における同じ部位で比較すると、ミネラル・タンパク質は猪肉の方が多いです。脂肪やビタミンB1は豚肉の方が多く、猪肉の脂肪は豚肉の半分以下ともいわれます。若い個体のほうが加熱後も肉質が柔らかく肉汁の量が多い傾向があります。 肉の質を左右するのが、と殺時の放血(血抜き)です。 血抜きをいかに丁寧にするかによって、臭みが全く変わってきます(※参考記事:イノシシの解体・捌き方)。さらに、料理で使用する前に、塩水につけてもみこんでおくと臭みが弱まります。 なお、猪肉にはいくつかの別称があります。「獅子に牡丹(取り合わせのよいもののたとえ)」の、「獅子」を「猪」にいい換えたことを語源として「牡丹肉(ぼたんにく)」と呼ばれたり、江戸時代に獣肉を食べることを良しとしない風潮が強かったことを名残として「山鯨(やまくじら)」と呼ばれたりもします。 もちろん、部位によっても、肉質に特徴があります。 ロース:脂肪の乗り、肉質共にバランスの取れた部位。肉の柔らかさに加え脂肪の旨みが濃いのが特徴。 バラ肉:一般的に三枚肉とも呼ばれる部位。もっとも脂肪の比率の多い部位です。脂肪の美味しさを堪能したいのであれば、バラ肉がおすすめです。 モモ肉:白身より赤身比率が多いのが特徴です。赤身の旨みを味わいたいのであれば、この部位がおすすめです。バラ肉と併せて盛付けると、赤白濃淡がはっきりした美しい盛付になります。 絶品イノシシ肉ジビエレシピ5選 うんちくも述べたところで、ここからは絶品イノシシ料理レシピを紹介してまいります。 その1:シシ鍋(牡丹鍋) 猪肉料理として、真っ先に挙げられるのが牡丹鍋。美味であることはもちろん、たっぷりの野菜と猪肉パワーで滋養強壮効果も抜群です。ちなみに、俳人・与謝蕪村が「静々に五徳にすえにけり薬食」と詠んでいますが、ここでいう薬食とは牡丹鍋のことです。 2~3人前でしし肉300gほど、薄切りにしたものを使います。具材としてベーシックなのは、豆腐・にんじん・ごぼう・長ねぎ・しめじ・白菜・もやし・水菜といったところです。薬味としてにんにくや生姜も少々加えます。 水は800cc程度で、味付けはお好みで。味噌味の場合、和風だしの素大さじ1、昆布・酒・みりん・味噌大さじ2、塩小さじ1/4を加えます。 しし肉と固めの野菜(にんじん・ごぼうなど)を煮込み、肉が柔らかくなったら水菜以外を入れ、火が通ったらさらに味噌で味を整えます。その後、ひと煮立ちしたら水菜を入れてさらにひと煮立ちしてから、いただきます。 その2:炭火焼き レシピも何も、猪肉をただ炭火で焼くだけなのですが、とにかく美味しいです。塩コショウで味付けするだけでも十分いけますが、焼いた肉と梅ニンニクを一緒に食べると最高です。イノシシパワーとニンニクパワーの合体技で、猟期の山歩きも元気いっぱいにこなすことができます。 ★元祖梅にんにくの販売ページはこちらから>> その3: 猪肉チャーシュー(焼猪) 猪肉(バラ肉)350gで2~3人前になります。下準備として、猪肉全体をフォークで刺し、味の染み込みと火の通りをよくさせておきます。その後、型崩れを防ぐためにタコ糸で巻きます。お店に売っているようなチャーシューにしたければ、巻きチャーシューに挑戦するのも良いでしょう。 タコ糸で肉を巻いたら、強火のフライパンで猪肉に焦げ目をつけます。 その後、圧力鍋に猪肉を入れ、生姜スライス、白ネギ、砂糖、しょうゆ、酒、水を入れ、圧力をかけ、蒸気がでてきたら、強火のまま10分、中火で10分、火を止め余熱で15分ほど煮込みます。 フタをあけ猪肉に竹串を刺してみて、透明な肉汁が出てくればOKです。後はフタをせず、ふたたび火にかけ、時々、猪肉を裏表転がしながら煮詰めていきます。 その4:猪肉のカツ(シシカツ) トンカツならぬ、シシカツです。猪ロース肉を使いますが、あらかじめ筋や大きな脂身を取り除いておきます。また、衣をつける前に、肉をビールやワインに長時間漬け込んでおくと、臭みもばっちり取れます。...
新・イノシシ対策。
目次 1オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 2イノシシが嫌がる超音波装置 3グレーチング付きU字溝「わたれません」 4まとめ イノシシによる農作物被害は、年間約50億円ほどに達しています。イノシシは繁殖力が高く、統計手法を用いた環境省による野生鳥獣の個体数推定結果によると、イノシシの個体数は30年前のおよそ3倍になっています。 個体数が増えると、その分農作物の被害も増えますが、作物の被害だけでなく農家の営農意欲も奪いとられるため、離農が増える結果となります。そのため、イノシシ対策として多くの自治体で罠の設置などによる捕獲・駆除が積極的に行われています。 最近では捕獲・駆除だけでなく、田畑や家の庭、生ゴミ置き場などにイノシシを寄せ付けないための新しい対策も行われるようになってきています。この記事では、そのうちのいくつかを紹介したいと思います。 オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 イノシシを田畑などに寄せ付けないための対策としては、電気柵などの防護柵を設置することが一般的です。しかしながら、イノシシは学習能力が高く、「この柵は入ることができる」と学習すると、多少の困難はものともせず柵を突破しようとします。 柵はイノシシから田畑を守る最終防衛ラインであるため、突破されると直ちに新たな対策を講じる必要が出てきます。 そこで出てくるのがイノシシを寄せ付けないための威嚇対策ですが、単純な威嚇装置ではイノシシが慣れてしまい効果がなくなってしまいます。 それを踏まえ、北海道奈井江町の太田精器が開発したのがオオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」です。 装置は全長65センチ、高さ50センチ。機器本体にマスクをかぶせ、外観をイノシシの天敵であるオオカミそっくりに作り込んでいます。 50種類以上の多種多様な威嚇音を出すことができ、イノシシが慣れてしまわないよう考慮されています。 また、赤外線センサーで動物の接近を感知すると、目の部分の発光ダイオード(LED)が赤く点滅し、首を左右に振って威嚇します。 太田精器は早くからLED鳥獣忌避装置の開発に取り組んでおり、スーパーモンスターウルフにもそのノウハウが活かされています。 イノシシは警戒心が高いため、普段とは異なるものを感知すると回避行動をとります。そのため、スーパーモンスターウルフを田畑周辺に設置すれば、イノシシが近づかなくなることが期待されます。太田精器ホームページ>> イノシシが嫌がる超音波装置 広島県では、人間の生活圏へのイノシシの侵入が相次いでいます。そのため、市街地にイノシシが近づかないようにする対策を望む声が多くあがっています。 そこで尾道市は、県立広島大学の重点研究事業・地域課題解決研究を活用して、市街地にイノシシを近づけさせない取り組み「イノシシ等有害鳥獣を近づけさせないプロジェクト」を開始しました。 このプロジェクトにより、今月6日に超音波を発する装置が尾道市の住宅地近くに設置されました。 この装置は、県立広島大学と民間の企業が共同開発したもので、人の耳ではとらえることのできない周波数の超音波を広範囲に照射できるというもの。所定エリア内に侵入したイノシシを超音波によって威嚇し、逃避させることを目的としています。 過去の研究によって、イノシシは超音波を嫌うことはないものの、特定の周波数においては忌避反応を示すことが確認されており、これまでにも北広島町や庄原市などの山間部において、実際にこの装置を用いてイノシシを追い払う効果が確認できたとのこと。今回もその有効性が確認できれば、人慣れしたイノシシでも田畑に近づけないようにできることが期待されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」 グレーチングとは、鋼材を格子状に組んだ溝蓋のことです。道路にある排水のためのU字溝や側溝、歩道などに使用されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」は、人や車は問題なく通行可能ですが、イノシシやシカなどにとっては通行しにくくするグレーチング付きU字溝です。「わたれません」には、直径8cm・深さが4cm程度の六角形のグレーチング構造が採用されており、イノシシが侵入しようとしても蹄でバランスが取れず踏ん張りがきかないようになっています。 くくり罠を設置するときにもよく考慮することなのですが(参考記事)、イノシシは足の踏ん張りがきかない箇所があると、踏み抜かずに足を引っ込めます(そのため、くくり罠を設置する場合はグラグラと不安定にならないよう注意を払います)。 また、警戒心も高いので、「わたれません」が設置してある部分は通行せずに引き返すことが期待されます。 https://youtu.be/nqA-kFkD0cM...
新・イノシシ対策。
目次 1オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 2イノシシが嫌がる超音波装置 3グレーチング付きU字溝「わたれません」 4まとめ イノシシによる農作物被害は、年間約50億円ほどに達しています。イノシシは繁殖力が高く、統計手法を用いた環境省による野生鳥獣の個体数推定結果によると、イノシシの個体数は30年前のおよそ3倍になっています。 個体数が増えると、その分農作物の被害も増えますが、作物の被害だけでなく農家の営農意欲も奪いとられるため、離農が増える結果となります。そのため、イノシシ対策として多くの自治体で罠の設置などによる捕獲・駆除が積極的に行われています。 最近では捕獲・駆除だけでなく、田畑や家の庭、生ゴミ置き場などにイノシシを寄せ付けないための新しい対策も行われるようになってきています。この記事では、そのうちのいくつかを紹介したいと思います。 オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 イノシシを田畑などに寄せ付けないための対策としては、電気柵などの防護柵を設置することが一般的です。しかしながら、イノシシは学習能力が高く、「この柵は入ることができる」と学習すると、多少の困難はものともせず柵を突破しようとします。 柵はイノシシから田畑を守る最終防衛ラインであるため、突破されると直ちに新たな対策を講じる必要が出てきます。 そこで出てくるのがイノシシを寄せ付けないための威嚇対策ですが、単純な威嚇装置ではイノシシが慣れてしまい効果がなくなってしまいます。 それを踏まえ、北海道奈井江町の太田精器が開発したのがオオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」です。 装置は全長65センチ、高さ50センチ。機器本体にマスクをかぶせ、外観をイノシシの天敵であるオオカミそっくりに作り込んでいます。 50種類以上の多種多様な威嚇音を出すことができ、イノシシが慣れてしまわないよう考慮されています。 また、赤外線センサーで動物の接近を感知すると、目の部分の発光ダイオード(LED)が赤く点滅し、首を左右に振って威嚇します。 太田精器は早くからLED鳥獣忌避装置の開発に取り組んでおり、スーパーモンスターウルフにもそのノウハウが活かされています。 イノシシは警戒心が高いため、普段とは異なるものを感知すると回避行動をとります。そのため、スーパーモンスターウルフを田畑周辺に設置すれば、イノシシが近づかなくなることが期待されます。太田精器ホームページ>> イノシシが嫌がる超音波装置 広島県では、人間の生活圏へのイノシシの侵入が相次いでいます。そのため、市街地にイノシシが近づかないようにする対策を望む声が多くあがっています。 そこで尾道市は、県立広島大学の重点研究事業・地域課題解決研究を活用して、市街地にイノシシを近づけさせない取り組み「イノシシ等有害鳥獣を近づけさせないプロジェクト」を開始しました。 このプロジェクトにより、今月6日に超音波を発する装置が尾道市の住宅地近くに設置されました。 この装置は、県立広島大学と民間の企業が共同開発したもので、人の耳ではとらえることのできない周波数の超音波を広範囲に照射できるというもの。所定エリア内に侵入したイノシシを超音波によって威嚇し、逃避させることを目的としています。 過去の研究によって、イノシシは超音波を嫌うことはないものの、特定の周波数においては忌避反応を示すことが確認されており、これまでにも北広島町や庄原市などの山間部において、実際にこの装置を用いてイノシシを追い払う効果が確認できたとのこと。今回もその有効性が確認できれば、人慣れしたイノシシでも田畑に近づけないようにできることが期待されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」 グレーチングとは、鋼材を格子状に組んだ溝蓋のことです。道路にある排水のためのU字溝や側溝、歩道などに使用されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」は、人や車は問題なく通行可能ですが、イノシシやシカなどにとっては通行しにくくするグレーチング付きU字溝です。「わたれません」には、直径8cm・深さが4cm程度の六角形のグレーチング構造が採用されており、イノシシが侵入しようとしても蹄でバランスが取れず踏ん張りがきかないようになっています。 くくり罠を設置するときにもよく考慮することなのですが(参考記事)、イノシシは足の踏ん張りがきかない箇所があると、踏み抜かずに足を引っ込めます(そのため、くくり罠を設置する場合はグラグラと不安定にならないよう注意を払います)。 また、警戒心も高いので、「わたれません」が設置してある部分は通行せずに引き返すことが期待されます。 https://youtu.be/nqA-kFkD0cM...