鳥獣被害対策マガジン
イノシシ被害について
イノシシによる被害は里山に住む人にとって身近な問題です。中でも農業を営む方にとっては、作物を育て食し、売っていかなくてはならない中で、そこにイノシシ被害を受けてしまうことは大きな打撃になります。 高齢化や過疎化の影響もあり農家の経営はただでさえ苦しいですが、田畑が荒らされることが追い打ちとなり、営農意欲まで奪い取られてしまいます。 農林水産省の発表によると、イノシシによる農林水産被害額は平成30年度で約47億円となっており、農業を営む人にとっては死活問題となる深刻な事態です。 イノシシ被害の例 全国の野生鳥獣による農作物被害額は平成30年度で158億円となっています。被害を与える鳥獣はある程度限定されており、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。 このうち、イノシシによる被害は全体の約3割に達しています。 ※公表等されている被害は限定的で、正確な情報が把握されていなかったり、被害が少ない・程度が軽い場合もあるため、未公表の被害も多々あると思われます。 農作物に係る被害 イノシシによって人間が被害を被る中で、もっとも深刻なのは農作物が荒らされるケースです。中でもイネの被害金額は非常に高く、全国で24億円に達しています。 イノシシは雑食であるため、被害作物は多岐にわたります。また、栄養価が高く比較的消化しやすい部位を好むため、季節ごとに状況の良い作物を選んで集中して食害する傾向があります。イネの他にも、果樹や野菜、いも類の被害が顕著となっています。 食害だけでなく、田畑を掘り返されたり踏み荒らされたりして駄目にされる被害もあります。 被害の面積でみると、イネで3600ヘクタール、果樹で1000ヘクタールに達しています。因みに、1000ヘクタール(ha)は、東京ドーム約213個分の広さです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシの生態・行動を詳しく解説 人身被害 イノシシは身体能力が高く、襲われて人身被害を受けるケースもあります。市街地でも多く発生していますが、こう言った場所では罠を使った捕獲が難しかったり、銃器の使用ができなかったりするため、簡単に解決できないケースも散見されます。 環境省は平成28年から人身被害件数を集計していますが、それによると被害件数は毎年50件前後、被害人数は50~70人前後を推移しています(狩猟や捕獲作業にともなう人身被害は除いた数値です)。被害が多い地域は、兵庫県、香川県、栃木県です。 こういった被害が起こる背景として、市街地にイノシシが出没するようになり、ゴミや餌付けなどによってイノシシが人慣れしてしまったことが考えられます。 また、市街地でのイノシシ被害の場合、住民が自身ごととしてとらえる意識は低く、自分たちで対策等を行うのではなく行政へ対応を求める場合が多く、地域ぐるみでの対策が困難となりがちです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】 生活環境被害 人身被害以外にも、交通事故やゴミ集積場を荒らす、家屋侵入等といった生活環境被害を受けるケースもあります。 これも、餌付けやゴミの放置をおこなった結果、人慣れしたイノシシが人間の生活圏内で被害を起こすようになった背景があります。 こういった状況をふまえ、人身被害や生活環境被害が多く発生している神戸市では、2014年に東灘区・中央区で相次いで発生したイノシシによる人身事故を受けて、神戸市では餌付け行為を指導・禁止する取り組みを強化するため、公表の規定等を追加する条例の改正を行いました。 イノシシ条例(神戸市いのししからの危害の防止に関する条例) 庭やクリーンステーションを荒らされるといった生活環境への被害や、人が噛み付かれたり、イノシシが原因で交通事故が起こるなど、イノシシ問題は、地域の住民の方にとって重大な問題となり、2002年5月1日から施行されました。 しかし、一部の住民が餌付けをやめなかったことから、市街地でのイノシシ出没が止まらず、イノシシへの餌付け等を禁止する「規制区域」の指定や、悪質な条例違反者に対する措置を盛り込んだ条例改正が行われました。 条例の内容は以下の通りとなります。 1.市はイノシシによる被害の防止のため、積極的に啓発活動を行います。 2.市は住民の方の意見を聴いて、規制区域を定めます。 3.規制区域では、...
イノシシ被害について
イノシシによる被害は里山に住む人にとって身近な問題です。中でも農業を営む方にとっては、作物を育て食し、売っていかなくてはならない中で、そこにイノシシ被害を受けてしまうことは大きな打撃になります。 高齢化や過疎化の影響もあり農家の経営はただでさえ苦しいですが、田畑が荒らされることが追い打ちとなり、営農意欲まで奪い取られてしまいます。 農林水産省の発表によると、イノシシによる農林水産被害額は平成30年度で約47億円となっており、農業を営む人にとっては死活問題となる深刻な事態です。 イノシシ被害の例 全国の野生鳥獣による農作物被害額は平成30年度で158億円となっています。被害を与える鳥獣はある程度限定されており、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。 このうち、イノシシによる被害は全体の約3割に達しています。 ※公表等されている被害は限定的で、正確な情報が把握されていなかったり、被害が少ない・程度が軽い場合もあるため、未公表の被害も多々あると思われます。 農作物に係る被害 イノシシによって人間が被害を被る中で、もっとも深刻なのは農作物が荒らされるケースです。中でもイネの被害金額は非常に高く、全国で24億円に達しています。 イノシシは雑食であるため、被害作物は多岐にわたります。また、栄養価が高く比較的消化しやすい部位を好むため、季節ごとに状況の良い作物を選んで集中して食害する傾向があります。イネの他にも、果樹や野菜、いも類の被害が顕著となっています。 食害だけでなく、田畑を掘り返されたり踏み荒らされたりして駄目にされる被害もあります。 被害の面積でみると、イネで3600ヘクタール、果樹で1000ヘクタールに達しています。因みに、1000ヘクタール(ha)は、東京ドーム約213個分の広さです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシの生態・行動を詳しく解説 人身被害 イノシシは身体能力が高く、襲われて人身被害を受けるケースもあります。市街地でも多く発生していますが、こう言った場所では罠を使った捕獲が難しかったり、銃器の使用ができなかったりするため、簡単に解決できないケースも散見されます。 環境省は平成28年から人身被害件数を集計していますが、それによると被害件数は毎年50件前後、被害人数は50~70人前後を推移しています(狩猟や捕獲作業にともなう人身被害は除いた数値です)。被害が多い地域は、兵庫県、香川県、栃木県です。 こういった被害が起こる背景として、市街地にイノシシが出没するようになり、ゴミや餌付けなどによってイノシシが人慣れしてしまったことが考えられます。 また、市街地でのイノシシ被害の場合、住民が自身ごととしてとらえる意識は低く、自分たちで対策等を行うのではなく行政へ対応を求める場合が多く、地域ぐるみでの対策が困難となりがちです。 こちらの記事もどうぞ:イノシシ対策~何をすればよいのか?【市街地編】 生活環境被害 人身被害以外にも、交通事故やゴミ集積場を荒らす、家屋侵入等といった生活環境被害を受けるケースもあります。 これも、餌付けやゴミの放置をおこなった結果、人慣れしたイノシシが人間の生活圏内で被害を起こすようになった背景があります。 こういった状況をふまえ、人身被害や生活環境被害が多く発生している神戸市では、2014年に東灘区・中央区で相次いで発生したイノシシによる人身事故を受けて、神戸市では餌付け行為を指導・禁止する取り組みを強化するため、公表の規定等を追加する条例の改正を行いました。 イノシシ条例(神戸市いのししからの危害の防止に関する条例) 庭やクリーンステーションを荒らされるといった生活環境への被害や、人が噛み付かれたり、イノシシが原因で交通事故が起こるなど、イノシシ問題は、地域の住民の方にとって重大な問題となり、2002年5月1日から施行されました。 しかし、一部の住民が餌付けをやめなかったことから、市街地でのイノシシ出没が止まらず、イノシシへの餌付け等を禁止する「規制区域」の指定や、悪質な条例違反者に対する措置を盛り込んだ条例改正が行われました。 条例の内容は以下の通りとなります。 1.市はイノシシによる被害の防止のため、積極的に啓発活動を行います。 2.市は住民の方の意見を聴いて、規制区域を定めます。 3.規制区域では、...
クマの生態と被害防止対策
山に入る場合、危険な野生動物にはできる限り遭遇したくないもの。 中でも熊は襲われた場合に命にも関わります。毎日のように熊による被害が発生している中で、人身被害を未然に防止するためにも、できるかぎり対策しておくのが望ましいでしょう。 特に今秋は、ツキノワグマのエサになるブナなどの木の実の不作が予測される地域もあり、クマが人里に出没する可能性が例年よりも高くなるため、十分な注意が必要です。 日本にいる熊の種類 日本には2種類のクマがすんでいます。ひとつめは、「ヒグマ」、ふたつめは「ツキノワグマ」です。 どちらも鋭利なツメと大きな歯を持っていて、非常に力が強く、時速40~50キロメートルで走ることもできます。 日本の国土のおよそ4割にクマが生息しており、生息地のほとんどは森林です。 しかしながら、森林の木の実が不作の年は食物を求めて人里近くに近づくことがあります。テレビのキャラクターでは愛くるしく描かれていたりしますが、実際は人身被害の報告も多く、危険な動物であると認識しておくべきでしょう。 直近のニュースでも、数件の人身被害が発生しています。 ▶男性2人がクマ2頭に襲われけが/岩手・釜石市 ▶男性がクマにかまれる/栃木県・鹿沼市 ▶クマに襲われた男性「死ぬかと」/青森県・弘前市 ▶クマに襲われ福井県内で人身被害2件目/福井県小浜市 ヒグマ 日本国内では北海道の約半分の地域のみに生息しています。国内の生息数は、2,000~3,000頭といわれていて、とくに観光地として有名な北海道の知床半島は生息密度が高いことで知られています。 体長:220cm~230cm、体重:150kg~250kgの大型哺乳類です。 植物を主食とした雑食性で、季節の変化によっても食べるものを変えています。春から初夏にかけてはフキ(アキタブキ/オオブキ)を一番多く食べ、その他にもウドやイラクサ、ミズバショウなどの植物の若葉を食べます。 柔らかく消化しやすい植物が減る夏になると、植物性の食物不足を補うために、アリやハチなどの昆虫を食べます。また夏から秋にかけては、サルナシ、ヤマブドウ、マタタビなどのツル性の植物の果実、そしてミズナラのドングリ(渡島半島ではブナの実)を食べます。 ツキノワグマ 本州と四国(33都道府県)の山地を生息地としています。推定個体数は8,400~1万2,600頭。昔は九州にもツキノワグマが生息していましたが、50年ほど前から生息は確認されていません。 体長:110cm~150cm、体重:80~120kgの大型哺乳類です。 落葉広葉樹林のあるところを主な生息地としており、食物の9割以上は植物です。春には、芽吹いたブナの葉やさまざまな植物を食べます。 また夏はアリやハチなどの昆虫を多く食べます。秋になると、ブナ・コナラ・ミズナラなどの実をたくさん食べるようになります。 予期せぬ熊との遭遇を避けるには? ポイント①:熊を人里に近づかせないこと 人里に熊が気軽に近づかないよう、地域で協力して熊が利用しにくい環境を作ること、熊の好物を取り除くこと、餌付けをしない・ゴミを放置しないことを徹底しましょう。 特に餌付けやゴミについては、人間のことをエサの供給源であると熊が考えてしまいます。熊の生息地の近くでエサとなる家庭ゴミを捨てるなど、人のちょっとした不注意、不適切な行動が熊をおびきよせ、人身被害の発生など思わぬ結果をもたらすことになります。 ポイント②:熊に自分の存在を知らせる 個体によって差はあるものの、基本的に熊のほうが人間を避けます。そのため、鈴を着用することで人間がそこに居るという合図を熊に送る事が重要になります。着用した鈴本体が大きく振れるように取り付けると、効果が高まります(例えば、長めのキーホルダーに鈴を着用するなど)。 ★イノホイおすすめの熊鈴...
クマの生態と被害防止対策
山に入る場合、危険な野生動物にはできる限り遭遇したくないもの。 中でも熊は襲われた場合に命にも関わります。毎日のように熊による被害が発生している中で、人身被害を未然に防止するためにも、できるかぎり対策しておくのが望ましいでしょう。 特に今秋は、ツキノワグマのエサになるブナなどの木の実の不作が予測される地域もあり、クマが人里に出没する可能性が例年よりも高くなるため、十分な注意が必要です。 日本にいる熊の種類 日本には2種類のクマがすんでいます。ひとつめは、「ヒグマ」、ふたつめは「ツキノワグマ」です。 どちらも鋭利なツメと大きな歯を持っていて、非常に力が強く、時速40~50キロメートルで走ることもできます。 日本の国土のおよそ4割にクマが生息しており、生息地のほとんどは森林です。 しかしながら、森林の木の実が不作の年は食物を求めて人里近くに近づくことがあります。テレビのキャラクターでは愛くるしく描かれていたりしますが、実際は人身被害の報告も多く、危険な動物であると認識しておくべきでしょう。 直近のニュースでも、数件の人身被害が発生しています。 ▶男性2人がクマ2頭に襲われけが/岩手・釜石市 ▶男性がクマにかまれる/栃木県・鹿沼市 ▶クマに襲われた男性「死ぬかと」/青森県・弘前市 ▶クマに襲われ福井県内で人身被害2件目/福井県小浜市 ヒグマ 日本国内では北海道の約半分の地域のみに生息しています。国内の生息数は、2,000~3,000頭といわれていて、とくに観光地として有名な北海道の知床半島は生息密度が高いことで知られています。 体長:220cm~230cm、体重:150kg~250kgの大型哺乳類です。 植物を主食とした雑食性で、季節の変化によっても食べるものを変えています。春から初夏にかけてはフキ(アキタブキ/オオブキ)を一番多く食べ、その他にもウドやイラクサ、ミズバショウなどの植物の若葉を食べます。 柔らかく消化しやすい植物が減る夏になると、植物性の食物不足を補うために、アリやハチなどの昆虫を食べます。また夏から秋にかけては、サルナシ、ヤマブドウ、マタタビなどのツル性の植物の果実、そしてミズナラのドングリ(渡島半島ではブナの実)を食べます。 ツキノワグマ 本州と四国(33都道府県)の山地を生息地としています。推定個体数は8,400~1万2,600頭。昔は九州にもツキノワグマが生息していましたが、50年ほど前から生息は確認されていません。 体長:110cm~150cm、体重:80~120kgの大型哺乳類です。 落葉広葉樹林のあるところを主な生息地としており、食物の9割以上は植物です。春には、芽吹いたブナの葉やさまざまな植物を食べます。 また夏はアリやハチなどの昆虫を多く食べます。秋になると、ブナ・コナラ・ミズナラなどの実をたくさん食べるようになります。 予期せぬ熊との遭遇を避けるには? ポイント①:熊を人里に近づかせないこと 人里に熊が気軽に近づかないよう、地域で協力して熊が利用しにくい環境を作ること、熊の好物を取り除くこと、餌付けをしない・ゴミを放置しないことを徹底しましょう。 特に餌付けやゴミについては、人間のことをエサの供給源であると熊が考えてしまいます。熊の生息地の近くでエサとなる家庭ゴミを捨てるなど、人のちょっとした不注意、不適切な行動が熊をおびきよせ、人身被害の発生など思わぬ結果をもたらすことになります。 ポイント②:熊に自分の存在を知らせる 個体によって差はあるものの、基本的に熊のほうが人間を避けます。そのため、鈴を着用することで人間がそこに居るという合図を熊に送る事が重要になります。着用した鈴本体が大きく振れるように取り付けると、効果が高まります(例えば、長めのキーホルダーに鈴を着用するなど)。 ★イノホイおすすめの熊鈴...
本当は怖い。鳩の糞害について
目次 1安全と思うところに糞をする生態 2糞を放っておくと起こるかもしれない健康被害 1クリプトコッカス症 2オウム病 3アレルギー 3金属の腐食も起こします 4早期発見・早期対策を 多くの人にとって特に珍しいものでもない鳩の糞ですが、身近な場所に巣をつくられると相当に悩まされます。 ガレージに巣を作られて車を糞まみれにされたり、新築の家のソーラーパネルに巣をつくられて屋根がひどいことになったり、ベランダに巣を作られて悪臭がひどくなったり。一般家庭から工場、役場、学校などでも幅広く被害が発生しています。 安全と思うところに糞をする生態 鳩は毎日体重の10分の1ほどの餌を食べるので、他の鳥にくらべて糞が非常に多くなります。安全だと思ったところに糞をする性質があり、糞があるところに居座ろうとします。 居座ろうとする鳩の執着心は、段階的に強くなります。 ①最初のうちは羽休めの休憩所に使っている場所。視界が良好となる明るい時間にやってきて、すぐいなくなる。たまに糞が落ちていたり、鳴き声が聞こえる程度。 ②その場所が気に入ってきたので、徐々に多くの時間を過ごすようになる。このタイミングで一定の場所に多くの糞を見かけるようになる。 ③安全な場所と認識したので、ねぐらにして住み着きだす。鳴き声がうるさく、糞も大量になるため、人間が被る被害も重篤になっていく。 ④繁殖する場所として、巣をつくる。 一般家庭で鳩による被害を認識しだすのは、②~③の段階ですが、居つかれないためにはなるべく早い段階のうちに糞の掃除をこまめにしておく必要があります。 ③の場所は、ベランダや室外機の後ろ、ソーラーパネルと屋根のあいだの隙間だったり、入り組んだ複雑な場所です。こういった場所の掃除は、高所作業で危険がともなったり、スペース的に作業が大変だったりします。 外敵であるカラスや猫から身を守るため、人間からするとあえてこんな場所を選ばなくても・・・と思うような場所が鳩のお気に入りとなるわけです。鳩の執着心も強くなっているので、掃除だけでなく飛来や侵入を防ぐ対策が必要になってきます。 ④になると鳩は帰巣本能と縄張り意識が強いため、なかなか動こうとしません。糞も大量となりますが鳴き声による騒音被害も大きくなります。また、そこで繁殖も行うため、放っておくと被害はどんどん増えていきます。 糞を放っておくと起こるかもしれない健康被害 大量の鳩の糞を放置しておくと、乾燥した糞が空気中に舞い上がりやすくなります。舞い上がった鳩糞の粒子は人間の体にも入ります。こうなると、健康被害が起こる場合があります。 クリプトコッカス症 吸入したクリプトコッカス真菌(カビ)が肺の中で増殖して起こります。症状が出ない人もいますが、せきや胸痛がみられる場合や、髄膜炎を引き起こす重篤な場合もあります。免疫が正常な人の場合に重症化することは稀ですが、免疫機能が低下している人は感染しやすくなります。 特に、HIV/AIDSを代表とした細胞性免疫不全の患者にとっては、一般的に死に至る可能性がある真菌感染症です。 オウム病 オウム病クラミジアを含んだ糞を吸入することによって起こります。悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛などがみられ、咳や痰などがみられます。軽い場合は風邪程度の症状ですが、高齢者などでは重症になりやすくなります。 重症になると、呼吸困難、意識障害などがみられ、診断が遅れると死亡する場合もあります。 アレルギー...
本当は怖い。鳩の糞害について
目次 1安全と思うところに糞をする生態 2糞を放っておくと起こるかもしれない健康被害 1クリプトコッカス症 2オウム病 3アレルギー 3金属の腐食も起こします 4早期発見・早期対策を 多くの人にとって特に珍しいものでもない鳩の糞ですが、身近な場所に巣をつくられると相当に悩まされます。 ガレージに巣を作られて車を糞まみれにされたり、新築の家のソーラーパネルに巣をつくられて屋根がひどいことになったり、ベランダに巣を作られて悪臭がひどくなったり。一般家庭から工場、役場、学校などでも幅広く被害が発生しています。 安全と思うところに糞をする生態 鳩は毎日体重の10分の1ほどの餌を食べるので、他の鳥にくらべて糞が非常に多くなります。安全だと思ったところに糞をする性質があり、糞があるところに居座ろうとします。 居座ろうとする鳩の執着心は、段階的に強くなります。 ①最初のうちは羽休めの休憩所に使っている場所。視界が良好となる明るい時間にやってきて、すぐいなくなる。たまに糞が落ちていたり、鳴き声が聞こえる程度。 ②その場所が気に入ってきたので、徐々に多くの時間を過ごすようになる。このタイミングで一定の場所に多くの糞を見かけるようになる。 ③安全な場所と認識したので、ねぐらにして住み着きだす。鳴き声がうるさく、糞も大量になるため、人間が被る被害も重篤になっていく。 ④繁殖する場所として、巣をつくる。 一般家庭で鳩による被害を認識しだすのは、②~③の段階ですが、居つかれないためにはなるべく早い段階のうちに糞の掃除をこまめにしておく必要があります。 ③の場所は、ベランダや室外機の後ろ、ソーラーパネルと屋根のあいだの隙間だったり、入り組んだ複雑な場所です。こういった場所の掃除は、高所作業で危険がともなったり、スペース的に作業が大変だったりします。 外敵であるカラスや猫から身を守るため、人間からするとあえてこんな場所を選ばなくても・・・と思うような場所が鳩のお気に入りとなるわけです。鳩の執着心も強くなっているので、掃除だけでなく飛来や侵入を防ぐ対策が必要になってきます。 ④になると鳩は帰巣本能と縄張り意識が強いため、なかなか動こうとしません。糞も大量となりますが鳴き声による騒音被害も大きくなります。また、そこで繁殖も行うため、放っておくと被害はどんどん増えていきます。 糞を放っておくと起こるかもしれない健康被害 大量の鳩の糞を放置しておくと、乾燥した糞が空気中に舞い上がりやすくなります。舞い上がった鳩糞の粒子は人間の体にも入ります。こうなると、健康被害が起こる場合があります。 クリプトコッカス症 吸入したクリプトコッカス真菌(カビ)が肺の中で増殖して起こります。症状が出ない人もいますが、せきや胸痛がみられる場合や、髄膜炎を引き起こす重篤な場合もあります。免疫が正常な人の場合に重症化することは稀ですが、免疫機能が低下している人は感染しやすくなります。 特に、HIV/AIDSを代表とした細胞性免疫不全の患者にとっては、一般的に死に至る可能性がある真菌感染症です。 オウム病 オウム病クラミジアを含んだ糞を吸入することによって起こります。悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛などがみられ、咳や痰などがみられます。軽い場合は風邪程度の症状ですが、高齢者などでは重症になりやすくなります。 重症になると、呼吸困難、意識障害などがみられ、診断が遅れると死亡する場合もあります。 アレルギー...
ハクビシンの捕獲・駆除について
頭から鼻にかけて白いラインが通っていることが特徴のハクビシン(白鼻芯)ですが、農作物や人間の生活環境に対して様々な被害を与えることがあります(参考記事:ハクビシン対策について)。 環境省の調査によると、平成30年度のハクビシンによる農作物被害金額は全国で約4億円(前年度より1500万円減少)となっており、おもな対策として有害駆除・捕獲が実施されています。中には被害が深刻化している地域もあり、駆除・捕獲をサポートするための対応を始める自治体も出てきています。 たとえば栃木県宇都宮市では、市が貸し出ししている罠で住民がハクビシンを捕獲した場合、無償で回収処分する対応を本年度から始めました(これまでは捕獲者が処分費用を負担)。同市の2019年度のハクビシン捕獲数が過去最高の166匹、農業被害額は約1千万円、また市街地での住宅被害も増えていたことが背景です。 ハクビシンを捕獲・駆除するために必要なこと ハクビシンをはじめとする野生鳥獣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)で保護されており、許可なく捕獲することはできません。 ハクビシンを捕獲する場合も、事前に役所への捕獲許可の申請が必要となります。違法な捕獲は罰則の対象となりますので、まずは役所の担当課に問合せましょう。 ※ハクビシンは狩猟対象鳥獣に該当しますので、狩猟期間中(11月15日~2月15日)は狩猟に必要な要件を満たしていれば役所での捕獲許可は不要です。 一般的な流れ 以下は、捕獲許可申請手続きの一般的な流れになります。 ①捕獲許可申請 各自治体によってそれぞれ指定されている申請書があるので、そちらに必要事項を記入し、窓口に提出します。 捕獲には基本的に箱罠をもちいるため、わな猟免許が必要になります。なお、自宅敷地内で害獣による被害防止が目的とする場合などに限り、狩猟免許が不要な場合もありますので、役所に問合せる際にその点も併せて確認しておきましょう。 ※箱罠については、こちらの記事も参照ください。 ②審査 申請された内容を役所が確認し、捕獲が必要かどうかが審査されます。わな猟免許をもっている方が申請した場合は、前年度に狩猟者登録があったか、狩猟災害共済等に加入しているか、過去に鳥獣関係法令に違反していないか等が確認される場合もあります。 ③許可証交付 申請者に捕獲許可証が交付されます。申請から許可まで時間がかかることもあるため、被害が見られたら早めに申請しておくと良いでしょう。 ④捕獲の実施 捕獲許可の期間が定められていますので、その期間内に捕獲作業を実施します。なお、捕獲したハクビシンは別の場所に放獣せず、申請者が責任をもって処分しなければならない場合がほとんどです。 ⑤捕獲結果報告 捕獲許可証を役所に返却する際に、捕獲結果の報告が求められます。 自治体のサポート 上記で紹介した宇都宮市のように、自治体によって様々なサポートがありますので、必要に応じて是非活用してみましょう。いくつかを以下に紹介しますので、ご参考ください。※詳細は、各自治体窓口にお問合せください。 専門業者による箱罠設置:東京都板橋区 以下の全てに該当する場合、区が委託した専門業者が箱わなの設置を行います。 ・被害のある建造物の所有者または管理者の方からの依頼であること。 ・事前調査や箱わな設置・回収時の立ち会いができること。 ・毎日の箱わなの見回りが可能であること。 ・箱わなに入れるエサの準備・必要に応じて交換ができること。 ・捕獲された場合は、速やかに板橋区や専門業者に連絡できること。...
ハクビシンの捕獲・駆除について
頭から鼻にかけて白いラインが通っていることが特徴のハクビシン(白鼻芯)ですが、農作物や人間の生活環境に対して様々な被害を与えることがあります(参考記事:ハクビシン対策について)。 環境省の調査によると、平成30年度のハクビシンによる農作物被害金額は全国で約4億円(前年度より1500万円減少)となっており、おもな対策として有害駆除・捕獲が実施されています。中には被害が深刻化している地域もあり、駆除・捕獲をサポートするための対応を始める自治体も出てきています。 たとえば栃木県宇都宮市では、市が貸し出ししている罠で住民がハクビシンを捕獲した場合、無償で回収処分する対応を本年度から始めました(これまでは捕獲者が処分費用を負担)。同市の2019年度のハクビシン捕獲数が過去最高の166匹、農業被害額は約1千万円、また市街地での住宅被害も増えていたことが背景です。 ハクビシンを捕獲・駆除するために必要なこと ハクビシンをはじめとする野生鳥獣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)で保護されており、許可なく捕獲することはできません。 ハクビシンを捕獲する場合も、事前に役所への捕獲許可の申請が必要となります。違法な捕獲は罰則の対象となりますので、まずは役所の担当課に問合せましょう。 ※ハクビシンは狩猟対象鳥獣に該当しますので、狩猟期間中(11月15日~2月15日)は狩猟に必要な要件を満たしていれば役所での捕獲許可は不要です。 一般的な流れ 以下は、捕獲許可申請手続きの一般的な流れになります。 ①捕獲許可申請 各自治体によってそれぞれ指定されている申請書があるので、そちらに必要事項を記入し、窓口に提出します。 捕獲には基本的に箱罠をもちいるため、わな猟免許が必要になります。なお、自宅敷地内で害獣による被害防止が目的とする場合などに限り、狩猟免許が不要な場合もありますので、役所に問合せる際にその点も併せて確認しておきましょう。 ※箱罠については、こちらの記事も参照ください。 ②審査 申請された内容を役所が確認し、捕獲が必要かどうかが審査されます。わな猟免許をもっている方が申請した場合は、前年度に狩猟者登録があったか、狩猟災害共済等に加入しているか、過去に鳥獣関係法令に違反していないか等が確認される場合もあります。 ③許可証交付 申請者に捕獲許可証が交付されます。申請から許可まで時間がかかることもあるため、被害が見られたら早めに申請しておくと良いでしょう。 ④捕獲の実施 捕獲許可の期間が定められていますので、その期間内に捕獲作業を実施します。なお、捕獲したハクビシンは別の場所に放獣せず、申請者が責任をもって処分しなければならない場合がほとんどです。 ⑤捕獲結果報告 捕獲許可証を役所に返却する際に、捕獲結果の報告が求められます。 自治体のサポート 上記で紹介した宇都宮市のように、自治体によって様々なサポートがありますので、必要に応じて是非活用してみましょう。いくつかを以下に紹介しますので、ご参考ください。※詳細は、各自治体窓口にお問合せください。 専門業者による箱罠設置:東京都板橋区 以下の全てに該当する場合、区が委託した専門業者が箱わなの設置を行います。 ・被害のある建造物の所有者または管理者の方からの依頼であること。 ・事前調査や箱わな設置・回収時の立ち会いができること。 ・毎日の箱わなの見回りが可能であること。 ・箱わなに入れるエサの準備・必要に応じて交換ができること。 ・捕獲された場合は、速やかに板橋区や専門業者に連絡できること。...
ネズミ被害に困った!種類や習性を知って、適切な対策を。
目次 1ネズミの種類と習性 1クマネズミ 2ドブネズミ 3ハツカネズミ 4スーパーラット 2どのような被害がもたらされるのか 1物的被害 2健康被害 3精神的被害 3ネズミ対策の種類 4物理的防除方法 1粘着シート 2箱罠(かご) 3毒えさ(殺鼠剤) 人間の生活圏に住み着くペット以外の動物のうち、身近なものとしてネズミが挙げられます。古くから人間の生活にさまざまな被害を与えてきたネズミですが、公衆衛生が格段に向上した現代においても、大都市のビル内部など都市の環境に巧みに適応して増加し、問題を引き起こしています。 最近では、新型コロナ感染拡大の影響を受けて多くの飲食店が休業となった結果、ネズミの被害が目立つようになったというニュースも。 東京都のネズミ類の相談件数を見ると、平成20年以降徐々に合計相談件数は減少傾向であるものの、未だ6000件以上の被害相談が寄せられています。近年の傾向としては、繁華街で増加したネズミが生息範囲を周辺の住宅街に広げており、繁華街の店舗だけでなく近隣の住民にもさまざまな被害を与えています。 また、高齢者世帯での被害が多くなっていることも近年みられる傾向の一つです。高齢者は加齢に伴って身体機能が低下してくるため、自力でのネズミ駆除が困難となります。家屋へのネズミ侵入を放置してしまい、被害が深刻化しても自力での解決が困難な状況となっているケースが散見されます。 ネズミの種類と習性 人間に被害をもたらす代表的なねずみは「クマネズミ」「ドブネズミ」「ハツカネズミ」の3種類です。それぞれの特徴をご紹介します。 クマネズミ 体長は15~20cmほど。ねずみの種類が分かっている相談のうち、ほとんどがクマネズミによるものです。種類の見分けがつかない場合は、クマネズミとして対処すると良いでしょう。 クマネズミは、高いところに登るのが得意です。戦後、高層ビルの発達にともない、気密性(保温性)が高く安全なビルの中で、垂直移動を得意とするクマネズミがごみ置き場の廃棄物や厨房の厨芥などを餌にして増加したと考えられています。 その後、繁華街の再開発工事が頻繁に行われるようになった1990年代に、取り壊される建物やその周辺から逃げて近隣の住宅地に移動したために、住宅街におけるクマネズミの被害が増えたと言われています。 クマネズミは警戒心が強く学習能力が高いことも特徴です。ドブネズミやハツカネズミは、比較的簡単に毒えさや罠にかかってくれますが、警戒心が強く賢いクマネズミにおいては難易度があがります。 クマネズミの尾長は15~26センチほどで、尻尾が頭胴長と同じかやや長い傾向があります。一方で、ドブネズミは、尾長が頭胴長よりやや短い傾向があります。耳は比較的大きく前に倒すと目が隠れるほどですが、一方でドブネズミは耳が比較的小さく、前に倒しても目に達しません。 腹部は黄褐色で尾は黒いです。泳ぎは苦手で、天井や屋根裏で見られるケースが多いです。 何でも食べますが、穀物や果実など植物質を好み、動物の肉や魚介類はあまり好まない傾向があります。昼間でも活動しますが、都会では主に夜行性です。 ドブネズミ...
ネズミ被害に困った!種類や習性を知って、適切な対策を。
目次 1ネズミの種類と習性 1クマネズミ 2ドブネズミ 3ハツカネズミ 4スーパーラット 2どのような被害がもたらされるのか 1物的被害 2健康被害 3精神的被害 3ネズミ対策の種類 4物理的防除方法 1粘着シート 2箱罠(かご) 3毒えさ(殺鼠剤) 人間の生活圏に住み着くペット以外の動物のうち、身近なものとしてネズミが挙げられます。古くから人間の生活にさまざまな被害を与えてきたネズミですが、公衆衛生が格段に向上した現代においても、大都市のビル内部など都市の環境に巧みに適応して増加し、問題を引き起こしています。 最近では、新型コロナ感染拡大の影響を受けて多くの飲食店が休業となった結果、ネズミの被害が目立つようになったというニュースも。 東京都のネズミ類の相談件数を見ると、平成20年以降徐々に合計相談件数は減少傾向であるものの、未だ6000件以上の被害相談が寄せられています。近年の傾向としては、繁華街で増加したネズミが生息範囲を周辺の住宅街に広げており、繁華街の店舗だけでなく近隣の住民にもさまざまな被害を与えています。 また、高齢者世帯での被害が多くなっていることも近年みられる傾向の一つです。高齢者は加齢に伴って身体機能が低下してくるため、自力でのネズミ駆除が困難となります。家屋へのネズミ侵入を放置してしまい、被害が深刻化しても自力での解決が困難な状況となっているケースが散見されます。 ネズミの種類と習性 人間に被害をもたらす代表的なねずみは「クマネズミ」「ドブネズミ」「ハツカネズミ」の3種類です。それぞれの特徴をご紹介します。 クマネズミ 体長は15~20cmほど。ねずみの種類が分かっている相談のうち、ほとんどがクマネズミによるものです。種類の見分けがつかない場合は、クマネズミとして対処すると良いでしょう。 クマネズミは、高いところに登るのが得意です。戦後、高層ビルの発達にともない、気密性(保温性)が高く安全なビルの中で、垂直移動を得意とするクマネズミがごみ置き場の廃棄物や厨房の厨芥などを餌にして増加したと考えられています。 その後、繁華街の再開発工事が頻繁に行われるようになった1990年代に、取り壊される建物やその周辺から逃げて近隣の住宅地に移動したために、住宅街におけるクマネズミの被害が増えたと言われています。 クマネズミは警戒心が強く学習能力が高いことも特徴です。ドブネズミやハツカネズミは、比較的簡単に毒えさや罠にかかってくれますが、警戒心が強く賢いクマネズミにおいては難易度があがります。 クマネズミの尾長は15~26センチほどで、尻尾が頭胴長と同じかやや長い傾向があります。一方で、ドブネズミは、尾長が頭胴長よりやや短い傾向があります。耳は比較的大きく前に倒すと目が隠れるほどですが、一方でドブネズミは耳が比較的小さく、前に倒しても目に達しません。 腹部は黄褐色で尾は黒いです。泳ぎは苦手で、天井や屋根裏で見られるケースが多いです。 何でも食べますが、穀物や果実など植物質を好み、動物の肉や魚介類はあまり好まない傾向があります。昼間でも活動しますが、都会では主に夜行性です。 ドブネズミ...
アライグマの生態・対策・駆除について
目次 1アライグマを駆除しなければならない3つの理由 1理由1.経済的な被害が深刻なため 2理由2.感染症を媒介するリスクがある 3理由3.日本の生態系へ影響を与えてしまう 2アライグマの対策や駆除方法について 1アライグマを見かけたら 2餌付けは絶対にしない 3捕獲による対策 4許可なしでの捕獲は法律違反。まずは自治体に相談 3アライグマの特徴や生態 1生息地や分布 2特徴や生態 4まとめ こどものアライグマは非常に愛くるしく、テレビアニメの影響もあり非常に人気があります。しかしアライグマは本来日本には生息しない外来種。見た目とは異なり気性は荒く、農業被害や人への危害、感染症をもたらす可能性もあることから、対策や駆除を行わなければなりません。 今回は、アライグマ被害に頭を悩ませる方に向けて、対策や駆除の方法、生態について解説します。被害にお困りの方はぜひ参考にしてください。 アライグマを駆除しなければならない3つの理由 まずは、アライグマを害獣として駆除されなければならない理由から見ていきましょう。理由は大きく3つ挙げられます。 理由1.経済的な被害が深刻なため 1つ目の理由は、経済的な被害が深刻なためです。 農林水産長の報告によると、アライグマによる農作物への被害は2003年時点で1億2,600万程度でしたが、年々近畿地方や北海道を中心に被害が急増。2016年には農業被害額が約3億3千万円と3倍以上の増加を見せるなど、その後も増加傾向が続いています。 アライグマは雑食性のため、被害の対象となる作物は様々ですが、特にトウモロコシ、メロン、スイカ、イチゴなどの野菜・果樹や、家畜飼料などの被害が深刻です。また、畜産業・養殖業では、被害牧草のロールやパックの破壊。乳牛の乳首を噛み切る、鶏を食べるなどの畜産業被害、養魚場での魚の捕食といった漁業被害も報告されています。 これに加えて、家屋や文化財への被害も問題となっています。ハクビシンやアライグマが民家・社寺などへ侵入し、天井裏での糞尿や、建造物や美術工芸品を傷つけたりすることが報告されています。アライグマが営巣を目的として建物を探査する時や、建造物への侵入する時、建造物での営巣および住着時に被害が発生します。平等院鳳凰堂や清水寺で爪痕が見つかるなど、文化財への被害も報告されています。 参照文献:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル」 理由2.感染症を媒介するリスクがある 2つ目は、感染症を媒介するリスクがあるということです。 アライグマはヒトにも重篤な症状を与える感染症を引き起こすことがあります。最も重篤なリスクとして考えられるのはヒトとアライグマの共通感染症。 これまで日本国内で確認されていなかったアライグマ糞線虫などの寄生虫が、野生のアライグマから発見されていることから、他にも国内に存在しなかった新たな共通感染症をアライグマが持ち込む可能性が高いといえます。また、野生化したアライグマからは、日本脳炎ウイルス、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌、タヌキ回虫など、以前から国内に存在する共通感染症がしばしば確認されています。 これ以外にも、日本ではヒトでの発症例がないアライグマ回虫症や、1957年以降動物での発生がない狂犬病など、重篤な感染症の媒介動物となるリスクも考えられ、十分な対策を講じておくことが必要です。 以下では代表的なアライグマの感染症について解説しています。...
アライグマの生態・対策・駆除について
目次 1アライグマを駆除しなければならない3つの理由 1理由1.経済的な被害が深刻なため 2理由2.感染症を媒介するリスクがある 3理由3.日本の生態系へ影響を与えてしまう 2アライグマの対策や駆除方法について 1アライグマを見かけたら 2餌付けは絶対にしない 3捕獲による対策 4許可なしでの捕獲は法律違反。まずは自治体に相談 3アライグマの特徴や生態 1生息地や分布 2特徴や生態 4まとめ こどものアライグマは非常に愛くるしく、テレビアニメの影響もあり非常に人気があります。しかしアライグマは本来日本には生息しない外来種。見た目とは異なり気性は荒く、農業被害や人への危害、感染症をもたらす可能性もあることから、対策や駆除を行わなければなりません。 今回は、アライグマ被害に頭を悩ませる方に向けて、対策や駆除の方法、生態について解説します。被害にお困りの方はぜひ参考にしてください。 アライグマを駆除しなければならない3つの理由 まずは、アライグマを害獣として駆除されなければならない理由から見ていきましょう。理由は大きく3つ挙げられます。 理由1.経済的な被害が深刻なため 1つ目の理由は、経済的な被害が深刻なためです。 農林水産長の報告によると、アライグマによる農作物への被害は2003年時点で1億2,600万程度でしたが、年々近畿地方や北海道を中心に被害が急増。2016年には農業被害額が約3億3千万円と3倍以上の増加を見せるなど、その後も増加傾向が続いています。 アライグマは雑食性のため、被害の対象となる作物は様々ですが、特にトウモロコシ、メロン、スイカ、イチゴなどの野菜・果樹や、家畜飼料などの被害が深刻です。また、畜産業・養殖業では、被害牧草のロールやパックの破壊。乳牛の乳首を噛み切る、鶏を食べるなどの畜産業被害、養魚場での魚の捕食といった漁業被害も報告されています。 これに加えて、家屋や文化財への被害も問題となっています。ハクビシンやアライグマが民家・社寺などへ侵入し、天井裏での糞尿や、建造物や美術工芸品を傷つけたりすることが報告されています。アライグマが営巣を目的として建物を探査する時や、建造物への侵入する時、建造物での営巣および住着時に被害が発生します。平等院鳳凰堂や清水寺で爪痕が見つかるなど、文化財への被害も報告されています。 参照文献:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル」 理由2.感染症を媒介するリスクがある 2つ目は、感染症を媒介するリスクがあるということです。 アライグマはヒトにも重篤な症状を与える感染症を引き起こすことがあります。最も重篤なリスクとして考えられるのはヒトとアライグマの共通感染症。 これまで日本国内で確認されていなかったアライグマ糞線虫などの寄生虫が、野生のアライグマから発見されていることから、他にも国内に存在しなかった新たな共通感染症をアライグマが持ち込む可能性が高いといえます。また、野生化したアライグマからは、日本脳炎ウイルス、カンピロバクターやサルモネラなどの細菌、タヌキ回虫など、以前から国内に存在する共通感染症がしばしば確認されています。 これ以外にも、日本ではヒトでの発症例がないアライグマ回虫症や、1957年以降動物での発生がない狂犬病など、重篤な感染症の媒介動物となるリスクも考えられ、十分な対策を講じておくことが必要です。 以下では代表的なアライグマの感染症について解説しています。...
平成30年度 都道府県別。狩猟期間リスト
目次 1はじめに 1北海道以外の区域 2北海道の区域 2都道府県別。延長されている狩猟期間リスト 1北海道 2東北地方 3関東地方 4北陸地方 5中部地方 6近畿地方 7中国地方 8四国地方 9九州・沖縄地方 ★最新:令和2年度(2020)版はこちら>> はじめに 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)では、毎年10月15日(北海道は、毎年9月15日)から翌年4月15日までの期間を、狩猟鳥獣の捕獲等をすることができる期間すなわち狩猟期間として定めています。しかしながら、鳥獣保護管理法施行規則第九条によって、鳥獣の保護を図る観点から、鳥類の繁殖や渡りの時期等を考慮し、下記の通り狩猟期間が短縮されています。 北海道以外の区域 毎年11月15日から翌年2月15日まで(猟区の区域内においては、毎年10月15日から翌年3月15日まで)。 ※青森県、秋田県・山形県の区域内の猟区外において、ヨシガモ(アナス・ファルカタ)、ヒドリガモ(アナス・ペネロペ)、マガモ(アナス・プラテュリュンコス)、カルガモ(アナス・ゾノリュンカ)、ハシビロガモ(アナス・クリュペアタ)、オナガガモ(アナス・アクタ)、コガモ(アナス・クレカ)、ホシハジロ(アイテュア・フェリナ)、キンクロハジロ(アイテュア・フリグラ)、スズガモ(アイテュア・マリラ)、クロガモ(メラニタ・アメリカナ)を捕獲する場合は、毎年11月1日から翌年1月31日まで。 北海道の区域 毎年10月1日から翌年1月31日まで(猟区の区域内においては、毎年9月15日から翌年2月末日まで)。 都道府県別。延長されている狩猟期間リスト 上記のとおり、法律で定められている狩猟期間は北海道以外では毎年11月15日から翌年2月15日まで、北海道は毎年10月1日から翌年1月31日までとされていますが、対象狩猟鳥獣や都道府県によっては、猟期を延長または短縮している場合があります。公式発表があるものについて、以下に記載いたしますので参考にしてください。※詳細は、狩猟者登録をした都道府県にご確認下さい。 北海道 北海道全域(オホーツク総合振興局管内西興部村猟区・上川総合振興局管内占冠村猟区を除く) 10月1日から翌年1月31日まで 西興部村猟区・占冠村猟区 9月15日から翌年4月15日まで ※エゾシカについては、「北海道エゾシカ管理計画」の目標達成のため、毎年の生息状況を検討したうえで、狩猟期間の延長等が行われる場合があり、その期間は地域によっても異なります。平成30年度のエゾシカ猟の可猟期間、可猟区域及び捕獲制限は、こちらをご覧ください。...
平成30年度 都道府県別。狩猟期間リスト
目次 1はじめに 1北海道以外の区域 2北海道の区域 2都道府県別。延長されている狩猟期間リスト 1北海道 2東北地方 3関東地方 4北陸地方 5中部地方 6近畿地方 7中国地方 8四国地方 9九州・沖縄地方 ★最新:令和2年度(2020)版はこちら>> はじめに 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)では、毎年10月15日(北海道は、毎年9月15日)から翌年4月15日までの期間を、狩猟鳥獣の捕獲等をすることができる期間すなわち狩猟期間として定めています。しかしながら、鳥獣保護管理法施行規則第九条によって、鳥獣の保護を図る観点から、鳥類の繁殖や渡りの時期等を考慮し、下記の通り狩猟期間が短縮されています。 北海道以外の区域 毎年11月15日から翌年2月15日まで(猟区の区域内においては、毎年10月15日から翌年3月15日まで)。 ※青森県、秋田県・山形県の区域内の猟区外において、ヨシガモ(アナス・ファルカタ)、ヒドリガモ(アナス・ペネロペ)、マガモ(アナス・プラテュリュンコス)、カルガモ(アナス・ゾノリュンカ)、ハシビロガモ(アナス・クリュペアタ)、オナガガモ(アナス・アクタ)、コガモ(アナス・クレカ)、ホシハジロ(アイテュア・フェリナ)、キンクロハジロ(アイテュア・フリグラ)、スズガモ(アイテュア・マリラ)、クロガモ(メラニタ・アメリカナ)を捕獲する場合は、毎年11月1日から翌年1月31日まで。 北海道の区域 毎年10月1日から翌年1月31日まで(猟区の区域内においては、毎年9月15日から翌年2月末日まで)。 都道府県別。延長されている狩猟期間リスト 上記のとおり、法律で定められている狩猟期間は北海道以外では毎年11月15日から翌年2月15日まで、北海道は毎年10月1日から翌年1月31日までとされていますが、対象狩猟鳥獣や都道府県によっては、猟期を延長または短縮している場合があります。公式発表があるものについて、以下に記載いたしますので参考にしてください。※詳細は、狩猟者登録をした都道府県にご確認下さい。 北海道 北海道全域(オホーツク総合振興局管内西興部村猟区・上川総合振興局管内占冠村猟区を除く) 10月1日から翌年1月31日まで 西興部村猟区・占冠村猟区 9月15日から翌年4月15日まで ※エゾシカについては、「北海道エゾシカ管理計画」の目標達成のため、毎年の生息状況を検討したうえで、狩猟期間の延長等が行われる場合があり、その期間は地域によっても異なります。平成30年度のエゾシカ猟の可猟期間、可猟区域及び捕獲制限は、こちらをご覧ください。...
シカ・イノシシの個体数について
一昨日、環境省より平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果が公開されました。それによると、現時点で最新の推定値として、平成28(2016)年度末の全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約272万頭、イノシシの推定個体数は中央値約89万頭となり、前年度に引き続き減少傾向であることが明らかになりました。 個体数推定のための統計手法について シカは低い初産齢とほぼ毎年出産するという特徴があります。またイノシシは多産で、春に2~8頭の子を産みます。そのため、シカやイノシシは、大型哺乳類の中では短期間で大幅な個体数変動をおこなう種といえます。 しかしながら、このような場合の生息密度や個体数を精度高く推定する方法は確立されていません。上記の環境省の個体数推定では、①個体数(翌年)=個体数(ある年)×自然増加率-捕獲数、②個体数(翌年)=個体数(ある年)×ある年と翌年の生息数指標の変化率という2つの前提のうえ、階層ベイズモデルが用いられています。 階層ベイズモデルとは 階層ベイズモデルとは、「ベイズ理論」という統計手法を多段階にして導き出すモデルです。この推定モデルは、個体数推定のほかにも様々な分野で活用されています。概念としては「ベイズ理論」と対をなす「頻度論」と比較すると理解しやすいかと思います。 頻度論 コインを投げたときの裏表を例に挙げると、頻度論ではコインを投げたとき表が出る確率は二分の一です。頻度論では、無限回試行を前提とした確率で考え、主観的なパラメータは排除されます。 ベイズ理論 頻度論が無限回試行を前提としているのに対し、ベイズ理論は、その時点で持ち合わせた情報をもとにした一回限りの確率を積み重ねるという考え方をします。 また、ベイズ理論では主観性を考慮します。 そのためベイズ理論においては、現時点でデータが全くなかったとしても、主観的な数値によってとりあえず事前に確率を設定しておくことができます。この確率を事前確率といいます。 例えば、コインを投げる人はコイン投げの達人だから、表ばかり出すことを狙ってくるはずだ、だから表が出る事前確率は五分の四だ、といったような主観を入れることが可能なわけです。 そして、事前確率を設定したのち、何らかの新たな情報を得て、出した確率を事後確率といい、事後確率は新たな情報によって更新されていきます。新たな情報を手に入れたら、前回は事後確率だったものが事前確率となって、さらに確率の更新が行われるという仕組みになります。 どんどんデータを足して更新していけば、現象をより詳しく説明できる分布を推定することができるようになります。先ほど例に出したコイン投げで考えると、コイン投げの結果のデータを足して更新していけば、表が出る確率は二分の一というのが最もありえるモデルで、0や1に近いモデルほどありえなさそう、といった形の確率分布になります。 ベイズモデルを使った推定値は、点推定値と標準偏差、信用区間を基本に報告されます。点推定値とは確率分布の代表値のことで、中央値や平均値をおもに使います。信用区間とは、たとえば90%信用区間であれば「90%の確率でその範囲に真値がある」という区間になります。 シカ・イノシシの個体数の推定値について さて、平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定に話を戻すと、以下の結果が得られています。 ニホンジカの個体数推定結果 2016年度末における全国のニホンジカ(本州以南。北海道を除く)の個体数は、中央値で約272万頭となっています。50%信用区間では約237~314万頭で、90%信用区間であれば約199万~396万頭です。 イノシシの個体数推定結果 2016年度末における全国のイノシシの個体数は、中央値で約89万頭となっています。50%信用区間(50%の確率でその範囲に真値がある)は約80万~99万頭で、90%信用区間であれば約70万~116万頭です。 捕獲数の推移 環境省及び農林水産省は、2013年12月の「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」において、「ニホンジカ及びイノシシの生息数を10年後(2023年度)までに半減」することを当面の捕獲目標に設定しました。 具体的には、本州以南のニホンジカは、2013年度の推定値である261万頭を2023年度までに半減、またイノシシについては88 万頭から2023年度に50万頭まで減少させることを目指すとしていました。 これに伴い、捕獲数も年々増加しており、2016年度ではシカの捕獲数は約58万頭、イノシシの捕獲数は約62万頭に達しています(詳細な数値はこちらをご覧ください)。ここ10年の狩猟免許保持者数がほぼ横ばいであることを考えると、少ない捕獲者が効率的に狩猟圧を上げることができているといえます。 しかしながら、今回の個体数推定の結果、今の捕獲率※を維持した場合、2023年にはニホンジカの個体数が207万頭になるとされており、上記の目標に達することができない見込みとなっています。...
シカ・イノシシの個体数について
一昨日、環境省より平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果が公開されました。それによると、現時点で最新の推定値として、平成28(2016)年度末の全国(本州以南)のニホンジカの推定個体数は中央値約272万頭、イノシシの推定個体数は中央値約89万頭となり、前年度に引き続き減少傾向であることが明らかになりました。 個体数推定のための統計手法について シカは低い初産齢とほぼ毎年出産するという特徴があります。またイノシシは多産で、春に2~8頭の子を産みます。そのため、シカやイノシシは、大型哺乳類の中では短期間で大幅な個体数変動をおこなう種といえます。 しかしながら、このような場合の生息密度や個体数を精度高く推定する方法は確立されていません。上記の環境省の個体数推定では、①個体数(翌年)=個体数(ある年)×自然増加率-捕獲数、②個体数(翌年)=個体数(ある年)×ある年と翌年の生息数指標の変化率という2つの前提のうえ、階層ベイズモデルが用いられています。 階層ベイズモデルとは 階層ベイズモデルとは、「ベイズ理論」という統計手法を多段階にして導き出すモデルです。この推定モデルは、個体数推定のほかにも様々な分野で活用されています。概念としては「ベイズ理論」と対をなす「頻度論」と比較すると理解しやすいかと思います。 頻度論 コインを投げたときの裏表を例に挙げると、頻度論ではコインを投げたとき表が出る確率は二分の一です。頻度論では、無限回試行を前提とした確率で考え、主観的なパラメータは排除されます。 ベイズ理論 頻度論が無限回試行を前提としているのに対し、ベイズ理論は、その時点で持ち合わせた情報をもとにした一回限りの確率を積み重ねるという考え方をします。 また、ベイズ理論では主観性を考慮します。 そのためベイズ理論においては、現時点でデータが全くなかったとしても、主観的な数値によってとりあえず事前に確率を設定しておくことができます。この確率を事前確率といいます。 例えば、コインを投げる人はコイン投げの達人だから、表ばかり出すことを狙ってくるはずだ、だから表が出る事前確率は五分の四だ、といったような主観を入れることが可能なわけです。 そして、事前確率を設定したのち、何らかの新たな情報を得て、出した確率を事後確率といい、事後確率は新たな情報によって更新されていきます。新たな情報を手に入れたら、前回は事後確率だったものが事前確率となって、さらに確率の更新が行われるという仕組みになります。 どんどんデータを足して更新していけば、現象をより詳しく説明できる分布を推定することができるようになります。先ほど例に出したコイン投げで考えると、コイン投げの結果のデータを足して更新していけば、表が出る確率は二分の一というのが最もありえるモデルで、0や1に近いモデルほどありえなさそう、といった形の確率分布になります。 ベイズモデルを使った推定値は、点推定値と標準偏差、信用区間を基本に報告されます。点推定値とは確率分布の代表値のことで、中央値や平均値をおもに使います。信用区間とは、たとえば90%信用区間であれば「90%の確率でその範囲に真値がある」という区間になります。 シカ・イノシシの個体数の推定値について さて、平成30年度版 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定に話を戻すと、以下の結果が得られています。 ニホンジカの個体数推定結果 2016年度末における全国のニホンジカ(本州以南。北海道を除く)の個体数は、中央値で約272万頭となっています。50%信用区間では約237~314万頭で、90%信用区間であれば約199万~396万頭です。 イノシシの個体数推定結果 2016年度末における全国のイノシシの個体数は、中央値で約89万頭となっています。50%信用区間(50%の確率でその範囲に真値がある)は約80万~99万頭で、90%信用区間であれば約70万~116万頭です。 捕獲数の推移 環境省及び農林水産省は、2013年12月の「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」において、「ニホンジカ及びイノシシの生息数を10年後(2023年度)までに半減」することを当面の捕獲目標に設定しました。 具体的には、本州以南のニホンジカは、2013年度の推定値である261万頭を2023年度までに半減、またイノシシについては88 万頭から2023年度に50万頭まで減少させることを目指すとしていました。 これに伴い、捕獲数も年々増加しており、2016年度ではシカの捕獲数は約58万頭、イノシシの捕獲数は約62万頭に達しています(詳細な数値はこちらをご覧ください)。ここ10年の狩猟免許保持者数がほぼ横ばいであることを考えると、少ない捕獲者が効率的に狩猟圧を上げることができているといえます。 しかしながら、今回の個体数推定の結果、今の捕獲率※を維持した場合、2023年にはニホンジカの個体数が207万頭になるとされており、上記の目標に達することができない見込みとなっています。...
新・イノシシ対策。
目次 1オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 2イノシシが嫌がる超音波装置 3グレーチング付きU字溝「わたれません」 4まとめ イノシシによる農作物被害は、年間約50億円ほどに達しています。イノシシは繁殖力が高く、統計手法を用いた環境省による野生鳥獣の個体数推定結果によると、イノシシの個体数は30年前のおよそ3倍になっています。 個体数が増えると、その分農作物の被害も増えますが、作物の被害だけでなく農家の営農意欲も奪いとられるため、離農が増える結果となります。そのため、イノシシ対策として多くの自治体で罠の設置などによる捕獲・駆除が積極的に行われています。 最近では捕獲・駆除だけでなく、田畑や家の庭、生ゴミ置き場などにイノシシを寄せ付けないための新しい対策も行われるようになってきています。この記事では、そのうちのいくつかを紹介したいと思います。 オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 イノシシを田畑などに寄せ付けないための対策としては、電気柵などの防護柵を設置することが一般的です。しかしながら、イノシシは学習能力が高く、「この柵は入ることができる」と学習すると、多少の困難はものともせず柵を突破しようとします。 柵はイノシシから田畑を守る最終防衛ラインであるため、突破されると直ちに新たな対策を講じる必要が出てきます。 そこで出てくるのがイノシシを寄せ付けないための威嚇対策ですが、単純な威嚇装置ではイノシシが慣れてしまい効果がなくなってしまいます。 それを踏まえ、北海道奈井江町の太田精器が開発したのがオオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」です。 装置は全長65センチ、高さ50センチ。機器本体にマスクをかぶせ、外観をイノシシの天敵であるオオカミそっくりに作り込んでいます。 50種類以上の多種多様な威嚇音を出すことができ、イノシシが慣れてしまわないよう考慮されています。 また、赤外線センサーで動物の接近を感知すると、目の部分の発光ダイオード(LED)が赤く点滅し、首を左右に振って威嚇します。 太田精器は早くからLED鳥獣忌避装置の開発に取り組んでおり、スーパーモンスターウルフにもそのノウハウが活かされています。 イノシシは警戒心が高いため、普段とは異なるものを感知すると回避行動をとります。そのため、スーパーモンスターウルフを田畑周辺に設置すれば、イノシシが近づかなくなることが期待されます。太田精器ホームページ>> イノシシが嫌がる超音波装置 広島県では、人間の生活圏へのイノシシの侵入が相次いでいます。そのため、市街地にイノシシが近づかないようにする対策を望む声が多くあがっています。 そこで尾道市は、県立広島大学の重点研究事業・地域課題解決研究を活用して、市街地にイノシシを近づけさせない取り組み「イノシシ等有害鳥獣を近づけさせないプロジェクト」を開始しました。 このプロジェクトにより、今月6日に超音波を発する装置が尾道市の住宅地近くに設置されました。 この装置は、県立広島大学と民間の企業が共同開発したもので、人の耳ではとらえることのできない周波数の超音波を広範囲に照射できるというもの。所定エリア内に侵入したイノシシを超音波によって威嚇し、逃避させることを目的としています。 過去の研究によって、イノシシは超音波を嫌うことはないものの、特定の周波数においては忌避反応を示すことが確認されており、これまでにも北広島町や庄原市などの山間部において、実際にこの装置を用いてイノシシを追い払う効果が確認できたとのこと。今回もその有効性が確認できれば、人慣れしたイノシシでも田畑に近づけないようにできることが期待されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」 グレーチングとは、鋼材を格子状に組んだ溝蓋のことです。道路にある排水のためのU字溝や側溝、歩道などに使用されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」は、人や車は問題なく通行可能ですが、イノシシやシカなどにとっては通行しにくくするグレーチング付きU字溝です。「わたれません」には、直径8cm・深さが4cm程度の六角形のグレーチング構造が採用されており、イノシシが侵入しようとしても蹄でバランスが取れず踏ん張りがきかないようになっています。 くくり罠を設置するときにもよく考慮することなのですが(参考記事)、イノシシは足の踏ん張りがきかない箇所があると、踏み抜かずに足を引っ込めます(そのため、くくり罠を設置する場合はグラグラと不安定にならないよう注意を払います)。 また、警戒心も高いので、「わたれません」が設置してある部分は通行せずに引き返すことが期待されます。 https://youtu.be/nqA-kFkD0cM...
新・イノシシ対策。
目次 1オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 2イノシシが嫌がる超音波装置 3グレーチング付きU字溝「わたれません」 4まとめ イノシシによる農作物被害は、年間約50億円ほどに達しています。イノシシは繁殖力が高く、統計手法を用いた環境省による野生鳥獣の個体数推定結果によると、イノシシの個体数は30年前のおよそ3倍になっています。 個体数が増えると、その分農作物の被害も増えますが、作物の被害だけでなく農家の営農意欲も奪いとられるため、離農が増える結果となります。そのため、イノシシ対策として多くの自治体で罠の設置などによる捕獲・駆除が積極的に行われています。 最近では捕獲・駆除だけでなく、田畑や家の庭、生ゴミ置き場などにイノシシを寄せ付けないための新しい対策も行われるようになってきています。この記事では、そのうちのいくつかを紹介したいと思います。 オオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」 イノシシを田畑などに寄せ付けないための対策としては、電気柵などの防護柵を設置することが一般的です。しかしながら、イノシシは学習能力が高く、「この柵は入ることができる」と学習すると、多少の困難はものともせず柵を突破しようとします。 柵はイノシシから田畑を守る最終防衛ラインであるため、突破されると直ちに新たな対策を講じる必要が出てきます。 そこで出てくるのがイノシシを寄せ付けないための威嚇対策ですが、単純な威嚇装置ではイノシシが慣れてしまい効果がなくなってしまいます。 それを踏まえ、北海道奈井江町の太田精器が開発したのがオオカミロボット「スーパーモンスターウルフ」です。 装置は全長65センチ、高さ50センチ。機器本体にマスクをかぶせ、外観をイノシシの天敵であるオオカミそっくりに作り込んでいます。 50種類以上の多種多様な威嚇音を出すことができ、イノシシが慣れてしまわないよう考慮されています。 また、赤外線センサーで動物の接近を感知すると、目の部分の発光ダイオード(LED)が赤く点滅し、首を左右に振って威嚇します。 太田精器は早くからLED鳥獣忌避装置の開発に取り組んでおり、スーパーモンスターウルフにもそのノウハウが活かされています。 イノシシは警戒心が高いため、普段とは異なるものを感知すると回避行動をとります。そのため、スーパーモンスターウルフを田畑周辺に設置すれば、イノシシが近づかなくなることが期待されます。太田精器ホームページ>> イノシシが嫌がる超音波装置 広島県では、人間の生活圏へのイノシシの侵入が相次いでいます。そのため、市街地にイノシシが近づかないようにする対策を望む声が多くあがっています。 そこで尾道市は、県立広島大学の重点研究事業・地域課題解決研究を活用して、市街地にイノシシを近づけさせない取り組み「イノシシ等有害鳥獣を近づけさせないプロジェクト」を開始しました。 このプロジェクトにより、今月6日に超音波を発する装置が尾道市の住宅地近くに設置されました。 この装置は、県立広島大学と民間の企業が共同開発したもので、人の耳ではとらえることのできない周波数の超音波を広範囲に照射できるというもの。所定エリア内に侵入したイノシシを超音波によって威嚇し、逃避させることを目的としています。 過去の研究によって、イノシシは超音波を嫌うことはないものの、特定の周波数においては忌避反応を示すことが確認されており、これまでにも北広島町や庄原市などの山間部において、実際にこの装置を用いてイノシシを追い払う効果が確認できたとのこと。今回もその有効性が確認できれば、人慣れしたイノシシでも田畑に近づけないようにできることが期待されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」 グレーチングとは、鋼材を格子状に組んだ溝蓋のことです。道路にある排水のためのU字溝や側溝、歩道などに使用されます。 グレーチング付きU字溝「わたれません」は、人や車は問題なく通行可能ですが、イノシシやシカなどにとっては通行しにくくするグレーチング付きU字溝です。「わたれません」には、直径8cm・深さが4cm程度の六角形のグレーチング構造が採用されており、イノシシが侵入しようとしても蹄でバランスが取れず踏ん張りがきかないようになっています。 くくり罠を設置するときにもよく考慮することなのですが(参考記事)、イノシシは足の踏ん張りがきかない箇所があると、踏み抜かずに足を引っ込めます(そのため、くくり罠を設置する場合はグラグラと不安定にならないよう注意を払います)。 また、警戒心も高いので、「わたれません」が設置してある部分は通行せずに引き返すことが期待されます。 https://youtu.be/nqA-kFkD0cM...
鳥獣被害防止対策のための交付金について~鳥獣被害防止総合対策交付金
人里に出没して農作物を荒らす野生鳥獣の増加・拡大によって、農作物被害額は毎年約200億円ほどで推移しています。農林水産省が公開している直近の被害状況(2016年度)については、被害金額が約172億円で前年度に比べ約5億円減少ですが、依然として多くの被害が生じている状況です。また、被害額の約7割が、シカ、イノシシ、サルによるもので占められています。 全国各地で被害対策が講じられていますが、それでもなお被害が継続して発生している要因として、野生鳥獣の生息域が拡大したことや狩猟による捕獲圧の低下、過疎化・高齢化による耕作放棄地の増加などが指摘されています。 そこで農林水産省は、鳥獣被害を軽減することを目的として、鳥獣被害防止のための事業を実施する団体を交付金により支援しています。対象団体は事業計画等を申請することによって、国から「鳥獣被害防止総合対策交付金」が各都道府県を通じて交付されます。 交付の対象団体 鳥獣被害防止事業の実施主体(地域協議会、地域協議会の構成員)が交付対象となります。なお地域協議会とは、地方公共団体、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、試験研究機関、狩猟者団体等関係機関、集落の代表者などで構成される組織・団体のことで、以下を満たしている必要があります。 代表者が決められていること 事業の実施や会計手続を適正に行うことのできる体制をもっていること 協議会としての意志決定の方法、事務処理及び会計処理の方法及び責任者、財産の管理方法、公印の管理及び公印の使用の方法及び責任者、内部監査の方法を明確にした組織の運営等に係る内容が記載された規約が定められていること 事務手続に係る不正を未然に防止する仕組みや体制が整備されていること 交付金の対象となる事業 以下に示すような事業を実施する際に必要な経費に対して、交付金が交付されます。 1. 鳥獣被害防止対策支援事業 柵(防護柵、電気柵等)、捕獲獣の処理加工施設、捕獲技術高度化施設(射撃場)等の整備 捕獲機材(罠、檻・移動箱等)の購入・設置費 捕獲活動経費の直接支援 追い払いなどの地域ぐるみの被害防止活動 ICT等を用いた新技術実証活動 人材育成活動 など 交付率 都道府県へは定額交付、事業実施主体への交付は事業費の1/2以内とされています。※条件によって、一部定額交付となる場合があります。 2. ジビエ倍増モデル整備事業 2018年度はジビエ倍増モデル整備事業に対しても交付されます。国は捕獲した獣をジビエとして有効に活用するため、2016年度のジビエ利用量(1283トン)を2019年度に倍増させる目標を掲げています。 ジビエの安定供給を実現するため、選定された先行モデル地区に対して、捕獲や処理加工、衛生管理に関わる人材の育成や、拠点となる処理加工施設の整備、「移動式解体処理車」(ジビエカー)の導入などが交付金により支援されます。 2018年度に選定されたモデル地区 ジビエ利用モデルとして、以下の17地区が選定されています。 ▽北海道空知地区▽長野市▽石川県南加賀地区▽岐阜県西濃ブランチ▽三重県伊賀市・いなべ市▽京都府・大阪府=京都丹波・大阪北摂地区▽京都府中丹地区▽兵庫県内広域▽和歌山県紀北地区▽同県古座川町▽岡山県美作地区▽鳥取県東部地区▽徳島県内広域▽熊本県内全域▽大分県内全域▽宮崎県延岡地区▽鹿児島県阿久根地区 事業評価結果の公表...
鳥獣被害防止対策のための交付金について~鳥獣被害防止総合対策交付金
人里に出没して農作物を荒らす野生鳥獣の増加・拡大によって、農作物被害額は毎年約200億円ほどで推移しています。農林水産省が公開している直近の被害状況(2016年度)については、被害金額が約172億円で前年度に比べ約5億円減少ですが、依然として多くの被害が生じている状況です。また、被害額の約7割が、シカ、イノシシ、サルによるもので占められています。 全国各地で被害対策が講じられていますが、それでもなお被害が継続して発生している要因として、野生鳥獣の生息域が拡大したことや狩猟による捕獲圧の低下、過疎化・高齢化による耕作放棄地の増加などが指摘されています。 そこで農林水産省は、鳥獣被害を軽減することを目的として、鳥獣被害防止のための事業を実施する団体を交付金により支援しています。対象団体は事業計画等を申請することによって、国から「鳥獣被害防止総合対策交付金」が各都道府県を通じて交付されます。 交付の対象団体 鳥獣被害防止事業の実施主体(地域協議会、地域協議会の構成員)が交付対象となります。なお地域協議会とは、地方公共団体、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、試験研究機関、狩猟者団体等関係機関、集落の代表者などで構成される組織・団体のことで、以下を満たしている必要があります。 代表者が決められていること 事業の実施や会計手続を適正に行うことのできる体制をもっていること 協議会としての意志決定の方法、事務処理及び会計処理の方法及び責任者、財産の管理方法、公印の管理及び公印の使用の方法及び責任者、内部監査の方法を明確にした組織の運営等に係る内容が記載された規約が定められていること 事務手続に係る不正を未然に防止する仕組みや体制が整備されていること 交付金の対象となる事業 以下に示すような事業を実施する際に必要な経費に対して、交付金が交付されます。 1. 鳥獣被害防止対策支援事業 柵(防護柵、電気柵等)、捕獲獣の処理加工施設、捕獲技術高度化施設(射撃場)等の整備 捕獲機材(罠、檻・移動箱等)の購入・設置費 捕獲活動経費の直接支援 追い払いなどの地域ぐるみの被害防止活動 ICT等を用いた新技術実証活動 人材育成活動 など 交付率 都道府県へは定額交付、事業実施主体への交付は事業費の1/2以内とされています。※条件によって、一部定額交付となる場合があります。 2. ジビエ倍増モデル整備事業 2018年度はジビエ倍増モデル整備事業に対しても交付されます。国は捕獲した獣をジビエとして有効に活用するため、2016年度のジビエ利用量(1283トン)を2019年度に倍増させる目標を掲げています。 ジビエの安定供給を実現するため、選定された先行モデル地区に対して、捕獲や処理加工、衛生管理に関わる人材の育成や、拠点となる処理加工施設の整備、「移動式解体処理車」(ジビエカー)の導入などが交付金により支援されます。 2018年度に選定されたモデル地区 ジビエ利用モデルとして、以下の17地区が選定されています。 ▽北海道空知地区▽長野市▽石川県南加賀地区▽岐阜県西濃ブランチ▽三重県伊賀市・いなべ市▽京都府・大阪府=京都丹波・大阪北摂地区▽京都府中丹地区▽兵庫県内広域▽和歌山県紀北地区▽同県古座川町▽岡山県美作地区▽鳥取県東部地区▽徳島県内広域▽熊本県内全域▽大分県内全域▽宮崎県延岡地区▽鹿児島県阿久根地区 事業評価結果の公表...
アナグマの特徴と対策について
目次 1アナグマの特徴 1体の大きさや体つき 2分布 3食性 4タヌキ等との違い 2アナグマ対策について 3アナグマの肉 アナグマは、古くから日本人に馴染みのある野生動物です。例えば、「同じ穴の狢(ムジナ)」という言葉があります。 一見別のように見えても、実は同類の悪党であることをを指す言葉ですが、この「狢(ムジナ)」とはアナグマの異称です。 タヌキと間違えられることも多いアナグマですが、タヌキとは似て非なる動物です。この記事では、アナグマの特徴や、鳥獣被害対策としての対応方法を説明します。 アナグマの特徴 アナグマはイタチ科に属する動物で、日本の固有種であるニホンアナグマのことを指します。基本的に夜行性で、日中は巣穴で休息します。性格は温厚で、他の動物と争わずにうまく共存することが多いです。 警戒心も強くないので、人間が近づいても逃げないことがあります。餌探しなど、他のことに気を取られていると、そばにいる人間に気づかないこともあります。 体の大きさや体つき 頭胴長は約40~60センチ程度、体重は10kg前後です。体の大きさや色が似ていることから、タヌキやアライグマ、ハクビシンなどと見間違えられることも多くあります。 指は前肢、後肢ともに5本あり、親指はほかの4本の指から離れていて、どの指にも鋭い爪があります。 分布 九州、四国、本州などに広く分布しています。おもに里山の森林域で土中にトンネル状の巣穴を掘って生活します。巣穴は地下で複雑につながっており、出入口が複数あります。 なお、タヌキは自ら巣穴を掘ることはしませんが、アナグマが掘った巣穴の内部をタヌキが休息・繁殖のために利用することがあり、前述の「同じ穴の狢(ムジナ)」はここから生まれた言葉であると考えられます。 話は逸れますが、愛らしい見た目で人気の犬種ダックスフンドは、ドイツ語でアナグマを指すダックス(Dachs)と、犬を指すフント(Hund)を合わせたことが語源で、巣穴の中にいるアナグマを狩る目的で手足を短く改良された種です。 都市部に出没するケースもあり、建物の天井や床下などに住み着く場合もあります。家屋に侵入されてしまうと、床下に無数の穴を掘られたり、溜め糞という習性によって床下に大量に糞をしたり、その結果として悪臭や害虫の発生を引き起こす原因になることがあります。 食性 雑食性です。昆虫やカエル、モグラ、ミミズなど動物質のものを好みますが、果実類などを食べることもあります。トウモロコシ、スイカ、イチゴなどの農作物が食害を受ける場合もありますが、掘り起こしによって作物が被害を受ける場合もあります。 タヌキ等との違い タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科ですが、食性や行動で似た部分が多く、古来からこの二種は混合されてきました。例えば、「タヌキ寝入り」と呼ばれる擬死行動は、アナグマでも見られます。 ちなみに、冒頭でムジナとは、主にアナグマのことを指すと書きましたが、地方によってはタヌキやハクビシンを指したり、これらの種をはっきり区別することなくまとめて指している場合もあります。 主な見分け方としては、尾の外観による識別です。タヌキもアナグマも、20センチに満たない短い尾を持ちますが、タヌキの尾にはしま模様がありますので、そこで見分けます。他にも、アナグマはタヌキにくらべて鼻が大きく耳が小さく見えることや、指の本数がタヌキは4本だがアナグマは5本で鋭い爪を持つといった点でも見分けることができます。 ハクビシンもアナグマと見間違えられることの多い動物ですが、ハクビシンには額から鼻にかけて白い線があるのと、尾が長いこと、鼻がピンク色であることなどから見分けることができます。 ハクビシンは高いところを好み、アナグマは低いところが好むため、屋根裏に住み着くケースはハクビシンの場合が多いです。...
アナグマの特徴と対策について
目次 1アナグマの特徴 1体の大きさや体つき 2分布 3食性 4タヌキ等との違い 2アナグマ対策について 3アナグマの肉 アナグマは、古くから日本人に馴染みのある野生動物です。例えば、「同じ穴の狢(ムジナ)」という言葉があります。 一見別のように見えても、実は同類の悪党であることをを指す言葉ですが、この「狢(ムジナ)」とはアナグマの異称です。 タヌキと間違えられることも多いアナグマですが、タヌキとは似て非なる動物です。この記事では、アナグマの特徴や、鳥獣被害対策としての対応方法を説明します。 アナグマの特徴 アナグマはイタチ科に属する動物で、日本の固有種であるニホンアナグマのことを指します。基本的に夜行性で、日中は巣穴で休息します。性格は温厚で、他の動物と争わずにうまく共存することが多いです。 警戒心も強くないので、人間が近づいても逃げないことがあります。餌探しなど、他のことに気を取られていると、そばにいる人間に気づかないこともあります。 体の大きさや体つき 頭胴長は約40~60センチ程度、体重は10kg前後です。体の大きさや色が似ていることから、タヌキやアライグマ、ハクビシンなどと見間違えられることも多くあります。 指は前肢、後肢ともに5本あり、親指はほかの4本の指から離れていて、どの指にも鋭い爪があります。 分布 九州、四国、本州などに広く分布しています。おもに里山の森林域で土中にトンネル状の巣穴を掘って生活します。巣穴は地下で複雑につながっており、出入口が複数あります。 なお、タヌキは自ら巣穴を掘ることはしませんが、アナグマが掘った巣穴の内部をタヌキが休息・繁殖のために利用することがあり、前述の「同じ穴の狢(ムジナ)」はここから生まれた言葉であると考えられます。 話は逸れますが、愛らしい見た目で人気の犬種ダックスフンドは、ドイツ語でアナグマを指すダックス(Dachs)と、犬を指すフント(Hund)を合わせたことが語源で、巣穴の中にいるアナグマを狩る目的で手足を短く改良された種です。 都市部に出没するケースもあり、建物の天井や床下などに住み着く場合もあります。家屋に侵入されてしまうと、床下に無数の穴を掘られたり、溜め糞という習性によって床下に大量に糞をしたり、その結果として悪臭や害虫の発生を引き起こす原因になることがあります。 食性 雑食性です。昆虫やカエル、モグラ、ミミズなど動物質のものを好みますが、果実類などを食べることもあります。トウモロコシ、スイカ、イチゴなどの農作物が食害を受ける場合もありますが、掘り起こしによって作物が被害を受ける場合もあります。 タヌキ等との違い タヌキはイヌ科、アナグマはイタチ科ですが、食性や行動で似た部分が多く、古来からこの二種は混合されてきました。例えば、「タヌキ寝入り」と呼ばれる擬死行動は、アナグマでも見られます。 ちなみに、冒頭でムジナとは、主にアナグマのことを指すと書きましたが、地方によってはタヌキやハクビシンを指したり、これらの種をはっきり区別することなくまとめて指している場合もあります。 主な見分け方としては、尾の外観による識別です。タヌキもアナグマも、20センチに満たない短い尾を持ちますが、タヌキの尾にはしま模様がありますので、そこで見分けます。他にも、アナグマはタヌキにくらべて鼻が大きく耳が小さく見えることや、指の本数がタヌキは4本だがアナグマは5本で鋭い爪を持つといった点でも見分けることができます。 ハクビシンもアナグマと見間違えられることの多い動物ですが、ハクビシンには額から鼻にかけて白い線があるのと、尾が長いこと、鼻がピンク色であることなどから見分けることができます。 ハクビシンは高いところを好み、アナグマは低いところが好むため、屋根裏に住み着くケースはハクビシンの場合が多いです。...
箱罠の仕掛け方について
目次 1箱罠の長所 2箱罠の組み立て方 11.パネルを組み立てる 22.扉を開放する 3休止・保管について 3箱罠を仕掛けるポイント 11.平らな場所 22.イノシシの通った痕跡が多い場所 33.運搬や見回りがしやすい場所 4設置してから... 4 餌付けについて 1餌の種類 2餌の撒き方 5まとめ イノシシの生息密度が高くなると、防護柵で田畑を囲んだだけでは、柵を壊されて侵入されてしまうという結果に陥りやすいです。 守りの施策だけでは、イノシシは人間を警戒しなくなってどんどん大胆になるからです。 これを解決するには、捕獲によって狩猟圧を高めることです。 捕獲のためによく使われるのは、箱罠やくくり罠。 それらの方法のうち、イノシシ向け箱罠の特徴・仕掛け方やコツ等を紹介します。 箱罠の長所 箱罠の長所は、やはり安全であることが挙げられます。捕獲した獣の止め刺しを箱の外から行うことができるので、獣による怪我などのリスクが少ないです。 また猟犬などターゲット以外の獣を捕獲してしまった場合も、怪我をさせてしまう可能性は低くなります。 イノシシが暴れるパワーはすさまじいため、くくり罠の場合、捕獲したイノシシが足をちぎったりして逃げてしまうケースも珍しくありません。 捕獲後の対処に難儀するケースも多くあります。 一方で、箱罠は扉を持ち上げられたりしない限り、捕獲後に逃げられることはないので、その後の対処に余裕をもって取り掛かることができます。 一度に捕獲できる数が多いことも箱罠の長所の一つです。くくり罠の場合、一つの罠につき一頭のみの捕獲となりますが、箱罠であれば一度に数頭捕獲することも可能です。 箱罠の組み立て方 1.パネルを組み立てる...
箱罠の仕掛け方について
目次 1箱罠の長所 2箱罠の組み立て方 11.パネルを組み立てる 22.扉を開放する 3休止・保管について 3箱罠を仕掛けるポイント 11.平らな場所 22.イノシシの通った痕跡が多い場所 33.運搬や見回りがしやすい場所 4設置してから... 4 餌付けについて 1餌の種類 2餌の撒き方 5まとめ イノシシの生息密度が高くなると、防護柵で田畑を囲んだだけでは、柵を壊されて侵入されてしまうという結果に陥りやすいです。 守りの施策だけでは、イノシシは人間を警戒しなくなってどんどん大胆になるからです。 これを解決するには、捕獲によって狩猟圧を高めることです。 捕獲のためによく使われるのは、箱罠やくくり罠。 それらの方法のうち、イノシシ向け箱罠の特徴・仕掛け方やコツ等を紹介します。 箱罠の長所 箱罠の長所は、やはり安全であることが挙げられます。捕獲した獣の止め刺しを箱の外から行うことができるので、獣による怪我などのリスクが少ないです。 また猟犬などターゲット以外の獣を捕獲してしまった場合も、怪我をさせてしまう可能性は低くなります。 イノシシが暴れるパワーはすさまじいため、くくり罠の場合、捕獲したイノシシが足をちぎったりして逃げてしまうケースも珍しくありません。 捕獲後の対処に難儀するケースも多くあります。 一方で、箱罠は扉を持ち上げられたりしない限り、捕獲後に逃げられることはないので、その後の対処に余裕をもって取り掛かることができます。 一度に捕獲できる数が多いことも箱罠の長所の一つです。くくり罠の場合、一つの罠につき一頭のみの捕獲となりますが、箱罠であれば一度に数頭捕獲することも可能です。 箱罠の組み立て方 1.パネルを組み立てる...
ハクビシン対策について
ハクビシンはアライグマ等と同様、外来種と考えられていますが、中山間地帯の果樹園をはじめとする農作物被害や、民家に住み着いて家庭菜園や庭の果樹を荒らしたり、糞尿によって家屋や文化財を汚損するなど、さまざまな被害が報告されています。 この記事では、ハクビシンの特徴や被害対策について説明します。 ハクビシンの特徴 特徴や生態 ハクビシンを漢字で書くと、「白鼻芯」となります。その名の通り、頭から鼻にかけて白いラインが通っていることが特徴的です。このラインを個体の見分けに使うこともできます。 昔はハクビシンは在来種と考えられていたこともありますが、今では中国や東南アジアから入ってきた外来種であるという考えが一般的です。 なお、江戸時代から日本に生息していた記録があることから、法律上は在来動物として扱われています。 尻尾の長さを含めると、成獣で体長約90cm、体重は2~5kgほどで、体の大きさはタヌキと同じくらい。 日没から明け方にかけて活動する典型的な夜行性動物です。 縄張りをもたず、性格は穏やかですので、気性の荒いアライグマと比べると他の個体と争うことは少なく、タヌキやアナグマなど他の動物ともうまく共存します。 生活は非常に静かで、夜行性であることも相まって、近くに生息していても気づかれないケースが多くあります。民家の屋根裏に住んでいても住人に気づかれず、何年も経ってから住みついていたことが判明したケースもあります。 水のある場所を好み、移動の際は河川や用水路、側溝などを用いることがよくあります。 繁殖と成長・寿命 ハクビシンは一年を通じて繁殖できます。雌は一年に一度出産しますが、一度に産むハクビシンの子供の数は約2〜3頭。 成獣になるまでは10か月ほどかかります。成長はゆっくりで寿命は長く、飼育下では20年を超える長寿となることも珍しくありません。また成長に伴い、特有の不快臭を出すことがあります。 身体能力 特筆すべきは、狭い隙間でも簡単に入り込む侵入能力です。直径10cmほどの隙間でも、体を回転させながら簡単に通り抜けてしまいます。 足の指は5本で、前足の方が後ろ足に比べ小さいです。足裏の肉球の中央が人間の手のひらのようにへこんでおり、何かを足裏で押さえるとピッタリ密着するようになっています。 この特徴的な足裏によって、滑りやすいものでも挟んで簡単に登ることができます。そのため、ハクビシンが果樹園などに侵入する箇所は、足で挟んで登りやすい四隅の角であることが多いです。 バランス感覚が発達しており、糸のような足場でも巧みに歩きます。高く足場が悪い場所を難なく歩き、後ろ足を支点にぶら下がって果物を食べたりもします。 食べ物と好物 ハクビシンは雑食性で、何でも食べます。果樹の被害が多く報告されますが、他にも野菜類や昆虫、ニワトリまでも食べます。ジャコウネコ科なので果物が好物で、中でも甘くて軟らかいもの(ブドウ、バナナ、イチゴなど)を好みます。 わずかな隙間からビニールハウスなどに侵入するので、果樹を栽培する人にとっては特に注意が必要です。 反対に、硬めのリンゴや熟していない柿などは、まったく食べないわけではありませんが、熟して軟らかいものと比べると好みではないようです。また、糖度が高い品種のトウモロコシやトマトなど果物以外の作物の被害も多く報告されています。 彼らの傾向として、好みの餌を探しながら場所を転々とするといったことがあります。そのため、個体数が少ないうちは被害が少なく場所もばらけるため、ハクビシンによる被害であることに気づかないことも多くあります。 ハクビシンによる被害の見分け方 タヌキやカラスと被害作物が似ていることから、実際はハクビシンによる被害による被害でも、それに気づかず誤った対策をしてしまうケースがあります。 ハクビシンによる被害には以下の特徴があるので、対策を講じたものの結果が出ないということにならないよう、しっかりと状況を確認しましょう。 ・夜間に被害が発生する(被害の発見は早朝) ・作物の先っぽがかじられ、基部は残っている...
ハクビシン対策について
ハクビシンはアライグマ等と同様、外来種と考えられていますが、中山間地帯の果樹園をはじめとする農作物被害や、民家に住み着いて家庭菜園や庭の果樹を荒らしたり、糞尿によって家屋や文化財を汚損するなど、さまざまな被害が報告されています。 この記事では、ハクビシンの特徴や被害対策について説明します。 ハクビシンの特徴 特徴や生態 ハクビシンを漢字で書くと、「白鼻芯」となります。その名の通り、頭から鼻にかけて白いラインが通っていることが特徴的です。このラインを個体の見分けに使うこともできます。 昔はハクビシンは在来種と考えられていたこともありますが、今では中国や東南アジアから入ってきた外来種であるという考えが一般的です。 なお、江戸時代から日本に生息していた記録があることから、法律上は在来動物として扱われています。 尻尾の長さを含めると、成獣で体長約90cm、体重は2~5kgほどで、体の大きさはタヌキと同じくらい。 日没から明け方にかけて活動する典型的な夜行性動物です。 縄張りをもたず、性格は穏やかですので、気性の荒いアライグマと比べると他の個体と争うことは少なく、タヌキやアナグマなど他の動物ともうまく共存します。 生活は非常に静かで、夜行性であることも相まって、近くに生息していても気づかれないケースが多くあります。民家の屋根裏に住んでいても住人に気づかれず、何年も経ってから住みついていたことが判明したケースもあります。 水のある場所を好み、移動の際は河川や用水路、側溝などを用いることがよくあります。 繁殖と成長・寿命 ハクビシンは一年を通じて繁殖できます。雌は一年に一度出産しますが、一度に産むハクビシンの子供の数は約2〜3頭。 成獣になるまでは10か月ほどかかります。成長はゆっくりで寿命は長く、飼育下では20年を超える長寿となることも珍しくありません。また成長に伴い、特有の不快臭を出すことがあります。 身体能力 特筆すべきは、狭い隙間でも簡単に入り込む侵入能力です。直径10cmほどの隙間でも、体を回転させながら簡単に通り抜けてしまいます。 足の指は5本で、前足の方が後ろ足に比べ小さいです。足裏の肉球の中央が人間の手のひらのようにへこんでおり、何かを足裏で押さえるとピッタリ密着するようになっています。 この特徴的な足裏によって、滑りやすいものでも挟んで簡単に登ることができます。そのため、ハクビシンが果樹園などに侵入する箇所は、足で挟んで登りやすい四隅の角であることが多いです。 バランス感覚が発達しており、糸のような足場でも巧みに歩きます。高く足場が悪い場所を難なく歩き、後ろ足を支点にぶら下がって果物を食べたりもします。 食べ物と好物 ハクビシンは雑食性で、何でも食べます。果樹の被害が多く報告されますが、他にも野菜類や昆虫、ニワトリまでも食べます。ジャコウネコ科なので果物が好物で、中でも甘くて軟らかいもの(ブドウ、バナナ、イチゴなど)を好みます。 わずかな隙間からビニールハウスなどに侵入するので、果樹を栽培する人にとっては特に注意が必要です。 反対に、硬めのリンゴや熟していない柿などは、まったく食べないわけではありませんが、熟して軟らかいものと比べると好みではないようです。また、糖度が高い品種のトウモロコシやトマトなど果物以外の作物の被害も多く報告されています。 彼らの傾向として、好みの餌を探しながら場所を転々とするといったことがあります。そのため、個体数が少ないうちは被害が少なく場所もばらけるため、ハクビシンによる被害であることに気づかないことも多くあります。 ハクビシンによる被害の見分け方 タヌキやカラスと被害作物が似ていることから、実際はハクビシンによる被害による被害でも、それに気づかず誤った対策をしてしまうケースがあります。 ハクビシンによる被害には以下の特徴があるので、対策を講じたものの結果が出ないということにならないよう、しっかりと状況を確認しましょう。 ・夜間に被害が発生する(被害の発見は早朝) ・作物の先っぽがかじられ、基部は残っている...
害獣捕獲のための第一歩 ~必要な免許・許可について
イノシシ、シカ、サル、ハクビシン、アライグマ、タヌキなど・・・田畑に被害をもたらす獣は放っておくと、どんどんその数を増やします。 その結果、一年かけて丹精込めて作った作物が一夜にして全滅するなど、営農する意欲を絶たれてしまうほどの事態を招くおそれがあります。 個体数を減らせば被害は目に見えて減りますので、数が増えすぎて手に負えなくなる前に、早期の対策を行いたいところです。そこで「最近獣による被害がひどい。鉄砲は何かと大変そうだから、罠による捕獲で反撃だ。」となりますが、日本では必要な免許・許可なしに野生鳥獣を捕獲することはできません。 この記事では、捕獲を始めるための第一歩として、必要となる免許や許可について説明します。害獣捕獲をしたいが、何から手を付けて良いか分からないといった場合は、是非参考にしてください。 野生鳥獣の捕獲は原則として禁止 日本には、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(略称「鳥獣保護法」)という法律があります。これによって、日本では野生鳥獣の捕獲が原則として禁止されています。 そのため、たとえ自分の畑に侵入した動物が目の前で作物を荒らしていたとしても、事前に免許や許可を取得していなければ、捕獲・処分することはできないのです。 野生獣を捕獲するには、「狩猟免許」と「狩猟者登録」が必要となります。 ※モグラやネズミ類は例外で、免許や許可無しでも被害防止のために捕獲することが可能です。また囲い罠による捕獲も、条件を満たせば狩猟免許の取得は不要です。これついては後述します。 狩猟免許の種類 狩猟免許の種類は4種類。第一種銃猟免許(装薬銃・空気銃)、第二種銃猟免許、網猟免許、そして「わな猟免許」です。狩猟に用いる猟具によって必要な免許は異なります。 箱罠や囲い罠、くくり罠を使う場合は、「わな猟免許」が必要になります。 都道府県が実施する狩猟免許試験に合格することによって、狩猟免許を取得することができます。有効期間は3年間です。 狩猟免許を取得したらすぐに猟ができるわけではなく、都道府県に狩猟者登録を申請し認可されてはじめて猟を開始することができます。狩猟免許試験の申込や、狩猟者登録申請は各都道府県の担当窓口にて行いますが、狩猟者登録の手続きは猟友会に入会すれば代行してもらえる場合があります。 わな猟免許に必要な費用 わな猟免許の場合、必要な費用としては、狩猟免許申請手数料¥5,200に加え、狩猟者登録手数料¥1,800、狩猟者登録税(11/15~2/15)¥8,200のほかに、医師による診断書作成費用や、猟友会費(狩猟事故共済保険込み)がかかり、合計は大体¥30,000程です。 なお、猟友会に所属しない場合は、わな保険料なども必要になります。 わな猟による捕獲の条件 前述の鳥獣保護法によって、狩猟によって捕獲できる鳥獣は、イノシシやニホンジカなどをはじめ、48種類に限定されています(※狩猟対象鳥獣はこちらをクリック)。 なお、これらの捕獲鳥獣のうち、アライグマやヌートリアは「特定外来生物」です。飼育、保管及び運搬することが原則禁止となりますので、外来生物法にしたがい、捕獲したらその場で殺処分するか、自治体へ引き渡しをする必要があります。 また、狩猟対象鳥獣であれば一年中狩猟が可能、というわけではありません。狩猟期間は一般的に毎年11月15日~2月15日です。都道府県によって狩猟鳥獣や狩猟期間は異なりますので、狩猟者登録をする都道府県に事前確認しておきましょう。 有害鳥獣捕獲の申請について たとえば、近年サルによって作物が食い荒らされるような被害が多くみられています。今年のはじめ、金沢市辰巳町の畑で、サル約40匹が作物を食い荒らしているのが目撃されるなど、被害が深刻になる可能性のある事例も散見されています。 しかしながら、ニホンザルは非狩猟鳥獣です。そのため狩猟によって捕獲することはできないということになります。こういった場合は、「有害鳥獣捕獲」の許可を申請するという方法があります。 被害が深刻で、柵などによる防除を実施しても被害を防ぎきれない場合、被害者または被害者から依頼を受けた捕獲従事者が、「有害鳥獣捕獲」の許可申請を行います。 この許可を受けた人は、許可にあたって指定された非狩猟鳥獣を捕獲できます。 ※この場合、捕獲できる期間や場所は指定されます。期間は通常1年以内です。法定猟法以外が可能な場合もあります。農林業や生態系への被害防止を目的として捕獲する場合に限られます。 有害鳥獣捕獲の場合も狩猟免許の取得は必要です。有害鳥獣捕獲の申請は個人でもできますが、一般的には自治体が猟友会に依頼する形で有害鳥獣捕獲対応をしている場合が多いです。 申請先は、捕獲する鳥獣の種類によって異なりますので、詳しくは捕獲を行う区域の自治体に問い合わせるとよいでしょう。 また、有害鳥獣捕獲の許可を受けたうえでの話ですが、自治体によっては、イノシシ・ニホンザル・ニホンジカ・ハクビシン・アライグマ等を捕獲した方に対し、有害鳥獣捕獲報償金が交付される場合もあります。...
害獣捕獲のための第一歩 ~必要な免許・許可について
イノシシ、シカ、サル、ハクビシン、アライグマ、タヌキなど・・・田畑に被害をもたらす獣は放っておくと、どんどんその数を増やします。 その結果、一年かけて丹精込めて作った作物が一夜にして全滅するなど、営農する意欲を絶たれてしまうほどの事態を招くおそれがあります。 個体数を減らせば被害は目に見えて減りますので、数が増えすぎて手に負えなくなる前に、早期の対策を行いたいところです。そこで「最近獣による被害がひどい。鉄砲は何かと大変そうだから、罠による捕獲で反撃だ。」となりますが、日本では必要な免許・許可なしに野生鳥獣を捕獲することはできません。 この記事では、捕獲を始めるための第一歩として、必要となる免許や許可について説明します。害獣捕獲をしたいが、何から手を付けて良いか分からないといった場合は、是非参考にしてください。 野生鳥獣の捕獲は原則として禁止 日本には、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(略称「鳥獣保護法」)という法律があります。これによって、日本では野生鳥獣の捕獲が原則として禁止されています。 そのため、たとえ自分の畑に侵入した動物が目の前で作物を荒らしていたとしても、事前に免許や許可を取得していなければ、捕獲・処分することはできないのです。 野生獣を捕獲するには、「狩猟免許」と「狩猟者登録」が必要となります。 ※モグラやネズミ類は例外で、免許や許可無しでも被害防止のために捕獲することが可能です。また囲い罠による捕獲も、条件を満たせば狩猟免許の取得は不要です。これついては後述します。 狩猟免許の種類 狩猟免許の種類は4種類。第一種銃猟免許(装薬銃・空気銃)、第二種銃猟免許、網猟免許、そして「わな猟免許」です。狩猟に用いる猟具によって必要な免許は異なります。 箱罠や囲い罠、くくり罠を使う場合は、「わな猟免許」が必要になります。 都道府県が実施する狩猟免許試験に合格することによって、狩猟免許を取得することができます。有効期間は3年間です。 狩猟免許を取得したらすぐに猟ができるわけではなく、都道府県に狩猟者登録を申請し認可されてはじめて猟を開始することができます。狩猟免許試験の申込や、狩猟者登録申請は各都道府県の担当窓口にて行いますが、狩猟者登録の手続きは猟友会に入会すれば代行してもらえる場合があります。 わな猟免許に必要な費用 わな猟免許の場合、必要な費用としては、狩猟免許申請手数料¥5,200に加え、狩猟者登録手数料¥1,800、狩猟者登録税(11/15~2/15)¥8,200のほかに、医師による診断書作成費用や、猟友会費(狩猟事故共済保険込み)がかかり、合計は大体¥30,000程です。 なお、猟友会に所属しない場合は、わな保険料なども必要になります。 わな猟による捕獲の条件 前述の鳥獣保護法によって、狩猟によって捕獲できる鳥獣は、イノシシやニホンジカなどをはじめ、48種類に限定されています(※狩猟対象鳥獣はこちらをクリック)。 なお、これらの捕獲鳥獣のうち、アライグマやヌートリアは「特定外来生物」です。飼育、保管及び運搬することが原則禁止となりますので、外来生物法にしたがい、捕獲したらその場で殺処分するか、自治体へ引き渡しをする必要があります。 また、狩猟対象鳥獣であれば一年中狩猟が可能、というわけではありません。狩猟期間は一般的に毎年11月15日~2月15日です。都道府県によって狩猟鳥獣や狩猟期間は異なりますので、狩猟者登録をする都道府県に事前確認しておきましょう。 有害鳥獣捕獲の申請について たとえば、近年サルによって作物が食い荒らされるような被害が多くみられています。今年のはじめ、金沢市辰巳町の畑で、サル約40匹が作物を食い荒らしているのが目撃されるなど、被害が深刻になる可能性のある事例も散見されています。 しかしながら、ニホンザルは非狩猟鳥獣です。そのため狩猟によって捕獲することはできないということになります。こういった場合は、「有害鳥獣捕獲」の許可を申請するという方法があります。 被害が深刻で、柵などによる防除を実施しても被害を防ぎきれない場合、被害者または被害者から依頼を受けた捕獲従事者が、「有害鳥獣捕獲」の許可申請を行います。 この許可を受けた人は、許可にあたって指定された非狩猟鳥獣を捕獲できます。 ※この場合、捕獲できる期間や場所は指定されます。期間は通常1年以内です。法定猟法以外が可能な場合もあります。農林業や生態系への被害防止を目的として捕獲する場合に限られます。 有害鳥獣捕獲の場合も狩猟免許の取得は必要です。有害鳥獣捕獲の申請は個人でもできますが、一般的には自治体が猟友会に依頼する形で有害鳥獣捕獲対応をしている場合が多いです。 申請先は、捕獲する鳥獣の種類によって異なりますので、詳しくは捕獲を行う区域の自治体に問い合わせるとよいでしょう。 また、有害鳥獣捕獲の許可を受けたうえでの話ですが、自治体によっては、イノシシ・ニホンザル・ニホンジカ・ハクビシン・アライグマ等を捕獲した方に対し、有害鳥獣捕獲報償金が交付される場合もあります。...
くくり罠の成果を上げるためのコツ
くくり罠によるイノシシやシカの捕獲は、広大な土地の中で直径30cmにも満たない輪の中に獣の足を踏み込ませなければならないので、箱罠に比べると難易度が上がります。また輪の中に足を踏み込ませたとしても、空はじきしてしまい逃してしまうことや、足をちぎって逃げられることもあります。 この記事では、くくり罠の成果を上げるために重要となるポイントを説明します。 獣のサインをしっかりとチェックすること こちらが息を巻いて獲物を探しても、獣は人間の匂いや気配、音を察知してそれを避けるため、人前に姿を現すことは滅多にありません。 警戒心の強いイノシシならなおさらです。 そのため、彼らが徘徊する道を知るためには、残った痕跡をしっかりとチェックすることが必要です。 ターゲットの獣になったつもりで、彼らがどのような動きをしたのかイメージしましょう。痕跡が新しいものなのか、古いものなのか、近いうちにまた通るのかを見極め、1週間以内にきっと来るだろうと確信を持てる場所を見つけたら、手際よく罠を仕掛けましょう。 なお、イノホイおすすめのくくり罠は安全装置がついているので、バネをセットしたままの状態でも安心して持ち運びができます。そのため、罠の設置時間を短縮することが可能です。 足跡 草の生えない冬場は足跡が鮮明になりますので、猟期中は特に注意深くチェックしましょう。逆に、猟期外の時期(特に夏場)は草が生えてしまって足跡が分かりにくくなります。足跡の形や歩幅から獣の種類、体の大きさ、雄なのか雌なのかを読むことができます。 フン フンも足跡と同様、獣の種類や体の大きさを予想することができます。また、フンは時間が経つと乾燥してバラバラになりますので、新しいかどうか特定することが容易です。 食痕 イノシシは土を鼻で掘り返し、土中のミミズや昆虫の幼虫などを食べますが、掘り返しの深さで個体の大きさが大まかに推測できます。 ほかにも、ドングリやタケノコ、栗など、時期に応じた食痕が見られます。 どの時期に何が食べられるのか知っておき、食痕をよく観察しましょう。毎日使われる餌場が見つかれば、捕獲率はかなり高くなります。 ただし、掘り返しが多い場所では罠自体も掘り起こされる可能性があるので、そのような場所に罠を設置することは避けましょう。 その他の痕跡 ヌタ場は、イノシシやシカなどの動物が、体表に付いているダニなどの寄生虫や汚れを落とすために泥を浴びる場所のことですが、新しいヌタ場近辺はねらい目です。 ヌタ場周辺には葉っぱや木などに泥が付着している場合が多いです。 それらの痕跡を確認しつつ、ターゲットが足を置くであろう場所を見定め、罠を設置しましょう。ただし、罠が露出したり正常に作動しない可能性のある場所での設置は避けましょう。 人間の痕跡がある場合は、獣が寄り付かない可能性が高いです。例えば近辺で草刈りが行われた、木を切る際に人の通り道ができたなど、そういった場所に罠を設置することは避けましょう。 設置した罠の見回りは毎日行うこと 罠の見回り頻度は、成果に直接結びつきます。 頻度を増やすことによって、「見に行ったら捕獲した獣が逃げてしまっていた」、などといったことも減らせますし、細かい変化に気づきやすくなります。たとえば、「昨日は無かった足跡が見つかった、この感じだと2~3日以内には再びこの道を通るだろう」など、こまかな気づきが得られます。 ただし、見回りに時間がかけすぎることは避けましょう。かかる労力が増えるということもありますが、頻繁過ぎると人間の痕跡に気づかれやすくなりますので、一日一回毎日見回りをする程度がベストです(毎日見回るというだけでも、かなり大変な作業です)。 また罠をかけていないエリアを見回ることも重要です。場所のアタリを何ヵ所かつけておいて、よく観察し、徐々にポイントを絞り込んでいきましょう。 新しい猟場を見つけたら、罠を数基設置してみて、様子をみてみましょう。 イノシシは縄張りを持たないので、良いポイントは数頭のイノシシが通ります。そのため、同じ場所で数回かかる場合もあります。 逆に、設置後2週間ほど様子を見ても獣が通った痕跡がなければ、罠を移動させましょう。...
くくり罠の成果を上げるためのコツ
くくり罠によるイノシシやシカの捕獲は、広大な土地の中で直径30cmにも満たない輪の中に獣の足を踏み込ませなければならないので、箱罠に比べると難易度が上がります。また輪の中に足を踏み込ませたとしても、空はじきしてしまい逃してしまうことや、足をちぎって逃げられることもあります。 この記事では、くくり罠の成果を上げるために重要となるポイントを説明します。 獣のサインをしっかりとチェックすること こちらが息を巻いて獲物を探しても、獣は人間の匂いや気配、音を察知してそれを避けるため、人前に姿を現すことは滅多にありません。 警戒心の強いイノシシならなおさらです。 そのため、彼らが徘徊する道を知るためには、残った痕跡をしっかりとチェックすることが必要です。 ターゲットの獣になったつもりで、彼らがどのような動きをしたのかイメージしましょう。痕跡が新しいものなのか、古いものなのか、近いうちにまた通るのかを見極め、1週間以内にきっと来るだろうと確信を持てる場所を見つけたら、手際よく罠を仕掛けましょう。 なお、イノホイおすすめのくくり罠は安全装置がついているので、バネをセットしたままの状態でも安心して持ち運びができます。そのため、罠の設置時間を短縮することが可能です。 足跡 草の生えない冬場は足跡が鮮明になりますので、猟期中は特に注意深くチェックしましょう。逆に、猟期外の時期(特に夏場)は草が生えてしまって足跡が分かりにくくなります。足跡の形や歩幅から獣の種類、体の大きさ、雄なのか雌なのかを読むことができます。 フン フンも足跡と同様、獣の種類や体の大きさを予想することができます。また、フンは時間が経つと乾燥してバラバラになりますので、新しいかどうか特定することが容易です。 食痕 イノシシは土を鼻で掘り返し、土中のミミズや昆虫の幼虫などを食べますが、掘り返しの深さで個体の大きさが大まかに推測できます。 ほかにも、ドングリやタケノコ、栗など、時期に応じた食痕が見られます。 どの時期に何が食べられるのか知っておき、食痕をよく観察しましょう。毎日使われる餌場が見つかれば、捕獲率はかなり高くなります。 ただし、掘り返しが多い場所では罠自体も掘り起こされる可能性があるので、そのような場所に罠を設置することは避けましょう。 その他の痕跡 ヌタ場は、イノシシやシカなどの動物が、体表に付いているダニなどの寄生虫や汚れを落とすために泥を浴びる場所のことですが、新しいヌタ場近辺はねらい目です。 ヌタ場周辺には葉っぱや木などに泥が付着している場合が多いです。 それらの痕跡を確認しつつ、ターゲットが足を置くであろう場所を見定め、罠を設置しましょう。ただし、罠が露出したり正常に作動しない可能性のある場所での設置は避けましょう。 人間の痕跡がある場合は、獣が寄り付かない可能性が高いです。例えば近辺で草刈りが行われた、木を切る際に人の通り道ができたなど、そういった場所に罠を設置することは避けましょう。 設置した罠の見回りは毎日行うこと 罠の見回り頻度は、成果に直接結びつきます。 頻度を増やすことによって、「見に行ったら捕獲した獣が逃げてしまっていた」、などといったことも減らせますし、細かい変化に気づきやすくなります。たとえば、「昨日は無かった足跡が見つかった、この感じだと2~3日以内には再びこの道を通るだろう」など、こまかな気づきが得られます。 ただし、見回りに時間がかけすぎることは避けましょう。かかる労力が増えるということもありますが、頻繁過ぎると人間の痕跡に気づかれやすくなりますので、一日一回毎日見回りをする程度がベストです(毎日見回るというだけでも、かなり大変な作業です)。 また罠をかけていないエリアを見回ることも重要です。場所のアタリを何ヵ所かつけておいて、よく観察し、徐々にポイントを絞り込んでいきましょう。 新しい猟場を見つけたら、罠を数基設置してみて、様子をみてみましょう。 イノシシは縄張りを持たないので、良いポイントは数頭のイノシシが通ります。そのため、同じ場所で数回かかる場合もあります。 逆に、設置後2週間ほど様子を見ても獣が通った痕跡がなければ、罠を移動させましょう。...