鳥獣被害対策マガジン
足くくり罠によるシカの捕獲
ニホンジカは近年、生息分布が拡大しており、個体数も増加しています。それに伴い、農林産物や森林への食害が深刻化しているため、多くの自治体でシカの個体数を減らして被害を抑える必要があると判断されています。 参考記事:シカによる森林被害の実態 個体数を減らす方法として狩猟圧を高めることが選択されますが、多く採用されるのは箱罠やくくり罠による捕獲です。この記事では、くくり罠によるシカの捕獲について説明します。 くくり罠の種類 現在、色々なメーカーから様々なタイプのくくり罠が販売されています。また、くくり罠による成果は仕掛ける人間の技術や知識に大きく左右されることもあり、個人でカスタマイズした罠を設置する狩猟者も多くいます。 くくり罠の分類 大きな分類として、胴くくりと足くくりの2種類があります。その名の通り、ターゲットの胴を括るものと、足を括るものに区分されますが、シカやイノシシがターゲットの場合、足くくり罠が採用される場合がほとんどです。 胴くくりは、獲物が早ければ30分ほどで欝血死してしまう場合があり、また輪の直径には制限があるので今はほとんど使用されません。 くくり罠の構造 構造として、ほとんどがバネの力によって括る仕様ですが、バネの種類によって構造が異なります。 ・バネが開くことによって締まる方式(松葉式) ・バネが伸びる力によって締まる、押しバネ方式 ・バネが縮む力によって締まる、引きバネ方式 作動方式 筒のなかに踏み込むことによって作動する踏み込み式がほとんどですが、他にも蹴り糸に獣が触れることで作動するものもあります。 さらに、稼働方向によっても分類され、圧縮した押しばねが上(高さ)方向に伸びあがって括り輪が締まる縦引き式と、バネの力が横方向に働いて括り輪が締まる横引き式、踏み板に付属した枠によって括り輪が上に誘導される跳ね上げ式などがあります。 以下の動画は、押しバネ跳ね上げ式です。 罠を仕掛ける前に注意しておきたいこと 以下のようなくくり罠の使用は禁止されていますので、注意しましょう。 ・体を吊り上げてしまうもの ・ワイヤーの直径が4mm 未満のもの ・「より戻し」がないもの ・「締め付け防止金具」がないもの ・直径(楕円形の場合は小さい方)が 12cm を超えて掛けること※知事によって規制は緩和されます。径の制限については各自治体担当課にお問合せください。 ・1人で 31 個以上のわなを掛けること...
足くくり罠によるシカの捕獲
ニホンジカは近年、生息分布が拡大しており、個体数も増加しています。それに伴い、農林産物や森林への食害が深刻化しているため、多くの自治体でシカの個体数を減らして被害を抑える必要があると判断されています。 参考記事:シカによる森林被害の実態 個体数を減らす方法として狩猟圧を高めることが選択されますが、多く採用されるのは箱罠やくくり罠による捕獲です。この記事では、くくり罠によるシカの捕獲について説明します。 くくり罠の種類 現在、色々なメーカーから様々なタイプのくくり罠が販売されています。また、くくり罠による成果は仕掛ける人間の技術や知識に大きく左右されることもあり、個人でカスタマイズした罠を設置する狩猟者も多くいます。 くくり罠の分類 大きな分類として、胴くくりと足くくりの2種類があります。その名の通り、ターゲットの胴を括るものと、足を括るものに区分されますが、シカやイノシシがターゲットの場合、足くくり罠が採用される場合がほとんどです。 胴くくりは、獲物が早ければ30分ほどで欝血死してしまう場合があり、また輪の直径には制限があるので今はほとんど使用されません。 くくり罠の構造 構造として、ほとんどがバネの力によって括る仕様ですが、バネの種類によって構造が異なります。 ・バネが開くことによって締まる方式(松葉式) ・バネが伸びる力によって締まる、押しバネ方式 ・バネが縮む力によって締まる、引きバネ方式 作動方式 筒のなかに踏み込むことによって作動する踏み込み式がほとんどですが、他にも蹴り糸に獣が触れることで作動するものもあります。 さらに、稼働方向によっても分類され、圧縮した押しばねが上(高さ)方向に伸びあがって括り輪が締まる縦引き式と、バネの力が横方向に働いて括り輪が締まる横引き式、踏み板に付属した枠によって括り輪が上に誘導される跳ね上げ式などがあります。 以下の動画は、押しバネ跳ね上げ式です。 罠を仕掛ける前に注意しておきたいこと 以下のようなくくり罠の使用は禁止されていますので、注意しましょう。 ・体を吊り上げてしまうもの ・ワイヤーの直径が4mm 未満のもの ・「より戻し」がないもの ・「締め付け防止金具」がないもの ・直径(楕円形の場合は小さい方)が 12cm を超えて掛けること※知事によって規制は緩和されます。径の制限については各自治体担当課にお問合せください。 ・1人で 31 個以上のわなを掛けること...
すごい大きさのイノシシ事例
猟友会の方に話を聞くと、稀に100キロ超えの大きさのイノシシが捕らえられるそうですが、この記事では特大イノシシの捕獲ニュースを紹介します。 最近の特大イノシシ事例 茨城県の西北部にある町、城里町。人口2万人ほどの町ですが、イノシシによる農作物被害に悩まされていました。 スイカ、カボチャ、トウモロコシなど収穫期の前に畑の土をひっくり返されたりで、本年度の城里町の農作物被害額は過去最悪ペースの約400万円。 被害拡大を防ぐため、狩猟免許を持つ町民31人で構成される城里町有害鳥獣被害対策実施隊が日々奮闘し、猟銃、くくりわなのほか、町が所有する20基の箱罠も使い活動していました。 今年12月4日昼ごろ、箱罠の異変に気付いた近隣住民から実施隊に連絡があり、駆け付けたところ特大のイノシシがかかっていました。 有害鳥獣担当の町職員・興野隆喜さん(52)は、捕えられたイノシシについて「クマかと思った。」とコメントしています。 イノシシは丸々と太った体長約140センチ(尻尾を除く)体重150キロの雄で、推定4~5歳(写真はこちらをクリック)。 11月上旬に一度箱罠に入った形跡が確認されましたが、力ずくで扉をこじ開けたとみられ(箱罠の扉にはロック機構が必須ですね)、足跡を残し脱走。約180キロの重量がある箱罠は当初の位置から3メートルほど移動していたそうです。 有害鳥獣被害対策実施隊の副隊長、狩猟歴40年以上の笹島憲道さん(68)は「これほどのサイズは県内で初めて見た。田畑を相当荒らしたのだろう」と話しています。 また、栃木県の大田原市でも今年12月、体長約170センチ、推定体重150キロの雄のイノシシが捕獲されています。ベテラン猟師も驚く大きさで、栄養状態がかなり良かったことが予想されます(写真はこちらをクリック)。 イノホイの箱罠をお使いのお客様も、150キロのイノシシを捕獲されたお客様がいらっしゃいます(詳細はこちらをクリック)。 イノシシはどれだけ大きくなるのか 日本のイノシシの場合 ニホンイノシシの体の大きさは、雌よりも雄の方が大きく、雄成体では体重50-150kg、頭胴長110-160cmほどです。秋から初冬にかけてのイノシシはとにかく食うので、栄養状態がよければ体がどんどん大きくなります。 知り合いにイノシシを飼っていた人がいるのですが、そのイノシシは食欲に際限がなく、ひたすら食っていました。食って食ってブクブク太り体重100kgを超えましたが、最後は糖尿病で死んでしまいました。1歳半くらいだったと思います。 一方、野生のイノシシの場合、適度に運動もするので、体は大きくても相当元気な個体が多いと思われます。 因みに、日本で過去に確認された最大級のイノシシは、2009年に滋賀県湖南市夏見の山中で、同市三雲の廣田仲雄さん(59)によって捕獲された体長約1.8メートル、体重約240キロの個体です(大きさは分かりにくいですが写真はこちらをクリック)。7、8歳くらいの雄で、普通のイノシシの2~3倍あり、応援を呼んで10人がかりで軽トラックに載せて運んだといいます。 少し遡ると、2003年にも岐阜県美濃加茂市三和町中廿屋の山中で体重220kgの大きな雄イノシシを罠で捕まえたという報告もあります(写真はこちらをクリック)。日本のイノシシは、体重200kgくらいが成長の限界とされ、200キロ超えのイノシシ捕獲は、10年に1、2度しか確認されないほど稀です。 さらに大きいヨーロッパイノシシ ちなみにヨーロッパイノシシはニホンイノシシよりも体が大きく、2015年にロシアで肩高1.7m、体重535kgのイノシシを仕留めたという報告もあります(この記事冒頭の写真です)。 大きな個体をターゲットにする場合、気を付けること イノシシは力が強く、体の大きな個体は、捕えられてもなお相当重量のある箱罠を動かすほどの力があります。特大個体は田畑を荒らす規模も大きいため、一刻も早い対策が望まれますが、その力を想定した猟を行う必要があります。 例えば箱罠の場合、壊れかけまたは強度の弱いものを使うと、深刻な事故につながる恐れがあります。特大個体がターゲットの場合は、お使いの箱罠が獲物の力に耐えられる構造か、状態が万全かをしっかりチェックしておきましょう。
すごい大きさのイノシシ事例
猟友会の方に話を聞くと、稀に100キロ超えの大きさのイノシシが捕らえられるそうですが、この記事では特大イノシシの捕獲ニュースを紹介します。 最近の特大イノシシ事例 茨城県の西北部にある町、城里町。人口2万人ほどの町ですが、イノシシによる農作物被害に悩まされていました。 スイカ、カボチャ、トウモロコシなど収穫期の前に畑の土をひっくり返されたりで、本年度の城里町の農作物被害額は過去最悪ペースの約400万円。 被害拡大を防ぐため、狩猟免許を持つ町民31人で構成される城里町有害鳥獣被害対策実施隊が日々奮闘し、猟銃、くくりわなのほか、町が所有する20基の箱罠も使い活動していました。 今年12月4日昼ごろ、箱罠の異変に気付いた近隣住民から実施隊に連絡があり、駆け付けたところ特大のイノシシがかかっていました。 有害鳥獣担当の町職員・興野隆喜さん(52)は、捕えられたイノシシについて「クマかと思った。」とコメントしています。 イノシシは丸々と太った体長約140センチ(尻尾を除く)体重150キロの雄で、推定4~5歳(写真はこちらをクリック)。 11月上旬に一度箱罠に入った形跡が確認されましたが、力ずくで扉をこじ開けたとみられ(箱罠の扉にはロック機構が必須ですね)、足跡を残し脱走。約180キロの重量がある箱罠は当初の位置から3メートルほど移動していたそうです。 有害鳥獣被害対策実施隊の副隊長、狩猟歴40年以上の笹島憲道さん(68)は「これほどのサイズは県内で初めて見た。田畑を相当荒らしたのだろう」と話しています。 また、栃木県の大田原市でも今年12月、体長約170センチ、推定体重150キロの雄のイノシシが捕獲されています。ベテラン猟師も驚く大きさで、栄養状態がかなり良かったことが予想されます(写真はこちらをクリック)。 イノホイの箱罠をお使いのお客様も、150キロのイノシシを捕獲されたお客様がいらっしゃいます(詳細はこちらをクリック)。 イノシシはどれだけ大きくなるのか 日本のイノシシの場合 ニホンイノシシの体の大きさは、雌よりも雄の方が大きく、雄成体では体重50-150kg、頭胴長110-160cmほどです。秋から初冬にかけてのイノシシはとにかく食うので、栄養状態がよければ体がどんどん大きくなります。 知り合いにイノシシを飼っていた人がいるのですが、そのイノシシは食欲に際限がなく、ひたすら食っていました。食って食ってブクブク太り体重100kgを超えましたが、最後は糖尿病で死んでしまいました。1歳半くらいだったと思います。 一方、野生のイノシシの場合、適度に運動もするので、体は大きくても相当元気な個体が多いと思われます。 因みに、日本で過去に確認された最大級のイノシシは、2009年に滋賀県湖南市夏見の山中で、同市三雲の廣田仲雄さん(59)によって捕獲された体長約1.8メートル、体重約240キロの個体です(大きさは分かりにくいですが写真はこちらをクリック)。7、8歳くらいの雄で、普通のイノシシの2~3倍あり、応援を呼んで10人がかりで軽トラックに載せて運んだといいます。 少し遡ると、2003年にも岐阜県美濃加茂市三和町中廿屋の山中で体重220kgの大きな雄イノシシを罠で捕まえたという報告もあります(写真はこちらをクリック)。日本のイノシシは、体重200kgくらいが成長の限界とされ、200キロ超えのイノシシ捕獲は、10年に1、2度しか確認されないほど稀です。 さらに大きいヨーロッパイノシシ ちなみにヨーロッパイノシシはニホンイノシシよりも体が大きく、2015年にロシアで肩高1.7m、体重535kgのイノシシを仕留めたという報告もあります(この記事冒頭の写真です)。 大きな個体をターゲットにする場合、気を付けること イノシシは力が強く、体の大きな個体は、捕えられてもなお相当重量のある箱罠を動かすほどの力があります。特大個体は田畑を荒らす規模も大きいため、一刻も早い対策が望まれますが、その力を想定した猟を行う必要があります。 例えば箱罠の場合、壊れかけまたは強度の弱いものを使うと、深刻な事故につながる恐れがあります。特大個体がターゲットの場合は、お使いの箱罠が獲物の力に耐えられる構造か、状態が万全かをしっかりチェックしておきましょう。
キョンの捕獲・駆除について
近年、「キョン(羌)」という外来種の動物が激増して大きな問題となっています。問題が起きているのは千葉県房総半島や東京都伊豆大島で、農作物への被害も続出しています。 繁殖力が非常に高く、個体数の増加にともなう農林業被害の拡大が懸念されます。この記事ではキョンの生態から被害状況、対策などについて詳しく解説します。 キョンの生態 キョンは偶蹄目シカ科に分類される動物です。生態系や農林水産業に被害をもたらすおそれがある「特定外来生物」として環境省に指定されています。 体色は背面が茶褐色、腹面が淡褐色で、目の下に大きな臭腺(強いにおいの液を分泌する腺)があります。この部分が目のようにも見えることから四目鹿(ヨツメジカ)とも呼ばれます。 オスとメスの大きな違いとしては、角の有無があります。 オスは角を持ち、その長さは12~15cm程度。また、オスには目の上から角の基部にかけて2本の黒線があり、キバを持ちます。 メスには角がなく、額に目の上から頭頂部にかけて菱形の黒帯があります。体の大きさはニホンジカよりもかなり小さく、中型犬と同じくらい(肩高40cm、体重8kg程度)です。 キョンの生息地 中国南東部や台湾では野生のキョンが普遍的に見られます(中国名は黄麂、山羌)。主に低山の広葉樹林に生息し、明け方や夕暮れ時によく活動します。森林や藪の中を単独で行動することが多く、なわばりを持っていると考えられています。 本来は日本で生息しない種であり、動物園の飼育用として日本に持ち込まれましたが、逃げ出した個体が繁殖し、千葉県の房総半島や伊豆大島で生息するようになりました。現在のところ、国内で定着が確認されているのは房総半島南部と伊豆大島のみです。 キョンの鳴き声 以下の動画でキョンの鳴き声を聞くことができます。強いて鳴き声をカタカナで表現するなら、「ギャー」または「ギエー」といったところでしょうか。この動画のキョンより高い音で「キャー」と鳴くものもいます。犬の鳴き声や、女性の叫び声に似ているともいわれますが、深夜に聞くと怖い印象を受ける人もいるようです。 食べ物や生態 ニホンジカは森林の植生を食べつくすと言われるほど様々な種類の植物を食べますが、キョンはそれよりも好き嫌いが強い傾向にあります。地域によって差はあるものの、好物はカクレミノやアオキといった常緑広葉樹です。 ほかに堅果も多く食べますが、稲や枯葉・樹枝はあまり食べません。キョンによる食害としては、葉物野菜や果樹の新芽を食べられたといった被害が大半を占めます。 問題となっているのはその繁殖力です。繁殖力が高い理由として、性成熟が早いことが挙げられます。キョンのメスは早ければ生後半年前後で妊娠し、生後1年弱で初出産します。出産一回あたりに産まれる数は1子ですが、繁殖期は一年中で出産後すぐに発情できます。 なお、平均年齢は2歳ほどで、4歳以下の個体がほとんどを占めていると言われます。 キョンの天敵は? オオカミが既に絶滅している日本においては、人間以外にキョンの天敵は存在しません。千葉県や伊豆大島にはクマもおらず、食べものが多くある環境ですので爆発的に繁殖し、現在伊豆大島では島民の人口約8000人よりも多い約1万3000頭がいると推定されています。 キョンだけでなく、ニホンジカやイノシシなど野生鳥獣による被害が増える中で、天敵であるオオカミを海外から持ち込み、生態系を修復するべきだという意見もあります。しかしながら、導入後の影響(例えば、人や家畜への被害の有無など)が予想できないことから、現在導入には至っていません。 千葉県における被害状況 もともと千葉県勝浦市にあった観光施設「行川アイランド」で飼育されていた個体が逃げ出し、野生化した結果、被害が生じるようになったとされています。 現在は、鴨川市、勝浦市、市原市、君津市、富津市、いすみ市、大多喜町、御宿町及び鋸南町の9市町に分布し、分布域は拡大傾向と言われています。 このうち最も生息数が多いのは、いすみ市です。 農作物被害がキョンによるものなのかを正確に判断することは困難です。また、認知度も高くないため、キョンによる被害として報告されていないケースも多いと考えられます。 そのためキョンによる正確な被害金額は把握しにくいですが、2016年度のキョンによる農業被害額は132万円(被害面積1.1ヘクタール)とされています。これは統計を取り始めた2004年度以来最高の値で、被害品目は野菜類、イネ、ダイズ、イチゴなどの食害が大半を占めます。 他にも、家庭菜園が荒らされたり、深夜の鳴き声、路上のフンや生け垣をかじられるといった被害も報告されています。 伊豆大島における被害状況 もともと大島では、キョンは島内にある都立大島公園で飼われていましたが、1970年秋の台風によって柵が壊れ、逃げ出したものが野生化しました。...
キョンの捕獲・駆除について
近年、「キョン(羌)」という外来種の動物が激増して大きな問題となっています。問題が起きているのは千葉県房総半島や東京都伊豆大島で、農作物への被害も続出しています。 繁殖力が非常に高く、個体数の増加にともなう農林業被害の拡大が懸念されます。この記事ではキョンの生態から被害状況、対策などについて詳しく解説します。 キョンの生態 キョンは偶蹄目シカ科に分類される動物です。生態系や農林水産業に被害をもたらすおそれがある「特定外来生物」として環境省に指定されています。 体色は背面が茶褐色、腹面が淡褐色で、目の下に大きな臭腺(強いにおいの液を分泌する腺)があります。この部分が目のようにも見えることから四目鹿(ヨツメジカ)とも呼ばれます。 オスとメスの大きな違いとしては、角の有無があります。 オスは角を持ち、その長さは12~15cm程度。また、オスには目の上から角の基部にかけて2本の黒線があり、キバを持ちます。 メスには角がなく、額に目の上から頭頂部にかけて菱形の黒帯があります。体の大きさはニホンジカよりもかなり小さく、中型犬と同じくらい(肩高40cm、体重8kg程度)です。 キョンの生息地 中国南東部や台湾では野生のキョンが普遍的に見られます(中国名は黄麂、山羌)。主に低山の広葉樹林に生息し、明け方や夕暮れ時によく活動します。森林や藪の中を単独で行動することが多く、なわばりを持っていると考えられています。 本来は日本で生息しない種であり、動物園の飼育用として日本に持ち込まれましたが、逃げ出した個体が繁殖し、千葉県の房総半島や伊豆大島で生息するようになりました。現在のところ、国内で定着が確認されているのは房総半島南部と伊豆大島のみです。 キョンの鳴き声 以下の動画でキョンの鳴き声を聞くことができます。強いて鳴き声をカタカナで表現するなら、「ギャー」または「ギエー」といったところでしょうか。この動画のキョンより高い音で「キャー」と鳴くものもいます。犬の鳴き声や、女性の叫び声に似ているともいわれますが、深夜に聞くと怖い印象を受ける人もいるようです。 食べ物や生態 ニホンジカは森林の植生を食べつくすと言われるほど様々な種類の植物を食べますが、キョンはそれよりも好き嫌いが強い傾向にあります。地域によって差はあるものの、好物はカクレミノやアオキといった常緑広葉樹です。 ほかに堅果も多く食べますが、稲や枯葉・樹枝はあまり食べません。キョンによる食害としては、葉物野菜や果樹の新芽を食べられたといった被害が大半を占めます。 問題となっているのはその繁殖力です。繁殖力が高い理由として、性成熟が早いことが挙げられます。キョンのメスは早ければ生後半年前後で妊娠し、生後1年弱で初出産します。出産一回あたりに産まれる数は1子ですが、繁殖期は一年中で出産後すぐに発情できます。 なお、平均年齢は2歳ほどで、4歳以下の個体がほとんどを占めていると言われます。 キョンの天敵は? オオカミが既に絶滅している日本においては、人間以外にキョンの天敵は存在しません。千葉県や伊豆大島にはクマもおらず、食べものが多くある環境ですので爆発的に繁殖し、現在伊豆大島では島民の人口約8000人よりも多い約1万3000頭がいると推定されています。 キョンだけでなく、ニホンジカやイノシシなど野生鳥獣による被害が増える中で、天敵であるオオカミを海外から持ち込み、生態系を修復するべきだという意見もあります。しかしながら、導入後の影響(例えば、人や家畜への被害の有無など)が予想できないことから、現在導入には至っていません。 千葉県における被害状況 もともと千葉県勝浦市にあった観光施設「行川アイランド」で飼育されていた個体が逃げ出し、野生化した結果、被害が生じるようになったとされています。 現在は、鴨川市、勝浦市、市原市、君津市、富津市、いすみ市、大多喜町、御宿町及び鋸南町の9市町に分布し、分布域は拡大傾向と言われています。 このうち最も生息数が多いのは、いすみ市です。 農作物被害がキョンによるものなのかを正確に判断することは困難です。また、認知度も高くないため、キョンによる被害として報告されていないケースも多いと考えられます。 そのためキョンによる正確な被害金額は把握しにくいですが、2016年度のキョンによる農業被害額は132万円(被害面積1.1ヘクタール)とされています。これは統計を取り始めた2004年度以来最高の値で、被害品目は野菜類、イネ、ダイズ、イチゴなどの食害が大半を占めます。 他にも、家庭菜園が荒らされたり、深夜の鳴き声、路上のフンや生け垣をかじられるといった被害も報告されています。 伊豆大島における被害状況 もともと大島では、キョンは島内にある都立大島公園で飼われていましたが、1970年秋の台風によって柵が壊れ、逃げ出したものが野生化しました。...
イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】
目次 1何から始める?市街地のイノシシ対策 1イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 2普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 3人身被害が発生する可能性が高く、緊急対処が必要な場合 猪(イノシシ)は数を減らしていると思っている人も多いですが、そうではありません。 2013年度末のデータでは、イノシシはおよそ98万頭いると推定され、平成元年の個体数の3倍以上となっています。その被害は深刻化・広域化しており、市街地でも「庭を荒らす」「生ゴミをあさる」「イノシシに買い物袋を奪われる」などといった被害が報告されるようになっています。 またイノシシに襲われることによる人身被害の危険もあります。イノシシは、本来神経質で臆病な性質ですが、非常に突進力が強く大人でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険があります。自宅庭先で人が襲われて死亡するという事故まで発生しています(クリックすると朝日新聞記事にジャンプします)。 そのため、市街地でイノシシの目撃情報があれば、行政と住民が協力した対策が必要になりますが、やり方を誤ると重篤な人身事故が起こる可能性もあります。 安全を確保しつつ成果をあげるためには、どのような対処・対策を実施すればよいのでしょうか? 何から始める?市街地のイノシシ対策 市街地における対策は、人身被害の起こるリスクに応じて内容が変わります。ケース別に対処・対策の内容とコツを挙げていきます。 1. イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 住宅地から離れた山中や農地にて、単発的に目撃情報があるような状況です。 人間に対するイノシシの警戒心は比較的高い状態ですので、めったに人前には姿を現さないでしょう。 まずは耕作放棄地などの荒れ地をメンテナンスすること、必要に応じて農地への侵入防止を行うこと、イノシシを捕獲するのに適した場所があれば、「箱罠」等を用いて捕獲するといった対策が必要になります。 別記事で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。 2. 普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 イノシシが人の生活圏にあるものを餌と認識し、出没している状態です。 この場合、住宅地や集落に近い農地の中でも同一エリアでイノシシの目撃情報が多発します。このような状況に至るまでには、地域住民の餌付け行為、もしくは無意識にイノシシに餌を与える行為(例:生ごみを放置する)が必ずあります。 特に意図的にイノシシに餌を与えている場合、イノシシは人を恐れず大胆になります。その結果、イノシシが人を襲うようになり人身事故が発生することになります。 イノシシに買い物袋を奪われる、体当たりされる、噛まれる、庭を掘り返される、ごみステーションが荒らされる、といったことが報告されるまでになると、人に積極的に近づいてくる状態ですので非常に重篤な状態です。 まずやるべきことは、その地域に住む住民の理解を得ることです。 住民への啓蒙活動 とにかく餌を与えてはいけない(あるいは餌となるものを放置しない)ことを、住民が理解・徹底することが重要です。ゴミ出しルールを厳格に遵守することも必要です。 なお地域住民の中には、動物愛護の考え方(飢えた動物に餌をあげることが愛護に通じるという考え方)をもっている人もいます。 このような人は、餌付けをしないようにすることや、対策・駆除行為をすることに抵抗を感じます。こうした考え方をもつ人に対しては、正しい情報を理解してもらう必要があります。 イノシシが人を恐れなくなると人を襲うようになり、重篤な事件につながる恐れがあること、その結果駆除しなければならない数が増えてしまうことをチラシや説明を通じてきちんと理解してもらいましょう。...
イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】
目次 1何から始める?市街地のイノシシ対策 1イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 2普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 3人身被害が発生する可能性が高く、緊急対処が必要な場合 猪(イノシシ)は数を減らしていると思っている人も多いですが、そうではありません。 2013年度末のデータでは、イノシシはおよそ98万頭いると推定され、平成元年の個体数の3倍以上となっています。その被害は深刻化・広域化しており、市街地でも「庭を荒らす」「生ゴミをあさる」「イノシシに買い物袋を奪われる」などといった被害が報告されるようになっています。 またイノシシに襲われることによる人身被害の危険もあります。イノシシは、本来神経質で臆病な性質ですが、非常に突進力が強く大人でも跳ね飛ばされて大けがを負う危険があります。自宅庭先で人が襲われて死亡するという事故まで発生しています(クリックすると朝日新聞記事にジャンプします)。 そのため、市街地でイノシシの目撃情報があれば、行政と住民が協力した対策が必要になりますが、やり方を誤ると重篤な人身事故が起こる可能性もあります。 安全を確保しつつ成果をあげるためには、どのような対処・対策を実施すればよいのでしょうか? 何から始める?市街地のイノシシ対策 市街地における対策は、人身被害の起こるリスクに応じて内容が変わります。ケース別に対処・対策の内容とコツを挙げていきます。 1. イノシシの目撃情報はあるが、普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性が低い場合 住宅地から離れた山中や農地にて、単発的に目撃情報があるような状況です。 人間に対するイノシシの警戒心は比較的高い状態ですので、めったに人前には姿を現さないでしょう。 まずは耕作放棄地などの荒れ地をメンテナンスすること、必要に応じて農地への侵入防止を行うこと、イノシシを捕獲するのに適した場所があれば、「箱罠」等を用いて捕獲するといった対策が必要になります。 別記事で詳しく説明していますので、そちらを参照ください。 2. 普段の生活で遭遇したり人身被害が発生する可能性がある場合 イノシシが人の生活圏にあるものを餌と認識し、出没している状態です。 この場合、住宅地や集落に近い農地の中でも同一エリアでイノシシの目撃情報が多発します。このような状況に至るまでには、地域住民の餌付け行為、もしくは無意識にイノシシに餌を与える行為(例:生ごみを放置する)が必ずあります。 特に意図的にイノシシに餌を与えている場合、イノシシは人を恐れず大胆になります。その結果、イノシシが人を襲うようになり人身事故が発生することになります。 イノシシに買い物袋を奪われる、体当たりされる、噛まれる、庭を掘り返される、ごみステーションが荒らされる、といったことが報告されるまでになると、人に積極的に近づいてくる状態ですので非常に重篤な状態です。 まずやるべきことは、その地域に住む住民の理解を得ることです。 住民への啓蒙活動 とにかく餌を与えてはいけない(あるいは餌となるものを放置しない)ことを、住民が理解・徹底することが重要です。ゴミ出しルールを厳格に遵守することも必要です。 なお地域住民の中には、動物愛護の考え方(飢えた動物に餌をあげることが愛護に通じるという考え方)をもっている人もいます。 このような人は、餌付けをしないようにすることや、対策・駆除行為をすることに抵抗を感じます。こうした考え方をもつ人に対しては、正しい情報を理解してもらう必要があります。 イノシシが人を恐れなくなると人を襲うようになり、重篤な事件につながる恐れがあること、その結果駆除しなければならない数が増えてしまうことをチラシや説明を通じてきちんと理解してもらいましょう。...