【週刊】鳥獣被害対策 — わな猟
箱罠で捕獲した後の止め刺しについて
箱罠を使って獲物を捕獲したあとは、獲物にとどめを刺す「止め刺し」を行います。 くくり罠で捕獲した場合、捕獲後もワイヤー長のぶんだけ獣は動けますが、箱罠の場合は獣の動きが檻の内部に制限されます。 また、くくり罠の場合は、捕らえた獲物の足が何らかの原因でワイヤーから抜けてしまう場合があります。一方で箱罠の場合は、捕獲後に獲物が逃げ出す可能性は低くなりますので、くくり罠よりも止め刺しの難易度は下がるといえるでしょう。 とはいえ、野生を相手に行うものですので箱罠でもリスクがまったくない訳ではありません。 とくに大型のイノシシなどは捕獲後は興奮状態にあり、体当たりして箱罠が動かしてしまうほどパワーがあります。 止め刺しを行う前に、遠巻きに罠の状態をよく観察し、箱罠に破損等の異常がないか確認したうえで、油断せず安全第一で作業にとりかかりましょう。 こちらの記事もどうぞ イノシシ捕獲~箱罠の設置・見回りをしよう 箱罠捕獲後の止め刺し手順 では、具体的に箱罠で捕獲した獲物の止め刺し方法を解説します。 1.刃物を用いて直接止め刺す 刃物を用いる止め刺しは、心臓や頸動脈をナイフなどで刺し放血させる方法です。 他の止め刺し方法と比べると制限が少ないので、古くからポピュラーな止め刺し方法として採用されています。ただし、急所に刃物を刺す必要があるため、物理的にも精神的にもハードルが高い方法でもあります。 難関となるのが急所部分となる胸元(心臓の付け根部分)を露出させることです。イノシシなどの四足獣は、胸元が地面側を向いており、そのままでは急所を的確に狙うことができません。そこで、獲物の胸元が見えるような状態にする必要があります。 一つの方法としては、ロープなどの保定具を使って獣の鼻や前足を垂直に吊り上げて拘束することです。 例としてイノシシを想定し、解説しましょう。 まず、保定具を輪の状態にします。このとき、保定具を引くと輪が締まるような結び方をしておきます(例:わな結びなど)。 上記の輪を箱罠天井のすき間から入れます。イノシシの鼻先で輪をプラプラさせると噛みついてきますので、その瞬間にロープを引いてイノシシの首や上アゴを括ります。 または、輪を地面に置き、輪の中に前足が入った瞬間に引き上げたりもします。 うまく輪を締めることができたら、持ち手側のロープに体重をかけて引っ張ります。 こうすることで、保定した部分が箱罠から離れられないようになります。なお、重量のある個体の場合は、近くの木の枝などに引っ掛けてから体重をかけると、持ち上がりやすくなります。 この状態になると獲物の前足が浮いて後ろ足だけで立ち上がるような体勢となるため、胸元が露出して急所を狙いやすくなります。この状態にして、リーチの長い槍状の刃物などで止め刺しするのがリスクの少ない方法です。 こちらの記事もどうぞ 万能山刀、フクロナガサ(叉鬼山刀)の魅力 サイズが小さいイノシシの場合は、保定具を使用せずに、箱罠の網目からイノシシが足を出した瞬間に手で捕まえて止め刺しする場合もありますが、噛みつきなどの恐れがあるので、慣れないうちはおすすめできません。 急所を突く際は、サッと一突きするようなイメージです。突いてすぐに刃を抜いて、様子をみてみて、血が流れ出てきたら成功です。うまく行けば、1分ほどで絶命させることができます。ただし、絶命が確認できるまでは不用意に近づかないようにしましょう。 2.電殺器(電気止め刺し)を使用する 電殺器とは、小型バッテリー等を用いて獲物に槍状の電極を接触させ、電気ショックで心停止させる方法です。刃物による止め刺しよりも難易度が下がるのと、血を見ないで済むことから、近年は多くの狩猟家が採用し現場でもよく見られるようになりました。 一方で、一歩間違えると作業者自身が感電してしまうので、扱いには細心の注意が必要です。 前提として、雨の日の使用は絶対に避けます。また通電時は、槍先を人に向けたり箱罠に接触させないよう注意します。 1)まず、電殺器を使用する際は、作業者自身が感電してしまうことを防ぐため、絶縁性のゴム手袋とゴム長靴を着用します(高圧絶縁タイプを選ぶとよいです)。また長袖・長ズボンを着用して肌の露出が極力少なくなるようにし、袖やズボンの裾はゴム手袋の中に入れておきます。 2)次に、箱罠の金属部分にアースを接続します。接続部分が腐食して錆びついていたり、ペンキで塗装させていると電気が通りづらくなりますので、箱罠を仕掛ける際に予めヤスリなどで研磨しておくと良いでしょう。 また、獲物に突き刺す槍についても、槍先に泥や血による汚れがないか、錆びついていないか確認しておきましょう。 3)イノシシが暴れた衝撃で電殺器の棒や針が折れてしまうもあるため、注意が必要です。 獲物が動いて狙いを定めにくい場合は、槍を突き刺す前に、箱罠の中で獲物が動き回らないよう鉄パイプや木材などを網目から差し込んで可動域を制限してゆき、入り口側に誘導します。 獣の動きが抑制できない場合は、保定具を使って獣をあらかじめ拘束するのも良いでしょう。 また、電殺器を使用する前に、箱罠が接している地面やイノシシに水をかけておくと電気が通りやすくなります。 4)電殺器の電源を入れ、狙いを定めて槍を突き刺します。獲物を失神させるなら、イノシシなら首筋を狙い、シカなら頭部を狙います。感電死させる場合は、できるだけ心臓に近い部分に狙いを定めましょう。 このとき、自分の体が箱罠に接触すると感電する危険があるため十分に注意してください。 また、電流が流れている状態で、電極の槍の部分が鉄骨に触れるとショートが起こるため、十分注意しましょう。 5)止め刺し後は、獲物が感電して完全に絶命したか確認しましょう。ショック状態で失神しているだけの場合、獲物が覚醒して暴れ出し事故に繋がります。絶命したかを確認するには、 イノシシが目を閉じた、瞳孔が開いた 硬直から解けて、全身の力が抜けた 呼吸する動きが止まった といった項目を確認してください。上記が確認できても蘇生する可能性がゼロではないので、最後に刃物で止め刺ししておくほうが確実です。 3.銃による止め刺し 銃による止め刺しは、獣による反撃を最も受けにくい方法です。しかし、銃そのものが危険な道具であることに代わりはありません。 作業時は細心の注意を払い、安全に配慮することが大切です。 具体的には、箱罠のフレームに弾が当たり跳弾する危険性があります。銃を発射する場合は、銃口を箱罠のフレームに置いて発射するようにすると、照準を安定させやすくなります。 また、流れ弾による事故を防ぐため、銃口の先に民家や人がいないか必ず確認します。バックストップ(弾が範囲を越えて行かない為の遮蔽物)もきちんと確保しておきましょう。 同行者がいる場合は、銃所持者の後方に位置を取り、可能であれば木の後ろに隠れるなどして安全を確保してください。 また、罠にかかった獣を銃で止め刺しする場合は、下記の条件を満たしている必要があります。 罠にかかった鳥獣の動きを確実に固定できない場合であること 罠にかかった鳥獣が獰猛で、捕獲等をする者の生命・身体に危害を及ぼす恐れがあること 罠を仕掛けた狩猟者等の同意にもとづき行われること 銃器の使用にあたっての安全性が確保されていること 狩猟者登録を受けていること 有害鳥獣駆除等である場合は、銃器による捕獲許可や認定を受けていること 止め刺しする場所が特定猟具使用禁止区域(銃禁エリア)に該当していないかも、できれば自治体の担当課に事前に確認しておくほうがよいでしょう。 銃で狙いを定める場合は、シカの場合は頭部か首、心臓を、イノシシの場合は、こめかみ(耳のうしろ)か心臓を狙います。食肉活用を想定している場合は、腹部を狙うと弾の破片が内蔵に食い込み、活用できる部分が限られてしまいますので、注意しましょう。 4.窒息させる 小型の獲物を箱罠で捕獲した場合、窒息させて止め刺しをする方法も用いられます。具体的には、ガスを使う または 箱罠ごと水没させる、といった方法が挙げられます。 また、特定外来生物にあたるアライグマやヌートリアといった小型の獣は運搬が禁止されており、捕獲した場所で止め刺ししなければなりません。外来生物法による防除の場合は、捕獲した個体にできるだけ苦痛を与えないことが義務づけられているため、罠を設置したあとは頻繁に見回りを行い、捕獲後は適切な方法で処分します。 ガスを使って窒息させる ガスを使って窒息させる場合、箱罠を密閉された容器に入れ、炭酸ガスを注入します。そのまま10分程度放置し窒息させます。炭酸ガスは専用のボンベから注入するのが一般的です。 大型の箱罠を使用する場合は、容器のサイズやガスの準備などが大掛かりなるため不向きですが、小型のサイズの箱罠では有効な方法といえます。 箱罠ごと水没させる 小型の獲物を捕獲した場合は、箱罠ごと水没させて獲物を窒息死させる方法もあります。水深の確保できる川などに箱罠ごと沈め、流されないように固定します。10分程度そのままにして、窒息するのを待ちましょう。 水深が浅く息継ぎができるような状態だと、なんとか呼吸しようとするため、かえって獲物を苦しませることになります。しっかり水深が確保できる場所を選び、なるべく苦しまないように配慮したいところです。
【手順で解説】くくり罠によるイノシシ捕獲から生け捕りまで
イノシシやシカをはじめとした野生獣の捕獲方法の1つである「くくり罠」。獣が罠を踏むと、ワイヤーが締まって脚を捕獲する方法です。 中でもイノシシは身体能力が高いため、罠の設置や捕獲後の対応の際に、押さえておきたいポイントがあります。捕獲率を高めるだけでなく、より安全にイノシシを仕留めるためのポイントを順を追ってご紹介します。 イノシシ用のくくり罠を設置する くくり罠の設置は、イノシシとの知恵比べといえます。 イノシシは環境の変化に敏感で、新しく掘り起こされた土や人間の痕跡があると、警戒してそこを避ける行動をとります。罠を設置した痕跡を残さないよう、慎重かつ狡猾に罠を設置することが大切です。 まず、罠を設置する場所を決めましょう。イノシシが行動しているであろうエリアを丁寧に観察し、イノシシのフンや足跡、獣道を探します。足跡や獣道をみつけたら、より具体的に罠を設置する場所を絞り込みましょう。 イノシシは足元が不安定な場所を避けるため、枝や石はよけて通る習性があります。獣道の途中に木の根っこなどがあれば、そこを跨いで足を降ろす可能性が高くなります。 また、段差がある場所なら、イノシシも踏ん張りやすい安定した部分に足を置こうとするでしょう。こうした場所はくくり罠を仕掛けるには絶好のポイントです。 このように、痕跡を追うだけでなく、さらに一歩踏み込んで、そこから読み取れるイノシシの行動まで予測することで罠の捕獲率を高めていきます。 こちらの記事もどうぞ 【徹底解説】くくり罠の特徴や成果の上げ方とは? 匂い対策やカモフラージュは念入りに くくり罠を設置する際は、匂い対策にも注意をはらいましょう。罠を設置するために掘り返した土は、表面の乾いた土と匂いに違いあります。イノシシの嗅覚は鋭敏で、わずかな匂いの変化にも気づきます。 掘り起こした土で余りが出たら、罠から少し離れた場所に置くようにしましょう。 これ以外にも、新品の罠は人工物の匂いがするため、一度雨にさらして匂いを落としておくテクニックもあります。 同じく作業に使う軍手などもビニール製やゴム製は匂いが残るため避ける人もいます。徹底して人の匂いの痕跡を残さないため、猟に使う作業着は洗わず1シーズン使うといった罠師もいるほどです。人間に慣れていないイノシシの場合は特に匂いに対する警戒心が高いことから、罠の性能を損なわない範囲で可能な限り対策をしておくとよいでしょう。 また、くくり罠を設置したら表面に土や枯れ葉などを使ってカモフラージュを行います。周囲の環境と同じようにすることで、イノシシに見破られないよう工夫することが大切です。ハケなどを持参しておくと、より自然で細かなカモフラージュができます。 罠の手前や両サイドに枯れ枝を置いて、イノシシが足を置く位置を限定し捕獲率を高める方法も効果的です。 一方で、昼間に人里に現れるような人間に慣れているイノシシの場合、人間の痕跡を避けないケースもあります。わざと足跡を手で消してみて、そのあと同じ場所に足跡があれば、イノシシがその場所を踏む可能性が非常に高くなります。 イノシシがくくり罠にかかっていたら 見回りの際、くくり罠にイノシシがかかっていたら、その後の対処が必要になります。罠にかかったイノシシは、なんとか逃れようと必死に暴れ、興奮していてとても危険です。 まずは遠巻きに状況を確認し、斜面の場合はイノシシよりも高い方向から近づきます。近付く際はゆっくりと、警戒心を緩めずに進みましょう。捕らえたイノシシの可動域の外から、くくり罠がが足にしっかり固定されているか確認します。 罠のかかりが甘い場合や、イノシシが激しく暴れまわると罠が外れる可能性があります。状況をしっかり把握して、作業の安全を確保しましょう。 こちらの記事もどうぞ 捕獲獣(イノシシ・シカ等)の止めさしについて 生け捕りにするのでなければ、くくり罠にかかったイノシシはその場で止め刺しします。 その場合、鈍器等による殴打や電気ショック、ナイフを使います。必要に応じて銃で止め刺しする場合もあります。接近戦が危険と判断した場合は、応援を呼んだり銃による対処ができるよう事前に段取りしておきましょう。 こちらの記事もどうぞ 万能山刀、フクロナガサ(叉鬼山刀)の魅力 保定具(鼻くくりなど)を使う場合 捕獲したイノシシの肉をおいしくいただく目的で、別の場所で止め刺しから加工まで実施するのであれば、生け捕りにする必要があります。その場合、イノシシをできるだけ傷つけることなく体の自由を奪う必要があります。 イノシシの武器は、突進。さらにオスの場合はそこから牙を突き上げてきたりします(しゃくりあげ)。何もなしに近づくと、足を払われたり刺し傷を負わせられたりします。 足くくり罠によってイノシシの動きが制限されていても、軽い気持ちで近づくのは非常に危険です。 大きな成獣の場合は、保定具を使ってイノシシの動きを封じる必要が出てきます。保定具のなかでも最近人気があるのが「鼻くくり」です。 鼻くくりの原理はくくり罠とほぼ同じです。延長棒の先に仕掛け部分があり、イノシシの鼻がそこにぶつかるとイノシシの鼻がワイヤーでくくられるような仕組みになっています。 まずは捕獲したイノシシの可動域を確認し、可動域の外から鼻くくりを先導させ、イノシシと対峙するような形でじりじり近づきます(斜面の場合は、低いほうから近づかないよう注意しましょう)。くくり罠の空ハジキと同様、鼻がぶつかっても保定失敗となる場合もあるので、細心の注意が必要です。 他のタイプでは、先端がワイヤーの輪っかになっており、イノシシが噛みついたタイミングでワイヤーを締める仕組みになっているものもあります。イノシシの鼻イノシシが噛みつこうとした際にロープが締まって鼻を縛るタイプもあります。 鼻くくりがかかったら、ロープを引っ張り周囲の木に固定します。足くくり罠と鼻くくりがそれぞれ逆方向に引っ張られることで、イノシシが自由に動けない状態を作ります。 ロープがたわまないよう体重をかけてしっかり張り、イノシシの動きを封じ込めるようにしましょう。ロープを固定する木も、簡単には折れないものを選ぶようにします。 イノシシを横に倒して足を縛る 鼻くくりに注意をとられたイノシシの後ろから近づき、くくり罠がかかっていない足を下からすくうようにして、イノシシを横倒しの状態にします。 それほど大きくない成獣の場合は、横に倒れたイノシシの足の付け根を片膝で押さえ込むようにして体重かけると、動きを抑制できスムーズにロープを結ぶことができます。ロープを使ってしっかりと4足を縛りましょう。 サイズが大きい場合はまず2足をしばり、残りの足を引き寄せるようにして縛っていきます。 この状態になったら、イノシシの口を塞ぐようにロープなどで縛ります。この際、噛みつきに十分注意しながら作業を行います。 ガムテープを使って視界をふさぐ イノシシの自由を封じて、動けないことが確認できたらガムテープで目隠しをします。これは罠猟で有名な片桐邦雄さんが実施するテクニックで、ガムテープで目隠しされたイノシシは動きが大人しくなり、暴れることが少なくなります。 くくり罠と保定具でほとんど動けなくなったイノシシに、素早く目が隠れるようにぐるぐるとガムテープを巻いていきます。背中側からまたがるようにして乗っかってやると作業がしやすくなります。隙間を作らないようして、イノシシの目に光が届かないようにしましょう。 最後まで気を抜かず安全対策を徹底する しっかりイノシシが固定され身動きが取れないからといって油断しないようにしましょう。命の危機を感じたイノシシが暴れ出さないとも限りません。 また、イノシシの動きで消耗したワイヤーが切れる場合や、足を切断して動き出すケースもあります。殴打や電気ショックのようにイノシシに近付く必要があるケースでは、気を抜かずに対処しましょう。
シカによる被害と、捕獲するための罠について
シカによる農作物被害額は、過去数年にわたって横這い傾向となっているものの、平成30年度では約54億円に達しており、依然として深刻な状況です。イノシシの被害額である47億円を上回っており、最も被害を与える野生鳥獣となっています。 なお、被害があっても申告がないケースもあるため、上記の被害額は実態よりも少ないとも言われています。 また、長期にわたるシカの生息数の増加及び生息域の拡大によって、森林の被害も深刻な状況です。全国の森林の約2割でシカによる被害が確認されており、被害面積は全国で年間約3500ヘクタール(平成30年度)に達しており、野生鳥獣による森林被害の約3/4がシカによるものです。 ここまでシカの被害が広がった要因のひとつとして、シカの高い繁殖力が挙げられます。シカは生育環境がよければ1歳から妊娠し、ほぼ毎年子供を生みます。1度に産むのは1頭ですが、繁殖期には少数のオスが多数のメスを囲う(一夫多妻)であり、オスのまわりの妊娠可能なメスはほとんど妊娠します。 その結果、年率約20%で個体数が増え、4~5年で個体数は倍増するともいわれています。 環境省による推定では、全国で約244万頭のシカが生息(平成29年度末。北海道を除く)、平成26年度以降減少傾向となっていますが、平成初頭が約50万頭だったのに比べると、依然として高い水準で推移しており、捕獲による個体数の削減がまだまだ必要であることが示されています。 環境省はシカの生息頭数を令和5年度までに約150万頭まで減らすことを目標としており、捕獲等による対策の推進が実施されています。 直近の全国シカ被害 多くの地域で、シカによる被害が増えて深刻化しており、各自治体でも対応に苦慮している状況です。 奈良公園周辺 奈良公園(奈良市)は天然記念物のシカ約1300頭が生息しており、年間約1000万人が訪れる人気スポットです。しかしながら、今年は新型コロナウイルスによって観光客が減少し、シカが観光客から鹿せんべいをもらえなくなりました。 その結果、木の実などの餌を求め、シカが市街地や山林部に移動。商店の売り物が食べられたり、周辺の畑や花壇が荒らされるなどの被害が発生しています。 群馬県甘楽町 群馬県は関東地方では最大のりんご生産量を誇ります。甘楽町は豊かな自然を生かして化学農薬を抑えて、「陽光」や「ふじ」などの品種をはじめとした美味しいりんごが生産されています。 しかしながら、近年シカによるリンゴの食害が深刻化しており、今年は収穫が例年の3分の2程度に落ち込みそうな農家や、畑の約半分が被害に遭ったという生産者もいる状況です。 シカによる食害が広がるとともに、町内でのシカの捕獲頭数も右肩上がりとなっており、2015年度は31頭だったのが、本年度は11月4日時点で既に201頭に上っています。 静岡県伊豆半島 かつては、伊豆半島では国有林の中においてシカが保護されており、「鳥獣保護法」により、メスは捕獲禁止、オスは1日1頭と制限がかけられていました。 しかし、伊豆半島や富士山周辺でシカによる食害が深刻化。樹皮剥や下層植生の食害をはじめ、田畑にも被害が出ているため、本年度からメスジカを狙ってわなを集中的に仕掛け、繁殖を抑えるメスジカ重点捕獲を開始しています。 シカを捕獲するには? シカの食害を根本的に減らすには、捕獲による個体数の削減が必要になります。具体的には、「くくり罠」「箱罠」「囲い罠」といった罠を使って捕獲を行います。 以下のページにて、それぞれの罠の特徴や動作について説明していますので、参照くださいませ。※罠の設置には基本的に、「わな猟免許」が必要になります。 各種わな説明&販売ページ 箱罠 シカの捕獲に適した実績多数の箱罠です。出没する場所を選んで設置します。もっと詳しく>> くくり罠 初心者からベテランまで。安くて高捕獲率と好評のくくり罠です。もっと詳しく>> 囲い罠 天面の半分が開いており、条件を満たせば狩猟免許不要で設置できます。もっと詳しく>> よくある質問 Q:餌を使ってシカを誘引したいが、どうすれば良い? A:代表的なのはアルファルファやヘイキューブ(アルファルファなどの乾草を固めたもの)を使った誘引です。草以外のものを使った誘引方法と比べると、他の動物を誘引する可能性が低いため、広く用いられています。 一方で、シカが食材として認識しない場合もあるので、誘引が弱いと見受けられる場合は、別の種類の誘引餌(トウモロコシや大麦、米ぬか、くず野菜など)を使います。 なおヘイキューブ以外の誘引餌の場合、イノシシ等他の動物を引き寄せる場合もあります。そのため、鉱塩や醤油を使って誘因する場合もあります。 また近隣において同じ作物を栽培しており食害が見られる場合は、同じ作物を誘引に用いると農作物に対しても獣が執着する可能性があるので、注意が必要です。 Q:捕獲したら、どのように対処したら良い? A:いずれの罠においても、罠にかかった獲物は、捕獲対象獣であれば、絶命させなければなりません(止め刺し)。止め刺しには、銃、ナイフ、鉄パイプ、電気止め刺しなどを用います。 鉄パイプの場合、後頭部~首のあたりに強い打撃を与えます。ナイフの場合は、心臓や頸動脈などを狙って刺します。 シカはイノシシに比べると反撃をしてくる可能性が低く、基本的に人間から逃げようとしますが、至近距離ではオスの場合角で突き上げてきたり(特に発情期のオス)、足で蹴って暴れる場合もありますので十分な注意が必要です。 野生の力は思った以上に強いので、油断することなく、手に余りそうな場合は無理をせず、いざというときは熟練者にサポートを依頼できる状態にしておきましょう。 またくくり罠の場合、スネア(足を括る部分のワイヤーの輪)から足が抜けたり、勢いで足がちぎれてしまうことがあるので、なるべくシカが助走距離をとりずらい方向から近づき、支柱となる木にワイヤーが絡まる方向にシカが逃げるよう誘導して、シカが動けるエリアを狭めるように近づくと良いでしょう。
狩猟解禁!今年の猟の状況は?
多くの地域にて、今月15日に狩猟が解禁されました。キジやカモ、イノシシ、シカといった鳥獣をターゲットに、多くのハンターが活動を開始しており、「今年も始まったか!」と感じている方も多いと思います。今年の各地の猟の情報も入ってきており、一部紹介できればと思います。 秋田県 今年もツキノワグマ・イノシシ・ニホンジカの狩猟解禁が11月1日に前倒しとなり、カモ猟の解禁と重なりました。イノシシ目撃頭数が129頭と過去最多で被害も相次いでいるので、狩猟の成果も期待できるところです。狩猟期間は来年2月15日までですが、ニホンジカとイノシシ猟は3月15日までです。 宮城県 狩猟の解禁とともに、河川では車や徒歩で移動しながら猟をする「流し猟」でカルガモを仕留めている姿も。狩猟期間は2021年の2月15日まで。 千葉県 イノシシの行動が活発です。館山市では、2020年度のイノシシの捕獲数がすでに過去最高とのこと。豚熱陽性のイノシシが近県で確認されており防疫措置の協力と、昨年の台風によって猟場が荒れたままになっているところも残っているため十分な注意を。 群馬県 シカによる被害が目立ちます。甘楽町などではシカによるリンゴ食害が深刻化しているそうです。町内の捕獲頭数は本年度、既に過去最多の200頭余りに上っているとのこと。 富山県 主要な狩猟獣であるキジやヤマドリ、カルガモ、タヌキなどの生息数は平年並みとのこと。猟期は来年2月15日まで。※イノシシとニホンジカは農作物被害防止のため、猟銃、わな猟ともに3月31日まで。 長野県 「豚熱の影響かイノシシが少ない印象」という声を聞きます。※人の移動による豚熱(豚コレラ)ウイルス拡散を防ぐため、長靴や車両のタイヤの消毒などを呼び掛けています。狩猟期間は来年2月15日までですが、鹿とイノシシのわな猟は3月15日までです。 福井県 今秋はツキノワグマの出没や人身被害が相次いでいます。捕獲後に山で放獣したり、駆除したり猟友会が頑張っているとのこと。今年4〜10月の出没件数は953件で、統計を取り始めた04年度以降で3番目に多い状況です。捕獲数は嶺北153頭、嶺南31頭。うち、嶺北120頭、嶺南28頭の計148頭が駆除され、駆除率は全体で8割を超えているそうです。 愛知県 豚熱に対し、引き続き警戒体制が行われています。野生イノシシの豚熱陽性確認地点から半径10kmの区域を含む市町村が陽性エリアとされており、陽性エリアで狩猟する場合は、消毒などを実施するよう呼びかけられています。 陽性エリア:名古屋市、豊橋市、岡崎市、瀬戸市、春日井市、豊川市、豊田市、西尾市、蒲郡市、犬山市、小牧市、新城市、尾張旭市、日進市、みよし市、長久手市、幸田町、設楽町、東栄町、豊根村 山梨県 女性の狩猟免許取得者が急増しており、特にわな猟免許の取得が多いそう。一方でクマの目撃情報が多く、今月15日には北杜市の山林で狩猟中の男性がクマに襲われ顔などに軽いけがというニュースもありました。くれぐれも安全第一で。 和歌山県 夏場は、串本町と古座川町で、有害鳥獣駆除によるイノシシの捕獲数が大幅に増えていると聞きましたが、直近では「場所によっては、豚熱の影響でイノシシが全然いない」という声も。 10月中旬以降、奈良、大阪、和歌山の3府県で感染イノシシが初めて確認されており、農水省は封じ込めに向け、経口ワクチンベルトを設けて対策を進めてきたものの、西日本での一層の感染拡大が懸念されています。 兵庫県 2016年に再開されたツキノワグマの狩猟は、今年は生息数が狩猟解禁基準の800頭を下回ったとして再び禁止に。大物猟ではイノシシやシカをメインターゲットに活動するハンターも多いようです。初猟で早速イノシシを仕留めたとの声も。イノシシと二ホンジカの狩猟期間は3月15日までで、他の鳥獣は2月15日まで。 岡山県 山だけでなく、街でもイノシシが大暴れ。今月20日には岡山市南区のホームセンターにイノシシが出入り口のガラスを突き破って中に侵入。岡山南署員や地元猟友会員ら約40人が出て、約1時間後に店内で取り押さえたそうです。 福岡県 イノシシとシカの狩猟期間は、開始が一足早めの11月1日、終了は3月15日までです。スタートから多くの獲物に恵まれているとの声も。 その他の全国概況 クマが生息している地域では、出没情報や被害が相次いでいます。 全国でのクマによる人的被害は、環境省がまとめた速報値で、10月末までに132人。都道府県別では岩手県(26人)が最多、新潟県(14人)、石川、福井両県(12人)と続きます。秋田、新潟両県ではそれぞれ死者が1人出ています。全国の出没件数は4~9月で1万3670件に達し、16年度以降の5年間で最も多いそうです。 また感染症による影響も耳にします。新型コロナの影響によって飲食店に足を運ぶ客が減少、ジビエの消費が減っているのに加え、イノシシは豚熱の感染の影響によって21の都府県の一部地域で出荷ができなくなっています。厳しい経営に陥っている食肉加工施設もあるようです。 その他、全国で大ヒットを記録している「鬼滅の刃」のキャラクター「嘴平伊之助(はしびらいのすけ)」の恰好を模したコスプレイヤーが猟期の山に無許可で入って立入禁止区域で猪のお面つけて撮影して話題となったニュースもありました。狩猟が行われている場所では誤射の可能性もあり、猟をする側からすると本当に危険であり止めてほしいところです。 台風等の影響で、足場の悪いところが残っているかとおもいます。そういった場所ではつまづきやスリップに特に気を付けつつ、ルールやマナーを守って、今年もご安全に猟を楽しみましょう。
くくり罠のバネについて
くくり罠は、文字通り獣の足をバネの力で括って(くくって)捕獲する罠です。バネによって罠が作動する際の瞬発力が変わってくるので、くくり罠を構成するパーツの中でも特に重要なものになります。 くくり罠に使用されるバネの種類 くくり罠に使われるバネの種類は押しバネ、引きバネ、ねじりバネ(松葉式ばね)です。 こちらの記事もどうぞ 跳ね上げ式の足くくり罠を使って捕獲率アップ> 押しバネ 押しバネを使ったくくり罠は、最もオーソドックスなものになります。押しバネは別名 圧縮バネとも呼ばれ、コイル状に巻かれたバネの事です。力がかかっていない状態では、コイルに隙間(ピッチ)があいています。 押しバネはボールペンを分解すると出てくるバネで、罠を使ったことが無くても見たことがある人は多いのではないでしょうか。くくり罠だけでなく、機械部品や車などにも幅広く使用されています。 くくり罠に使用する際は、罠を仕掛けるときにバネを圧縮しておき、作動時にバネが伸びる力を利用して捕獲します。 上記の動画にあるように、押しバネを圧縮した状態で固定してくくり罠を設置しますが、バネを圧縮するには結構力が要ります。※貧弱なバネだと獣の瞬発力に勝てないので、それなりに強いバネを使用します。 因みに押しバネは、軽荷重の場合には一般的にコイル径が細くピッチも小さめですが、重荷重の場合にはコイル径が太くピッチも大き目に作られている場合が多いです。 バネがむき出しになっていると、圧縮する際にバネが歪んだり、作動する際に土や草木が引っかかってしまう場合もあるので、上記動画のように塩ビパイプ等の容器の中にバネを圧縮する場合も多くあります。 引きバネ 引張バネとも呼ばれ、押しバネとは違ってコイルに隙間がなく密着した状態で巻かれています。両端にフックが付いていて、引っ張ると戻る動作を利用します。 自転車のスタンドにも使われていて、用途がとても幅広いバネです。また、フックの形状を工夫することで使い方に様々な応用をきかせることができます。 上の動画にあるように、バネが引っ張られた状態で罠を設置しておき、トリガーが作動するとフックが外れてバネが縮む力によってワイヤーが締まる仕組みになっています。 通常、縦引きタイプの押しバネや、ねじりバネを使ったくくり罠は、地面に埋めて使用します。一方で、引きバネの場合は、仕掛けにもよりますが、穴を掘らなくても罠を作動させることができますので、地形条件に左右されにくいのも特徴です。 ねじりバネ 巻き込まれた力を開放しようとする動力をいかしたバネをいいます。洗濯ばさみにも使われているバネですので、イメージがつきやすいかと思います。 コイル部分は、一般的にピッチ無し(密着巻)ですが、用途によってはピッチがあるものもあります。線材が太いものほど力が力が大きくなります。 非常に力が強いバネで、人間の手で圧縮できないほど強力なものもあります。また、先端の形状や腕の長さによっても性能が変わってきます。 くくり罠に使用する場合、他のバネに比べると、圧縮したりする必要がないため、セッティングがしやすいという特徴があります。 一方で、跳ね上がる力が非常に強く、暴発によって怪我をすることもあるので注意が必要です。 バネを選ぶポイント バネは使っていくうちに、必ずヘタり(コイルの力が衰え、弾力性が落ちること)が生じます。ヘタリが生じると、くくり罠の性能を十分に発揮することができず捕獲率も下がります。そのため、ヘタったバネは交換することになりますが、状況に応じて少しバネの仕様を変えるのも手です。 たとえば、「どうも空ハジキ※が多い」といった場合は、よりバネの力を強くすると発生率を下げることができるかもしれません。バネの力が強くなればなるほど瞬発も早まるので、捕獲率を上げることが期待できます。※力が強いほど仕掛けるのが大変になり暴発で怪我をするリスクも出てきます。 ※空ハジキ:くくり罠が作動したにも関わらず捕獲できないこと ちなみに当店では押しバネを使ったタイプの罠を販売していますが、バネの仕様についてお問合せいただくことも多くございます。 塩ビパイプ内に押しバネを圧縮させるタイプをお使いの場合、圧縮長やコイル外径は塩ビパイプによって決まるので、塩ビパイプを変えない場合は線径を少しだけ変えたり、材質を変えたりするなど軽微な変更にとどめておきます。あまり大きな変更を加えることおススメしません。 ちなみに、押しバネの素材はピアノ線、硬鋼線、ステンレス線(SUS)があります。くくり罠は屋外で使用するのでステンレスが最適ですが、価格は硬鋼線<ピアノ線<ステンレス線となります。 塩ビパイプの仕様も変える場合は、スネア(足を括るワイヤーの輪。ワサとも呼ぶ。)直径をどの程度にするかまず考慮します。 適合するバネを調べたい場合は、まずお使いの踏み板等を基に、スネア外周の長さを測りましょう。 円形スネアの場合は、直径×3.14で外周の長さを計算することができます。例えば直径12㎝の円形スネアの場合、12×3.14で約36cmの外周となります。 外周の長さ=ばねが縮む長さとなります。くくり罠の場合は、少し余裕をもたせて、そこからさらに1.4倍を掛けた値をバネが縮む長さとします。 つまり、直径12㎝の円形スネアの場合、12×3.14×1.4で、ばねが縮む長さは約50cmとなります。 バネ全長-バネ圧縮長=ばねが縮む長さです。また、圧縮長すべてを塩ビパイプ内に収める場合は、塩ビパイプの全長=バネ圧縮長となります。 また、当然ながら塩ビパイプの内径よりもバネのコイル径は小さくなければなりません。 市販のバネは、バネの特性やバランスを考慮して仕様が決められていますので、安心して使用できます。自分でバネの仕様を設計するのは難しいので、上記の計算を基に、理想の圧縮長や全長、コイル径などをショップに伝えると良いでしょう。
タヌキの生態を理解して対策を学ぼう
古くから日本人にとって身近な動物であるタヌキ。里山付近はもちろん、住宅街にも出没し、野生のタヌキを目にしたことがある人も多いかと思います。 都市部に住んでいるとなかなか想像がつきませんが、タヌキは田畑や家庭菜園に侵入して作物を食べたり、糞を落としたりするため、厄介者でもあります。 イノシシやシカに比べると被害件数は少ないものの、毎年全国で1.5億円ほどの農作物被害を出しています(農林水産省発表ー平成30年度 全国の野生鳥獣による農作物被害状況)。 そんなタヌキの生態や被害対策について、今回は説明します。 タヌキの特徴・生態 日本には本州・四国・九州に生息しているニホンタヌキ(ホンドタヌキ)と、北海道に生息するエゾタヌキの2種類が生息しています。北海道は生息域は少ないですが、本州では特に近畿地方において生息域の割合が高いです。 体の大きさは、頭胴長で50~60センチメートル、尻尾を入れると60~80センチメートル程です。体重は3~5キロほど。 イヌ科に属するため、鼻の長い顔つきや足跡がなんとなくイヌに似ています。 単独または家族単位で行動し、縄張りは持ちません。また複数のタヌキが一定の場所に「ため糞」をするという習性があります。 昆虫やミミズ、果実・堅果、種子類や穀物のほかに、爬虫類や甲殻類、小動物、死骸や生ごみ・ドックフード等も食べます。 田畑を荒らす犯人はタヌキ?それとも・・・ タヌキは見た目や体の大きさがハクビシンやアライグマ、アナグマに似ているため、よく見間違えます。またいずれも雑食性で、色々なものを食べるという点でも似ています。 対策動物を間違えて対策をすると、効果が薄れる場合もあるので、まずはターゲットの動物がタヌキなのか、それとも他の動物なのか調べることが重要です。 見分け方としては、アライグマは尾に縞模様がありますが、タヌキの尾に縞模様はありません。他にも、特徴としてアライグマは手先が器用なので、スイカ等の皮に穴をあけて、くりぬいて中身を食べたりします。食痕を見ればアライグマが犯人だと比較的分かりやすいです。 また、ハクビシンだと鼻がピンク色で額から鼻にかけて白いラインが入っていますが、タヌキにはそれがありません。またハクビシンは尻尾がかなり長く、ジャコウネコ科なのでなんとなく動きもネコっぽいです。 アナグマはイタチ科に属し、指が五本で鋭い爪があります。一方でタヌキは4本指なので、足跡に違いが出てきます。また、タヌキが茶色の頭に黒い頬で、茶色+黒が混じった毛が多いのに対し、アナグマは目の上下が黒く、茶色+白っぽい毛が生えています。タヌキよりアナグマのほうが足が短く、ずんぐりむっくりしているのも特徴です。 ハクビシンやアライグマは高いところに登るのが得意で、高くて細い足場でも器用に移動します。そのため、好物である木の上の果実などを食べたり、雨どいから屋根裏に侵入したりします。 一方でタヌキは果実は好物であるものの木登りは苦手で、樹上の果実などを荒らすことはありませんが、落ちた果実を食べたりします。 参考記事 アライグマの生態・対策・駆除について>> ハクビシン対策について>> アナグマの特徴と対策について>> 知っておきたいタヌキ対策 まず、上記のような雑食性のため、生ごみやドッグフード、クズ野菜や落下した果実も放置しないように注意しなければなりません。タヌキに餌場として認識されないよう地域ぐるみで取り組むこと。また放置された果樹があれば、落ちた果実に獣が寄ってくるのを防ぐために、できるだけ伐採しておくと未然に被害を防ぐことができます。 物理柵による防護 タヌキは登ることが不得手で大型獣に比べると強くないので、物理的に侵入経路を塞げば、被害を大幅に減らすことができます。 タヌキを対象とした物理防護柵としては、 ①噛み切られたり押し広げられたりしないよう、金属製のフェンスであること ②地面と柵の間に隙間がないこと ③飛び越えられないよう、1.5メートル以上の高さがあること 必要に応じて、田畑の内部が見えないように目隠しすることも有効です。また、柵を設置する場所は事前に草等を刈っておくと、設置の際に地面と柵の間の隙間に気づきやすく柵を調整しやすいので、おすすめです。 おすすめ商品 簡単設置の防獣フェンスをご紹介!>> 罠による捕獲 頻繁に侵入され、被害が継続する場合は、捕獲も考慮しなければなりません。狩猟や有害鳥獣捕獲にて「箱罠」を使って捕獲します。※「くくり罠」を使って捕獲する場合もあります。狩猟や有害鳥獣捕獲で、年間2~3万頭ほどが捕獲されています。 箱罠は餌で誘引して罠の内部におびき寄せるので、タヌキの餌となるクズ野菜や放置果実などがそこら中にあると罠への誘引が難しくなります。罠以外の場所に誘引するようなものが周辺にあれば、しっかりと取り除いておきましょう。 誘引に使う餌は、果実やトウモロコシをおススメします。肉類やペットフードはタヌキ以外の動物がかかる可能性があるので、避けたほうが良いでしょう。
2020年(令和2年)度 都道府県別。狩猟期間リスト
はじめに 鳥獣保護管理法に定められた狩猟期間は毎年10月15日(北海道は、毎年9月15日)から翌年4月15日までとされています。 しかしながら、これはあくまで法で定められる最大期間であり、実際は鳥獣の保護を図る観点から、鳥獣保護管理法施行規則によって以下のとおり狩猟期間が短縮されています。 北海道以外の区域 毎年11月15日~翌年2月15日 (猟区内 毎年10月15日~翌年3月15日) 北海道 毎年10月1日~翌年1月31日 (猟区内 毎年9月15日~翌年2月末日) なお、対象狩猟鳥獣や都道府県によっては、猟期を延長又は短縮していますので、以下の内容を参考にされてください。※掲載されていない情報がある場合があります。最新の情報は狩猟を行う地域の自治体担当課にご確認ください。 また狩猟期間中においても、狩猟に係る行為が禁止又は制限されている区域(指定猟法禁止区域、鳥獣保護区、休猟区、特定猟具使用禁止・制限区域、猟区/放鳥獣猟区)がありますので、ご注意ください。 他にも、メスキジ・メスヤマドリは、平成34年9月14日まで全国一円で捕獲が禁止されています。ウズラは、平成24年6月に狩猟鳥獣の指定が解除され、捕獲できません。 都道府県別 狩猟期間 北海道・東北 関東 中部 関西 中国 四国 九州・沖縄 北海道 上述の通り、猟期は毎年10月1日~翌年1月31日です。 エゾジカ猟の規制緩和 エゾシカの個体数削減のため、狩猟においてもメスジカの捕獲数をできる限り確保する必要があることから、メスジカ捕獲の規制緩和が継続されています。 可猟期間 振興局 市町村 10月01日~3月31日 釧路 浜中町及び弟子屈町を除く管内全市町村 空知 管内全市町 石狩 管内全市町村 胆振 むかわ町を除く管内全市町 上川 上川町及び占冠村(猟区)を除く管内全市町村 留萌 管内全市町村(離島を除く) 宗谷 管内全市町村(離島を除く) 後志 管内全市町村 渡島 管内全市町 檜山 管内全町(離島を除く) 10月24日~3月31日 日高 新ひだか町、浦河町、様似町、えりも町 上川 上川町 10月24日~2月28日 胆振 むかわ町 日高 日高町、平取町、新冠町 オホーツク 斜里町(一部)及び西興部村(猟区)を除く管内全市町村 十勝 新得町、豊頃町、浦幌町を除く管内全市町村 釧路 弟子屈町 10月24日~1月31日 十勝 新得町、豊頃町、浦幌町 釧路 浜中町 根室 管内全市町村 10月24日~1月03日1月16日~1月31日2月13日~2月28日 オホーツク 斜里町(一部) 9月15日~4月15日 オホーツク 西興部村(猟区) 上川 占冠村(猟区) 可猟期間 振興局 市町村 10月01日~3月31日 釧路 浜中町及び弟子屈町を除く管内全市町村 空知 管内全市町 石狩 管内全市町村 胆振 むかわ町を除く管内全市町 上川 上川町及び占冠村(猟区)を除く管内全市町村 留萌 管内全市町村(離島を除く) 宗谷 管内全市町村(離島を除く) 後志 管内全市町村...
跳ね上げ式の足くくり罠を使って捕獲率アップ
獣の足をワイヤーでくくることによって捕らえる「くくり罠」ですが、いくつかのタイプに分かれます。今回は、その中の「跳ね上げ式」タイプについて説明します。 跳ね上げ式のくくり罠って? くくり罠には基本的にバネが使われます。使われるバネの種類は押しバネ、引きバネ、ねじりバネ(松葉式ばね)です。 このうち押しバネは、罠を仕掛けるときにバネを圧縮しておき、作動時にバネが伸びる力を利用して捕獲します。押しバネを使ったバネの場合、くくり罠が作動する方向によって「横引き式」か「縦引き式」、または「跳ね上げ式」に分かれます。 A:横引き式 作動時に押しバネが伸びる方向が横方向(地面と平行)になる方式です。 縦引き式と比べると作動時に高さが出ないため、足をくくるワイヤーの輪っか(スネア)が足の先のほうにかかりやすい傾向があります。そのため、捕獲率は縦引きより低くなり、空ハジキが生じやすいです。 括ったワイヤーの位置が足の先っぽのほうだと、ワイヤーから足が抜けやすくなって危険ということもあり、縦引き式のほうを好む方もいらっしゃいます。 一方で横引き式は仕掛けがシンプルで作るのが簡単、手間がかからないという点が長所です。「色々と試したけれども、横引き式が一番シンプルでやりやすい」という方も多くいらっしゃいます。 B:縦引き式 作動時に押しバネが伸びる方向が縦方向(地面と垂直)になる方式です。作動時に高さが出せるのでワイヤーのかかりが深くなり、罠にかかった足が抜けにくいという長所がありますので、熟練者に好まれる傾向があります。 足をくくる位置の高さは、一般的に、縦引き式≧跳ね上げ式>横引き式の順になります。※もちろん仕掛けや設置条件でも大きく変わります。 一方で、縦引き式は諸々の仕掛けを地中に埋めなければならないため、穴を掘るのに手間がかかってしまいます。 特に、地面が固くて掘りにくい場合や、木の根が多くて深く掘れない場合、土が崩れやすい地質の場合など、非常に手間がかかります。そのため、設置場所が限定されるということが難点です。 また、設置に時間がかかるので、人間の気配が残りやすく獣に警戒されてしまうこともあります。 シカはそれほどでもないのですが、イノシシは頭がよくて警戒心が非常に高い個体がいます。そういったイノシシの場合、罠の位置に気づいて通り道を変えたり、回避したり、中には掘り起こしたりする個体もいます。※もちろん個体差が大きいです。 C:跳ね上げ式 ワイヤーの輪っか(スネア)を取り付ける枠が付いた「踏み板」とセットにして使う方式です。 バネの作動方向は横引き式と同じですが、作動時に枠が立ち上がって足の上部を括ることが可能になっています。以下の動画が分かりやすいので、ご覧ください。 一般的に、跳ね上げ式も穴掘り作業が必要になるタイプが多いですが、バネの稼働部分は地中に埋める必要がないので、縦引き式よりも仕掛ける場所の制約が少なく、手間がかかりません。 短所としては、枠の動きが阻害されると罠が正常に作動しなくなる点です。 それを防ぐため、踏み板は完全に地中に埋めずに、土や葉っぱで少し覆う程度になります。ただ、そうすると仕掛けた痕跡を完全に隠すのが難しくなるため、警戒心が高い個体に気づかれるリスクも出てきます。 とはいえ、初心者に馴染みやすいという長所もあり、師匠・先生から跳ね上げ式を使ってレクチャーを受けたという方も多くいらっしゃいます。 結局、どのタイプがおすすめなの? 上記のとおり、くくり罠にも色々なタイプがあり一長一短あるわけですが、どのタイプを選んだらよいのでしょう。 結論から言うと一番良いのは、タイプ問わず使い慣れた罠を使うことです。どのようなタイプでも、使っていくうちに、クセやコツが分かってきます。また、経験に応じて改善のためのカスタマイズをしたり、そういった罠が一番捕獲率が高くなると思います。 初心者の場合や、特にこだわりはないけど別の罠を使ってみたいという場合は、上記3タイプの中でも一番バランスの良い、跳ね上げ式をお勧めします。様々なタイプの跳ね上げ式くくり罠が販売されていますが、仕掛けがなるべくシンプルで単価が高すぎないものを選ぶとよろしいかと思います。 既製品を購入する場合は、インターネット等で販売されているページに捕獲実績や使った感想が掲載されている場合もありますので、検討の際の参考になると思います。 イノホイおすすめの跳ね上げ式くくり罠 当店では、昔ながらのスタンダードな木板を使ったくくり罠と、コスパが良く多数設置にもおすすめな樹脂製くくり罠の、2タイプを用意しています。 昔ながらのベーシックタイプ コスパの良い樹脂製タイプ スタンダードタイプは、金属製のレールと木板からなる踏み板を、土に埋めた塩ビ台座上に乗せて使います。塩ビ台座には爪楊枝を挿す穴がついており、爪楊枝の本数で罠が作動する荷重を調整することができます。 樹脂製タイプは、価格が安いので多数設置する方におすすめです。 スプリング部分を自作して使う方が多くご利用になっています。口コミで人気が広がり、初心者から熟練者まで広く人気のある罠です。 ※くくり罠を設置する上限は、規制により30個までとなっています。設置した後は見回りが必要になりますので、管理できる範囲の設置数にとどめておきましょう。 まとめ 今回は罠のタイプごとの特徴を説明させていただきました。特にイノシシがターゲットの場合、くくり罠による捕獲は最初のうちは失敗が続くと思います。選ぶ罠のタイプはもちろん、状況に応じたPDCAサイクルを回すことも重要です。 各々の猟師によって好みもありますので、どのタイプが正解とは一概に言えませんが、それぞれに一長一短があるので、それを理解しておくと良いでしょう。また、仕掛ける場所の選定やテクニックによっても捕獲率は大きく変わりますので、もし周りに先輩や上級者がいれば意見を聞くのも良いと思います。 こちらの記事もどうぞ>>イノシシ捕獲のための虎の巻
イノシシ捕獲のための虎の巻
イノシシによる農作物の被害に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。 イノシシの被害は野生鳥獣の被害額から見ても、全体の約3割を占めており、早急な対策が求められています。 そこで今回は、イノシシ対策の中でもとくに効果を発揮する、捕獲についてご紹介します。具体的な捕獲方法や豆知識についても解説していますので、被害に頭を悩ませる方はぜひ参考にしてください。 イノシシ被害の現状は? イノシシの捕獲について解説する前に、まずは被害の現状から見ておきましょう。 農林水産省が行った「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(平成30年度)」によると、野生鳥獣による全国の農作物の被害は平成30年度で約158億円に達しています。平成29年度から約6億円の減少となっているものの、依然として高い水準で推移している状態です。 この中でもイノシシだけにフォーカスすると約47億円で、全体の約3割を占めています。これは鳥獣別に見てもシカの約54億円に次ぐ数字で、被害の大きさが窺えます。 参考サイト:全国の野生鳥獣による農作物被害状況 イノシシ対策には捕獲が必要 イノシシは繁殖力が高いため個体数の年変動が大きく、対策が遅れると被害はすぐに深刻化します。柵を設置してイノシシを遠ざける対策や、イノシシが近寄りにくい環境を作るといった対策も効果がありますが、抜本的な対策としては、被害を引き起こすイノシシの数を捕獲によって減らす方法が効果的です。 個体数そのものを減らすことで、地域全体で広く対策を講じていくことが重要となります。 イノシシの捕獲方法 イノシシを捕獲する方法として一般的なのは、「箱罠」と「くくり罠」の2パターンになります。参考記事>>イノシシ対策~罠の種類 まずは、それぞれの罠の特徴について見ていきましょう。 箱罠による捕獲 箱罠は、檻を箱状にして、餌を使ってイノシシを箱の内部に誘引することによって捕獲する罠のことです。 餌を使うため捕獲率が高く、くくり罠ほど知識やテクニックを要しません。 一つの箱罠で一度に複数の捕獲ができることも期待できます。一方で、くくり罠に比べると高価である点や、大きくて重たいため設置や移動に労力がかかります。 イノホイの箱罠商品はこちらから>> 天井面が半分以上が解放されている罠を見かけますが、これは箱罠ではなく囲い罠に分類されます。間違えやすいことも多いため、覚えておくと安心です。 くくり罠による捕獲 くくり罠は、ワイヤーを使って獣の足や胴を捕える罠のことです。ほとんどの場合が足くくり罠で、イノシシが歩く経路に予め仕掛けておき、イノシシが罠を踏むとバネの力でワイヤーが締まり、足を捕える仕組みになっています。イノホイのくくり罠商品はこちらから>> 箱罠と比べると、安価なので数多く設置することが可能ですが、効果を上げるには知識やテクニックを要します。また、捕獲後も獣の可動範囲が広いため、捕らえた獲物にとどめをさす時に危険を伴う場合があります。 イノシシの捕獲の前に知っておくべきルール イノシシを捕獲するには、前もって押さえておくべきルールがあります。 まず、前提としてイノシシをはじめとする野生鳥獣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)で保護されており、法令やルールから外れて捕獲することはできません。違法な捕獲は罰せられますので注意しましょう。 1.わな猟免許の取得のルール まず、罠を使用して野生鳥獣を捕獲するためには、原則として狩猟免許が必要になります。 狩猟免許の種類には、網猟免許・わな猟免許・第一種銃猟免許・第二種銃猟免許があり、箱罠やくくり罠を使うには、わな猟免許が必要です。また免許を取得したのち、実際に狩猟を行う前に、わな猟を行う都道府県で狩猟者登録をする必要があります。 参考記事>>害獣捕獲のための第一歩 ~必要な免許・許可について 狩猟免許の取得には試験があり、毎年4回程度、大体7月・8月・1月頃に実施されています。自治体によっては補助制度があるので、あらかじめ役所の担当課に問い合わせておくと良いでしょう。免許の有効期間は3年間で、3年ごとに更新が必要です。 2. 狩猟捕獲のルール 狩猟によって野生動物を捕獲できる期間、すなわち狩猟期間は11月15日から翌年2月15日となっており(北海道は10月1日から翌年1月31日まで)、狩猟期間中に捕獲を行う場合は「狩猟捕獲」を行うことになります。 イノシシ捕獲の場合は狩猟期間を広げている県もあり、狩猟期間の終了を延長していたり、開始を早めている場合もあります。 3.許可捕獲のルール 狩猟期間中はわな猟免許の取得と狩猟者登録をしておけば、罠を使った捕獲を行うことができますが、狩猟期間外に捕獲をする場合は「許可捕獲」の手続きを経て捕獲を行うことになります。 許可捕獲には、「有害鳥獣捕獲」と「個体数調整捕獲」の2つがあり、どちらも都道府県知事等の許可を受けて実施するものになります。※県によって市町村長に権限が移譲されています。 2-A. 有害鳥獣捕獲 有害鳥獣捕獲は、鳥獣被害が実際に生じている、もしくはその恐れがある場合に、被害の防止や軽減を図るために行うものです。原則として、防除対策によっても被害が防止できないと認められるときに実施します。 有害鳥獣捕獲を実施する場合、事前に申請書等を窓口に提出して、捕獲許可証を発行してもらうことが必要です。許可証を持たずに有害鳥獣を捕獲することはできません。具体的な流れや手続きの方法は、各役所の担当窓口に問合せましょう。 自治体によっては捕獲器を貸し出していたり、その他サポートを行っている場合もあります。 2-B. 個体数調整捕獲 都道府県が自ら計画を立てて(特定鳥獣保護管理計画)、計画的な野生鳥獣管理を実施する仕組みのことです。 例:宮崎県のイノシシ管理計画 対象地域において特定鳥獣の個体数調整を行う際には、特定鳥獣の数の調整の目的として捕獲許可を受ける必要があります。 イノシシを捕獲するためのコツ イノシシを効率的に捕獲するには、そのための知識やテクニックを知っておく必要があります。 コツその1:イノシシの生息情報や行動を把握する 罠の設置場所を選ぶにあたって、イノシシの出没状況を見極める必要があります。足跡や糞、体に泥をこすりつけた跡、食痕、被害・目撃情報などをもとに、イノシシの行動を把握しましょう。 参考記事>>くくり罠の成果を上げるためのコツ 近くにぬた場(イノシシが水浴びをした場所)がある場所や、獣道が多く存在する場所にはイノシシが頻繁に出没すると考えられるため、この付近に罠を設置すると良いでしょう。 参考記事>>箱罠の仕掛けテクニック コツその2:シチュエーションに合った捕獲器を選ぶ イノシシ捕獲用の罠は、初心者向けのタイプから上級者向けのタイプまで、様々なものが市販されています。くくり罠の構成品であるバネひとつをとっても、固さや長さに様々なものがあります。 例えば、バネが強じんなタイプは捕獲率は高いですが、パイプにセットする際に力を要するため女性や高齢の方では設置に苦労する場合があります。きちんと使いこなせないとせっかく罠を設置しても捕獲率が下がるため、自分に合った最適な罠を選ぶことが大切です。 コツその3:捕獲率が高い場所を探す くくり罠の場合、罠を踏ませるまでに熟練が必要になります。イノシシは馴染んだ道を好んで通う習性があり、道を歩くとときは足の置き場所まで毎回同じというケースも多く見られます。 この習性を利用して、イノシシの足跡を見つけたら、あえてその足跡を消してみて反応をうかがってみましょう。消した後にまた新しい足跡ができていたら、その道は非常に捕獲率が高い場所と考えられます。そこにくくり罠を配置することで、すぐに捕らえることができたケースもあります。 こういった「場所の見極め」テクニックを学んでいくことが、捕獲率アップのための近道になります。 イノホイおすすめの箱罠をご紹介 イノシシの捕獲向けの罠を購入するにも、どれを選べばよいか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。イノホイでは、イノシシをはじめとした鳥獣捕獲向けの箱罠やくくり罠を幅広く取り揃えています。 ここでは、とくにおすすめの罠を4つご紹介します。 イノホイおすすめの箱罠 累計販売実績1万台を超える評判の箱罠が「ファーレ旭式★箱罠ビッグサイズ」です。 市場で多く出回るワイヤーメッシュ製ではなく、異形鉄筋を使用することで大型サイズ獣にも負けない頑丈な構造を実現。捕らえた獲物が箱罠の内部から持ち上げられないよう防止機構を設けることで、高い捕獲率をほこります。また、初心者の方でも組み立てやすく、設置しやすい点も人気の秘密。 全国の自治体様や、猟友会様、農協様、農家様からも「頑丈で、安くてよく獲れる」との評判をいただいています。 商品は落とし扉が片側のタイプと両側のタイプを用意していますので、用途にあわせてお選びください。 イノホイおすすめのくくり罠 くくり罠には、昔ながらのベーシックなタイプの「ファーレ旭式★くくり罠 完成品」と、初心者からベテランまで広く人気がある踏み板「くくり罠用踏み板イノシシホイホイ」を用意しています。 「ファーレ旭式★くくり罠 完成品」は、獣が踏み板を踏み抜くと、ワイヤーが獣の脚の上部を括る仕組みで、初心者でも設置しやすく頑丈な商品に仕上がっています。また、誤作動を防ぐ押さえ金具を取り付けることで、万が一の事故リスクを軽減できるため、安全性が高い点も特徴です。 「くくり罠用踏み板イノシシホイホイ」は、熟練の猟師監修の元で型取りを行い、樹脂成型を採用することでコストダウンを実現。水を吸わないため、天候による動作不良を軽減することもできます。 ワイヤーやバネ等をカスタマイズし、踏み板と組み合わせて使っているベテランの方も多く、一度に大量の罠を設置したい方にとってはコストパフォーマンスにも優れている商品です。 まとめ 今回はイノシシの捕獲方法や豆知識、おすすめの罠についてご紹介しました。 イノシシによる農作物への被害額は年間で約47億円。これは鳥獣による被害額全体の約3割にも達します。イノシシは繁殖力が高く個体数の年変動も大きいため、対策が遅れると被害はすぐに深刻化します。 抜本的な対策として捕獲は効果的なため、地域と連携して対策を講じていきましょう。
【イノシシ捕獲】空ハジキ(から弾き)を減らすための、くくり罠テクニック。
くくり罠を使って獣を捕獲するにあたり、2つのハードルがあります。 まず1つ目のハードルは、獣にしっかりとくくり罠を踏んでもらうこと。 獣の足の運びを予想して、踏み込むであろう位置にピンポイントでくくり罠を埋めるわけですが、初心者のうちはどこに埋めれば良いのか読み取れません(参考記事:くくり罠の成果を上げるためのコツ)。 獣の動きが読めるようになって、板を踏ませられるようになってくると、2つ目のハードルとして「空ハジキ」が見られるようになります。 「空ハジキ」とは、くくり罠が作動したにも関わらず捕獲できないことです。仕掛けた側からすると「ちゃんと踏ませることができたのに、なぜ?」となりますが、工夫によって空ハジキを減らすことは可能です。 今回は、空ハジキを減らすための、くくり罠テクニックについて説明します。 空ハジキの要因 くくり罠を使った捕獲においては、空ハジキはどうしても起こるものです。空ハジキが起こる要因はさまざまですが、考えられる要因はできる限り対策しておくことが重要になります。 代表的な要因と対策を以下に紹介します。 要因1:罠の動作は正常だが、逃げられているケース 特にターゲットがイノシシの場合は、他の動物に比べて俊敏かつ警戒心が高いです。そのため、空ハジキも他の動物と比べると多くなってしまいます。 イノシシは足場が不安定と感じると、サッと足を引っ込めます。 しっかりと踏み込んでもらうためには、仕掛けた際にガタつきが出ないように工夫する必要があります。台座があるタイプの場合、設置の際に台座がグラグラしないように気を付けます。台座をセットして上から手で押さえた際に、台座が沈んだり動いたりしないようにすることが大切です。台座を杭や板などでガッチリ固定されている方もいらっしゃいます。 また、穴を掘るタイプのくくり罠の場合は、踏み板の下の穴は出来るだけ深い方が望ましいです。 動作荷重が軽すぎる場合も空ハジキが起こる要因になります。ターゲットがしっかりと踏み込んだ場合に罠が動作するよう、動作荷重をテスト・調整しておくと良いでしょう。イノシシであれば、20kg以下では作動しないような荷重調整とすることが多いです。 使用する罠の構造にもよりますが、竹串や爪楊枝は色々な調整に使えるのでおススメです。 ★跳ね上げ式くくり罠の場合のワンポイントアドバイス 以下の図のように、獣道(オレンジの線)に対してアームが横側に上がるようにし、かつ くくり金具がアームの付け根(蝶番)近くになるようにして配置すると、空弾きが少なくなる傾向があります。 アームが獣道の前後に上がるようになる設置方法は、獣の脚が邪魔になり、空弾きの原因になりやすいようです。 ターゲットとなる獣がよく通っているであろう道を探し、その通い道をよくチェックして、どのような足の運びをしているか予測したうえで設置場所を決めます。よく観察すると、右足と左足をどの位置に置くか読めるようになります。 後ろ足にワイヤーが掛かった場合は足が切れたり、ワイヤーが切れたりしやすいので、前足を狙いましょう。また、シカやイノシシの脚は、先端に主蹄、かかとの位置に副蹄が付いており、ワイヤーがそのどちらかの上部を括ることができれば、ワイヤーは抜けにくくなります。 要因2:罠は正常だが、うまく作動していない 踏み板の端のほうを踏まれた場合、荷重のバランスが偏るため正常に動作しなかったり逃げられたりしやすくなります。そのため、踏み板の中央部を踏ませる確率を高くする工夫が必要です。 障害物(木の枝や石など)で周囲の部分を踏みにくいようにして、踏み板の中央部を踏ませるように誘導すると良いでしょう。 カモフラージュの土や葉っぱが多すぎると、罠の動作が阻害される場合もあります。また、くくり罠の周りの土が崩れやすい場所だと、崩れて作動不良となることもあるため、できるだけ崩れにくい場所に仕掛けるようにします。 やむを得ない場合には、設置の際に周囲の土を固めて、獣が踏んでもくくり罠の周りが崩れにくいようにしておくこともあります。 罠が凍結してしまい不作動となったり、雨で土が重くなってしまい作動が遅くなったりするケースもあります。 作動不良の要因となるものができるだけ少ない場所を選んで設置することも重要です。 要因3:仕掛けに起因して、うまく動作していない 罠の部品が原因でワイヤーの動きが鈍くなる場合もあります。たとえば、ワイヤーに癖が付いていたり、折れ曲がり(キンク)がる状態だと、抵抗が生じて動きが阻害されます。 大物が1回かかるとワイヤーはほぼ使い物にならなくなるため、ワイヤーは消耗品と捉えておくと良いでしょう。他にも、パーツの損傷や変形によって罠の動きが阻害されそうな場合は、安全上の観点からも、迷わず新しいものに交換しましょう。 また、締まるときに部品による抵抗がなくなるよう色々と仕掛けを工夫すると良いでしょう。罠猟はよく魚釣りに例えられます。釣果の良い釣り人は、釣れなくても仕掛けの状態をよく観察しています。 そして試行錯誤のうえ色々な工夫をしています。魚釣りが上手な人は、罠猟も上手なことが多いです。 お使いの罠の構造をよく観察したり、上手な人に話を聞いてみたり、インターネット等で情報を集めてみるのも、空ハジキ解決のためのヒントが多く得られると思います。 要因4:ターゲット以外によって、くくり罠が作動している ターゲットではない他の動物によって、くくり罠が作動させられていたというケースがあります。例えば、イノシシをターゲットにしているものの、タヌキによって罠が作動させられてしまった等。 動物ではなく、その他の要因で作動させられていることもあります。空ハジキが起きた場所や、周囲の状況をしっかりと観察し、必要に応じてトレイルカメラ等を使うのも良いでしょう。 まとめ 罠を設置すると、獣がその通い道を通らなくなったり、罠のある箇所を避けて迂回路を作られることもあります。基礎として、人間の匂いや痕跡をなるべく残さないように罠を設置することが重要です。 それに加え、今回解説したような空ハジキの原因となるものを事前に排除しておくことにより捕獲率を上げることができます。罠のコンディションは事前にしっかりとチェックしておくことをお勧めします。 上記以外にも様々な捕獲失敗パターンがありますが、概ね上記に該当することが多いかと思います。空ハジキにお悩みの方は是非参考にしていただけると幸いです。
箱罠の仕掛けテクニック
獲物が罠に対してスレていない(学習していない)場合は、罠を使って多く捕獲できるチャンスです。しかしイノシシは他の動物に比べて警戒心が強く、神経質。そして学習能力も高いため、明らかに自然のものではない箱罠を使用する場合にかかりやすいのは、スレていない子イノシシが中心となります。 特に、スレたイノシシが多いエリアでは、箱罠を設置したが一ヵ月近く何もない、というケースも多くあります。この記事では、そのようなシチュエーションにおいても箱罠で捕獲するにはどうしたら良いか、考察してみます。 まずは状況・行動観察から 体重が50キロを超えてくるようなイノシシは、罠や人間について色々と学習しているため、箱罠に入りにくくなる傾向があります。 罠の状態を目で見て、獲物がどのような行動をしているか推測することも大切ですが、「確かに居る痕跡があるのに、なんで箱罠に入らない?」となった場合は、人間の目が無いときにどのような彼らが行動をしているか、トレイルカメラを使って録画してみることも一つの手です。 トレイルカメラをセットすることにより、昼間でも罠付近に人間がいない時間や、夜間のイノシシの姿を確認することができますし、イノシシ以外の動物の行動を見ることができたり、ワナや掛かったイノシシの盗難を検挙できたりすることができます(カメラを仕掛けた位置はカモフラージュして、見つけにくくすると良いでしょう。大抵のトレイルカメラは迷彩柄などになっており、野外で目立たない色になっています)。 警戒の程度を推し量る トレイルカメラで撮影された映像を見ると、様々なヒントを得ることができます。 例えば、上のトレイルカメラ映像では、多くの子イノシシと、メスの成獣イノシシが数匹写っていますが、設置間もない箱罠のようで、警戒して中には入らない状況です。 カメラの映像を見ながら、イノシシの警戒の程度を推し量り、「先に子イノシシを獲ると、成獣が学習してしまって捕獲まで相当な時間がかかりそうだな・・・まずは成獣狙いで、しばらく根気比べで成獣の警戒心をじっくり解こう」など作戦を立てることができます。 警戒を弱める工夫をする 箱罠による捕獲をする場合、イノシシの警戒心を解いて罠に近づけさせることが最初のステップになりますので、彼らが慣れて中に入るようになるまでは罠の扉が落ちないようロックしておきます。 こちらの記事にもある通り、日々見回りをして様々なサインを読み取ることが重要です。そして、罠の奥までイノシシが入り、エサを頻繁に食べるようになるのを待つわけです。 細かいテクニックは人によって様々ですが、代表的なものをいくつか紹介します。 1. 箱罠の底面には土を被せ、網を見えなくする 以下の動画の箱罠は、何年も移動させることなく設置しているものですが、毎年しっかり捕獲できています。設置の際に、底面に土を被せ、網を見えなくしたのですが、月日が経ち、周りの自然と一体化しています。このような箱罠は捕獲率が高い傾向にあります。 2. 両扉の場合、最初は両方の扉を開けておく 両扉タイプの箱罠の場合、最初は両方の扉を開けておくと、警戒心が解けて箱罠の中の餌を食べるようになるまでの期間が短い傾向にあります。箱罠の中の餌を食べるようになったら、片方の扉を閉じてトリガーを作動させるようにしておくとよいでしょう。 3. 撒き餌の劣化防止のために、箱罠の上にコンパネ等をかぶせる 雨が降ったりして餌が流れてしまうと、せっかくの慣らしがまた一からやり直しになったりする場合もあります。罠の内部に餌を置く場合、箱罠の上にコンパネなどをおいておくと、カラス等が餌を見つけて荒らすことを防げたり、雨が降っても餌が濡れないようにできます。 仕掛け応用例 下記のような応用ができるため、蹴り糸方式の箱罠がおすすめです。蹴り糸は、丈夫で見えにくいヒモが良いです。皆さま様々な工夫をされています。 例としては、 ・細いワイヤロープ(1、2mm)を黒く塗装 ・手芸用のステンレスワイヤーを使用 ・麻のひも ・カズラ(つる草)を蹴り糸の代わりに使う ・ピアノ線を使用 また、イノシシが接触する部分は丸太、竹棒などにすると警戒が薄まる傾向があります。そこに蹴り糸を接続し、丸太等が動くと仕掛けが動作するように応用する場合もあります。 以下の図にあるように、餌の上に大きな木の枝や幹を乗せかけて、片方を蹴り糸でしっかり結んでおきます。この際使用するのは、ホームセンターで購入した生竹や生木ではなく、箱罠を設置する場所周辺にある自然のもの(枯れ木など)が良いでしょう。 このような仕掛けをする意図としては、箱罠の内部の餌をイノシシが食べる際、乗せかけた木の枝や幹が邪魔になるので、彼らは自然と鼻でそれらを退けようとします。そこで蹴り糸が引っ張られ扉が落ちることを狙うわけです。 他にも、皆さま様々な工夫を凝らして捕獲しているようです。これが必ず正解!ということはありませんが、他の人のやり方を聞いたり、イノホイの他の記事も是非参考にしてみてくださいね。
くくり罠の構成部品・パーツについて
くくり罠とは、獲物の体を括る(くくる)ことによって捕獲する罠のことです。括る部位によって、「胴くくり(胴ではなく首をくくる場合もあります)」と「足くくり」に分かれます。このうち、多くの人が使っているのが「足くくり」です。 足くくり罠は、仕掛けておいた罠が作動した瞬間にワイヤーが締まり、足首を拘束する仕組みになっています。予め張っておいた蹴り糸に獲物が触れると作動する「蹴り糸タイプ」、地面に仕掛けておいた踏み板を獲物が踏むと作動する「踏み板タイプ」に大別されますが、この記事では、「踏み板タイプ」の構成部品について説明します。 ※胴くくりの場合、罠の大きさの規制に引っかかること、構造上事故が起こるリスクが高いこと、捕獲した獲物は短時間で欝血死してしまうことから、足くくりを選択するケースが多いです。 ワイヤー くくり罠に使用できるワイヤーの太さは、法令により4mm以上と規定されています。たった1mm太さが違うだけでも、くくり罠の作動の早さは大きく変わります。ワイヤー径が細いほうが作動が早く、獲物の脚をくくる確率が上がりますので、捕獲率は高くなります。一方で、径が細いほうがワイヤーは切れやすくなります。 当然、4ミリ系よりも5ミリのほうが、5ミリより6ミリのほうが丈夫さは大きく上回ります。 特に、傾斜がある場所で後ろ足を括っていた場合、獲物の体重と勢いでワイヤーが切れてしまうケースもあります。人間が思うよりも野生の力は強大です。安全のため、ワイヤーは都度交換されることをお勧めします。 なお、くくり罠に主に使用されるワイヤーは、複数の素線の束を組み合わせた構造の「ワイヤロープ」と呼ばれるものです。ロープ径だけではなく、素線の数と配置によって柔軟性や耐性が変化します。柔らかいワイヤーを選択すると作動のスピードが上がりますが、ねじれやすいので大物獣がかかると切れやすくなる傾向があります。 スリーブ(クランプ管) ワイヤロープのロック止め(加締め)に使用します。ワイヤー径に応じたサイズを選んで使用します。なお加締め作業は、アームスエージャー等の専用工具が必需になります。 バネ くくり罠が作動するための動力となるのがバネです。バネの性能によって罠の作動が大きく左右されます。押しバネ、引きバネ、松葉式バネ(ねじりバネ)等のタイプがあります。バネの力が強いと作動も早くなりますが、設置に難儀したり、意図せぬ作動によって怪我をする場合もあるので注意が必要です。 押しバネ 圧縮したバネが元に戻る力を使ってワイヤーを締めるタイプです。塩ビ管等にバネを押し込むことで圧縮させます。安価で構造もシンプルであるため、製作や設置が簡単であるという点が長所です。初心者から上級者まで、幅広く採用されているタイプになります。 引きバネ 押しバネとは逆で、引っ張られたバネが元に戻る力を使ってワイヤーを締めます。 松葉式(ねじりバネ) 中心部がねじられてコイル形状になっており、それによる弾性力によって端末部(腕)が元に戻ろうとする力を使ってワイヤーを締めるタイプです。締め上げのスピードが速く捕獲率が高い事や、押しバネや引きバネと比べると強度がある点が長所として挙げられます。一方で、意図せぬ作動によって失明等の重篤な怪我をするケースも散見され、罠の扱いに慣れた中~上級者向けのバネといえます。 より戻し 「猿環」(さるかん)や「スイベル」(Swivel)とも呼ばれます。捕獲した獣が暴れているうちに、くくり罠のワイヤーが捩れて(撚れて)、切れやすくなるおそれがあるため、撚りを戻すために使用するパーツになります。なお、より戻しを装着していないくくり罠は、法令により使用が禁止されています。 くくり金具&締め付け防止金具 くくり金具(写真中の黒い金具)は括ったワイヤーから獲物の脚が抜けないようにするものです。獣が脚を引っ張るほど抜けにくくなります。また、これがあると容易にワイヤーの輪(スネア)を広げられるので、錯誤捕獲の場合も逃がしやくできます。 締め付け防止金具(写真中の蝶ネジがついた金具)は獲物を括るワイヤーが過度に締まりすぎないよう、輪の絞りを制限する金具です。過度に締め付けてしまうと、獣の脚が欝血を起こしたり、足をちぎって逃げたりしてしまいます。より戻しと同様、こちらも装着していないくくり罠は、法令により使用が禁止されています。 ワイヤー止め バネを締めた際などのワイヤー上の支点として使います。 シャックル くくり罠の支柱となる立木などにワイヤーをくくり付ける際に使います。折れにくく、しっかりした木を選ぶと良いでしょう。見極めができるのであれば、しなりがあり、かつ折れにくい支柱にワイヤーをくくり付けておけば、捕獲した獣が引っ張ることによるワイヤーへの負荷を軽減することができます。 踏み板 獲物が踏み板を踏むとバネの力でワイヤーが締まって、足を括ります。様々なタイプがありますが、踏み板を踏むとワイヤーガイドが上に上がり、水平より上になるとバネの力でワイヤーが締まる仕組みのものが多いです。獣の通り道の地面に設置します。 ※設置した際、ワイヤーの輪の直径が12cmを超える罠は使用が禁止されていますが、都道府県ごとに規制が緩和されています。予め、捕獲を行うエリアの規制がどのようなものになっているか、各自治体に確認しておくとよいでしょう。 上記のような、パーツを組み合わせて、パーツの選択次第で捕獲率は大きく左右されます。市販品は各メーカーが最適な組み合わせを考慮したうえで設計されているので、パーツ選択で試行錯誤する手間が省けます。自作の場合は、各々の経験や工夫を盛り込むことによって独自の仕掛けを作ることができる点が醍醐味です。 注意:くくり罠は直接獲物を拘束するため、各々の部品に大きな力がかかります。ワイヤーはもちろん、他の部品についても、くくり罠の構成パーツは基本的に消耗品であることを意識しておきましょう。 また、再利用する場合は、各パーツに疲労や損傷がないか、予めしっかりと確認しておきましょう。 イノホイのくくり罠商品一覧はこちら>>
「大きな猪を仕留めてみたい」~ 若き猟師にインタビュー 黒田勇気さん(宮崎県)
宮崎県北部の自然豊かな山あいの集落、美郷町南郷。面積の約9割が山林というこの地域。 過疎化で若者が町から離れていく一方、この地域に残り、山の恩恵を身近に感じながら生活している若者もいます。 美郷町で林業に従事している黒田勇気さん(23歳)もその一人。苗木の植栽や下草の刈払作業などを行い木の成長を手助けする「造林」が本業ですが、休日などには狩猟も行っています。 大人になったら猟に行くのが当たり前だと思っていた ー狩猟は何歳のときに始めたんですか? 猟銃の免許をとったのが20歳のときなので、そのときからですかね。 写真:猟師である父親の背中を見て育ち、幼い頃から狩猟は生活の一部であった。狩猟もごく自然な流れで始めた。 ーなぜ狩りをしようと思ったんですか? 父も狩りをしていて、それを幼い頃から見ていたので、自分も狩猟免許が取れる年齢になったら猟銃の免許を取らないといけない、そして猟をしないといけないんだろうなと、当たり前のように思っていました。 なので、20歳になったらごく自然な流れで始めていましたね。 ーお父様の狩りをする姿をこれまでに見たことがあると思いますが、逆に嫌だとは思わなかったんですか? 確かに、子どものときはいろいろ手伝わされたりして、よだきい(面倒くさい)としか思わなかったですけど、うーん、なんでしょうね。鉄砲が撃ってみたかったんですよね。父が持っている鉄砲がかっこよくて、子どもの頃から鉄砲のおもちゃで真似ごとみたいなことはしてましたね。 ーでは、猟銃の免許を取得して、一番最初に行った狩りのことは覚えていますか? 覚えてます。そのときは、確か鹿を仕留めたと思います。 鹿が2頭出てきて、狙って撃って当たらなかったんですけど、その鹿が父のところに行って、1頭は父が仕留めて、俺の近くに戻ってきた1頭をようやく仕留めました。 ー初めて自分が撃った弾で獲物を仕留めたとき、どんな心境でした? 足が震えましたね、興奮して(笑) 痩せてたけど、結構大きかったんですよ。それは自分でさばきました。 ーさばくのも自分でやるんですね。さばき方はどうやって身につけたんですか? 子どもの頃から見てましたし、狩りをする前から手伝っていたので自然と覚えました。 (▲写真):慣れた手つきで獲れたイノシシの毛抜きをする黒田さん。子どもの頃から何度もやってきた作業だ。 ー年間、どのくらい狩りに行くんですか? 仕事もありますし、子どももまだ小さいので、月に2回くらいですかね。最近はあまり行けてないですね。 (▲写真):獲れた獲物は余すことなく。自分で獲った獲物を自分で捌き、山の恵みに感謝すると共に、美味しくいただく。 スリルやドキドキ感が狩りの醍醐味 ―今までの狩りで一番思い出に残るシーンを教えてください。 去年ですかね。民家の庭先で猪と猟犬がけんかしていて、それを仕留めたときが一番印象に残ってますね。犬がある程度猪を弱らせていたので自分に向かってくることはなかったんですが、猪がすぐそばにいたので恐かったです。だからこそ仕留めたときはすごく嬉しかったですね。 ー一方で、嫌だったシーンはありますか? 狩りの途中で雨が降り出したので、もう今日はやめようってことになって、山の中に入った猟犬を探しに行ったんですよ。 犬探しだけなので鉄砲を持たずに山に入ったんですけど、そしたらちょうど探していた犬と猪が一対一でやり合っていて、急いで鉄砲を取りに行って戻ったらもう猪はいなくなってて、犬はやられていて…。 その犬は命に別状はなかったんですけど、あのとき鉄砲を持って行ってれば、獲物を取り逃がすことはなかったのになと。 ーなんでもそうですが、楽しいことばかりじゃないですよね。では、狩りの楽しさってどんなところにありますか? うーん、行くまでは準備とかいろいろ面倒だったりするんですけど、行ったらやっぱり面白いんですよね。ドキドキ感とかスリルとか。 あと、1人で行くより、何人かで行ったほうが楽しいですね。1人だと獲物を見る確率が低いけど、みんなで行けば、(獲物を)猟犬で追わせて、あっちいったとかこっちいったとかの興奮したやりとりがおもしろいです。 (▲写真):面積のほとんどが山林である美郷町。若者は町から離れ、75歳以上の割合を示す後期高齢化率も高い。黒田さんの本業は「造林」。仕事や家族の時間の合間を見つけ、休日の限られた時間に狩猟を行う。 ー自分で猟犬を持とうとは思わないんですか? うーん、よほど好きじゃないと育てられないと思います。養うこともそうですが、訓練などをして、良い猟犬に育てないといけないですし。 でも、やっぱり猟犬がいないと獲物は獲れないですね。 犬で獲物を追わせてちょうどいいところに出さないと、鉄砲を持って立っていても獲物は出てこないですからね。 また、鳥獣被害の対策としても猟犬がいたほうがいいんですよ。犬がワンワン吠えて走り回ったほうが猪はその辺りには寄りつかなくなるので。 ー自分のお子さんには狩りをさせたいと思いますか? いやー思わないですね。いろいろ大変ですもん。もちろん危険なこともありますし。 でも、本人がやりたいと思うならやらせますよ。自分の父も別に俺に対して狩猟の免許をとれとは言わなかったですし。 ーなるほど。では、猟に関してこれからの目標があれば教えてください。 大きな猪を自分の鉄砲で仕留めてみたいですね。80キロくらいあるやつを。自分ではまだ40キロくらいの猪しか獲ったことがないので。 「山」と関わりながら暮らす 山での仕事も狩りも、自分がやってきたことの結果が目に見えるため達成感があっておもしろいと笑顔で話す黒田さん。 山や自然と、人との関わりを大切にし、山村での生活を楽しんでいるのが印象的でした。また、林業にも狩猟にも誇りをもって取り組んでいることも今回のインタビューでよくわかりました。 大きな猪を仕留めるという目標に向かって、これからも山村の大切な文化である狩猟を受け継ぎ、守っていってほしいと思います。 ★イノホイでは、各地の猟師さん、鳥獣被害に悩む農家さん、対策を行う行政の方など、頑張る方の活動を世に広めるためにインタビューを行っております。 受けていただける方がいらっしゃいましたら、こちらのフォームからお知らせください。
イノシシ捕獲~箱罠の設置・見回りをしよう
檻でできた箱の中に、餌を使ってイノシシを誘因し、獲物が箱の内部に入ると扉が「ガシャン!」と閉まる。箱罠は、イノシシ捕獲方法として王道です。この記事では、箱罠の設置や見回りについて説明します。 箱罠を用意したはよいが、その後どうしたらよいか分からない場合や、いまいち獲れない場合の参考としていただけますと幸いです。 箱罠の設置について 設置場所の選定 設置の前に、場所決めをします。置く場所によって、捕獲率は大きく変わります。 また箱罠は一度設置すると移動が大変なので、設置場所の選定は非常に重要です。 箱罠が不安定な場合、餌を食べに箱罠に入ろうとした獣が警戒してしまいます。 また箱罠が傾いたりしていると、罠の作動が悪くなったりします。設置場所としては、極力グラグラしないような平らな場所を選んで設置しましょう。 また、獣道を見つけた場合、その周辺の葉っぱなどに泥が付着していれば、近くにぬた場(イノシシが水浴びをする場所)があると思われます。 他にも足跡や糞、食痕などイノシシの痕跡が多く見られる場所に箱罠を置くと良いでしょう。 設置の際のワンポイントアドバイス イノシシは、足場に違和感があると、その部分は避けて通ります。しかし、箱罠は構造上床面の檻によって足場が凸凹になっており、イノシシからすると違和感だらけです。 そのため、箱罠の床面の金属が見えないよう土で覆います。罠の入り口の段差も、できる限り無くするよう土で覆い、罠の入り口から内部まで自然な形で地面が続くようにすると良いでしょう。 参考記事:箱罠の仕掛け方について 設置が終わったら、住所・氏名・許可者・許可年月日・許可番号・捕獲目的・許可有効期限(狩猟の場合は狩猟者登録年度や登録番号等)を明記した標識を箱罠本体に装着し、有害鳥獣捕獲許可や狩猟者登録があることを明示しておきます。 また、誤って一般の人が箱罠に近づかないように、周囲に罠の設置を知らせる看板を設置しておきます。 設置後の見回り 箱罠を設置したら、餌付けによってイノシシを罠まで誘因しますが、餌を撒いたらそのまま放置するのではなく、一定頻度で見回りすることが大切です。1日1回は必ず見回りをしましょう。 幼獣(ウリ坊)のうちは警戒心が弱いため、比較的すぐに箱罠の内部に入って餌を食べるようになります。一方で、成獣が箱罠に入るには時間がかかります。幼獣が悠々と罠の内部で餌を食べていても、脇にいる成獣は罠の手前の方で警戒し、なかなか奥に入ろうとしません。 そのため、成獣を捕えるには十分に餌付けをして、箱罠に対する警戒心を解く必要があります。 最初は箱罠の外側にも餌を撒き、餌の食いつきを観察しましょう。見回りの際に食べられた痕跡を見て、獣の動きを予測し、徐々に罠の中に誘導するよう餌の撒き方を変えていきます。 イノシシが箱罠内の奥まで入ってこないうちは、扉が落ちない状態にしておく必要があります。十分に警戒が解ける前に扉を落とした結果として成獣を取り逃がしてしまうと、その個体は箱罠に対する警戒心が非常に強くなり、捕獲が難しくなるためです。 トレイルカメラを使えば、無人の状態での箱罠周辺の様子が観察でき、獣の動きを把握することができますのでおススメです。>>トレイルカメラについて。 また、見回りの際には、交換用の餌、スコップ、交換・メンテナンス用の蹴り糸やパーツ等を持っていきます。 もし獲物がかかっていたら 見回りの際、遠巻きから確認して獲物がかかっていることが分かったら、いきなり近づいて確認せずに、まずは遠くから状況確認しましょう。 獣の興奮度合いはどのくらいか、衰弱していないか、箱罠に破損はないか、獣が逃げ出す恐れはないかなど、目視にて確認します。罠内の獣の動きがいまいち分かりにくい場合は、わざと音をたてたりして反応を見てみるのも良いでしょう。 最もトラブルが起きやすいのが止め刺しのタイミングです。慣れないうちはできるだけ複数人で行動し、無理のないよう対処しましょう。そのまま止め刺しを行う場合は、捕獲獣の動きを制限するため保定具を使って脚や鼻を保定すると、止め刺しが楽になります。 他にも、箱罠の網の隙間から角材等を差し込むことによって、獣が罠の内部で動ける領域を制限することができます。 参考記事:捕獲獣(イノシシ・シカ等)の止めさしについて 止め刺しに銃を使用するのであれば、そのエリアにおいて銃による止め刺しが許可されているかどうか予め確認しておきましょう。また、もし錯誤捕獲(捕獲対象ではない動物の捕獲)していた場合は、速やかに放獣してください。 箱罠の設置例 最後に、イノホイが取り扱う箱罠の設置例を紹介します。下の動画の箱罠は、設置して何年も経つものですが、場所を変えなくても毎年何匹か獲れます。近くには獣道が多くあり、ヌタうちをしたと思われる痕跡もありました。 餌の種類は今のところ、米とさつまいも、時々とうもろこしです。他の餌を使う場合もあります。 毎日スタッフが見回りをしていますが、この場所はなんだかんだでよく獲れます。この写真を撮った時の見回りでは餌の食いつきがイマイチ見られませんでしたが、もうじきしてイノシシが腹を空かせだすと、罠にかかるようになるでしょう。 蹴り糸は黒い紐を使っており、獣から見えにくいようにしています。罠の中に枝を置いて、枝に触れただけでも罠が作動するよう蹴り糸の仕掛け方を工夫したりもします。 同じ商品をご覧になりたい場合は、こちらのページをご覧ください。
猟犬の種類と特徴について
犬と人間が親しい関係となるきっかけになったのは、3万2000~1万9000年前の欧州で、オオカミが狩猟採集民になついたのが始まりとする研究結果がある。 その後、犬という種類が最初に現れたのは約15,000年前で、人間がオオカミを家畜化し、人間の好む性質を持つ個体を人為的選択※することで、犬という動物が成立したとされる。そのため、犬という動物は、種の成り立ちの観点からも、農耕が始まる遥か以前から猟犬の役割を担っていたと考えられる。 ※人為的選択・・・生物の形質について、人為的に選択して経代を続け、その変化を望む方向に誘導する行為、またはその結果を指す。 少し話が逸れるが、筆者が初めて猟犬という存在を認識したのは、子どもの頃にみた少年ジャンプで掲載されていた「銀牙 -流れ星 銀-」という漫画である。 人間ですら歯が立たない凶暴な人食い熊・赤カブトを討つために、熊犬(熊狩りを目的とした猟犬)である銀が冒険する物語で、漫画ではあるものの、猟犬が己の爪と牙だけを頼りに立ち向かっていく様に胸を熱くしたものである。 しかし、漫画ではなく実際のところは、猟犬はその優れた嗅覚や吠え声によって獲物を追い込むことが得意であるが、大型動物を仕留めるほどの力はもたない。 一方で、人間は犬のような身体能力はもたないものの、銃や刃物など強力な武器を持つ。そのため、ハンターにとって猟犬は最高のパートナーといえるのだ。 猟犬の種類 猟犬は多くの犬種(品種)や系統に分かれており、鳥猟犬と獣猟犬に大別される。 鳥猟犬の種類 鳥猟、とくにキジ猟においては、ポインターやセッター、レトリーバー、それら全般をこなすスパニエル等が活躍する。 ポインターは獲物を見つけると「お手」の姿勢となり、ハンターにその位置を知らせる(ポイントするともいわれる)。 また、セッターは獲物が逃げ出さないようにそっと近づき、ハンターの指示でハンターが射撃を行うのに最適な位置に鳥を追い出すことが得意だ。 レトリーバーは目視により撃ち落とされた鳥の位置を長い間記憶し、思い出すことができる。また、気性が穏やかで獲物を噛みつぶさないで運んだり、泳ぎもできる。そのため、撃ち落とした獲物や半矢で逃げる獲物を回収(レトリーブ)することが得意である。 スパニエルは利口で忠誠心が高く、鳥猟に広く使われる犬種であるが、家庭犬としても人気が高い。 獣猟犬の種類 イノシシ猟などの獣猟においては、身軽で駿足、勇敢、適度な追い鳴きの能力をもった犬種が重宝され、洋犬ではハウンドと呼ばれる犬種が該当する。彼らは、つねに獲物と一定の距離を保ちながら追跡し、吠えること(追い鳴き)によってハンターに獲物の位置を知らせる。 また、和犬も古くから獣猟で活躍してきた犬種で、紀州犬、甲斐犬、秋田犬などが存在する。 ハウンドと和犬を比較すると、犬自身の性格にもよるが、ハウンドは鳴きが早く盛んに鳴くという傾向があり、和犬は獲物を見つけるまでは鳴かないという傾向がある。 猟犬を使った追い込み方法 猟犬を使った獲物の追い込みには色々な方法がある。 例えばイノシシ猟においては、獲物が生息する狩場を多人数で四方から取り囲み、囲いを縮めながら獲物を追いつめて射止める「巻き狩り猟」がよく知られている。 巻き狩りは勢子(獣を追い詰めたり、逃げるのを防いだりする役割のハンター)と、数人の射手(獲物に対して鉄砲を撃つハンター)と、パートナーである猟犬とで行われる。 ※最少の出猟人数は3人(勢子2人と射手1 人)で、3人以上の出猟者が見込めない場合は巻き狩り猟は中止となる。 まず、おもに勢子以外のメンバーが単独もしくは複数で「見切り」を行う。見切りは、メンバーごとに特定のエリアを担当し、獣の痕跡の変化を見定める作業のことで、大抵の場合午前中に行われる。 その後、各メンバーが集合場所に集まり、勢子を交えて見切りの情報を持ち寄り、猟を行うエリアを確定したうえで猟を始める。 猟がスタートすると、初めに犬が「床吠え(たて吠え)」することによって、寝床で寝ている猪を起こす。 床吠えは、同じ位置ですごく大きな声で吠える吠え方である。イノシシが起きて逃げ出したら、犬はそれを追いかけながら大きな声で吠える。 起こされたイノシシは「通い(イノシシがエサ場やねぐらへ移動するとき、いつも通る道のこと)」を通って逃げる。 勢子は、イノシシを追い込みながら射手に待機場所(マチ)を指示するほか、山中のフィールドサインや猟犬による探索状況から獲物の行方を推察し、射手と随時連携をとる。 射手はイノシシが逃げてくる可能性の高いところにマチを張り、逃げてきたイノシシを鉄砲で射止める、という流れである。 巻き狩りの他にも、猟犬を使った獲物の追い込みとして、犬がイノシシのニオイを追跡し、だいたいどのあたりにイノシシが出てくるか猟師が予測して待ち受ける「追跡猟」、イノシシの寝床まで犬が追いかけて、猟師が来るまで吠えて留めておく「寝床猟(床猟)」などがある。 猟犬を使った猟の注意点 犬に咬みつかせることのみによって狩猟鳥獣を捕獲することはできない。また、犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め、法定猟法以外で捕獲することはできない。どちらも法令で禁止されている(参考ページ)。 また、当然ながら犬種や個体ごとに性格は異なるため、長所と短所を飼い主があらかじめよく理解しておくことも大切だ。 例えば、グループでの巻き狩りにおいて、特にハウンドは、しっかりとイノシシを起こし、追い残しが無い、追い鳴きが続くなどの優れた点がある。 一方で、和犬の優れた点は、帰家性が高い点である。 例えばハウンドは追跡モードになるとかなり遠くまで獲物を追ってしまい、日が暮れても戻ってこないこともあるが、日本犬は戻りが早く、数時間もすれば飼い主の元に戻ってくる。そのため、日本のベテラン猟師は和犬を好む方も多い。 色々な意見があるかと思うが、例えば、巻き狩りなどのグループ猟においては山が騒がしくなってもよいため、また犬の回収の為に多くの人手を割くことができるため、追跡能力の高いハウンドを使用すると良いかもしれない。一方でグループで猟をしない場合、特に寝床猟などの場合は、和犬のほうが向いているかもしれない。 いずれにせよ、猟犬はハンターにとって猟を成功に導くための素晴らしいパートナーであり、犬を使った猟は非常に奥深い猟法である。ハンターなら一度は、長い歴史に紡がれたこの猟法の世界に、一歩踏み入れてみるのもよいのではないだろうか。 ただし、人や飼養動物に襲いかかることがないよう充分な安全対策を行うことや、マナーの遵守には必ず配慮しておきたい。